部下の『協調性』が気になるときに、上司が取るべき行動は?

[最終更新日]2020/12/24

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部下の『協調性』が気になるときに、上司が取るべき行動は?

チーム・組織で働く際は、仲間たちと協力し合いながら仕事を取り組める環境でありたいものです。

一方で、「部下の協調性のなさが気になっている」、「自分はこれだけ頑張っているのに、相手からはその意思が感じられない」ということで悩むときもあるでしょう。

さて、そのようなときに皆さんはどう考え、そしてどう行動しているでしょうか。

「他人と過去は変えられない」という言葉にもあるように、相手の協調性への意識を変えていくことは(多くの場合)簡単ではありません。

ですが、上司の立場になったならば、「協調性を発揮しあうチーム・組織」にしていけるかはあなた自身の問題でもあります。「他人」ではなく「自分」の課題として取り組む必要があるのです。

この記事では、「協調性」をテーマに、「部下やチームの協調性を発揮していくうえでの、あなた自身が行える取り組み」についてお伝えしていきます。

もし今あなたが部下やチームの協調性の課題に直面しているとしたら、きっと助けになるでしょう。ぜひご覧ください。

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Index

目次

1)上司のあなたが求めているのは、部下の「協調性」?それとも「従順さ」?

協調(性)とは、互いに助け合い譲り合いをしながら、相手にとっても自分にとっても満足いく結果(または状態)にしていくための意識・行動

協調性について考える際にまず意識しておきたいことは、協調性に対する適切な解釈です。

協調(性)とは、互いに助け合い譲り合いをしながら、相手にとっても自分にとっても満足いく結果(または状態)にしていくための意識・行動であり、一方向ではなく双方向の働きかけになります。

協調性が「双方向の働きかけ」であるということについては、近しい表現で使われることの多い「同調」や「従順」という言葉を比較して考えると、理解を進めやすくなるでしょう。

参考:「協調」と「同調・従順さ」の意味の違い

一般的な定義(「広辞苑」の説明を一部引用) 意識・行動の方向性
同調 他と調子を合わせること。他人の主張に自分の意見を一致させること。 一方向
従順 すなおで人にさからわないこと。 一方向
協調 利害の対立する者同士がおだやかに相互間の問題を解決しようとすること。性格や意見の異なった者同士が互いにゆずり合って調和をはかること。 双方向

上記表の説明からは、「同調」や「従順」は一方向の働きかけであるのに対して、「協調」は相手と自分の双方向的な働きかけであることが伺えます。

例えば、「上司の意向をすべて受け入れて行動する」部下は、「同調」または「従順さ」が発揮されているとみるべきでしょう。

一方で「協調」とは、仮に上司が部下に自分の意向に沿ってほしいと願った際は部下の意向についても確認して、双方がどこまで歩み寄れるのかを模索するまでの行動が含まれるのです。

私たちは、ふとすると協調という言葉を同調・従順とで混同して使いがちです。
部下を持つ方が協調性を部下に問う際は、このことに重々留意しておくべきでしょう。






同調や従順では得られない、「協調性を発揮することのメリット・効用」は?

「協調性とは、同調や従順さとは異なる」と説明しましたが、同調することや従順であることが「間違っている」と言っているわけではありません。

人の考え方や価値観は、これまでの人生で培われたものです。自身が過去に従順さや同調を発揮することによって状況が好転したという経験を持つ人は、一層その働きかけは強まるものでしょう。

もちろん、相手が望んでいないのに同調や従順さを強制することは良くありませんが、そういった感情や欲求を持つこと自体まで否定しなくともよいと、私は思います。

ただし、そうだとしても協調を同調・従順さと混同すべきではありません。
なぜなら、協調は、相手と自分が満足する状態の「WIN-WINの関係性」を築くためのコミュニケーションでもあるからです。

