新型コロナウイルスに管理職としてどう対処する?
[最終更新日]2022/12/15
新型コロナウイルスの世界的な蔓延により、いま世の中は混乱の真っ只中にあります。
長期化することも懸念されるウイルス感染防止に際し、「この状況がいつまで続くのか」と気を揉んでいる人も多いのではないでしょうか。
今回はこの未曾有の事態に対し、管理職としてどのように対処していったらいいのか、講じられる策について考えてみたいと思います。
すでにテレワークの導入など対策を講じている企業の方も、やむを得ず出社せざるを得ない状況にある方も、何か1つでも参考にしていただける情報を提供できれば幸いです。
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Index
目次
新型コロナウイルスの特徴と有効とされる予防法
新型コロナウイルスについて、現在さまざまな情報が入り乱れています。
中にはフェイクニュースや必要以上に不安を煽るような情報も見られるため、誤った情報の拡散とそれに伴う社会の混乱をパンデミック(感染の世界的流行)に擬えて「インフォデミック」と呼ぶ人もいるほどです。
これまで私たち人類が経験したことのないウイルスではあるものの、科学的な知見から明らかになっていることもたくさんあります。
まずは新型コロナウイルスについて正しく理解することで、有効な予防法を講じられるようにしていきましょう。
新型コロナウイルス(COVID-19)とは?
新型コロナウイルスは、そもそもなぜ「新型」と呼ばれているのでしょうか。
コロナウイルス自体はCOVID-19より前にも6種類存在していたことが知られています。
このうち4種類は「ヒトコロナウイルス」と呼ばれ、いわゆる「風邪」を引き起こすウイルスの仲間です。
生まれてから一度も風邪をひいたことのない人はほとんどいませんので、私たちはこれまでも知らず知らずのうちにコロナウイルスに感染し、免疫を獲得してきた可能性があります。
6種類のうち残りの2種類は、動物に感染していたものが変異して人に感染するようになったウイルスです。
コロナウイルスはRNAウイルスの一種で、一重のらせん構造から成るRNAを持っています。
私たち人間を含む生物のDNAは二重らせん構造のため安定しており、容易に変異することはありません。
ところが、RNAウイルスの一重らせん構造は不安定で変異しやすく、人類が免疫を持たない新種のウイルスが発生しやすいという特徴があります。
新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真(左)・基本構造の模式図(右)
RNAプラス鎖(Positive strand RNA)が模式図に描かれている。(国立感染症研究所Webサイトより)
20年ほど前に東アジアや東南アジアを中心に流行したSARSウイルスのことを覚えている人も多いはずですが、SARSは変異した2種のコロナウイルスの1つです。
そして、もう1つが2012年に中東で流行したMERSウイルスです。
いま世界を揺るがせている新型コロナウイルスは、人から人へと感染することが新たに確認された7つ目のコロナウイルスということになります。
新型コロナウイルスの感染経路
新型コロナウイルスの感染経路は、主に「接触感染」「飛沫感染」の2つです。平常な状態の空気であれば、人から人へと空気感染しにくいと言われています。
接触感染とは?
接触感染とは「ものを触った手で目などの粘膜を触る」といった経路で起こる感染です。
ものの表面などにウイルスが付着している場合、そのものを触った手にはウイルスが付着します。
新型コロナウイルスの特徴として、ものの表面に付着してからの生存期間が長いことが挙げられます。
生存期間は数時間から、長い場合は数日間〜10日間以上にも及ぶことがありますので、「誰かが触れた可能性のある場所」に新型コロナウイルスが付着している確率は決して低くないと考えられます。
飛沫感染とは?
