応募者体験はなぜ重要?応募者と企業の関係性の変化を捉えよう

[最終更新日]2021/02/18

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応募者体験はなぜ必要?

欧米の採用市場では“Candidate Experience”という言葉が重視されるようになりつつあります。

Candidate Experienceは「応募者体験」「候補者体験」などと和訳されます。優秀な人材を確保する上で欠かせない視点とされていますが、日本においても売り手市場の業界は急速に増えつつあり、人材確保は喫緊の課題となっています。

今回は、この「応募者体験」について解説していきます。応募者体験の基本的な概念から、なぜ企業にとって重要なのか、具体的にどうすれば応募者体験を向上させられるのかを考えていきます。

「応募者体験」という言葉自体はあまり馴染みがないように感じた人も、今後の人材採用市場においてより重要になっていく可能性の高い概念ですので、ぜひ理解を深めてください。

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Index

目次

応募者体験(Candidate Experience / CX)とは?

はじめに「応募者体験とはどのような概念の言葉であるか」について整理しておきます。

応募者体験と似た言葉として「従業員体験」や「応募者エンゲージメント」がありますが、これらの概念と異なる点についても解説していきます。まずは応募者体験について理解を深めていきましょう。




応募者体験の基本的な考え方・概念

体験イメージ

UX(User Experience=ユーザー体験)という言葉を聞いたことがある人は少なくないはずです。
製品やサービスを通じてユーザーが得る体験のことを指し、ユーザーにとっての利用体験を向上させるにあたって重要な考え方とされています。

応募者体験(Candidate Experience / CX)は、UXの考え方を人材採用に当てはめた概念です。

求人広告や企業Webサイト、応募プロセス、企業説明会、面接、選考の結果通知、内定通知、さらには入社初日に受ける印象までを含めた、応募者にとっての総合的な体験を指します。
応募者が企業と接点を持つ機会があれば、それらはすべて応募者体験に関わっていると考えていいでしょう。

これまで多くの日本企業は、応募者を「選考する」側に立ってきました。
しかし、人材採用が難航する企業が少なくない昨今では、応募者体験の質を向上させることが採用活動を成功させる上で欠かせない要素となりつつあるのです




従業員体験(Employee Experience / EX)との違い

違いイメージ

応募者体験とよく似た考え方に「従業員体験」があります。従業員が働く中で得たあらゆる体験を指す言葉で、就業を通じて感じたことや考えたことなども含まれます。

これまでも「社員を大切にする企業」といった概念は存在していましたが、人材の流動性が高まり、かつ情報の開示が進んだ現代においては、いっそう従業員体験の重要性が増していると言えます。

現にアメリカでは、インターネット上で「Employee Experience+企業名」で検索をかけると、従業員から寄せられた膨大な量の投稿を閲覧することができます。従業員が勤務先に対してどのような感情を抱いているかが、採用活動や企業の社会的価値に大きく関わっているのです。

これに対して応募者体験は、従業員になる以前の応募段階での体験を指す点が異なります。入社前から入社したばかりの段階は応募者体験、入社後は従業員体験と呼ばれていると考えていいでしょう。




応募者エンゲージメント(Candidate Engagement)との違い

エンゲージメントイメージ

応募者体験としばしば混同されがちな概念として「応募者エンゲージメント」が挙げられます。
応募者エンゲージメント(Candidate Engagement)とは、応募者体験を測定する手法のことを指します。

たとえば、求人媒体を通じて送付したDM経由でのエントリー率や、企業説明会後の応募辞退率など、企業によって用いる指標はさまざまですが、応募者体験の結果を測定して把握するという点では共通しています。

応募者体験を収集した結果として取り組むことができるのが応募者エンゲージメントであり、両者は同列ではないことを理解しておく必要があります。

一方、応募者エンゲージメントを理解するには応募者体験への理解は欠かせません。
応募者エンゲージメントを実現するためにも、応募者体験についてきちんと把握しておく必要があるのです。

応募者体験はなぜ企業にとって重要なのか?