参考:WIN-WINの関係図

WIN-WINの関係図

上記図は、「私」と「相手」のそれぞれ「満足か不満か」によって、「WIN-WIN」、「WIN-LOSE」、「LOSE-WIN」、「LOSE-LOSE」と状態が分かれることを示しています。

WIN-WINの関係にあることが最も望ましいことは一目瞭然ですね。
ここで注意したいのは、どちらかがLOSEになる状態(LOSE-WINまたはWIN-LOSEの関係)を続けていると、長期的にはLOSE-LOSEの関係に推移してしまうということです。




WIN-LOSE / LOSE-WINの状態は、長期的にはLOSE-LOSEを引き起こす

WIN-LOSE LOSE-WIN
短期的(現在) 私の意見を押し通し、望む結果を得たが、相手は納得していない状態 私は納得していないが(我慢をしている)、相手の望む結果となった
長期的 相手が私との距離を遠ざけ、私の主張が通りにくくなる 自然と自分から相手との距離を遠ざけてしまい、相手の主張を受け入れにくくなる

現在部下からのアプローチが「同調」や「従順さ」に拠っている場合、その関係はあなたにとって「WIN-LOSE」といえるかもしれません。「それでも良いじゃないか」と思う人もいるかもしれませんが、その状態が続いたときにいずれ「LOSE-LOSE」になる可能性があることは認識しておくべきでしょう。

一方、双方向的な働きかけによる「協調」は、「WIN-WINの関係」に発展しやすく、更には同調や従順からは得られない、以下の効用・メリットがあります。


仲間・チームの関係性がが高まり成果が出やすくなる、周囲の協力を得やすくなり「できることが増える、視野が広がり「自身のこうありたい姿」を描きやすくなる

協調性の発揮は、相手・チーム間においてWIN-WINの関係が育まれやすく、それは仕事の成果にも繋がります。ふとしたトラブルやイレギュラーなことがあっときも助け合いの協力が得られやすくなるでしょう。

また、関わる人たち同士で互いの考え・価値観に触れやすくなることで「視野の広がり」や「新たな価値観の創出」にもポジティブな作用を与えていけるのです。

2)「部下からの協調性が感じられないことが気になる」場合は

部下からの協調性が感じられないイメージ

前章では、チーム・部下との協調性は双方向的なものであり、同調や従順とは異なること、そして協調性ならではのメリットについて説明しました。

ここで、「自分から部下に対して協調性を持って接しても、部下からそれが感じられない場合はどうすれば良い?」と疑問に思った方もいるでしょう。

その際は、いったん「部下の現在の状態」を明らかにしておくことをおすすめします。
例えば、以下の図「職場内で相手との相互理解が発生するまでのプロセス」に沿ってみたときに、あなたの部下は現在1~3段階目のどの位置にいると考えられるでしょうか。

参考:職場内で相手との相互理解が発生するまでのプロセス

職場内で相手との相互理解が発生するまでのプロセス図

1段階目の「自身の心理的安全」がまだ確保しきれていないフェーズ(不安や緊張が大きい状態)だとしたら、部下に協調性を要求するのは酷かもしれません。

また、2段階目の「相手への興味・関心」を抱き始めているフェーズでしたら、コミュニケーション等で部下との関係性を深めることによって、徐々に部下から協調性が発揮されていくのを期待できるでしょう。

部下が3段階目の状態にいたとしたら、おそらく双方向の協調性はすでに発揮されているのではないでしょうか。

それぞれの段階ごとに、行う対策は異なるものです。
まずは部下がどの段階にいるのか、改めて確認してみてください。




部下の状態に合わせて、「協調性の発揮しやすい環境」を整える

部下を褒めているイメージ

「頑固な人」や「空気を読まない人」、「特に職場において、他人に興味を持てない人」がいたときに、私たちは「協調性のない人だ」という印象を抱きがちです。

ですが、これら傾向のある人たちは先の図における1段階目「自身の心理的安全を確保できていない」状態にあることも多いです。つまり、今の職場に対して不安感が少なからずあり、それが自身の性格・パーソナリティのネガティブな方面を引き出してしまっている──という場合もあるのです。

