5Gのインターネットで、私たちの生活はどう変わる?
[最終更新日]2022/12/15
2020年3月から「5G」のサービスが始まる——。ニュースなどで、こんな言葉を多くの人が耳にしたことがあるでしょう。
「5Gになるとどんなことが変わるのだろう?」
「5Gにはどんなメリットやデメリットがあるの?」
「5Gをどう利用していけばいい?」
さまざまな疑問を持っている人もいるかもしれません。たしかに、5Gを利用できる機器はまだ決して多くなく、あまり身近なものとは感じられないかもしれません。
しかし、今後数年間で5Gは世の中で広く利用されるようになり、私たちの暮らしを大きく変えていく可能性が高いと言われています。
そこで、今回は「5G」とは何か、どのように世の中を変えていくのかを詳しく見ていきます。5Gを利用するメリットやデメリット、5G導入に向けて準備しておきたいことにも触れていますので、ぜひ参考にしてください。
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Index
目次
5Gとは?これまでの4Gとの違いって何?
5Gとは
はじめに、5Gとはそもそもどんなものなのか、その概要について確認していきましょう。
私たちが日頃スマートフォンやタブレットを利用する際、無線で通信を行っています。これまでは4G(第4世代移動通信)と呼ばれる規格が利用されてきました。
5Gは「第5世代移動通信」のことで、4Gからさらに進化した通信システムを指しています。4Gと比較した場合の5Gの特徴として、主に次の3点が挙げられます。
5Gの特徴
- 通信速度が従来より約20倍速くなる
- 通信での遅延は少なくなる
- たくさんの機器・端末に同時接続できるようになる
4G以前には3Gという通信システムが利用されていましたが、3Gでは高画質の動画が途切れて再生できなかったり、情報量の多いWebサイトを読み込むのに時間がかかったりするといった問題点がありました。
4Gが普及したことで、私たちは移動中でも手軽に動画を見ることができたり、あらゆるWebサイトをほぼストレスなく閲覧することができるようになったりました。
3Gから4Gへの進化は私たちの暮らしに大きな影響を与えてきましたが、4Gから5Gへの進化はこれとは比べものにならないほど大きなインパクトを私たちの暮らしにもたらすと言われているのです。
4Gとの違いは
4G | 5G | |
---|---|---|
通信速度 | 最大1Gbps | 最大20Gbps |
同時接続数 | 10万台/平方km | 100万台/平方km |
遅延速度 | 10ms | 1ms |
4Gから5Gになると、通信速度は20倍、同時接続数は10倍、遅延速度は10分の1になります。
体感でどのぐらい差があるかと言うと、2時間の映画をダウンロードするには4Gでは5分間かかっていたところを、5Gではたった3秒でダウンロードできてしまうのです。
もちろん、高画質の動画を何の問題もなく再生でき、あらゆるWebサイトを全くストレスなく閲覧できるようになるでしょう。
同時接続数とは、単位面積あたりで同時に接続できる機器の数のことを指しています。1平方キロメートルあたり100万台の通信が可能になるわけですから、人の数よりもずっと多いことになります。
つまり、スマートフォンやタブレット、スマートウォッチ以外にも、各人が複数台の機器を常にインターネットに接続された状態で利用できるようになります。
遅延速度とはデータが送られて受信するまでのタイムラグを示しています。4Gから5Gになることで超低遅延が実現され、もはやネットを利用する上で「待つ」「遅れる」といった経験をすることはなくなると考えられます。
5Gになると、具体的に世の中の何が変わる?
