部下から「嫌われたくない」上司が陥りやすい3つの落とし穴

[最終更新日]2023/03/11

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部下に嫌われたくない上司が陥る3つの落とし穴

部下との関係性の築き方は、管理職にとって永遠のテーマともいえます。
さまざまなタイプの部下がいる中で上司としてどう接していくべきなのか、日々悩んでいる方もいることでしょう。

管理職として経験を積んでもなお「部下から嫌われたくない」「できれば良い人だと思われたい」といった意識を深層心理に抱えているケースは決してめずらしくありません。

部下との関係性が良好で、雰囲気の良い部署・チームにしたいと感じるのは自然なことでしょう。

しかし、部下から「嫌われたくない」と上司が感じていることで、マネジメント上の深刻な問題が生じることも考えられます。

そこで、部下から嫌われたくない上司の問題点とその改善策について解説していきます。部下との関わり方に悩んでいる方、改善したいと感じている方は、ぜひ参考にしてください。

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Index

目次

なぜ部下から「嫌われたくない」と感じるのか?

はじめに、そもそも上長はなぜ部下から「嫌われたくない」と感じるのか、その原因から考えていきましょう。

上司にとって、部下を指導する過程で厳しく注意したり、改善を促したりする対応も必要になることがあります。
このとき、「部下から嫌われてしまうのではないか」といった懸念を払拭できずにいると、つい厳しく指導することを避けてしまう傾向があります。

なぜこのような心理が生じてしまうのか、主な原因について解説します。




パワハラの加害者になることを恐れているため

近年、職場におけるハラスメントの問題に対して世の中の目が厳しくなっています。

下図は都道府県労働局等に寄せられた「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数の推移です。
相談件数は年々増加傾向にあり、職場におけるいじめ・嫌がらせが問題となるケースは決して少なくないことが分かります。

とくにセクハラやパワハラに関しては人権問題になりかねないことから、企業としても未然に防止する意識が高まっているといえるでしょう。

都道府県労働局への相談件数


都道府県労働局への相談件数(厚生労働省「あかるい職場応援団」Webサイトより)



こうした風潮を踏まえ、直属の部下から「パワハラ被害に遭った」と思われないよう気を配っている管理職の方は多いはずです。

部下を注意する・指導する場面において、自分としてはパワハラのつもりがなかったとしても、部下がどう感じるかは相手の受け取り方によるからです。

そのため、間違ってもパワハラと思われないよう細心の注意を払うようになり、結果として「部下に嫌われたくない」という心理につながっている可能性があります。




良い人だと思われたい・事なかれ主義に徹したいため

上司イメージ

パワハラ問題以前に、上司自身の性格や考え方が影響していることも考えられます。

対人関係において波風を立てたくないタイプの人の場合、部下との関係性においてもなるべく「良い人」でありたいと感じる傾向があります。

もしくは、自分よりもさらに上役の管理職から「部下とうまくいっていないのでは?」と思われたくないために、事なかれ主義に徹してしまうことがあります。部下を注意することで関係性が悪化し、業務に支障をきたすのではないかと恐れているのです。

良い人と思われたいタイプの上司は、表面的には部下と円滑にコミュニケーションを図ることができており、良好な人間関係を築いているように映ることが少なくありません。

しかし、実態としては上司の側が部下の機嫌を取るような言動が見られたり、部下の落ち度が明らかな場合にも上司が注意できなくなっていたりする可能性があります。

一見すると「雰囲気の良い部署」「居心地が良さそうなチーム」のように映りますが、上司と部下という関係性においては必ずしも好ましい状態とはいえない場合もあるのです。




部下自身に気づいて変わってもらいたいと思っているため

自主性イメージ

上司から部下に直接的に指導するのではなく、「部下に自発的に気づいてほしい」「自主性に任せたい」といった考えの管理職に多いパターンです。

部下の自主性に任せると言うと耳当たりは良いのですが、結果的に部下を放置しているに過ぎないこともあるため注意が必要です。

「少し様子を見よう」といった言い回しをよく使う人は、このパターンに当てはまっている可能性があるでしょう。

「注意するタイミングが訪れたら」と思っていても、そのタイミングはずっと訪れないままになることが少なくありません。

部下が自発的に変わってくれることが絶対にないとは言い切れませんが、確率としては極めて低いと言わざるを得ないでしょう。

よほどのことがない限り、誰しも自分の否を認めた上で行動を改めるチャンスはそれほど多く訪れるものではありません。

よって、部下自身が自発的に変わることを期待するのは、突き詰めると「今この場で嫌われたくない」「部下に不満を持たれることに抵抗がある」といった心理の表れと考えられるのです。

部下から嫌われたない上司が抱える問題点とは?