「協調性のない人」と周囲から印象を持たれる人たちの多くは、「協調性を発揮することに難しさを感じている」ものです。ここで私たちは、「難しくなんかあるものか」と相手を否定してしまうのではなく、「なぜ難しさを感じるのか」について意識を向けていくことが大切です。



部下が「自身の心理的安全」を確保できていないときの、上司の対応例

部下が心理的安全を確保できていないことが考えられる場合は、私たちはその人の性格(パーソナリティ)をなんとかしようと働きかけるよりも、部下の心理的安全を確保することに注力したほうが効率的かつ建設的です。

  • 部下を観察し、小さな変化に気付けるようにする
  • 自分から率先して声をかける
  • 相手の顔を見て、意識して名前で呼ぶ
  • 笑顔を見せる機会を増やす
  • 小さなフィードバックの機会を増やす
  • 部下が自信をもって取り組める業務を用意する


部下が「あなたへの興味・関心」を持っており、更に関係を構築したいときの上司の対応例

部下が上司に対して一定の興味・関心を持っているが、関係構築に向けてはまだ深まっていないという場合は、以下のような行動を意識してみると良いでしょう。

上司からの歩み寄りを意識することによって部下との関係性は育まれ、双方での協調性も発揮されやすくなるはずです。

  • 対話による機会を増やす(1on1 ミーティング等)
  • 「相手が関心を持っていること」に関心を持つ
  • チャレンジの機会や成功体験を提供(または共有)する
  • 部下が抱える課題について、共に向き合う

部下の協調性が発揮されないというとき、その要因はおそらく一つではなく複合的なものです。

上記のアプローチはそれら要因のなかの一部を扱っているにすぎませんが、相応に効果を期待できるものです。部下の性格・パーソナリティにすべての要因を帰してしまうのではなく、上司としてやれることを見出していきましょう。




部下の性格・パーソナリティが気になる場合は、「柔軟性」にフォーカス。かつ、急ぎすぎないこと

ここまでの内容をもってしても、「それでもやはり、(協調性が発揮されないのは)部下の性格・パーソナリティに原因があるのではないか」という疑念を拭えないという方は、一度以下の観点を持ってみることをおすすめします。

  • 部下の「柔軟性」が向上するように働きかける
  • 時間を味方につける(急いで解決しようとしない)


部下の「柔軟性」が向上するように働きかける

仮に部下の性格・パーソナリティに問題があったとしても、その原因解決を業務や部下育成の一環で行うことは、あまり適切ではないでしょう。

個人の性格が原因で対人関係に悪影響を与える症状を「パーソナリティ障害」といいますが、専門知識を持たない人が他人をそう診断して対応するべきではありませんし、ましてや本人にそのことを伝えたりほのめかしたりするのはもっての外です。

大切なのは、部下の「資質」に目を向けるのではなく、「スキル・能力」に目を向けることです。

特に意識しておきたいスキル・能力は「柔軟性」です。柔軟性は、協調性の発揮に関わる重要な要素ですし、意識して高めることで部下のこれからの成長・活躍に大きく寄与できます。


柔軟性とは「環境の変化に応じて自身の意識を変え、適当な処置ができる性質」「様々なシーンで機転を利かせて行動や分析などを素早く対応できること」

柔軟性とは、「環境の変化に応じて自身の意識を変え、適切な処理ができる性質(またはその能力)」をいいます。一言でいうと、「周囲に合わせて変化していける能力」と表せるでしょう。

