管理職・マネージャーなら知っておきたい「キャリアの描き方」と「計画された偶発性理論」

[最終更新日]2019/08/06

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仕事において「キャリア」という言葉は一般的に浸透していますが、その意味や定義を正しく答え、描き方を伝えられる人は少ないかもしれません。

しかし管理職やマネージャーとなれば、部下にキャリアについての指導を行い、仕事における将来の可能性を示す必要もあるでしょう。

この記事ではそんな管理職やマネージャーが把握しておきたいキャリアの描き方について解説し、その意味や実態に迫っていきます。

キャリアの本質を理解した上で部下の未来を導けるように、この機会に本格的なキャリアの描き方を一緒に考えてみましょう。



Index

目次

キャリアを描く前に、まずは「キャリア」自体の意味を押さえておく

キャリアを描くためにはまず「キャリア」そのものについて理解し、意味を把握する必要があります。

部下に対してキャリアアップを促す際はもちろん、自分自身のこれからを考える上でも、キャリアを知ることは重要です。

普段の仕事時ではなかなか想像する機会を持てないため、まずはキャリア自体に注目してその言葉の本質を探ってみましょう。



「キャリア」とは何か

キャリア=人生について考えるプロセス

かつてのキャリアといえば、「積み重ねてきた経験」や「仕事における実績」と称されることが多かったです。
しかし今では仕事に関すること以外にもさまざまな場面で使われるようになったため、その意味や定義は現在進行形で広がりつつあります。

結果的に今は「キャリア=人生そのもの」「人生における仕事の側面」と捉えることもでき、キャリアを「人生について考えるプロセス」と説明することも可能です。

そういった人生につながるほどの柔軟性を持つことが、現代のキャリアという言葉が持つ特徴だといえるでしょう。

アメリカのキャリア研究者であるドナルド・E・スーパーは、「人々が生涯をかけて追求する、社会的な地位や業務の系列」を個人のキャリアとして定義しています。

キャリアという言葉を職業や仕事だけに当てはめるのではなく、人間関係や社会的な役割にまで発展させたのが、このD.E.スーパーの理論の特徴です。

スーパーは「ライフステージ」(状態・環境)と「ライフロール」(役割)という2つの軸によって、キャリアを社会的な視点で捉えました。

彼の理論によるとキャリアとは「個人が生涯で果たすべき一連の役割とその組み合わせ」であり、言うならば「社会的なアイデンティティ」と呼ぶことができそうです。

職業や仕事を対象とするだけではなく、多種多様な面を持つという事実を把握することが、現代のキャリアについて知る第一歩となるでしょう。



キャリアイメージ、キャリアパスはひとそれぞれ。あなたと部下でも違うもの

キャリアという言葉にはさまざまな要素が詰め込まれているため、その意味や重要性は個人によって変化します。

そのため将来を想像するキャリアイメージや、具体的な地位や職務への道筋となるキャリアパスは、「個人」がそれぞれ自由に選択できるものなのです。

本来のキャリアを重視するのであれば、マネージャーや管理職は部下に考えを押し付けることを避け、自由な選択を促すことが必要となるでしょう。

よく仕事上の経歴や出世を軸にして、キャリアの勝ち負けを競う習慣が見られますが、本来はその良し悪しを外部が決めることはできません。

管理職やマネージャーであるのならなおさら、「キャリアそのものには上も下もない」ということを理解し、多様性を尊重することが大切になります。

マネージャーや管理職である自分自身と、部下の持つキャリアのイメージは異なるため、同じ職場にいてもそれぞれが目標とする方向性は変わってきます。

そのためキャリアに対する取り組みを強制するのではなく、部下からキャリアについて自発的に考えさせ、自分にとって最良の選択をしてもらうことが求められるのです。

そのサポートが上司としての役割であり、部下の将来と企業の未来を向上させるきっかけになるでしょう。

事例:Aさんのキャリアについて考える

〇〇さんがそうだから、自分もそうしよう。

キャリアについて基本的な知識をつけただけでは、具体的な未来図を描くことはできません。

こちらに記載するAさんという人の経歴を見てみると、キャリアをイメージすることの難しさがわかるでしょう。

IT関連の職場で働く女性Aさんは、今の会社に就職してから自分のキャリアについて多少の考えを持っていました。

しかしそれはあくまで周囲の模倣だったため、漠然とした状態で留まっており、「自分らしさ」や「自身の強み」を分析した結果ではありません。

「先輩の〇〇さんがそうだから、自分もそうだろう」と考え、その人を参考に勉強スケジュールを立て、将来の準備をしていたのです。

それでもそのキャリアプランは自分にとって理想的であり、本人は満足してやがてやってくる未来を待ち望んでいました。

しかしその後職場の都合によって急遽違う業務を担当することになり、想定していたキャリアの方向性にズレが生じます。

担当部署の上司はキャリアについて「こうしなさい」と断言するタイプだったため、自分が納得していた将来ではなかったAさんは上司と衝突し、再びの異動によってさらにキャリアが変わることになりました。

