社内健康診断の結果、ちゃんと見てますか? 健康診断を「受けただけで終わり」にしないために
[最終更新日]2019/07/26
ビジネスマンの年に一度の恒例行事といえば健康診断ですね!ドキッとする人から、まだ若いし全然気にしてないという人まで、取り組む姿勢はそれぞれです。
とはいえ、会社が負担をしてくれている機会を有効活用しない手はないでしょう。例えば、同等の診断を個人負担すれば10,000円程度掛かると言われていますし、半ば強制的でも毎年受診するペースも、自己管理では余計難しいはずです。
そこで今回は、そんな健康診断をより前向きに活用していくポイントを紹介していきます。
Index
目次
<スポンサーリンク>
なぜ企業で健康診断があるのか?
そもそもの健康診断の目的
健康診断の日が近づくと、普段の量よりアルコールを控えたりしていませんか?もしくは逆に、前日に飲み過ぎたまま診断を受けてしまったなんてことは?
きっと心当たりのある方、もしくは同僚の冗談話を聞いた人もいるはずです。
そもそも「健康診断」をする目的は、病気やその前兆を「自覚」してもらうことにあります。突発的な病気でなく、生活習慣によって発生するタイプの病気を見つけるための診察項目が設計されているのです。
例えば、健康社食で有名になったタニタでは、「はかることから始める健康づくり」というスローガンを掲げて、まずは体重などを定期的に「はかる」ことで、自分の健康課題に「気づく」という取り組みをしています。
健康診断も基本的には、この「はかる」「気づく」を提供することが目的です。しかもその狙いは生活習慣病ですから、若い人であってもきっちりその効果が現れます。
もちろん、年配の方はここに老化も加わってきます。どうしても気持ちは若いままー、という意識とのギャップにも向き合うチャンスとだと捉えましょう。
企業・組織で健康診断を実施することになった背景
会社に入れば、必ず健康診断を受診させられます。さらに最近では、何か悪い点が見つかれば、医師との面接や追加検査を催促されるなど、診断後のアフターケアや管理も手厚くなっている印象があります。
そもそも、企業で健康診断がなぜ実施されているのか、さらにその取り組みが近年強化されている傾向について、その背景を把握していきましょう。
法律の視点
企業による従業員への健康診断の実施は、労働安全衛生法に「雇用時および年1回以上行う必要がある一般健康診断」として義務づけられています。健康診断はビジネスマンである限り、実施すべき義務として国が推進している取り組みなのです。
企業の視点
近年、マネジメントにおける人材資産という観点から、個々人のポテンシャルの発揮と長期雇用の実現のために、健康診断を1つの機会として取り組みを促進していく人材マネジメントの考えが広まっています。企業にとっては、守るべき義務から、より強い企業・組織づくりのための一歩発展した活動として捉えつつあるのです。
健康診断はこう活用しよう!
健康診断が義務であり、会社もそれを有効利用して欲しいことはわかったけれど、診断結果をどの程度の感覚で受け取ればいいのか?診断結果が良ければ、他には気にする必要ないのか?といった結果の判断と活用方法に疑問が浮かぶと思います。
確かに専門知識であることに違いはないので、知識がなければ適切に活用するのは難しいです。そこで、我々が毎年受ける「健康診断」が医療の観点からどういう位置づけにあるのか、その大枠から捉えていきましょう。
健康診断は、具体的に何が分かって何に役立てられるのか
健康診断の目的でも説明したように、会社で提供される健康診断は、我々が普段は実感しくにい病気やその前兆を「自覚」してもらうことにあり、特に、生活習慣によって次の5つの病気を見つけるための項目が設計されています。
<健康診断で発見されやすい症状と病気リスク>
1.高血圧・・・心臓病や脳卒中のリスク。実感しにくい。
2.脂質異常症・・・心筋梗塞、心筋症、脳梗塞のリスク。
3.糖尿病・・・他の病気との合併症のリスク。
4.肝臓疾患・・・肝硬変、肝臓がんのリスク。重症化にも気づかないケース有。
5.腎臓疾患・・・腎不全、腎臓がんのリスク。実感しにくい。
生活習慣病は、普段の生活をしている中で、痛みをはじめとした体の直接的な不調を実感しくいのが特徴です。健康診断は、それらの「見過ごされている症状・異常」を、目に見える形で提供してくれます。
結果に異常値があれば、それを「痛み」と置き換え、適切な治療=改善をしていくシグナルと考えることが大切です。
健康診断は万能ではない。診断しきれない病気もあるので注意を!