そして「協調性を発揮すること」も、相手に合わせて自身を変化していくことに他なりません。つまり、柔軟性は協調性を発揮していくうえで欠かせない能力でもあるのです。

柔軟性は、以下の働きかけで伸ばしていくことができます。
部下の柔軟性に課題や伸びしろを感じられる場合は、試してみることをおすすめします。



部下の柔軟性を伸ばすための取り組み・働きかけ
  • 他者の考えや意見に触れられる機会を増やす
    複数の社員とのコミュニケーションの場(ランチミーティング・ブレストミーティングなど)を多く設ける
  • 新しい業務にチャレンジする機会を増やす
    ルーティン業務のマンネリ化を防ぎ、新しい業務で知識や経験を積ませ、できることの幅を広げていく
  • 上司が柔軟さの手本を示す
    部下の意見を尊重し、取り入れる機会を持つ。意見・主張の異なる他者に対して寛大さを持って接する


時間を味方につける(急いで解決しようとしない)

上司からどんなに働きかけても、部下がマイペースで一向に協調性が感じられない…という場合は、現時点では無理に協調を求めない方が良いかもしれません。

ただし、それは「諦める」ということではありません。部下が協調の大切さを意識しだすことを「信じて待つ」ということです。

以前私が人事育成担当の人たちに向けて「部下育成」をテーマにしたワークショップをした際に、こんなことを話してくれた女性の方(40代 ここではTさんとします)がいました。


「若いころは本当に、(社内で)周りの言っていることが全く分かりませんでした。やれ協調性を持てだの、やれ会社の視点を持てだの。『自分は目の前の業務をやっているのだから、それでいいでしょ』と思っていました。

上司からは何度も面談の機会を求められ、それも非常に苦痛でした。──今思えば、上司もこんな私が部下でさぞかし大変だったでしょうね。

意識が変わったのは、30代半ばの頃です。部署移動で経理の仕事を手伝うことになって。そこで会社がどこにどれだけお金を使っているかを知れたんですね。
『会社って、こんなにお金がかかるんだ!』って笑。当然、人件費や設備費もかかりますよね。そして、かかった分のお金を、社員の皆が協力して稼いでるんですよね。当たり前のことですけど。

でも、それを目の当たりにして私の中で、『自分も協力していこう』っていう気持ちに、初めてなれたんです。それが私の、ターニングポイントでした。」

Tさんは、「協調性を発揮しよう」という気持ちを持ったのは社会人になって10年以上経ってからということでした。ちなみに、現在はリーダー職として数人の部下を指導しながら、業務をされています。

もし、Tさんがもっと早く会社の支出状況を知れたら、協調性への意識も同様に早まったのでしょうか。そうかもしれませんし、もしかしたらそのきっかけはもっと複合的なもので、やはり相応の年月が必要だったのかもしれません。

部下からの協調性の発揮を求めたときに、すぐに応えてくれる部下もいるでしょう。一方で、応えるのに時間のかかる部下──Tさんのように10年越しになるという人もいます。

「現在のTさんは会社にとって重要な存在だ」と、一緒にワークショップを受けた同僚の人がお話しされていました。

「部下の協調性を発揮していくうえで、何年でも待つ必要がある」とまでは言いませんが、上司は部下の状態や性格・パーソナリティを見ながら、ときに「信じて待つ」ことも求められるのです。

3)協調性は、上司からはどのように行動していくと良い?

さて、ここまでの内容で、協調性の本来の意味、そして部下からの協調性を引き出していくうえで意識すべきポイントについてお話しました。

ここからは、上司側から協調性を発揮する際のポイントについて説明していきます。

「自分は常日頃から、部下に協調性を持って接しているので問題ない」と感じている人もいるかもしれませんが、協調性とは相手に伝わってはじめて発揮されるものです。もしかしたら、部下には正しく伝わっていないこともあるかもしれませんし、逆に緊張感や威圧感を与えていた…ということもあるかもしれません。

また、協調性は上司側からのアプローチで効果を大きく伸ばしていくことができます。
協調性への働きかけを一度整理しておくことは、これからの仕事人生にも大いに役立てられるでしょう。以下の項目を確認し、日ごろの行動と照らし合わせつつ取り入れられるところがないか確認してみてください。


