プロティアン・キャリアとは?これからの時代に求められる、自己理解・自己変革を促すキャリア思考

[最終更新日]2021/04/12

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プロティアン・キャリアとは?

私たちを取り巻くビジネス環境はめまぐるしく変化しています。とくに近年では、コロナ禍によってワークスタイルやライフスタイルが大きく変わってしまったと感じている人も少なくないでしょう。

物事の価値観は常に変化していき、同じ形に留まり続けることはありません。10年前の常識と現在の常識が異なるように、10年後には今の常識が通用しなくなっている可能性は十分にあります。

こうした社会情勢において再評価されつつあるキャリア観の1つに「プロティアン・キャリア」があります。

プロティアン・キャリアとはどのようなキャリアモデルなのか、なぜいま注目を集めつつあるのかを解説していきます。
自身のキャリア観や今後のキャリアプランについて課題を感じている方は、ぜひ参考にしてください。

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Index

目次

プロティアン・キャリアとは?

キャリアについて考える男性

プロティアン・キャリアは、これまで「組織主体」とされてきたキャリアモデルを「個人主体」に捉え直したキャリアモデルの一つです。

1976年にアメリカの心理学者ダグラス・T・ホールが提唱した概念で、「私は何をすべきか」よりも「私は何がしたいのか」を重視しているのが特徴です。

「プロティアン」は、自身の姿を自在に変幻させるギリシア神話の神「プロテウス」に由来します。社会的・経済的環境に大きな変化が訪れたとしても、柔軟に変わっていくことのできるキャリアモデルのことを「プロティアン・キャリア」と定義したのです。

近年の日本における変化としては新型コロナウイルスによるパンデミックが顕著ですが、終身雇用の崩壊、健康寿命の伸長による現役時代の長期化、所得格差の拡大など、私たちを取り巻く環境にはコロナ禍以前から大きな変化が訪れていました。

こうした変化の激しい時代において、旧来の価値観や考え方を保持し続けるだけでは変化に対応し切れなくなる恐れがあります。

そのため、より柔軟かつ自立した形で変化していくことのできるキャリア観が注目されています。




これまでのキャリアとは何が違うの?

岐路に立つ男性

ここで次のような疑問を抱く人もいるはずです。
プロティアン・キャリアは、これまでの一般的なキャリア思考とどう違うのだろう?

自分が取り組むべきことを明確にしたり、適切なタイミングで行動に移したりすることは、ビジネスに取り組む上でこれまでも重要性が指摘されてきました。こうした従来のキャリア観とプロティアン・キャリアとの間には、どのような違いがあるのでしょうか。

参考:プロティアン・キャリアとこれまでの一般的なキャリア思考の違い

項目 プロティアン・キャリア これまでの一般的なキャリア思考
主体者 個人 組織
核となる価値観 自由・成長 昇進・権力
パフォーマンスの尺度として重要視するポイント 心理的成功 地位・給料
姿勢・働きかけとして重要視するポイント 仕事満足感
専門的コミットメント
自分を尊敬できるか
組織コミットメント
組織から自分は尊敬されているか
アイデンティティとして重要視するポイント 自分は何がしたいのか?(自己への気づき) 自分は何をすべきか?(組織への気づき)
周囲・環境への適応性として重要視するポイント 市場価値:仕事関連の柔軟性
     市場へのコンピテンシー
組織で生き残る:組織関連の柔軟性
        組織内でのサバイバル

プロティアン・キャリアの主体が常に「自分」「個人」であるのに対して、従来のキャリア思考では「組織」が判断や価値観の中心になっていることがわかります。

言い換えれば、従来は重要と考えられてきた「職場でどう評価されるか」「組織にどう貢献するか」といった価値観とは一線を画し、「自分にとって本質的にどんな意味があるのか?」を深く問う姿勢がプロティアン・キャリアの根幹にはあるのです。

従来のキャリア思考では、「特定の組織で求められる立ち居振る舞い」「ある一時点の社会・経済情勢」「ある時代に良いとされた価値観」に基づいて意思決定がなされてきました。

プロティアン・キャリアの場合、働く場所や環境、特定の価値観といった外部から与えられる尺度ではなく、自分のキャリアを通じた一貫性や通底する価値観を重視する点が、従来のキャリア観と大きく異なっているといえるでしょう