会社の健康診断が生活習慣病の早期発見に効く一方で、発見が難しい症状・病気もあります。例えば「がん」は、その代表的な病気の1つです。
もちろんバリウムや胃カメラ、胸部エックスや便の血液反応など、がん発見のための項目もありますが、初期段階のがん、タイプの千差万別のため、実際にがんが見つかっている実積は多くないのが実状です。
私の中国人の同僚は、タバコもお酒もせず、毎年会社の健康診断を受け、結果も良好でした。もちろん前兆となる自覚症状はまったくなかったのですが、あるとき、肺の不調を感じ、検査を受けたところがんと診断されました。
幸い、大事にいたる大きさではなかったものの、切除のために手術を受けました。医師からは「中国の空気やストレスが原因かもしれない」とコメントされたそうです。
どちらも、生活の中で蓄積されるものでありながらも、会社の健康診断の項目では完全に発見ができなかった事例です。
このように健康診断が万能ではないことも認識しましょう。
健康診断であなた自身が健康状態を把握し、病気予防を!
大枠を把握できたところで、いよいよあの一覧表の具体的な使い方のポイントを紹介していきます。
私も海外赴任で健康診断の恩恵を知ってあれこれ調べるまでは、各項目のランクの良し悪しと最後のコメント、あとは体重と身長ぐらいしか見ていなかったです。
実は各項目はちゃんと日々の生活習慣や体調とリンクしているので、的確に対策のイメージが見えてきます。ここではそんな健康診断の項目の活用方法について紹介します。必見です!
「最近疲れやすくなってきた・・・」「アルコール飲みすぎかな・・・」という方は【肝機能】をしっかりチェック!
お酒好きな方、お酒を飲まなくても肥満体型の方は、次の肝機能に関する3項目をチェックして、肝臓病や肝硬変のリスクを把握しましょう。
GOT
- 肝臓と筋肉に含まれる酵素
- 肝臓や筋肉の異常で値が上昇
- お酒飲む方で異常値を示した場合は、肝臓悪化のリスク有
GPT
- 肝臓に含まれる酵素
- 肝臓の異常で値が上昇
- 異常値を示したときは肝臓病のリスク有
γ-GTP
- 細胞膜に含まれる酵素
- 肝臓や胆道の異常で値が上昇
- 異常値を示したときはアルコールの取り過ぎ、胆石発作のリスク有
また、肥満による脂肪肝の中でも発生することが、近年の研究で明らかになってきています。例えアルコールを飲んでなくとも、肥満体型であるだけで、肝臓病へのリスクがあることは注意が必要です。もちろん、肥満にアルコールが加わった場合には更にリスクが高まりますので要注意です。
「食生活が乱れてる…」「最近運動していない…」という方は【血中脂質】、【血糖値】をチェックして!
運動不足を感じている人、過食気味、糖分を取り過ぎと感じている人は、次の3つの値のチェックが必須です。
中性脂肪
- 脂肪の一種で、体には欠かせないエネルギー
- アルコールや糖分が多いと値が上昇
- 数値が高い人は膵炎に注意。低い人は栄養失調の可能性大
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)
HDLコレステロール(善玉コレステロール)
- 血管壁に付着するのがLDL。これを取り除くのがHDL
- HDLは運動で数値が増加し、喫煙すると減少。
- LDLの数値が高い人は、動脈硬化に要注意
血糖値(血糖とHbA1:ヘモグロビンA1)
- 血糖は血中のブドウ糖。HbA1は検査前1〜2ヶ月の血糖値の平均値
- 肥満や過食、糖分が多いといずれの値も上昇
- 異常値は糖尿病のリスク有
いずれも「食べ過ぎないこと」「運動を日々すること」「筋肉をつけること」が大事。ストイックにする必要はなく、いずれも日々継続することを心掛けましょう。
「プリン体が気になる…」「痛風が怖い」という方は【腎機能】を見ておく!