上司が協調性を発揮する際の、大切なポイント4つ「①あなた自身の心のゆとりを」「②相手に対して関心を持つ」「③相手との対話の機会を設ける」「④相手にリクエストをする。感謝の気持ちを伝える。」


上司が協調性を発揮する際の、大切なポイント4つ

  • ①まずは、あなた自身の心のゆとりを
  • ②相手に対して関心を持つ
  • ③相手との対話の機会を設ける
  • ④相手にリクエストをすること。そして感謝の気持ちを伝えること



①まずは、あなた自身の心のゆとりを

ゆとりを持つイメージ

協調とは、あなたと相手が「お互いの状態・感情」を思い遣りながら行われます。
そして相手のことを思い遣る行為は、自分自身に心のゆとりがないと充分にできないものです。

人はだれしも余裕がなければ視野は狭まります。
現在仕事で大変な課題・難題を抱えているという方は、それこそ「協調性どころではない」かもしれません。

現在、あなたが今非常に大変な状況で周囲のことに目を向ける余裕がないのだとしたら、今は部下やチームとの協調性を考えるより先に「あなた自身の心のゆとり」を持つことを意識してください。

心のゆとりがどれだけあるかは、自分自身ではなかなか判断付きにくいものです。
「自分に心のゆとりがあるかがよく分からない」という方は、以下のチェックリストを試してみると良いでしょう。



仕事での「心のゆとり」チェックリスト

  • ①やらなくてはいけない仕事がたくさんあるが、整理できていない(Yes / No)
  • ②自分のデスク・作業スペースが散らかっている(Yes / No)
  • ③メールやチャットの返信がいつもより遅れがちになっている(Yes / No)
  • ④文章の誤字やスケジュールの勘違いなどのミスがいつもより多い(Yes / No)
  • ⑤残業または家に持ち帰って業務をする日が続いている(Yes / No)
  • ⑥睡眠をあまり取れていない・寝つきが悪い(Yes / No)
  • ⑦プライベートで大きな悩み・心配ごとがある(Yes / No)

上記チェックリストは、「Yesが〇個以内だったら問題ない。〇個以上だったら問題あり」というような判断ツールではなく、あなた自身の心のゆとりを阻害する要因を確認するためのものです。

ひとつでもチェックが付くようでしたら、あなたの部下・チームへの協調性は更に高められる可能性があります。まずはその項目がなぜ起きているのかを振り返り、改善方法を考えてみてください。

すぐに解決できない問題だったとしても、自分が今心を煩わせている要因が明確になると、自然と気持ちは落ち着きやすくなるものです。また、解決に向けての意識・行動も起こしやすくなるでしょう。

「上司の部下との協調性」の第一歩は、まず上司であるあなた自身の状態を整えることから始まるのです。




②部下に対して関心を持つ

部下に対して関心を持つイメージ

部下との協調性に向けての続いての取り組みは、「部下に対して関心を持つこと」です。

繰り返しになりますが、協調性とは「互いに助け合い譲り合いをしながら、相手にとっても自分にとっても満足いく結果(または状態)にしていくための意識・行動」です。相手に関心を持たずして協調性が成り立つことはありません。

さて、ここで「部下に対しての関心度合い」はどうやって測ると良いでしょうか。
他者への関心の持ち方は人それぞれですが、以下の観点も併せて持っておくと良いと思います。


  • 相手が今楽しめていることは?
  • 相手が今悩んでいること・困っていることは?
  • 相手が情熱ややりがいを持てていることは?
  • 5年後または10年後、相手はどうなっている?(望ましい未来像は?)
  • 5年後または10年後、相手と自分の関係はどうなっている?