欧米を中心に注目を集めている応募者体験ですが、なぜ近年になって重要視されるようになったのでしょうか。

応募者体験に配慮する目的は「応募者に良い印象を与える」「応募者に良い企業と感じてもらう」ことにあります。応募者にこうしたイメージを持ってもらうことが企業にとって重要な理由について解説していきます。




内定承諾に影響を与えるから

内定承諾イメージ

応募者体験がもたらす最も直接的な影響は、内定後の承諾率でしょう。
IBMが2017年に公開した分析レポートによれば、応募者体験に満足した人の内定承諾率は38%高かったという結果が出ています。

“People who are satisfied with their candidate experience are 38 percent more likely to accept a job offer”
(応募者体験に満足している人は、内定を受け入れる可能性が38%高い)

IBM Smarter Workforce Institute | The far-reaching impact of candidate experience
https://www.ibm.com/downloads/cas/YMOARJJG

逆に、応募者が選考フローの中で「イメージと違っていた」「良い企業と思えなかった」と実感すると、採用に至っても内定を承諾しないケースがあります。原因の分からない内定辞退が続くようなら、応募者体験を根本的に見直す必要があります。

応募者体験が損なわれる原因はさまざまですが、一例として以下の要因が考えられます。

《応募者体験を損なう原因の一例》

  • 求人の記載内容に不明瞭な点が散見された
  • 応募後、企業からの返答が著しく遅かった
  • 企業説明会の内容や雰囲気が魅力的ではなかった
  • 来社した際の対応が良くなかった
  • 面接での質問内容や雰囲気が威圧的と感じた
  • 面接日が選べないなど応募者への配慮が欠けていた

人材を募集する企業側から見ると、1つ1つはささいなことに感じられるかもしれませんが、応募者側から見た場合、わずかな不信感が企業イメージを大きく損なうこともあり得ます

その結果、最終的に内定を承諾する段階になって辞退を選択する応募者が発生している可能性が少なからずあるのです。




入社後の定着率に影響を与えるから

定着率イメージ

採用選考は企業と応募者のファーストコンタクトの場となります。第一印象がその後の人間関係に大きな影響を及ぼすように、応募者にとって採用選考時に抱いた印象が入社後の企業イメージにも影響をもたらす可能性は十分にあるでしょう。

はじめに好印象を抱いて入社した応募者は、入社後も企業の理念や文化に好意的な姿勢を保ちやすくなります。

実務に携わる中で困難な状況に直面したとしても、自らが属する組織や共に働く従業員のために役立ちたいと考え、困難を乗り越えられる確率が高まるのです。

一方、採用選考中に抱いたわずかな不信感が入社後に増幅し、「やはりこの会社はどこかおかしい」「どうも共感できない」と感じると、近い将来退職するという選択をする原因にもなりかねません。
このように、応募者体験は従業員の原体験となり得るものであり、入社後の定着率にも影響を与えていると考えられます。




潜在的に売上にも影響を及ぼすから

売上イメージ

応募者体験について考える上で見過ごしてはならないのが、採用に至らなかった応募者の体験です。従業員として同じ職場で働かないとしても、彼ら・彼女らは一般の消費者であり続けます。

先に挙げたIBMによる分析結果では、応募者体験に満足した人は、満足しなかった人に比べて企業の顧客になりたいと回答した割合が2倍以上も高かったとされています

“The desire among candidates to be a customer of the hiring organization is higher among those who had a good candidate experience (53 percent) compared to those who had a poor candidate experience (just 25 percent say they want to be a customer”
(採用する組織の顧客になりたいと考える応募者の割合は、良い経験をした応募者(53%)の方が、悪い経験をした応募者(わずか25%)に比べて高くなっている)

IBM Smarter Workforce Institute | The far-reaching impact of candidate experience
https://www.ibm.com/downloads/cas/YMOARJJG

応募者体験が与える影響は、応募者自身に限ったものではありません。応募者の背後には友人や家族がいます。応募者から聞かされた企業の対応や選考時の様子が、企業イメージを形成する上で重要な役割を果たすこともめずらしくないのです。

同じくIBMによる分析では、応募者体験について60%以上の人が友人や家族に話していたという結果から、「応募者体験は拡散される」と提言しています。

“Experiences are amplified: a majority of candidates (over 60 percent) talk about their experiences with friends and family”
(体験は拡散される:大多数の応募者(60%以上)が友人や家族に体験について語っている)

IBM Smarter Workforce Institute | The far-reaching impact of candidate experience
https://www.ibm.com/downloads/cas/YMOARJJG

このように、応募者体験は潜在的に将来の売上にも影響をもたらしていくのです。応募者体験が採用選考に限らず、企業活動全般に関わる重要な要素となっていることが分かるはずです。

応募者体験の質を向上させるための具体策

ここまで、応募者体験の重要性について解説してきました。では、実際の採用業務において応募者体験の質を高めるにはどうすればいいのでしょうか。

多くの企業において、採用業務に携わっている従業員は複数いるはずです。
面接などで応募者と直接対面する従業員だけが応募者体験を高めようとしても、応募者への連絡や来社時の対応など、さまざまな面が応募者の目に触れることになります。