飛沫感染とは、咳やくしゃみ、話すときなどに発せられる微細な唾液のしぶきによって感染することを言います。
マイクロ飛沫と呼ばれる目に見えないほどの僅かな飛沫でも、ウイルスが付着して浮遊するには十分な大きさです。
咳やくしゃみをした人の周囲数メートルにはこの飛沫が漂いますので、感染のリスクとして非常に高いのです。
参考:[NHKスペシャル] マスクの効果 | 新型コロナウイルス“マイクロ飛沫感染”からわかる予防
空気感染が起こる可能性のあるエアロゾル
なお、平常の状態では空気感染はしにくいと述べましたが、トイレなどで見かけるエアタオルのように空気が勢いよく噴出され、周囲の空気が激しく拡散される状況下においては、エアロゾル感染と呼ばれる空気感染が起こる可能性があります。
新型コロナウイルスに有効とされる予防策
新型コロナウイルスの感染を予防するには、ウイルスが人から人へと感染する仕組みを理解し、感染経路を断つことが大切です。感染経路別の予防策として、次の方法が有効とされています。
接触感染の予防
- 手指から肘にかけての範囲を石鹸でこまめに洗う
- 手指のアルコール消毒
- できるだけ手で顔を触らない
- 人の集まる場所に行かない
飛沫感染の予防
- マスクをする
- 咳やくしゃみをするときはハンカチで口を押さえる
- 近距離で会話をしない
- 人が大声を出すような場所に行かない
- ソーシャルディスタンス(人同士2メートルの間隔)を守る
エアロゾル感染の予防
- トイレなどに設置されたエアタオルを使わない
- 換気を良くする
管理職としてできる新型コロナ対策——出社が必要な従業員に対して
都市部を中心に緊急事態宣言が出されるなど、感染拡大を防止するための策を国や自治体が講じています。
こうした状況下でも、業種や職種によってはやむを得ず出社しなくてはならない人もいます。管理職としては、「やむを得ない」を押し通すのではなく、できる限りの配慮や努力に手を尽くした上で、従業員の感染リスクを極力低くするよう努める必要があります。
ここでは、リスクを負いながらも出社しなくはならない従業員に対して、管理職としてできる新型コロナ対策を挙げていきます。
すでに多くの職場で実施されていることが多いかもしれませんが、見落としがないかどうか、いま一度確認してみましょう。
手洗い・手指のアルコール消毒の徹底
手洗いは接触感染予防の基本です。
洗面所には、ポンプ式のハンドソープが常備してあるでしょうか?中身を切らしていませんか?固形石鹸でも洗浄効果はありますが、不衛生になりやすいためポンプ式のハンドソープを用意しておくようにしましょう。
参考:感染症予防のための正しい手洗い方法
手指消毒用アルコールについても、オフィスの出入り口に設置しておき、入室する際には必ず手を消毒するよう徹底しましょう。社員はもちろんのこと、来客に関しても同様です。
ドアノブやPCのキーボードなど、身のまわりの手に触れやすい物品をこまめにアルコール消毒することも大切です。消毒用アルコールは品薄になりがちで、価格も高騰しています。入手しづらい場合、物品の消毒については次塩素酸ナトリウム水で代用することとも検討しましょう(手指の消毒には向きません)。
マスク(またはマスクの代替物)の使用
マスクは着用している本人の感染予防以上に、飛沫を周囲に散らさないためのエチケットです。
新型コロナウイルスは5日から14日程度の潜伏期間があるとされ、仮にウイルスに感染していても症状がまだ出ていない場合もあります。また、発症しても軽症で済む人もおり、風邪と区別がつかないことも考えられます。
体調不良などで体力が落ちている人、持病がある人、高齢者などの場合、新型コロナウイルスに感染すると重篤な症状が現れ、最悪の場合は命を落とすこともあり得ます。
職場においてはお互いの感染予防のためにもマスクの着用を励行しましょう。
マスクも手に入りにくくなっていますので、可能であれば会社で用意し、社員に配布するといった措置を講じたほうがいいでしょう。
もしマスクがない場合は、咳やくしゃみが出そうになったら必ずハンカチなどで口と鼻を押さえるなど、飛沫を周囲に散らさないようお互いに注意し合うことが大切です。
社員間の距離を適度に取り、密集させない
感染を予防するための「ソーシャルディスタンス」が2メートルと言われているように、人と人との距離を取ることは感染症対策において非常に重要です。
オフィスでもデスクが隣り合う社員同士の距離が近いと、気づかないうちに濃厚接触と変わらない状況になっている恐れがあります。
デスクを移動させて距離を保ったり、必要に応じて部屋を少人数ごとに分けたりするなど、社員間の距離を適度に取ることができるよう工夫しましょう。
閉め切った室内での会議や打ち合わせもリスクが高いため、よほど重要なものを除いて中止するほうが得策です。
どうしても必要な会議であっても参加者は必要最低限の人数に抑え、短時間で終えられるようにする必要があります。
定期的な換気
オフィスの中は空調が空気を循環させているため、ウイルスが蔓延しやすい環境になっています。