これらの観点について、いま一度あなた自身が意識できていたかを振り返ってみると良いでしょう。もし「そんなことは殆ど考えたこともなかった」という観点があった場合は、まだまだ相手への関心を深める余地があるということです。

ちなみに、上に挙げた観点について「直接聞く」行為もありですが、できたらそれだけではなく日常の部下との関わり合いのすべてから、想像・イメージしていくことをおすすめしたいです。──そしてその行為自体が、相手への関心を持つことでもあります。

部下への関心を持つ行為をより実業務に紐づけていきたいという方は、併せて「部下のキャリアプラン」についても考えてみると良いでしょう。

参考:部下のキャリアプランシート

部下のキャリアプランシート

上の図は、上司が記入する「部下のキャリアプランシート」です。Step1の「過去」、Step2の「現在」への振り返りを経て、Step3の「将来像」をイメージ化していく流れで作成していきます。

部下に対して充分な理解と関心を持っていれば、本人に聞かずともある程度まで埋めることができるのではないでしょうか。

赤の点線枠に囲まれたStep4部分は、まさに上司から部下への協調性を発揮する行為を示す部分でもあります。この部分に明確な行動を入れるためには、Step1~3も同様に明確にしておく必要があるでしょう。

「協調性を発揮するためには、相手への関心(と理解)が必要」という理由が、このキャリアプランシートからもうかがえるのではないでしょうか。




③部下と対話の機会を設ける

部下と対話の機会を設けるイメージ

上司からの協調性を発揮していくポイントの3つ目は、「対話」です。

対話とは、単なるコミュニケーション(会話すること)ではありません。それぞれが自身の考えや意見を出し合い探求していくとともに、お互いの想い・価値観に触れ相互理解を育んでいく行為を指します。


対話とは──「それぞれが自身の考えや意見を出し合って探求をしていくとともに、お互いの想い・価値観に触れ相互理解を育んでいく行為」

例えば、部下とのミーティングの場で「上司が部下に評価フィードバックを一方的に行う」のは対話ではありません。

過去の活動を上司・部下がそれぞれの見地から振り返り、よかったことや改善点、そして学んだこと・次回に活かしたいことなどを伝えあい、新たな気づきと相手との共感を深めていけるのが対話です。

部下に対して対話を実践している上司というのは意外に少ないものです。

ここ一ヶ月または一週間のうちに、部下との対話の機会がどれだけあったかを振り返ってみてください。「対話の機会が少なかったかもしれない」と感じた方は、その機会を増やしていくことで協調性を発揮していくことにもつなげられますし、部下との関係性も深められると思います。



「対話をしたくても、部下がなかなか心を開いて話してくれない」という場合は?

「上司側から対話を持ちかけても、部下がそれに応じてくれない」という状況の方もいるかもしれません。

その場合は、まず部下の「心理的安全」(自分はここに居てもいいんだと思える安心感)を提供するように意識すること、そして相手と話す機会を持った際は「傾聴」を意識することをおすすめします。

傾聴とは、「相手に関心を持ち、相手を理解したいと願って、耳を傾けて相手の言葉を聴くこと」です。

人は、自分の話をしっかり聞いてもらえる相手に対しては、自然と安心感が芽生えて本音で話したくなるものです。信頼関係を深めていくうえでも有効ですし、相手もあなたの話を聞こうという意識を持ちやすくなります。

傾聴で相手との信頼関係を深めていくプロセス

傾聴を行う際は、以下のポイントを意識すると良いでしょう。

  • 相手を尊重し、「より深く理解しよう」と意識すること
  • 頷きや相槌、表情で、相手の「話そう」という気持ちを活性させること
  • 必要に応じて質問や確認を行い、相手が話の内容を整理する助けをすること



④相手にリクエストをすること。そして感謝の気持ちを伝えること

相手に感謝の気持ちを伝えるイメージ

上司からの協調性を発揮していく4つ目のポイントは、「相手にリクエストをすること。そして感謝の気持ちを伝えること」です。リクエストと感謝の2つはセットで意識しておくと効果的です。