さらにその後Aさんは結婚することになり、出産のため一時仕事を離れることに。

数年後仕事に復帰した際にはかつての同僚と仕事上の地位や意識の差ができてしまい、モチベーションを保てずに結局は退職の道を選ぶことになりました。

Aさんはキャリアについて考えていたのに、さまざまな要因によって想定していた将来からかけ離れた位置に着地してしまいました。

紆余曲折は人生につきものであるため、Aさんのようにキャリアの道筋が思わぬ展開によって変更されることは、決して珍しくありません。

Aさんにも真剣にキャリアを考えず、たくさんのパターンを想定していなかったという点は見られるかもしれませんが、このように「外側からくる変化によって予期せぬ未来を強制される」ことに、皆さんは何を感じるでしょうか。

なぜAさんのキャリアは思った通りに進まなかったのか、次章で具体的な理論を元に考えてみましょう。

キャリアは、思い描いた通りに実現しない?「計画された偶発性理論」について

先に紹介したAさんのキャリアプランは、理想的なイメージを描くことばかりに集中した結果、人生の不確かさを見誤り、柔軟な対応ができなかった──と言うこともできるかもしれません。

キャリアが意図した方向に進まないことは往々にして起こりえます。そして、その「不確かさ」を意識したキャリアをイメージして自身のキャリアを見据えることを「計画された偶発性理論」といいます。

現実的なキャリアを描くには、この計画された偶発性理論について知ることが重要です。

キャリアが私たちが「キャリアは思った通りにならないこと」を受け入れることは、同時にキャリアにおける「偶発性の大切さ」を意識することに繋がります。



「計画された偶発性理論」とは

「計画された偶発性理論」

計画された偶発性理論とは、スタンフォード大学で研究を行なったジョン・D・クランボルツ教授が提唱したキャリアに関する理論です。

「個人が経験するキャリアの8割は、予想しない偶発的な出来事によって左右される」と考え、「その偶発性を有効利用して、計画的に導くことでキャリアアップを図る」とするのが主な内容です。

変化が起こりやすい現代において、この理論を元に偶発性を見込んでキャリアを考えることが、重要な一手になると考えられるのです。

たとえば「仕事で役立つ新しい技術や機器が開発された」「働き方が変わって社内の仕事を外注に回すことになった」といった偶発性によって、突然職場環境が大きく変容してしまう可能性はこれからも十分にあります。

そうなれば数年前では現実的だったキャリアプランも、その価値が改めて問われることになりかねないのです。

しかしキャリアの計画時に計画された偶発性理論を取り入れておけば、そういった際にも慌てず自身の未来を守ることができます。

たとえば……
新しい技術が開発された→自身の学習対象に入れて、誰よりも早く仕事に活かせるようにする
労働環境が変わった→自分が不満に思っていたことをついでに改善させる

そういった自身の行動によって積極的に変化を取り入れていくのが、計画された偶発性理論の本質です。

計画された偶発性理論はその偶発性を想定しつつ利用することが目標となるため、偶発性そのものを避けるわけではありません。

むしろ偶発性を自分のキャリアに利用する、ポジティブな考え方が魅力の理論となるのです。



計画された偶発性理論は、「今、現在(ここ)」を大切にする概念でもある

計画された偶発性理論を知ると、不確定な未来のためにキャリアを作成する意味がわからなくなるかもしれませんが、この理論は決してキャリアをイメージすることを否定するものではありません。

キャリアの描き方に偶発性をプラスした上で、「今、現在」を大切にすることを促す概念なのです。

今現在を大切にするとは、予期できない未来を待つのではなく、偶発性に対してアプローチすることを意味します。

計画された偶発性理論の提唱者であるクランボルツ教授は、好奇心、持続性、楽観性、柔軟性、冒険心を行動指針とし、こちらからあえて偶発性を引き寄せ、今できることをすべきだと主張しているのです。

今と未来をつなぐことが、計画された偶発性理論を活用してキャリアイメージを形成するポイントになるでしょう。

偶然によって生じるアクシデントは、何もキャリアに悪影響を与えるだけではありません。
きちんとした準備と心構えができていれば、偶然の出来事はチャンスに変換できるのです。

受け身でいるのではなく、あらゆる偶然を今現在の計画に組み込むことが、キャリアを描く際にはメリットになるでしょう。

管理職・マネージャーが知っておくと便利な、キャリアの描き方

キャリアが持つ特性が把握できたところで、実際に管理職やマネージャーが知っておくべき「キャリアの描き方」に注目してみます。

何を重視してキャリアを描くべきなのか、どんな基準がキャリアを支える主軸になり得るのか。

そういったポイントをチェックしてから、部下にキャリアの作り方をレクチャーしてみましょう。

ただ「キャリアイメージをしてみてください」では、途方に暮れてしまう人も多くなってしまいます。

作成しやすくなるテンプレートを提示することが、自分自身のキャリア作成に興味を持つきっかけにもなるので、まずは会社内で使える方式をチェックしてみてください。



これからのキャリアを描く際は、当人の「強み」や「関心を持てること」を大切にする

価値発揮を高めていく「ハリネズミの概念」人は、MUST(すべきこと)、CAN(できること)、WILL(したいこと)の意識が重なるポイントで、価値発揮しやすくなる

キャリアの作成時には、「ハリネズミの概念」と呼ばれる指針が非常に役に立つでしょう。

ハリネズミの概念とは、ジム・コリンズの著書「ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則」に書かれている理論のことで、古代ギリシャの寓話であるキツネとハリネズミの話が元になっています。

