管理職・マネージャー必見! 職場のメンタルヘルスって何をすればいいの?

[最終更新日]2023/11/03

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変化の激しい現代社会において、職場の生活において強い不安・ストレスを抱える労働者はおおくなっています。労働者が業務中のストレスによって、精神的な不調を抱え治療が必要となった場合、通常通り働けなくなった場合などは、労災の補償対象となったり、最悪訴訟問題に発展することもあります。

このような中職場の管理においても労働者の「心の健康状態の維持・管理」を行うことが、管理職の一つの重要なタスクとなってきています。今回は、社員の精神的健康=メンタルヘルスを維持・管理するためにどうすべきかをまとめました。

Index

目次

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そもそも、メンタルヘルスケアとは

メンタルヘルスケアとは

まず、メンタルヘルス及び、メンタルヘルスケアについて説明します。メンタルヘルス=精神的健康とは「精神が健全に機能していること」を指します。

どの程度精神が健康かを測るのは難しいところがありますが、少なくとも「前向きに生活を送っている」、また「自分に一定程度の自信がある」「もっと成長したい・高みに行きたいと考えている」といった心をしっかり持っている状況を指します

さてこのようなメンタルヘルスを維持するように働きかけることを「メンタルヘルスケア」と呼びます。近年は職場でのストレス等により精神的な不調をきたす労働者を減らすべく、各社対策がなされています。厚生労働省でもメンタルヘルスケアの方法として以下「4つの指針」を公表しています。

  • セルフケア:労働者が自ら行う
  • ラインケア:管理職を中心に各部組織単位でケアを行う
  • 産業医など会社内の専門職を活用したケア
  • 会社外の精神科医などのケア

これら4つの層のケアを適切に機能させることで、職場の労働者のメンタルヘルスケアを行っていくことが重要です。

メンタルヘルス不調とは

メンタルヘルス不調とは、人の精神状態に何らかの不調を抱えている状態のことを言います。冒頭でも紹介した通り現代社会においては厳しい労働環境の中で、精神状態の不調を訴える労働者がいます。

社員が精神に不調を訴え、耐えきれなくなってしまうと、うつ病等精神的な病気の原因となり、通院が必要になることもしばしばあります。もっと酷いと社員の休職や退職、最悪のケースとしては自殺に追い込まれる場合もあります。

2006年のメンタルヘルス研究所の調査結果によると、企業の約60%が「こころの病気を抱えている労働者が増えている」という回答をしています。統計上でも、うつ病と診断される患者数は、1996年に43万人であった一方、2005年には95万人と倍以上に増加しています。

変化の激しい職場環境に対応しなければならない現代の労働者は、このようにメンタルヘルス不調を引き起こすリスクが以前より高まっているといえます。
このような状況の中、メンタルヘルス不調を防ぐメンタルヘルスケアの重要性が一段と高まっているといえます。

職場におけるメンタルヘルスケアの重要性

社員に不調を発生させた場合、それが労働環境によるものであれば、勿論会社がその責任を負うことになります。会社内では管理職が評価を下げられたり、最悪の場合は何らかの処分等が必要になります。

もちろん社員が休職・退職ということになれば職場の人員も減りますし、「職場環境が悪い企業である」というマイナスの印象を持たれることにもつながります。そもそも、精神的に不健康な社員を無理やり働かせても、高い成果を達成させることなどできるわけもありません。

このように社員がメンタルヘルス不調を引き起こすことは、本人はもちろんですが、会社全体にとっても望ましくない結果となります。

このような社員のメンタルヘルス不調発生による弊害を防ぐため、会社を構成する社員が精神的に健康に働き、また会社が適切に成果を上げ、持続的に成長していくためには改めてメンタルヘルスケアにより社員の精神的健康を維持・管理していくことが重要となっています。

職場におけるメンタルヘルス対策

ここまで説明した通り、職場におけるメンタルヘルスケアの重要性は高まってきているといえます。続いては、職場で行うべき、メンタルヘルス対策を紹介します。こちらのメンタルヘルス対策をしっかりと実行することで、社員のメンタルヘルス不調を予防することができます。

また万が一不調を発生させた社員がいたとしても、深刻化する前に改善するとともに、メンタルヘルス不調を引き起こした社員をスムーズに職場に復帰させることができるようになります。

まずは、予防策で対応

まずは予防策で社員がメンタルヘルス不調を引き起こさないようにすることが肝要です。日頃より、管理職は部内の社員と積極的にコミュニケーションを取り、部下の様子に目を配らせ、何かいつもと違う変化があれば、プライバシーにしっかり配慮しながら丁寧に相談に乗るようにします。

また、職場のストレスとなりがちな要素をなくしていく努力も重要です。しばしばストレス因子となりたいのは以下の4点で、これらを職場内で発生させないよう、管理職は気を配っていく必要があります。

  • パワハラ・セクハラ
  • 過重労働
  • 労働時間の長期化
  • プライバシーの阻害

まずはこのようなストレス因子をなくし、職場環境を整えていくことが、何よりのメンタルヘルスケアになるといえます。

一方、メンタルヘルス不調は「目に見えにくい不調」でもあるので、管理職だけが全社員のメンタルヘルスの状況を完璧に把握するのは限界があります。従って、以下のような機能を職場に整えることで、より万全なメンタルヘルス対策を実行できます。

ストレスチェックとは?