お酒はやっぱりビール!という人、プリン体や痛風のフレーズが気になる人は、次の3つの値をチェックしましょう。
尿素窒素
- 体内でたんぱくが作られるときに出る老廃物
- 腎機能の低下にともない値が上昇
- 異常値は腎臓病、腎不全や腎結石に加えて消化管出血のリスク有
クレアチニン
- 筋肉が使ったときにでる老廃物
- 腎機能の低下にともない値が上昇。筋肉の量にも左右されるので個人差有
- 異常値は腎臓病、心不全のリスク有
尿酸
- 細胞が代謝されるときに出る老廃物
- プリン体の多い食べ物やアルコールで値が上昇
- 野菜と水分、コーヒーで値の改善効果有
- 異常値は痛風ほか、他の病気を合併しているリスク有
腎臓病を引き起こすメカニズムは、腎臓機能が鈍ることでこれらの老廃物の排出も鈍ってしまい、老廃物が体内・血液中に留まることで起こります。改善のポイントは「水分量」「ミネラルや化合物」「塩分量」をそれぞれ適量をとることです。
診断後、「要再検査」、「要精密検査」と言われたら
診断結果には、各項目値が基準値を超えてくると「要経過観察」や「要精密検査」などのコメントが記載されるはずです。
それぞれのコメントがどの程度の深刻さで、どのくらいの緊急具合なのか、再度病院に行くべきかどうか、いつも判断に迷うという人も多いのではないでしょうか。
当然、中には緊急度の高いもあります。もしくは緊急度が低いにもかかわらず、必要以上に不安になってしまうこともあるかもしれません。診断の3つの評価についてポイントを整理しましょう。
「要経過観察」、「要再検査」、「要精密検査」の、それぞれの意味と違い
「要経過観察」
- 緊急性は低い。再検査までする必要は無い
- 評価された項目について生活改善や治療※1)が必要と捉え、対策をとる必要あり。放っておいてよいわけではない。
- 特に、血圧、血糖値や脂質異常症にこの評価がある場合は生活習慣病につながるリスクが高い。早期に生活を見直しを図る必要あり。
※)例えば、若い方で「痔」がある方は、便に血液反応があった場合でも大腸がんリスクとはされず、「痔」が原因との判断から経過観察とされることもあります。この場合は、緊急性はないが「痔」の治療が必要という意味と捉えましょう。
「要再検査」
- 緊急性は中程度で、二次検査が必要。
- 生活習慣による原因、もしくは検査前の生活・食事が原因となっていることが多い。正確な状況を見極めるため、検査は必須。
- 二次検診を実施する医療機関であればどの医療機関でも検査可なので、速やかに検査を実施する
「要精密検査」
- 緊急性は非常に高い。速やかに受診必要※2)
- 明らかに異常値と認識し、項目に該当する専門の医療機関へ受診が必要
※2)海外赴任時の同僚で「精密検査」を受け、わざわざ日本滞在を延長して3日後に検査をしたとのこと。このぐらい緊急感と捉えておきましょう。
気になる場合は、自分でも定期的に検査を
「健康診断は万能ではない」の項目でも説明したように、あくまで健康診断の結果は、どちらかというと現在の一般的な生活のなかで起こりやすい生活習慣病に対する診断である、ということを再度認識しましょう。
例えば、海外への頻繁に出張をしたり、長期ベースでの仕事が多いという方であれば、「一般的」という範疇からは外れてくる可能背もあります。もちろん海外に関わらず、環境の違いから、年に1度の会社の健康診断では診断しきれない病気を抱えるリスクは十分あります。
ここで紹介してきた健康診断のポイントを踏まえた上で、改めて自分の生活を振り返ってみましょう。他の仕事や環境と比べて、少し普通ではないかもという心当たりのある方は、健康診断とは違ったカテゴリーをみる検査を受けてみることをおススメします。
また、健康診断を受けてみて、気になる項目があれば、その専門の検査を受けてみるのも安心材料になります。会社の健康診断を軸にして、自分の体をケアするアイデアを広げてみて下さい。
幸い日本は保険も施設も充実しているので、これを利用しない手はないはずです 。
健康と向き合う最良の機会として
3年ほど前から、私の会社も従業員の健康管理強化をスローガンに掲げました。その影響か、海外赴任先での健康診断は基本的にはNGになり、日本での受診が義務づけられました。
わざわざ日本帰国してまで受診することに、正直うんざりする気持ちもありました。しかし、海外こそ日本以上に生活習慣の違いからか思わぬ検査結果を診断されたりもします。その点では感謝すべきとも実感しています。
ぜひ皆さんも、年に一度の最良な機会と捉えた上で、自分なりの健康診断の活用術を見つけてみて下さい。
<スポンサーリンク>