仮に部下から嫌われたくないと感じていても、仕事を進めていく上で目立った問題が生じていなければよいのでは?と感じる人もいるはずです。たしかに、部下との関係性が悪化することでかえって仕事に支障をきたす場合もあるのは事実です。

しかし、部下から嫌われたくないという思いが高じていくと、随所で悪影響を及ぼしていく可能性があります。具体的にどういった面で上司・部下自身や組織に好ましくない影響を与えるのか、整理しておきましょう。




自主性に委ねることと放任主義の区別がつかない職場になる

自主性と放任主義

上司としては部下の自主性に任せているつもりでも、部下から見ると「放置されている」「管理が行き届いていない」と映っている可能性があります。

すると、部下の側では「どうせ上司は気づいていない」と慢心するようになり、身勝手な行動を取ったり手を抜いたりするようになりがちです。

その結果、部署全体から仕事に対する緊張感や責任感が失われ、平たく言えば「緩んだ」職場になってしまうことが危惧されます。

業務と関係のないうわさ話や陰口が水面下で横行するようになり、仕事に集中できない環境になっていく恐れもあるでしょう。

部下にとって、上司は間違った行動に対する歯止めの役割を担っている面があります。

おかしなことをすれば上司から指導が入るにちがいない」と部下が日頃から感じていることは、緊張感を持って仕事をする上で不可欠な要素です。

職場の雰囲気は一度緩んでしまうと修正するのは簡単ではないため、放任主義に陥ってしまわないよう十分に注意する必要があります。




中長期的に部下が育たない・伸びない可能性がある

部下イメージ

上司からのプレッシャーがなくても、自発的に仕事に取り組み成果をあげていくタイプの部下もいます。

ただし、大多数の部下にとって「怒られることがない」という環境はマイナスに作用するケースのほうが多いのが現実でしょう。

部下にとって、上司から注意されたり叱責されたりするのはストレスを感じる要因の1つになることは間違いありません。

しかし、上司から注意されてしかるべき状況・タイミングだったとすれば、結果的に部下自身のためになるはずであり、長い目で見たときに部下の成長へと寄与するでしょう。

反対に、しかるべきタイミングで注意されなかった部下は「今のままで問題ない」と考えるようになり、中長期的な視点で見た場合に育たない・伸びない可能性があります

部下から嫌われないようにしたいのは、上司の側の都合に過ぎません。嫌われたくないがために注意できない・叱れないといった状態が続くと、将来的に部下自身のキャリアの停滞にもつながりかねないのです。




上長自身にとって必要なリーダーシップが身につかない

必要なリーダーシップが身につかない

強力なリーダーシップを発揮する人の多くが、強い目的意識に突き動かされているものです。

たとえば「売上増を達成する」という目的を必ず達成したいのであれば、今この場で部下を厳しく指導して嫌われることよりも、最終的に目標を達成して部下の評価が高まることのほうがはるかに重要と考えるでしょう

目的や目標を達成するためにあらゆる手段を講じ、部下を率いていく過程でリーダーシップが研鑽されていくはずです。

ところが、部下と「波風を立てずにうまくやっていく」といったことに気を取られていると、肝心な上司自身のリーダーシップが身につかないままになってしまう恐れがあります。

その結果、「〇〇課長の下で仕事をしても成果が出ない」などと部下から不信感を抱かれることも考えられます。

一見すると厳しく部下を指導し、恐れられているように見えるタイプの上司であっても、結果的に部下を良い仕事へと導いてきた功績があれば、優秀な人材として部下から敬われるはずです。

「嫌われたくない」という思いが、リーダーシップを阻害してしまうこともある点を見過ごすべきではないでしょう。

部下に嫌われたくない上司が陥りやすい3つの落とし穴

ここまで、部下に嫌われたくないと考える理由と問題点について述べてきました。おそらく、多くの方々が「部下から嫌われないようにしたい」といった感覚をどうにかして改めたいと考えているはずです。

一方で、部下との関わり方をすぐに変えるのは簡単ではないと感じる人も多いのではないでしょうか。
これまで部下と接してきた期間が長ければ長いほど、関わり方やコミュニケーションの図り方は確立されており、明日からすぐに変えるわけにはいかないこともあるからです。

そこで、部下に嫌われたくない上司が陥りやすい代表的な落とし穴について解説します。もしこれらのうちの1つでも当てはまるものがあれば、まずはその部分から改善を図ることを意識していきましょう。




