管理職体験談:コミュニケーション下手な私が、エリアマネージャーになって

[最終更新日]2023/03/11

体験談
10
管理職体験談:コミュニケーション下手な私が、エリアマネージャーになって

30代半ば、独身の一人暮らしです。
現在は、飲食業のエリアマネージャーとして働いています。

エリアマネージャーとは

販売・サービス業界を中心とした、「決まったエリア内の複数の店舗や支店などの管理」をする役割の人を指します。主に担当するエリア内の売上アップを目指し、各店舗の販売活動の指導、コンサルティング等を行います。

私の性格はというと、温厚な方だと思います。人前でほとんど怒ることはありません。
半面、自分の気持ちをストレートに言ったりとか、そういうのはあまり得意ではありません。

趣味は、音楽制作・楽器演奏・ゲーム・小説・映画など。
インドアな趣味が多く、オンラインゲームしながら好きな音楽を聴いて過ごす時間がいちばん幸せを感じられます。

ストレスを感じたときは作曲して、自分のありのままの感情を音楽にする笑。
これが結構、スッキリするんです。

ホポホポさん(男性 32歳)
職業
飲食業
職種
SV(エリアマネージャー)
年収
300万円
従業員規模
820名(うち部下42人)
地域
大阪府

Index

目次

どうせなら、「一番苦手なこと」を仕事にしてみよう。

紳士服販売のイメージ

学生時代からアルバイト勤めしていた紳士服(ビジネスシャツ)の販売から、私は社会人スタートをしました。

販売の仕事を選んだ理由は、「一番苦手なことをしてみよう」と思ったからです。
奥手でしたので、お客さまと言えども初対面の人に声をかけるのはとても勇気のいることでした。

販売の仕事は、「ただお客様に声をかけて終わり」ではありません。
興味を持ってもらえそうな商品を提案して、そしてときに少しでも高い商品や、セット販売をすすめること。長くコミュニケーションを取ることによって徐々に信頼関係を築くこと。そうした接客術を勉強しました。──なかなか、大変でした。

でも、何度も経験すると段々と慣れてくるものです。
「接客が好き、得意」という人にはとても敵いませんでしたが、それでも仕事を問題なくこなす程度にはなりました。でも、それでいいと思うんですよね。「一番を目指そう」なんて、仕事であまり目指すものじゃないと思います。大切なのは、ちゃんと人の役に立つこと。それが出来れば、充分じゃないでしょうか。

それから、私は今の職場(飲食業)に転職しました。
子ども向けの飲食チェーン店で、サービスを提供する際にもっとも感情を素直に表してくれるお客様──つまりお子様をターゲットにした店舗です。
これが私に合っていたようで、またこれまでの接客経験も助けになり1年後には店長に、そしてその翌年にはSVに昇進となりました。

人は大抵、自分の良くないところは気付いている

面談のイメージ

SVとして4店舗の管理を任されたときに、上長から「スタッフ内の仲を取り持つこと」を指示されました。

その4店舗はまあまあ売上も出ているお店でしたので、更に売上を上げるよりもチーム体制をしっかりすることが優先──と考えてのことだったのでしょう。

実際に店舗を視察してみると、たしかに「なるほど…、これは問題かもしれない」と思いました。

まず、アルバイトさんとパートさんとで完全にグループが分かれており、両グループの交流が断絶状態にあること。

そして、誰もが「今のお店の雰囲気はあまり良くない」と思っているのですが、それを自分達の勤務やコミュニケーションの質よりも、どうもそれ以外のところに問題意識を持っているようでした。

教育制度や毎月のイベントの進行など、そのほかシフトの都合でコミュニケーションを取れない人が全くいる、上司がいつも各店舗を飛び回っていて話したくても話せない──。色んな人が色んなことを言います。でも私から見る限りでは、誰もが意見ばかりで「行動」していないことに一番の問題があるように思いました。

ですが、だからといって私から「四の五の言わずに、お前がやれ」といっても逆効果でしょう。
まずは、「ちゃんと話を聴いてみよう」と思い、3ヶ月程かけて、4店舗全員のスタッフと面談を設けて話を聴きました。

その面談をやってみて解ったこと、それは「人は大抵、自分の良くないところは気付いている」ということです。
でも、不安定だったり余裕がないとそれに気付かない振りをしたりするものです。でも、安心感や気持ちに余裕が出てくるとそこにちゃんと目を向けられるようになる。

だから、面談でもとにかく相手にどんどん喋らせた。そうすると、まあ人は話を聴いてもらうだけでも安心しますよね。そのうちに、段々と本当の課題や自分の問題点について、相手の方から言ってきます。

そうして私は、面談で話を聴く以外に何をするでもなかったのですが笑、段々とスタッフの自主性が出てきて、それに伴いスタッフ間の交流も以前より大分見られるようになりました。