時間を決めて換気をするなど、定期的に空気を入れかえることが大切です。換気をする際には2方向以上の窓を開放し、空気が出入りする通り道を作ることを意識しましょう。
なお、空気清浄機などの製品の中には「マイナスイオンがウイルスを不活性化する」などと謳ったものが見られますが、消費者庁はこうした商品について2020年3月に表記の改善要請を実施しています。
つまり、新型コロナウイルスをはじめとするウイルス全般に対して有意な効果を発揮する製品かどうかは実証されていないケースがほとんどなのです。
「空気清浄機をつけているから大丈夫」などと安易に考えず、窓を開けて換気することを徹底しましょう。
エアタオル使用禁止
会社のトイレなどにエアタオルが設置されている場合、当分の間は使用禁止にしましょう。
「使わないでください」と社員に呼びかけるだけでなく、電源を落として使えなくした上で「使用禁止」と書いた紙を貼るなど、徹底した対処をすることが重要です。
洗面所では各自がハンカチを持参して利用するのが望ましいのですが、エアタオルを使用禁止にした手前、使い捨てのペーパータオルを代用品として置いておくのも1つの方法です。
エアタオルを使わなくなることによって、エアロゾル感染のリスクが低減できることをていねいに説明した上で実施しましょう。
検温・健康状態の報告の徹底
もし新型コロナウイルスに感染してしまったとして、症状は重い人もいれば軽症で済む人もいます。
軽症の人は「なんだか体調が思わしくない」と感じながらも、仕事を休むわけにいかないと考えて無理を押して出勤する可能性があります。とくに体力に自信がある人ほど、少々無理をしても大丈夫だと考えがちです。
さらには、ウイルスに感染していながら潜伏期間中で症状が出ていないということも考えられます。万が一にも感染している場合を考え、日々の健康状態に対して今まで以上に社員一人一人が気を配る必要があります。
外出の自粛が要請されている現在の状況下において、やむを得ず出社してもらう社員については毎朝検温して記録してもらうなど、面倒でも体調管理を確実に実施してもらいましょう。
また、少しでも体調が悪い、ふだんと違うと感じた場合は、上長へすみやかに報告してもらうことが大切です。
新型コロナウイルスが検疫法で定められた指定感染症であることを伝え、体調の変化に気づいた場合は決して無理をせず報告してもらうよう周知しましょう。
可能な範囲で会社に提案しておきたい対策
管理職として現場レベルで実施できる対策はできる限りしておきたいところですが、同時に可能な範囲で会社に提案しておきたいこともいくつかあります。
これまで実現が難しかったことだとしても、「無理に決まっている」と決め込んでしまわず、こうした状況だからこそ可能な限りの対策を講じるよう、上層部に真剣に検討してもらいましょう。
テレワーク(在宅勤務)の励行
これまで毎日オフィスに出社して仕事をしていたわけですから、在宅勤務に切り替えるのはハードルが高いと感じる職場が少なくないはずです。
セキュリティ上、どうしても出社しなくてはならないケースもあるかもしれません。
一方で、会社に来ないとできないと思い込んでいただけで、技術的にはテレワークでも実施可能なことが見つかることもあります。
たとえば、会議や打ち合わせはビデオチャットを利用すれば遠隔で実施できたり、ちょっとした相談事であればチャット上でやりとりできたりします。
実際に在宅勤務を導入した企業では、「承認印が必要な書類の処理が滞る」「社外からイントラにアクセスできない」といったことが問題になりやすい傾向があるようです。
平常時であれば省略できない手続きや、セキュリティガイドライン上不可能なことであっても、緊急事態の状況下では特例で許可してもらうなど、柔軟な判断を下してもらえるよう働きかけていきましょう。
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時差通勤・時短勤務の実施
公共交通機関を利用して通勤する人が多い場合、ラッシュ時の混雑した車内は感染リスクが高い条件がいくつも重なる環境となります。
やむを得ず出社しなくてはならない場合も、できるだけ通勤のピーク時間帯を避けられるよう、時差通勤や時短勤務の導入を提案してみましょう。
時差通勤や時短勤務の実施によってオフィス内に一度に集まる人数を減らし、時間帯を分散させられる効果も期待できます。
人が密集する場に身を置くことは、自分自身がクラスターとなってウイルスを拡散させてしまうリスクを負うことにもなりかねません。
ふだん定刻での出社を厳格に義務づけている職場でも、緊急事態の状況下においては特例として認めてもらうよう掛けあってみる価値はあるはずです。
子どもの世話が必要な社員への対応
従業員の中には、子どもの学校が休校になり自宅で世話をする必要がある人も出てくるはずです。
とくに保育園の場合、在宅勤務が可能になることで子どもを預かってもらえなくなってしまう場合もあります。
在宅勤務は一時的なことかもしれませんが、「在宅勤務ができる職場なら、保育園に預けるのは認められない」と判断されてしまうと、今後の勤務に支障をきたす恐れもあります。