プロティアン・キャリアは「アイデンティティ(自己理解+自己概念)」と「アダプタビリティ(環境変化への適応性)」から構成される

アイデンティティ+アダプタビリティ

プロティアン・キャリアを理解する上で重要な考え方として、「アイデンティティ」「アダプタビリティ」の2つが挙げられます。

アイデンティティとは自己理解・自己概念のことであり、アダプタビリティとは環境変化への適応性のことを指します。これらのどちらかが不足あるいは欠落すると、プロティアン・キャリアを実現するのは困難になってしまいます。

アイデンティティ(自己理解+自己概念)

アイデンティティは一般的に「自己同一性」と訳されます。自分自身のことをどのように理解しているか、自分の価値観や興味関心、能力、どのような人生を送りたいのか、といったことを包括する概念と考えていいでしょう。

環境の変化に合わせてキャリアを柔軟に変えていくと言っても、自分の意思に反することや価値観と合わないことにまで無理に合わせるべきではありません。
流されるまま外界の変化を受け入れているだけでは、自分は何がしたいのか、果てには本来どんな人間だったのかさえ分からなくなってしまうでしょう。

プロティアン・キャリアを実現する上で、「そもそも自分は何がしたいのか」「どんな人間なのか」といった自己への気づきは、いっそう重要なものとなります。



アダプタビリティ(環境変化への適応性)

アダプタビリティとは環境変化への適応性のことで、「適応スキル」「適応モチベーション」から成り立っています。

適応スキルとは、周囲の変化に反応し、最新の動向を把握する能力と、キャッチした情報を解釈して行動につなげる能力を指します。
適応モチベーションとは、自分自身ができること・したいことと、外界の変化の関連性や相違点を常にキャッチしようと試み、かつキャッチした情報をアウトプットにつなげようとすることを指します。

これによって「できること」と「実際にやろうとしていること」の2つがそろい、実際に変化に適応しようとする行動へとつながります。

アダプタビリティが不足していると、「気づいているものの行動に移せない」「このままでは良くないことは理解していても手を打とうとしない」といった状況に陥りがちです。
このように、アダプタビリティはプロティアン・キャリアを実現する上で欠かせない要素といえるでしょう。

プロティアン・キャリアを身につけるメリット

従来のキャリア観とは大きく異なるプロティアン・キャリアですが、キャリアに対するこうした見方・捉え方を身につけることでどのようなメリットを得られるでしょうか。

前述の通り、プロティアン・キャリアそのものは最近になって考え出されたものではなく、30年以上前に提唱されていた概念です。
ポイントは近年になって注目を集め、再評価されている点にあります。

プロティアン・キャリアが再評価されている理由を知る上でも、身につけるメリットを把握しておくことは重要です。
プロティアン・キャリアを身につける主なメリットとして、次の3点が挙げられます。

仕事への充実感を高められる自身の理想のキャリアを見つめ直せる時代の変化に対応した生き方・働き方ができる
  • その1 仕事への充実感を高められる
  • その2 自身の理想のキャリアを見つめ直せる
  • その3 時代の変化に対応した生き方・働き方ができる



その1 仕事への充実感を高められる

仕事充実イメージ

終身雇用が一般的だった時代においては、所属する組織内での論理や評価はキャリアを形成する上で重要な意味を持っていました。
組織に貢献することで仕事に対する充実感を得られ、評価されることを通して努力が実ったことを確認していたのです。

現代は終身雇用が実質的に崩壊し、特定の組織内で通用する価値観が説得力を失いつつあります。

むしろ、仕事を通じて自らが成長を実感することで「実現したいこと」「仕事を通じて達成したいこと」へと着実に近づいていると感じられるかどうかが重要になっているのです。
プロティアン・キャリアの考え方を体得することにより、「いま何のためにこの仕事をしているのか?」「仕事を通じて自分はどうなりたいのか?」が明確になり、仕事への充実感を高めることができます。