そして、私自身、こうした人の話を聴くのが、あまり苦にならない性質だったのも助けになったと思います。私にとって、聞くことより話すことの方がよっぽど苦手でしたので。

こうした「聞く能力」というのも、管理職業務を遂行する上で大切なのだな、と感じられた貴重な経験でした。

私の店舗で、お客様が怪我をして。

謝罪なイメージ

「管理職になって、いちばん大変だったことは?」と訊かれて思い浮かべるのは、ある店舗で起きた、お客様の負傷事故です。

当時、エリアマネージャーになって1年経った頃のことです。

ある店舗でシフトの穴が空いたので対応していたとき、スタッフが深刻な表情をしてやってきて、

スタッフ

「さっき、〇〇店から連絡があって、お客様のお子様が階段から転落してしまったそうです」

と言われたのです。

そのお子様は救急搬送されたとのことで、私も急ぎその病院に駆けつけました。
緊急外来の待合所に入ると、すぐに「ああ、あの人がその親御様だな」というのが一目でわかりました。私に向けて、非常に敵意のある眼差しを向けていたのです(まだそのときは初対面でしたので、なぜ私が責任者と分かったのか…。もしくは、私の強迫観念でそう見えていただけなのかもしれません)。

お子様の怪我は「肩の脱臼」とのことで、担当医の方がすぐに処置していただきました。
ですが、それで話が収まるということは、当然ありませんでした。

子どもの父親

「なんでこんなことが起きるんだ?お金を払ってる以上、ずっとお前らが監視しておくべきやろ」

親御様はかなりお怒りの様子で、私にそう怒鳴りました。

私たちのお店はお子様が多く来店する為、入店の案内時に必ず保護者の方に『お子様から、目を離さないようにお願い致します』と伝えています。

そのことについても確認させていただきましたが、

子どもの父親

「そんなん知るか!怪我をさせてしまったのは事実だろうが。菓子折り持って謝りにこい。もし入院から後遺症残れば一生面倒見ろ」

と、かなり理不尽なことを言われました。

その場では丁重に謝罪して、後日上司とともに菓子折りを持ってその方の家まで謝りに伺いました。
そこでも大変たくさんのお言葉を頂きましたが、幸いにお子様の怪我もその後回復され、それ以上の大事にならずに済みました。

当時のことを振り返って。

考えているイメージ

そのことは今思い返しても、非常にセンセーショナルな出来事だったと思います。

そこで私が思ったこと、それは、「全員が悪ではない」ということでした。

この出来事からなぜそんな結論が出るのか不思議に思う人もいるかもしれません。

ですが、丁寧に思い返してみるとそこに関わった人たち誰も、悪人ではないのです。
(もちろん、いろんな人の不注意が重なって起きた、再発防止すべき事故ではあります。ただしそれは不注意やミスであって、「悪」ではない。)

私にクレームをした親御様にすれば、「たかが肩の脱臼」ではありません。その人にとってはパニックになってもおかしくない大事故だったはずです。

そして、災難は私のお店で起きたのです。
文句やクレームは、その人にとって「必要なこと」だったのでしょう。

当然、人それぞれ感じ方や伝え方があります。他人の伝え方に違和感を持ったとき、それは多くの場合自分とその人とで置かれた状況と「必要としていること」が異なるからです。

サービス業を続けていくうえで、そうした違和感にいち早く気付き、そして冷静かつ平穏に対応することはとても大切なのだろうと、私は思います。
そして、この世界では「悪」はいないのです。あるのは、自分自身と、他者。それだけです。

私が考える、管理職にとって大切なこと。

管理職のイメージ

──やや、取り留めもない話になってしまいましたが、その後もなんとかかんとか、エリアマネージャーとしての仕事を続けられています。

大変なことや頭を悩ますことはたくさんありますが、それはきっと働く人皆がそうですよね。
それでもやっていくしかないですし、まずは「なんとかなる」くらいを目指していくくらいの意気込みで良いのではないでしょうか。

でも、仕事をしていくうえで、特に管理職としてスタッフやお客様に対して責任ある立場に付くのなら、自分なりの「大切にすべきもの」は持っておいた方が良いと、私は思います。

私が思う「管理職が大切にすべきもの」とは、4つあります。

ひとつ目は、「人の話を良く聞くこと」。

問題が起きた時焦って対応するよりも、何が原因でその問題が起きたのかを話し合い、話を聞くことです。

二つ目は、「自分が責任を取る」という自覚
何店舗も担当すると、毎日のようにどこかのお店で問題が起きます。その全てのことに、自分が責任を持つという自覚が必要です。
それがあってはじめて、私はスタッフに対してときに厳しく接していく権利を持てるのだと思います。

そして三つ目は、「温厚で優しく」。
誰に対しても優しく接することは、スキルと言えます。そして、そのスキルは伸ばしていくことができます。
誰だって、恐怖で縛り付けられるより優しくしてもらった方が自発的に動き生産性も上がるものです。間違いはしっかり注意しても、そこには必ず優しさも必要です。

最後の四つ目は、「スタッフを信じる」こと。
一人で仕事はできません。間違えてもいい、そのスタッフの成長を信じて仕事を振るなどの働きかけが、管理職には求められると思います。

私自身もともと不器用な方で、若い頃は上司や先輩の方々にたくさん迷惑をかけ、指導の手間をいただいていました。

それから10年以上経って、今度は私が、職場でうまく環境に馴染めない人を支援してけるような、そんな働き方をしていければと思っています。