4Gと5Gでは速度や同時接続台数に大きな差があり、これまでよりも格段に速いデータの転送を実現できるようになることがお分かりいただけたかと思います。
しかし、速度が速くなることで私たちの暮らしにそれほど大きな影響があるのか、半信半疑の方もいるのではないでしょうか。
より具体的なところでは、5Gになることで次のような変化が世の中にもたらされると言われています。
- Web上の大容量データを快適にやり取りでき、いずれは「ダウンロード」自体が不要になる可能性
- 職場での業務自動化、家庭でのIoT化が促進され、「離れたモノを自由に操作できる」環境に
- AR・VR技術およびEV(自動運転)の実用化が促進される
順を追って詳しく見ていきましょう。
Web上の大容量データを快適にやり取りでき、いずれは「ダウンロード」自体が不要になる可能性
スマートフォンを使っているとき、「ダウンロードしています」という表示を目にしたことがあるはずです。
ダウンロード完了までの残り時間の目安が表示され、ダウンロードが完了するまでしばらく待っていなくてはなりません。
現在の4Gでは、大きすぎる容量のデータは「いったん端末本体にダウンロードしてから開く」という過程を踏む必要があります。そのため、ダウンロードに時間がかかり待ち時間が発生することになるのです。
5GではWeb上にある大容量のデータをごく短時間で受発信することができるようになります。
それだけではありません。「いったんダウンロードする」という過程そのものが不要になる可能性があるのです。
データは端末から別の端末へ、無線通信によって直接送ることができるようになり、私たちはデータのやり取りにストレスを感じなくなるでしょう。
「ダウンロードに時間がかかる」「データを開くまで待ち時間が発生する」といった場面は過去のものとなっていく可能性が高いのです。
職場での業務自動化、家庭でのIoT化が促進され、「離れたモノを自由に操作できる」環境に
通信の高速化と超低遅延が実現することで変化するのは、スマートフォンの世界に留まりません。
たとえば、ビデオチャットを利用したテレビ会議を導入している企業が増えていますが、現在の技術では画面を通したコミュニケーションには微妙な遅延が生じるなど、目の前の人と対面で話すのと比べて少々の違和感を抱くことがあります。
5Gによる大容量・超低遅延通信が実現すれば、映像がよりスムーズになり、まるで目の前に相手がいるかのような臨場感をもって話すことができるでしょう。
医療分野では、オンライン診療や遠隔治療が可能になります。遠隔地に住んでいる人に手術をしたり、医師間で膨大なカルテを共有したりできるようになるため、医師不足が深刻化する過疎地においても安定的に医療行為を受けられるようになる可能性があります。
さらに、IoT(モノのインターネット)により、あらゆる身近な電化製品がインターネットに接続され、センサーから得られる情報から機器の故障をメーカーに通知したり、温度や明るさに適した機器の調整を自動化したりできるようになると言われています。
AR・VR技術およびEV(自動運転)の実用化が促進される
4Gが主に利用されている現在、動画と言えばスマートフォンなどの平らな画面で見るものとされています。
しかし、VR(仮想現実)の世界においては、360°どこを見ても動画コンテンツの世界がつながっているような、没入感の高いコンテンツを楽しめるようになります。
AR(拡張現実)は現実世界に付加情報を加え、たとえば知らない土地でもレンズをかざせば地名や番地が表示されるなど、さまざまな利用方法が考えられます。
近未来の技術としてEV(電気自動車)も注目されています。
自動運転技術が発達すれば、車は走るスマートフォンのようなものへと変化し、道路状況や他の車の状況など常に変化する環境をリアルタイムで把握しつつ、他の車同士で通信し合って情報共有していくことも可能になります。
これにより、人が見えない範囲や遠方の状況でも通信によって把握できるようになり、より安全で事故の少ない自動車になると言う人もいます。
こうした技術を実現するには、膨大な情報量の転送を常に高速で行う必要があります。5Gの大容量通信・多端末同時接続は、これらの技術を実現する上で欠かせない通信方式なのです。
5Gのデメリット・課題点は?