知性・身体能力とオールマイティな能力を持ったキツネは、それら能力がはるかに劣るハリネズミを捕らえることはできません。ハリネズミは自身のトゲを向けるだけで、キツネを退けることができるのです。「トゲを向ける」という、自分のできることに特化したハリネズミの生き方は、「突出したひとつの力を活用している」と表現することができるでしょう。

そして、この「突出した強み」を大切にすることが、生きる上での最大の武器になるとコリンズは語っているのです。

ハリネズミの概念を人間の強みに置き換える際は、「MUST(すべきこと)」「CAN(できること)」「WILL(したいこと)」の3点を支えとします。そして、この概念は個人のキャリアを考える際にもふんだんに利用されます。

具体的なキャリアの方向性がわからないときや、自分にとって何が将来につながるのか把握しきれないときには、この理論が道しるべとなるでしょう。

MUSTとCANとWILLをバランスよく大切に考え、すべての要素が共通する部分を自分の長所として特化することが、個人のキャリアを素晴らしいものへと変えていくのです。

ハリネズミの概念を頭に入れてキャリアを形成し、進むべき未来の方向を定めることは、個人の人生を理想的な形へと収めるひとつの手段になるでしょう。



参考:キャリアのイメージ出しシート

①あなたが今、周囲から求められていることは──?② あなたが、今できることは?もしくはこれからできるようになりたいことは──?③ あなたが今、やりたいことや、関心のあることは──?④①~③を踏まえ、今あなたがやってみたい・目指していきたいことは?

上記の図を使ってみると、ハリネズミの概念が持つスタイルがわかりやすくなるため、キャリアのイメージを抽出しやすくなります。

こちらのシートの記入部分に従って、自分なりのMUST、CAN、WILLを考えてみたり、部下に伝えてみると良いでしょう。

どの部分が一番重要というわけではなく、ただ自分の思うキャリアに目を向けて、正直な内容を書くのがコツです。

先に紹介した計画された偶発性理論も意識して、今現在を大切にすることもポイントです。

今という時間は刻一刻と変化するものなので、仮にここに書いた内容が今後変わっても問題はありません。

ただ単純に、これを書いている今の自分がどうありたいのか、どうなりたいのかを想像することが、自分だけのイメージシートを完成させることにつながるのです。



参考:ある若手営業職の方が記入した、キャリアのイメージ出しシート

①あなたが今、周囲から求められていることは──?営業職として、売上の数値を出すこと。商品や業界の知識を高めること。② あなたが、今できることは?もしくはこれからできるようになりたいことは──?営業時の交渉力、コミュニケーションスキル、調整力。③ あなたが今、やりたいことや、関心のあることは──?商品の品質改善。もっとお客様から満足してもらえる為の提案をしたい。④①~③を踏まえ、今あなたがやってみたい・目指していきたいことは?企画営業。営業だけでなく、商品企画業務も行い、 より良い商品の提案や企画にも携わりたい。

上記は、まだ若い営業職の方が記入したイメージシートの実例です。

自身の仕事内容を振り返りながら、目標となるポイントを明確に捉えているため、キャリアアップの道しるべとして機能することでしょう。

しかし一方でこちらのシートは若干「近視眼的」な位置付けとなっているため、もっと時間をかけて突き詰めればより遠い未来を含めた「中長期的」な視点を形成できると思われます。

管理職やマネージャーはそういった点を確認して、さらに高クオリティなキャリアイメージの構築を促すこともできるでしょう。

キャリア形成に役立つ情報をまとめる際には、客観的な視点が役に立ちます。

本人では気づいていない部分や過剰に思っている点を補ってサポートすることで、よりシートの充実度を高めることができるのです。

しかしこのシート内容を否定したり、ダメ出ししたりすることは避けてください。
本人の意思を無視して無理やり中長期的な内容を描かせても、人生のプラスにはなりません。

ただ否定することはキャリアの持つ自由の概念や計画された偶発性理論の重要性から遠ざかるだけなので、あくまでこのシートを認めつつ、中長期的な視点の作成を別の機会に作ることを勧める形を意識しましょう。

複数回のやり取りの中で時間をかけてシートを洗練させていくことが、キャリアプランの充実につながるのです。

まとめ)キャリアを描くことは人生を作るきっかけになる!

キャリアについて考え、それを実際に描くことは、人生を形作るきっかけになります。

仕事はもちろんプライベートをも向上させることになり得るので、キャリアの構築が今後の時間をより充足したものにしてくれるでしょう。

この機会に部下を持つ管理職やマネージャー職の方々は、キャリア形成の大切さを伝えてみることをおすすめします。

淡々と目の前の仕事をこなすのではなく、意義を持って労働に勤しむサポートとなるので、ぜひ一度部下と共に自分自身のキャリアを描くことに挑戦してみましょう。






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