在宅勤務に切り替えて子どもの世話をしている従業員宛てに電話があった場合、「在宅勤務をしております」ではなく「本日は社外におります」と対応するなど、細やかな配慮が必要になることを部署内で周知しましょう。
また、子どもの年齢によっては、仕事中だと言い聞かせるのが難しいこともあり得ます。
子どもの世話をしながら仕事をすることの大変さをよく理解し、他の従業員と不公平になることをあまり気にしすぎないようにしましょう。今後のキャリアを長い目で見れば、子どもが幼い時期は限られた期間のことです。
必要に応じて機転をきかせ、柔軟に対応してもらえるよう、会社にも働きかけていきましょう。
部下の意欲・働きがいなどメンタル面でのケア
新型コロナウイルスへの対処となると、仕事の進め方に関する仕組みやルールの構築に意識が向きがちですが、忘れてはならないのが部下の意欲・働きがいといったメンタル面でのケアです。
とくに在宅勤務や時差通勤といった、これまでにない試みをしていく場合、思わぬところで部下やチームのメンバーに負担をかけてしまうこともあり得ます。
世の中が緊迫した状況だからこそ気を配っておきたい、部下の意欲・働きがいに配慮が必要な点をまとめました。
マイクロマネジメントに陥らないように注意
在宅勤務や時差通勤を認めることで、社員1人1人がより自律的に行動し、責任をもって仕事を進めることが求められます。
とくに在宅勤務となると、手を抜こうと思えばできてしまう環境となるため、管理職によっては逐一細かな報告をさせるマイクロマネジメントに陥ってしまう場合があります。
「仕事の開始と終了時刻を正確に報告」「その日にこなす予定の仕事と実際に完了した仕事を報告」といったように、仔細にわたる報告を義務づけられてしまうと、部下としては「信頼されていない気がする」「ここまでしないとサボると思われているのか・・・」といったネガティブな感情を抱いてしまう可能性があるのです。
1人1人が組織の中で重要な役割を担っていること、信頼して任せたいと考えていることを、今一度しっかりと伝え、マイクロマネジメントに徹しなくても仕事がきちんと回る体制を作っていきましょう。
中長期的な仕事の計画や組織としてのビジョンを丁寧に伝える
新型コロナウイルスの感染が拡大するにつれて、さまざまな産業に影響が及んでいます。自分の勤務先はどの程度影響を受けているのか、経営は本当に大丈夫なのか、誰しも少なからず不安な気持ちになることでしょう。
こうした心境のとき、「いま目の前のことをどう乗り切るか」という視点も大切ですが、同時に「近い将来、事態が好転しているイメージを持つことができるかどうか」という点も非常に重要になります。
先が見えないウイルスとの闘いだからこそ、自部署の中長期的な仕事の計画や組織としてのビジョンを丁寧に伝え、先を見てやるべき仕事を着実に進めていくことに気持ちを向けていきましょう。
間違っても、管理職自身が「うちも危ないかもしれない」「大変なことになった」などと不安を煽る発言をしたり、動揺する素振りを見せたりするべきではありません。
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在宅勤務など、これまでとは異なる働き方へになることで、部下としてはその期間中はどのように評価されるのか、今後のキャリアはどうなっていくのか、といったことに不安を抱えるケースもないとは言えません。
部下が中長期的な展望を持って働いていくことができるよう、個々の目標や長いスパンで実現して欲しいことなどを部下との間で共有しておくことが重要です。
また、企業の評価制度は出勤してオフィスで働いていることを前提に設計されているケースがほとんどです。
必要に応じて評価方法を見直したり、場合によっては補足の評価項目を設けたりするなどして、この緊急事態下で仕事に創意工夫を凝らして成果を挙げた人が評価される仕組みにしていくのが理想です。
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まとめ)部下の不安・不満の芽を見過ごさないよう十分注意を!
新型コロナウイルスへの対応は、どの企業も手探り状態の中、やれる限りのことをやっているという状況でしょう。
いつ収束して以前の生活を取りもどせるか見えない今、経営者や管理職が不安を感じるのと同じように、部下・社員も不安や不満を抱えやすい心境になっていると考えられます。
管理職が率先して正確な情報をキャッチし、対処できる限りの手をスピーディに打っていきましょう。
同時に、部下の不安や不満の芽を見過ごしてしまうことのないよう、身近なメンバーの様子に気を配っていく必要があります。
管理職にとって非常に大変な時期ではありますが、こうした時だからこそ今まで以上に世の中全体の動向から身近な人間関係まで、幅広い視野をもって注意を払っていきましょう。
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