落とし穴①:部下が抱える課題や改善点を率直に伝えられない

部下が成果をあげられていないときや、明らかに適切でない仕事の進め方をしているのを目にしたとき、上司として「率直に」指摘し、改善点を伝えることができているでしょうか。

上司として部下を指導するのは職務の1つですので、もし課題や改善点を伝えることに対して少しでもためらいを感じるのであれば、このパターンの落とし穴にはまっている可能性が濃厚です。

自身が当てはまっているかもしれないと感じた人は、以下のチェックポイントを確認しておきましょう。

部下を率直に指導できない上司の特徴

部下を率直に指導できない上司の特徴 ・「時間が解決してくれる」と思うことが多い ・「いずれ自分で気づくだろう」と達観 ・部下の性格に原因を求めてしまう ・部下が傷つくのではと危惧している ・部下に反論されたら厄介だと感じる
  • 「慣れれば大丈夫だろう」「時間が解決してくれる」と思うことが多い
  • 「いずれ自分で気づくだろう」と達観している
  • 部下自身の性格や個性に原因を求めてしまう
  • 指摘すると部下が傷つくのではないかと危惧している
  • 部下から反論されたら厄介だと感じる

こうした思考が習慣化して定着するにつれて、ちょっとした指摘や指導でさえも伝えづらくなっていき、「何も言わない上司」になっていく恐れがあります。

指摘されてしかるべき部下の行動は、部下自身も内心で「良くないのではないか」と感じているものです。まずは率直に伝えることを心がけていきましょう。




落とし穴②:「嫌われないかどうか」が判断基準になっている

部下の気持ちを推し量り、配慮することは上司として必要な姿勢です。部下を厳しく指導するといっても、厳しさの背景に部下への信頼や成長への期待が込められていなければ、パワハラと思われてしまう可能性があるからです。

ただし、部下に対して過剰に気を遣うのも問題です。目の前の部下から嫌われないように、相手の機嫌を損ねないように気を配ってばかりいると、上司として果たすべき役割を全うできなくなってしまうからです。
とくに次のような傾向がある人は注意が必要です。

部下に嫌われないかどうかが判断基準になっている上司の特徴

部下に嫌われないかが基準の上司の特徴 ・部下同士の話題に対し敏感 ・社内の噂や人の評判が気になる ・部下が何を考えているか分からず悩む ・部下に対し世代間のギャップを感じる ・部下が急に辞めるのではと心配している
  • 部下同士の話題や興味関心に対して敏感になる
  • 社内のうわさ話や人の評判が気になる
  • 部下が何を考えているのか分からず悩む
  • 部下に対して世代間のギャップを感じてしまう
  • 部下が急に辞めるのではないかと心配している

上司のほうから部下に歩み寄ることと、部下の機嫌を取ることは別次元の話です。

部下と年齢が離れていれば、部下同士の話題に入れない場面が出てくるのは致し方ないこともあります。無理に部下と話を合わせようとするのではなく、上司としての役割を今いちど確認しておく必要があるでしょう。




落とし穴③:管理職としての視座を見失いかけている

「部下から嫌われたくない」のは、その場限りの表面的な感覚に過ぎません。

部下としては、きちんと根拠や思いを持って指導してくれた上司に対しては、のちのち感謝してくれることのほうが多いものです。

部下と真正面から向き合っておらず、形の上で「好かれているかどうか」「嫌われていないか」を気にしていると、管理職として持つべき視座を見失ってしまう恐れがあります。

管理職としての視座を見失いかけている上司の特徴

管理職としての視座を見失っている上司の特徴 ・些細な言動について部下を褒める ・部下によって態度や言い方を変える ・部署の目標を部下と共有していない ・部下の前で愚痴や不満をこぼす ・部下と仕事の話をする機会が少ない
  • 本質的ではない些末な言動について部下を褒めている
  • 部下によって態度や言い方を変える
  • 部署としての目標や理想を部下と共有していない
  • 部下の前で愚痴や不満をこぼす
  • 部下と仕事の話をする機会が極端に少ない

上司としての振る舞いに問題がないかをチェックする上で目安になるのは、部下と接する際に「大義」があるかどうかです。

今この場で部下との関係性がどうであるかよりも、部署・企業として進むべき方向性や、部下の将来的なキャリアを見越して話をしているかどうか、といった点を振り返っておきましょう。

部下に嫌われることを厭わないマインドを獲得するには?