私たちの暮らしを飛躍的に便利で快適なものへと進化させる可能性を秘めた5Gですが、メリットばかりというわけでもありません。
中にはデメリットと感じられる点や、今後解決していかなくてはならない課題点を孕んでいるのも事実です。
では、5Gの代表的なデメリットとして、どのような点が考えられるのでしょうか。主なデメリットとして、次の3点が挙げられます。
- 現在の通信会社の料金体制のままでいくと、通信料金が高くなる可能性
- 接続する機器・デバイスが「5G対応」でないと意味をなさない
- セキュリティのリスク範囲はより重大になる
こうしたデメリットを理解した上で、5Gを適切に利用していくことが大切です。
それぞれのデメリットについて、順を追って見ていきましょう。
現在の通信会社の料金体制のままでいくと、通信コスト(料金)が高くなる可能性
5Gは4Gと比べて大容量のデータをやりとりできることから、通信コスト(料金)が従来よりも高くなる可能性があります。
アメリカでは日本に先立って5Gの利用を開始していますが、主要キャリア(通信事業者)は従来のプランに10ドル前後を上乗せする料金に設定しています。
日本においても主要3キャリアが5G料金プランを発表しました。
キャンペーンなどによって4G並みの料金に抑えているキャリアも見られますが、正規料金としては4Gと比べておよそ1,000円前後高く設定されていることが分かります。
docomo | au | softbank | |
---|---|---|---|
データ容量 | 無制限 (キャンペーン終了後100GB) | 無制限 | 50GB+動画SNS使い放題 |
料金(月額) | 7,650円 | 8,650円 | 8,480円 |
このように、5Gになることで従来の4Gの通信プランと比べてデータ容量が大きくなる分、料金の面ではどうしても高くなってしまいます。
通信コストをできるだけ抑えたいと考えている人にとっては、5Gになることで料金が高くなるのはデメリットと言えるでしょう。
接続する機器・デバイスが「5G対応」でないと意味をなさない
5Gを利用してみたい場合、これまで使ってきたスマートフォンでそのまま5Gを利用できるかと言えば、答は「NO」です。5G通信を利用するためには、5G対応機種を新たに購入する必要があります。そのため、機種変更による買い換えのコストが発生することになります。
また、新しいサービスは開始直後に利用できる端末の種類が限られてしまうという欠点があります。
5Gも例外に漏れず、たとえばauであれば2020年3月末時点で5Gに対応しているスマートフォンは2機種のみとなっています。
今後、夏にかけて対応機種のラインアップは増えていきますが、今すぐ5Gを利用してみたい人にとっては対応機種の少なさはデメリットになり得るでしょう。
また、サービスエリアに関しても現状では限定されており、対応エリアでない場所では従来通り4G通信を使わざるを得ない状況になります。
徐々にサービスエリアは拡張されていくはずですが、今すぐどのエリアでも5Gを快適に使うのは難しいのが実情です。
セキュリティのリスク範囲はより重大になる
5Gになることで同時接続可能な端末台数が格段に増えると前で述べました。この点はユーザーにとってメリットとなると同時に、デメリットにもなり得ます。それはセキュリティの面においてです。
インターネットに接続する機器が増えるということは、サイバー攻撃やウイルスの侵入といったリスクも高まることを意味しています。
これまではスマートフォンやPC、タブレット等の端末についてのみウイルス対策ソフトを導入するなど対応を考えればよかったところを、あらゆる接続機器についてセキュリティに留意する必要に迫られるのです。
どれか1つの機器が攻撃に侵入されてしまうと、ネットに接続されている他の機器からも情報を抜き取られたり、機器を乗っ取られてしまったりする恐れがあります。IoTが浸透し日常生活でセンサーが多数稼働するようになれば、プライバシーが流出するリスクも増すでしょう。
5Gを利用するにあたって、セキュリティリスクの範囲が広がることはよく理解しておく必要があります。
5G導入の前に準備しておくべきこと
5Gの導入を検討するにあたって、いくつか注意すべきデメリットも存在することを述べてきました。
とはいえ、5Gは多くのメリットも享受できる便利な技術です。