まず、「相手にリクエスト」するというのは、あなたが部下に何を望んでいるのか、どうしてほしいのかをきちんと伝えることです。

「何も言わなくても伝わる、ツーカーの関係」を望む方もいるかもしれませんが、それが適うのは「相性の良さ」やすでに培ってきた「信頼関係」があるからです。部下に対して常に「言わずとも察してほしい」という態度を取るのは、上司として怠慢かもしれません。

また、部下からしても、上司が何を望んでいるのか言ってもらった方が、「自分が今何をすべきか」を明確にしやすいでしょう。いわば、上司のリクエストによって、「部下の協調性発揮の場」を創出していくのです。

上司から部下へのリクエストとしては、主に以下のものがあります。

  • 部下に任せたい、責任をもって取り組んでほしい仕事がある
  • 手伝ってほしいこと、自分の代わりにやってほしい業務がある
  • 業務の進め方や業務品質で改善してほしい箇所がある
  • 新たに獲得してほしい知識またはスキルがある

リクエストをする際は、併せて「伝え方」も意識してみてください。
例えば、「部下に仕事を依頼する」際にも、以下のような伝え方のパターンがあります。



部下に仕事をお願いする際の、リクエストの伝え方例

伝え方 部下が受ける印象
「〇〇さん、この仕事を、やっておいて欲しいんだけど」 一般的な指示または命令
「この仕事、〇〇さんと一緒にやりたいと思ってるんだ」 チームワーク、仲間意識
「この仕事について、〇〇さんの支援があると嬉しいんだけど」 頼られている、信頼されている
「この仕事、〇〇さんに任せたいと思っているんだ」 任されている、結果を期待されている

どの伝え方が望ましいかは、部下の状態、あなたとの関係性、任せる仕事の内容(難易度等)にもよります。その都度最適なリクエストの伝え方を考えてみてください。

そして、上司が部下にリクエストをしたときは、併せて以下のタイミングで「感謝の気持ち」を伝えます。

  • 部下がリクエストに応じてくれたとき
  • 部下がそのリクエストの件で相談や報告があったとき
  • 上司が部下の進捗を確認したとき
  • 部下がそのリクエストの内容を完遂したとき(または何かしらの理由で中止になったとき)

感謝は、あなたの言葉で、そして可能な限り直接伝えることをおすすめします。

「ありがとう」、「よくやってるね」、「助かったよ」、「いつも頑張ってるね」──これらは、「上司から言われてうれしいと感じる言葉」でいつも挙がってくるキーワードです。そして、感謝の言葉は部下の仕事へのポジティ感情やモチベーションの向上にも繋がります。

上司から部下に「リクエスト」と「感謝の言葉」をふんだんに提供していくことによって、信頼関係の高まりと、双方向性の協調性の発揮が期待できるのです。

まとめ)協調性は、相手との双方向の働きかけ。対話とリクエスト、そして感謝で育まれる

上司と部下に発揮されている様子

上司の立場にある人は、ときに部下が期待に応えてくれないことで本気で悩み、苦しむこともあります。そして、その苦しみの原因を「相手が協調性を持ってくれないこと」に帰することもあるかもしれません。

ですが、ここまでお話しした通り、協調性とは相手との双方向の働きかけで成り立つものです。相手の問題ではなく、上司と部下「私たち」の課題なのです。

そして、協調性は対話とリクエスト、そして感謝で育まれます。期待する効果が見られるまでに時間はかかるかもしれませんが、それを信じて待つことも、上司に求められる働きかけなのでしょう。

「人と一緒に働き、そして苦楽を共にする」──このこと自体が、とても貴重で幸せなことだと、私は思います。その果実は、時を経て熟していきます。
これから先、あなたと部下との関係と相互の協調性の発揮が少しずつでも、よりよく活性していくことを、心より願っています。

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