ストレスチェックとは、その名の通り、社員のストレスレベルを検査するものです。大抵の場合は選択式のアンケート形式になっていて、回答者が各質問にチェックしていくと、そのチェック内容によって、回答者のストレスの大きさがわかるようになっています。

現代ではストレスチェックを専門に扱う業者などもおり、優れたものではその回答者のストレス要因(残業か・パワハラか、など)などもわかるようになっているものもあります。

2015年からは厚生労働省の通達により、50人以上の労働者がいる事業所では、年一回以上のストレスチェックの実施が義務付けられるようになりましたが、これはストレスチェックが労働者のストレス状況の把握に役に立つことを受けて定められたルールです。

ただ義務的に実施するのではなく、管理職の皆様はストレスチェックの結果を積極的に確認し、部下のストレス状況の把握と、メンタルヘルス不調の前兆の察知、状況の改善位役立てるようにすることが肝要です。

産業医とは?

メンタルヘルスの状況は重症化するまで目に見えにくいものです。ひどくなっていればやつれていたり、体調を崩しがちになる、目に見えて疲れているなどの変調が見て取れる場合もありますが、目に見えるほど変調している時点ではすでに精神の不調は相応に重くなっていると思われます。

従ってメンタルヘルスケアには、専門の人間もその管理のサポートにつくことが肝要です。その時の専門家として活用すべきなのが産業医の存在です。産業医は会社社員の健康維持、怪我・病気時の急務の対応のために置かれるものですが、メンタルヘルスケアのための面談、チェック対応にも活用することも可能です。

産業医もまた、50人以上の事業場であれば設定することが厚生労働省より義務付けられております。せっかく設置するのであれば、メンタルヘルスケアにも素養のある医者を雇い、社員全体の精神面のケアにも一役買ってもらうことをおすすめします。

休職から職場復帰のステップ

ここまではさまざまなメンタルヘルス不調の予防の手段を紹介してきましたが、努力むなしく休職社員が発生してしまうこともあります。休職者が発生した場合、次に管理職や会社全体で考えることはその社員を「退職」まで追い込むことなく、休職にて回復してもらい、スムーズに職場復帰を進めていくことです。厚生労働省からは、以下のような「職場復帰支援のステップ例」が公表されております。

病気休業開始・休業中のケア
主治医による復帰可能判断
職場復帰可否の判断・職場復帰プラン作成
職場復帰決定
職場復帰後のフォローアップ

職場復帰においては、このように5つのステップで行うことが望ましいです。また、主治医については産業医ではなく、全く会社と関連のない医者がかかわることが重要で、社外の人間の目から合理的に職場復帰可否を判断します。

また、③の職場復帰プランでは、復帰後の上司・同僚に求められる配慮や産業医の助言などがまとめられており、後続の④⑤ではこのプランを遵守しながら、スムーズな職場復帰が完遂されるように徹底します。

このように、休職者に対するスムーズな職場復帰ステップを整えておくことも、休職者の精神的不調を重症化させず、回復に向けるためのポイントです。

管理職・マネージャーがメンタルヘルスで事前に準備しておきたいこと

さて、ここまでメンタルヘルスケアに関する対策をいくつか説明しましたが、社員のメンタルヘルスケアにおいては、管理職・マネージャーが積極的にメンタルヘルスケアに関わっていく姿勢が重要です。ここでは、職場のメンタルヘルスケアの観点から管理職・マネージャーが事前に準備しておくべきことについて説明します。

管理職・マネージャーが積極的にメンタルヘルスケアに関わっていくことで、様々な対策がより一層効果を発揮するようになります。

精神障害の正しい知識と理解を持つ

まず、第一に大切なことは精神障害やそれにかかわる病気について正しい知識と理解を持つことです。メンタルヘルスの不調は基本的に本人に責任があるものではありません。

時おり「精神的に脆弱な者が精神的に不調になりやすい」と誤解する方がおりますが、一定以上のストレス環境に置かれれば、誰でも精神的不調に陥る可能性はあります。

管理職・マネージャーの皆様は不調の原因を「本人の心の持ちようのせい」で片付けることなく、職場環境に原因があることを理解しなければなりません。その上で、常日頃から部下の状況を管理しつつ、職場環境の改善に努めていく必要があります。