近い将来、5Gが広く浸透し、多くの人が利用していくことに間違いはないと予想されます。
いざ5Gを導入する段になって慌ててしまうことのないように、導入までに準備しておくべきことを確認しておきましょう。
5G導入にあたって準備しておくべきこととして、次の3点が挙げられます。
- 5Gに関する最新情報をチェックしておこう
- 5G対応の機器・デバイスを用意しておく
- セキュリティ面の見直しをしておく
5Gに関する最新の情報をチェックしておこう
5Gはこれから利用が広まっていく新しい技術であるため、ユーザーが把握しておくべき状況が日々変化することは十分にあり得ます。
たとえば、新型コロナウイルスの影響で製造ラインがストップしたり、消費が減退したりすることが考えられます。
記憶に新しいところでは、Apple社は新型iPhoneの発売を延期すると3月下旬に発表しています。新型iPhoneは5G対応になると見られていたことから、iPhoneユーザーにとっては5Gの恩恵を受けられるタイミングが遅れることを意味しています。
また、基地局の増設による5G利用エリアの拡大に関しても、東京オリンピックの開催時期延期によって工事が頓挫したり、竣工時期が遅れたりする可能性が現実味を帯びてきました。
このように予定が変更となったり、本来であれば利用を開始できるはずの時期に環境が整わなかったりすることは今後も起こり得るでしょう。
5Gに関する最新の情報を随時チェックし、とくに重要な情報に関しては把握しておくことが大切です。
5G対応の機器・デバイスを用意しておく
前項で触れた通り、5G通信を利用するためには5G対応機器を用意する必要があります。
5G対応機種は今後各社が順次発表していくことになるため、いつどの機種に乗り換えるか慎重に見極める必要があります。
買い換える時期によってはキャンペーンを利用するなどして安く購入できる場合もありますが、対応エリアが限定的で実質的に4Gを中心に利用せざるを得なかったり、動作が不安定でかえってストレスを感じたりすることも考えられます。
まずは対応機種のラインアップがある程度まで増え、選択の幅が広がってからデバイスの購入を検討したほうが得策でしょう。
また、5Gの通信プランに加入する場合、料金体系やこれまでの4Gとの料金の違いをよく確認しておく必要があります。
通信キャリア各社が打ち出しているキャンペーンの適用などにより、当初は料金の差が分かりにくくなっていることもありますので、実質的に年間どれだけの通信費が必要になるのか、前もって試算しておくことをおすすめします。
セキュリティ面の見直しをしておく
ウイルス対策ソフトなど、セキュリティ面での見直しをしておくことも重要です。
これまで利用してきたPCやスマートフォンで何らかのセキュリティ対策を講じていた人も、5Gを導入するにあたり改めてセキュリティ面での見直しを図っておくことをおすすめします。
ひとつの考え方として、従来の4G通信による利用時と比べて、もう一段高いセキュリティレベルを意識しておくといいでしょう。
ウイルス対策ソフトの警戒レベルを1つ高いものに設定し直したり、場合によってはソフトそのものを再検討したりする必要もあるかもしれません。
とくにスマート家電などのIoTデバイスに関しては、スマートフォンやPCと比べてセキュリティ対策が十分に講じられていなかったり、選択できるセキュリティ対策が限られていたりすることもめずらしくありません。
漏洩しては困る情報やプライバシーを守るためにも、5Gの導入にあたってセキュリティを再検討しておくことは必須と言えるでしょう。
まとめ)5Gの特性を理解して「5G時代」に備えよう
5Gの実用化と利用の浸透は、私たちの暮らしを大きく変えるだけのポテンシャルを秘めています。
いずれは「インターネットに接続されている」ということを忘れてしまうほど、私たちの身のまわりにあるあらゆる機器が常時接続されるのが当たり前のことになり、私たちの生活に無線通信はなくてはならないものとなっていくはずです。
一方で、5Gはまだ市場に投入されたばかりの新しいサービスであり、ユーザーにとってデメリットと感じられる点がないわけではありません。
5Gの特性をよく理解した上で、メリットの面をうまく活用できるよう備えていくことが大切です。
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