応募者体験の質を向上させるには、特定の採用プロセスだけを改善するのではなく、採用活動全体の質を高める必要があります。




応募者体験の重要性について周知徹底を図る

周知徹底イメージ

応募者体験という概念は、まだ日本の産業界にあまり浸透していません。従来のように「企業は応募者を選考する立場にある」といった感覚のままでは、応募者体験の質を高めるための施策とは程遠いものになってしまう恐れがあります。

そこで重要になるのが、採用業務に直接関わる担当者はもちろんのこと、応募者の目に触れる可能性のある従業員に対して応募者体験の重要性を周知していくことです。

応募者体験が与える影響の大きさを共有する

「応募者体験の質を向上させる」という目標を掲げた場合、おそらく多くの人は「面接でにこやかに接する」「受付の担当者に注意を促す」といった対応策をイメージするでしょう。
こうした対応も必要になるのは間違いありませんが、表面的な印象を改善するだけでは応募者体験の質は向上しません。

前項で解説してきたように、応募者体験は内定承諾率を高めるだけでなく、入社後の定着率や潜在的な売上にも影響を与える重要な概念です。
自身が入社してから年数が経っている従業員もいるはずですので、応募者が採用選考に際して何を感じ、どのような印象を持ち得るのか、今いちどていねいに伝えるための時間を確保しましょう

また、応募者体験という概念や、与える影響の大きさについて社内で共有し、全従業員が採用活動に関心の目を向ける状況を作っていくことが大切です。



好印象を与える対応について現場レベルで改善策を考える

選考フローには、複数の従業員が携わるケースがほとんどでしょう。
あるプロセスの担当者が応募者体験に慎重に配慮していたとしても、別のプロセスで応募者の印象を悪くするような対応をしてしまうと、応募者にとって企業全体の印象が悪化してしまう可能性があります。

たとえば、求人サイト経由の応募に対して、どのような内容の自動返信メッセージが送られているでしょうか。「求人媒体の運営会社が適切に設定してくれるはず」と決め込まず、応募者の目線で適切なメッセージになっているかどうか必ず確認しましょう。また、面接選考の案内はどのような文面を送信しているでしょうか。

面接の日時や場所といった必要最低限の情報だけでなく、当日の所要時間や面接で確認したい項目、担当する面接官の役職など、応募者が事前に把握しておくことで役立つと思われる情報は可能な限り開示しましょう。

こうした改善策は、現場レベルで能動的に取り組んだほうがうまくいくことが多いものです。
トップダウンで指示するのではなく、応募者体験の重要性を理解してもらった上で、現場レベルで改善策を考えてもらいましょう。




応募者ジャーニーマップを作成する

応募者体験の質を高めるには、応募者の目線で選考フローを見直すことが非常に重要です。
そこで役立つのが、応募者が実際に応募してからどのような体験をするかを図示した「応募者ジャーニーマップ」です。

応募者ジャーニーマップ(例)

https://hrtechnavi.jp/terms/about-candidate-experience/

なぜ応募者ジャーニーマップが重要な役割を果たすのか、どのように活用すればいいのか、次の3つの観点で考えていきましょう。



選考フローの各プロセスを可視化する

応募者にとって、求人に応募してから採用が決まるまでの期間は決して短いものではありません。
選考する側の企業としては可能な限り迅速に対応しているつもりでも、選考の結果を待つ側としては「結果がなかなか通知されない」と感じることもあるはずです。

応募者ジャーニーマップを作成することで、応募者の目線でどのような選考フローを辿ることになるのか確認しやすくなります。

また、選考フローが可視化されることによって、どのプロセスで時間がかかりやすいのか、応募者を待たせているのはどのプロセスなのかが見えてくるはずです。
この「待ち」の状態をできるだけ減らすことが、応募者体験の質向上へとつながります。



応募・選考後の連絡・フォロー方法を見直す

応募者体験を考える上で重要になるのが、応募や選考後にどのような連絡・フォローを入れるか、という点です。

選考はできるだけすみやかに進めるのが望ましいものの、応募状況によっては時間を要することもあるはずです。時間が必要な場合は正直に伝え、応募者が軽んじられていると感じることのないように配慮しましょう。

選考の結果、採用を見送ることになった場合も、ていねいな対応を心がけるべきです。
不採用だからといって定型文のメールを送信して済ませるのではなく、面接で挙がったエピソードを添えるなど、個々の応募者をきちんと見ているというメッセージを伝えましょう。

可能であれば、差し支えない範囲で採用基準を満たさなかった点や意思決定に至った経緯を伝えるのも1つの方法です。
基準を満たせば再応募が可能と分かれば、応募者の側でも「この企業と完全に縁が切れた」とは感じないはずです。