最後に、部下に嫌われることを厭わないマインドを獲得するための考え方についてまとめます。

究極的には「たとえ部下から嫌われようと、上司の立場として言うべきことは言える」のが理想です。
ただ、これまで部下から嫌われることを恐れた経験のある人にとって、自身の思考や行動を急に変えるのは容易ではないでしょう。

そこで、少しずつでもいいので部下から嫌われるかどうかを判断基準にしないための思考法を獲得していきましょう。日々意識していくことで、多少時間はかかったとしても改善していくことは必ずできるはずです。




部下が独り立ちしたときの将来像をイメージする

独り立ちのイメージ

はじめに、部下との接し方に関する「時間軸」を広げていきましょう。

「嫌われたくない」という思いが先に立ってしまうのは、「今現在」に視点を置いているからです。
人間関係において、できるだけ良好な間柄でいたいと感じるのは決して不自然なことではありません。

しかし、いずれは部下も独り立ちし、組織の中核を担うようになっていきます。独り立ちして仕事をするとなると、現在の部下に不足している点や強化しておきたい点は少なからずあるはずです。
その部分を少しでも補っておくことができれば、上司として部下の成長に寄与できたといえるでしょう。

将来の理想像をイメージすることで、部下の現状の能力よりも一段高い要求をせざるを得なかったり、ときには厳しく指導する必要が出てきたりするケースもあるでしょう。

現段階では、部下の立場としては不服に感じることが出てくるかもしれません。たとえ今現在の部下に多少の不満を抱かせたとしても、部下の将来像をしっかりと持っておくことで「正しい方向に進んでいる」と確信を持つことができるはずです。




個人間の問題ではなく「組織」としての視点を持つ

組織イメージ

「嫌う」「嫌われる」というのは、あくまで個人間での感情の問題です。個別の事象として対策を講じるよりは、視座をより高くして「組織」としての視点を持つことが重要でしょう。

企業としての経営理念や事業計画に基づき、各部署で目標が設定されているはずです。
管理職・一般社員はそれぞれ目標達成に向けてどういった役割を果たすべきなのか、そのために部下をどのように導いたらいいのか、といった点を再確認しておきましょう。

部下は自身が担当する業務について個人的な目標に向かって努力しますが、部署全体・会社全体といった視点で仕事を捉えているケースばかりではありません。

そのため、「自分と上司」という限られた関係性の範疇で物事を判断している可能性があります。

管理職は部下よりも「組織」としての視点を持ちやすい立ち位置にいます。
「自分と部下」という個人間の問題に埋もれてしまうのではなく、組織の中で果たすべき役割を踏まえ、その一環として部下との関係性を捉える視点を持つように心がけましょう。




「厳しさ」の意味を深掘りし、再定義する

厳しさイメージ

部下から嫌われたくない上司の中には、部下に対する「厳しさ」を一面的に捉えている人もいるはずです。そのため、部下から反感を持たれないように振る舞わなくてはならないと感じてしまうのです。

しかし、「厳しさ」とは部下を叱責したりプレッシャーを与えたりすることだけを指すのではありません。

部下の能力や人間性を信頼し、もう一段高いレベルへとステップアップできるよう、徹底的にサポートするのも一種の「厳しさ」といえるでしょう。

あるいは部下を鼓舞し、意欲を高めることで高いレベルの仕事へと導くのも上司としての「厳しさ」に含まれます。このように、「厳しさ」の意味を深掘りしていくことで、自分に合った部下との接し方を見つけ、「厳しさ」を再定義することができるのです

共に仕事をする中で、結果的に以前よりも高いレベルへと導いてくれた上司に対して、部下は感謝の念を抱くことでしょう。

真の意味で部下の将来に資する「厳しさ」を体現できたとき、「嫌う」「嫌われる」という手近な関係性から脱却したことを実感するはずです。

まとめ)部下から「嫌われたくない」と感じたら危険な兆候と捉えよう

危機感イメージ

上司と部下は、組織において単なる先輩と後輩の間柄ではありません。
ときには部下を指導したり、必要に応じて注意したりする必要がある場面も出てくるでしょう。管理職を務める以上、部下を指導・育成することは仕事の一環ですから、この点は避けて通れません。

一方で、「上司は部下から嫌われるもの」とよく言われているものの、嫌われること自体が目的ではないという点も十分に理解しておく必要があります。

「嫌われたくない」「嫌われても仕方がない」の二択になっている時点で、リーダーシップに関する重要な視点が欠落している可能性があるからです。

もし「部下から嫌われたくない」と感じるようなら、管理職として危険な兆候が表れていると捉えましょう。今回解説してきたように、部下との関わり方について今いちど振り返っておくべき時期が訪れているのかもしれません。




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