そして、残念ながら精神的に不調な社員が出た場合には、社員の不調を最小限にとどめ、回復に尽力していくことも必要です。職場のメンタルヘルスケアにおいては、このようにまず上司が正しい知識と理解をもち、メンタルヘルスケアの観点から職場環境を改善して行こうとする姿勢が大切です。

メンタルヘルスに関する社内規則・ルールに、関わる

また、管理職・マネージャーにおいてはメンタルヘルスに係る社内の規則やルールに積極的に関わっていくことも大切です。これは単に規則やルールを理解していればよい、ということではありません。

それらが設定されている「理由」までしっかり理解し積極的に職場環境の改善と社員のメンタルヘルスケアに関わっていくことが大切です。メンタルヘルス不調の予防のために定められたものであれば、チェックリストや産業医など社内のルールとなっている機能を積極的に活用しながら社員の状況を把握し、改善策を練っていく必要があります。

また、職場環境の改善において現状の規則やルールが不充分であったり、不適切であったりする場合には、能動的にそれらの改訂を促すことも、時には必要です。メンタルヘルスのための規則やルールは、管理職・マネージャーがそれらに積極的に関わろうとする姿勢があることで、大きな効果を発揮するものです。

部下・同僚への配慮を怠らない

職場のメンタルヘルス不調の原因は様々ですが、その中の多くは上司から部下への、或いは同僚同士の理解不足や配慮不足から起こっているものです。従ってメンタルヘルスの維持には、部下・同僚へ配慮していこうとする姿勢が大切です。

例えば管理職・マネージャーの場合は、自信が直接パワハラ、セクハラをもたらすことによって部下が不調を引き起こすことはもちろんですが、適正なタスク配分が行われなかったり、労務管理が甘かったことで過重労働となったことが原因となることもあります。

部下同士のトラブル、相性の悪さ等による精神的不調は、管理職・マネージャーが二人をよく観察することで、防ぐことができたと言えますし、もちろん、同僚同士がお互いを思いやり配慮することでも、不調を軽減する余地はあったといえます。

管理職・マネージャーが直接的原因をもたらさないようにするのはもちろんですし、部下・同僚それぞれお互いが精神的不調に陥らないようによくコミュニケーションをとり、よく配慮しながら日々仕事を進めていくことが肝要です。

事例「私が関わったメンタルヘルス」

それでは最後に私がかかわったメンタルヘルスについて事例を紹介します。

とある営業部署での部下と上司の話です。この上司は決して圧迫的なタイプではなく、社内の評判も比較的良かったのですが、ある時部下の営業員の一人Aが体調を崩しがちになるようになりました。

上司は自分がきつく言い過ぎただろうか、周囲の人間が実は負荷をかけていないか、と自分なりに考えたものの、答えが見つからなかったそうです。

そのような時、ふと先日メンタルヘルスケアチェックが行われていたことを思い出しました。この会社では、細かい回答内容は上司には知らされませんが、どのようなストレスがかかっているかはデータ化され、上司にフィードバックされる決まりになっています。

改めて直近の結果を確認した所、ストレスファクターとして「仕事内容」「人間関係」が高くなっていることに気づきました。

その結果を基にAと面談した所、最近引き継いだ顧客先が圧迫的で、この顧客について精神的にも作業量的にも大きな負荷がかかっているとのことでした。上司はチェック結果やAとの面談を受けて、顧客担当先を再整理しました。

Aはまだこの顧客相手に頑張りたいとのことだったので、他の担当先負荷を減らし、また上司自身も顔を出す頻度を上げたりするなど配慮をしました。

上司のスピーディな対応が奏功し、Aの体調は次第に回復するとともに、この面倒な顧客先にも慣れ、仕事も順調に回るようになりました。もともと部下に対する配慮意識は高い上司でしたが、ストレスチェックや面談を活用することで、Aの精神的不調が深刻化するのを防ぐことができたという事例でした。

メンタルヘルスケアの徹底で労働者が働きやすい職場環境に

精神的不調を及ぼす労働者が増えている現代社会において、メンタルヘルスケアは管理職の重要なタスクの一つとなっています。現代の管理職には部下の状況、職場の環境に目を配り、また社内のルールや機能を活用しながら、部下のメンタルヘルス維持・向上に積極的に関わっていく姿勢が求められています。

メンタルヘルスケアが徹底されている職場は社員のパフォーマンスも向上し、結果的に高い成績を残せる組織となっていきますので、メンタルヘルスケアの徹底は結果的に管理職自身の評価向上にも寄与します。

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