内定から勤務開始日までのシナリオを共有する

内定を出してからも、内定辞退を防ぐための施策は入社初日を迎えるまで続けるべきです。
定期的に連絡を取り、入社前に目を通してほしいメディアの記事を共有したり、可能であれば社内報を送付したりと、できることはいくつもあるはずです。
内定者との懇親会を企画し、一緒に働くことになる社員との顔合わせの機会を作ってもいいでしょう。

こうして応募者体験の質を高めていくと、入社初日には期待が高まった状態で出勤してくれるはずです。
期待を裏切ることのないよう、勤務開始日には万全の準備を整え、全社員が「迎え入れる」という意識で対応するでしょう。
このように、内定から勤務開始日までのシナリオを社内で共有しておくことが大切です。




事後の分析を行う

分析イメージ

応募者体験を考える場合、応募者の目線でさまざまな配慮を払うことに主眼が置かれますが、事後の分析や総括を行っておくことも重要です。
採用予定人数が確保でき、採用活動が一段落すると安心してしまいがちですが、「無事に終わったので問題ない」と片付けてしまうのはあまりにも性急です。

応募者が実際にどう感じたのかフィードバックを得た上で、結果を分析していく方法について確認しておきましょう。

採用の各ステップで要した時間を振り返る

採用活動がいったん落ち着いたところで、再び応募者ジャーニーマップに立ち返りましょう。
選考フローの各ステップで実際に要した期間を振り返り、総括するためです。

事前に立てた仮説通りに進まなかった場面や、想定していた以上に時間を要したプロセスも存在するでしょう。計画とのずれが生じた要因を明らかにし、改善策を講じておくことが重要です。

選考フローごとに要した時間は数値化されているため、検証しやすい要素の1つです。
採用担当者の体感や記憶に頼るのではなく、送受信したメールの履歴などをもとに事実ベースで検証していきましょう。

採用に至った応募者だけでなく、不採用となった応募者や辞退者にも同様の検証を行うことで、辞退の要因を探るための材料にもなります。



応募者から得たフィードバックを総括する

採用者はもちろんのこと、できれば不採用者にも応募者体験をたずねる簡単なアンケートを実施するとよいでしょう。
現にGoogleなど、面接を受けたすべての応募者にアンケート実施している企業は存在します。

応募者からの率直な声を収集することで、応募者への配慮がどの程度伝わっていたかを知るための指標になるはずです。

アンケートを実施するのであれば、すべての選考フローが終了してからよりも、各応募者の選考がひと区切りついたところで実施したほうが、応募者の記憶が新しいうちに率直な感想を聞くことができます。

アンケートは「どのような印象を受けましたか?」など抽象度の高い質問項目にするのではなく、「連絡の時期は適切でしたか?」「選考に関する連絡事項は明確でしたか?」といったYes / Noで回答できる項目にしましょう。

こうすることで、改善すべきプロセスや内容が判別でき、応募者から得たフィードバックを総括しやすくなります。



分析結果を次の採用活動に生かす

分析を終えたら、再び応募者ジャーニーマップに立ち返って改善点を反映させておきましょう。
こうして改良を加えた応募者ジャーニーマップは、次回の採用活動の方針を考える上で重要な役割を果たします。

採用担当者が何年間も固定されているのはレアケースのはずですが、次の採用活動時に新たな担当者が引き継いでいたとしても、応募者ジャーニーマップを保管しておくことで前回の採用活動から得た反省点を生かすことができます。人材募集をするたびにノウハウが蓄積されていき、組織のリソースとなっていくでしょう。

応募者体験の質の向上は、はじめからうまくいくことばかりではないかもしれません。しかし、採用活動を経るたびにブラッシュアップしていけば、年々質を向上させていくことができるはずです。

まとめ)変化する企業と応募者の関係性に柔軟な対応を

柔軟な対応イメージ

企業を取り巻く人材採用の事情は年を経るごとに厳しさを増しています。
とくに優秀な人材の獲得に関しては、多くの企業がさまざまな策を講じていながら、なかなか成果が上がらないのが実態ではないでしょうか。

人生100年時代と言われるようになり、現役で働く期間が長くなった今、もはや従業員が転職するのはめずらしいことではなくなりつつあります。
人材採用においても、新卒・中途採用を問わず「企業が応募者を選ぶ」時代から「応募者が企業を選ぶ」時代へと変化しているのです。

このように変化していく企業と応募者の関係性に柔軟に対応する意味でも、応募者体験という視点を重視することには大きな意義があります。
応募者体験の視点を持って選考フローを見直すことによって、結果的に企業の社会的な価値やブランド力を向上させることにも寄与するはずです。




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