その2 自身の理想のキャリアを見つめ直せる

キャリア見つめ直しイメージ

近年、大企業においても従業員の副業・複業を認める動きが広がっています。
いわゆるパラレルキャリアを実践しやすくなったことにより、自分自身の強みを活かしたキャリア形成を実現できる環境が整いつつあるといえるでしょう。

以前から、日本の就職は「就社」であると指摘されてきました。
ジョブローテーションによって複数の部署を経験したり、日常の業務を通じて新たな知見を得たりすることも不可能ではありませんが、同一の組織内で得られる情報量には限界があります。
別の見方をすると、就職した時点で自身のキャリアがある程度限定されてしまうのが一般的だったのです。

プロティアン・キャリアを実践することによって、副業・複業あるいは転職といった多様な選択肢を残しつつ、自身の理想のキャリアに軸足を置いた意思決定ができるようになります。組織の枠を超えて、自身の理想のキャリアを見つめ直すことが可能になるのです。




その3 時代の変化に対応した生き方・働き方ができる

時代に応じた働き方イメージ

ビジネスを取り巻く環境がめまぐるしく変化する時代においては、企業もまたリスクを負っています。
一度確立したビジネスの手法やノウハウが今後も通用する保証はなく、将来にわたって安定的な経営を志向するのは至難の業となっているのです。この傾向は大企業であっても例外ではなく、むしろ小回りの利く新興企業に市場を奪われる恐れさえあるといえます。

プロティアン・キャリアを実現することにより、あらゆる企業にとって今後の課題となる「時代の変化に対応する」能力が身につきます。

用意されたモデルケースに頼らず自ら生き方・働き方を選び取っていくプロティアン・キャリア人材は、企業が時代に即した事業へと変革していくための原動力を秘めているのです。

個人がプロティアン・キャリアを獲得していくには

ここまで、時代に求められているプロティアン・キャリアの特徴と、このキャリア観を身につけるメリットについて解説してきました。
プロティアン・キャリアを獲得したいと感じた人も多いのではないでしょうか。

では、個人がプロティアン・キャリアを獲得し、実践していくにはどうすればいいのでしょうか。
従来のキャリア観と大きく異なるプロティアン・キャリアの実現は一朝一夕にできることではありません。具体的なステップとして、次の3点を意識して1つずつ実行に移してしていくことをおすすめします。

自身がプロティアン人材であるか確かめる長期的な視点で「どうなりたいか」の目標を立てるキャリア資本を高めるための「日々の行動」を意識する
  • 今現在、自身がプロティアン人財であるかどうかを確かめる
  • 「今後自分がどうなりたいか」を見つめ直し、長期的な視点で「目標」を立てる
  • 目標達成に向けて、およびキャリア資本を高めるための「日々の行動」を意識する



今現在、自身がプロティアン人財であるかどうかを確かめる

はじめにやっておくべきこととして、今現在の自分自身がどの程度プロティアン・キャリアを実践できる人財に当てはまっているかを確認することが挙げられます。
もちろん現状すでにプロティアン人財に該当していることが理想ですが、必ずしも全てに当てはまっている必要はありません。

重要なのは、現状を正しく把握し、目指すべき理想像との距離を確認しておくことなのです。

下のチェックリストは、プロティアン・キャリアを実現する上で重要な項目を挙げたものです。実際に各項目をチェックし、自分が現状どれだけ当てはまっているのか確認しておきましょう。

プロティアン・キャリアチェックリスト

項目 チェック
毎日、新聞を読む
月に2冊以上、本を読む
英語の学習を続けている
テクノロジーの変化に関心がある
国内の社会変化に関心がある
国外の社会変化に関心がある
仕事に限らず、新しいことに挑戦している
現状の問題から目を背けない
問題に直面すると解決するために行動する
決めたことを計画的に実行する
何事も途中で投げ出さず、やり抜く
日頃から、複数のプロジェクトに関わっている
定期的に参加する(社外)コミュニティが複数ある
健康意識が高く定期的に運動している
生活の質を高め、心の幸福を感じる友人がいる

参照:[議論]あなたは変幻自在にキャリアを作る「土台」があるか:日経ビジネス電子版

15項目のうち12個以上当てはまっていた人は、すでに変幻自在にキャリアを形成していくことのできる素養を十分に持っていると考えられます。自信をもってプロティアン・キャリアを実践していきましょう。

4〜11項目に該当した場合は、キャリア形成の素地としてはできていますが、大きな変化への適応力に改善の余地がありそうです。チェックが入らなかった項目を重点的に強化していきましょう。

現状、当てはまるのが3項目以下だった人は、現状ではこれまでのキャリア観に留まっていると考えられます。実践に移すことができそうな項目から、徐々にプロティアン人財に近づいていくことを目指しましょう。




「今後自分がどうなりたいか」を見つめ直し、長期的な視点で「目標」を立てる

目標イメージ

変化に対応すると言っても、世の中の変化を無条件に受け入れればよいわけではありません。優先すべきは「今後自分がどうなりたいか」であり、自身が望むキャリア形成に向けて前進していくことだからです。

目指すべきキャリアを形成していくには、必然的にゴールを設定しておくことが求められます。
数ヶ月や半年スパンの短期的な目標だけではなく、5年・10年といった長期的な視点で目標を立てておきましょう。

新たな挑戦をしたり、最新の社会・経済情勢に関心を持ったりするのは重要なことですが、「やっておいたほうがいいこと」や「知っておいたほうがいいこと」は世の中に氾濫しています。

それらの中から自分がキャリアを形成していく上で必要な情報を取捨選択していくためにも、ゆくゆくどうなりたいかを明確にしておくことは不可欠なプロセスといえます。

長期的な目標が明確になっていれば、目の前の状況が変化しても、所属する組織の経営状況がどうなっても、戸惑うことなく目標に向けて進んでいけるはずです。




目標達成に向けて、およびキャリア資本を高めるための「日々の行動」を意識する

プロティアン・キャリアを実現する上で重要な考え方として「キャリア資本」が挙げられます。

キャリア資本とは、その人が仕事で得た「スキル、知識、人脈などの無形資産」と「金銭や資産、などの有形資産」を総括したものです。

参考:キャリア資本の3つの軸

ビジネス資本スキル、語学、プログラミング資格、学歴、職歴などの資本。社会関係資本職場、友人、地域などでの持続的ネットワークによる資本。経済資本金銭、資産、財産、株式、不動産などの経済的な資本

これらの資産は、日々の仕事で目に見えぬ形で積み上げられます。また、今から10年後にその人がどう活躍するかは、その間に蓄積されたキャリア資本によって大きく変わります。

たとえば、所属している企業内で上長の指示にただ従うのと、顧客満足度を意識して自らの頭で考えて行動に移していくのとでは、結果的に同じ行動につながったとしても蓄積されるキャリア資本は大きく差が開いていくものでしょう。

すなわち、「キャリア資本を高める」とは、自分がいま取り組んでいること・やろうとしていることが今後の自分にどう返ってくるのか、日々の行動レベルから意識していく発想のことです。

一足飛びにプロティアン・キャリアを実現するのは現実的ではなく、あくまで日々の小さな意識・行動の積み重ねによってキャリアを築いていくしかありません。

プロティアン・キャリアの形成と聞くと大仰な印象を受けるかもしれませんが、主体的に行動し、得られた結果を次の行動につなげていく繰り返しこそが、目標達成に向けた着実な一歩となっていきます。 日頃からキャリア資本を貯めることを意識して行動していきましょう。

まとめ)プロティアン・キャリア思考を身につけて充実した人生を手に入れよう

人生の充実イメージ

かつて社会の発展・企業の成長・個人の成長がイコールの関係にあった時代においては、所属する組織を超えてキャリアを考える必要に迫られることはありませんでした。

時代は移り変わり、個人を取り巻く環境は劇的な変化の時期を迎えています。従来は良いとされてきた価値観にとらわれず、自分自身が本当に求めているキャリアを本質的に問い直すことがいま私たちに求められています。

プロティアン・キャリア思考を身につけ実践していくことは、個人にとって充実したキャリア・人生をもたらすだけでなく、結果的に所属する企業に必要とされる意識変革にもつながっていくでしょう。

自身が変わっていくことで、周囲にも良い影響を与えられる可能性は十分にあります。プロティアン・キャリア思考を身につけて、今後の充実したキャリアと豊かな人生を手に入れましょう。




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