今話題の「NFT」って何? 特徴と将来性、活用事例を紹介

[最終更新日]2023/10/17

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今話題の「NFT」って何?

2021年3月、米国人アーティストのBeepleによるデジタルアート作品が6,930万ドル(日本円でおよそ75億円)で落札され、大きな話題となりました。その際、非代替性トークン(NFT)という言葉を初めて耳にした人も多いことでしょう。

デジタルアートの価値に関するものらしい
ブロックチェーン技術を使っているそうだ

こうした断片的な情報を得ている人はたくさんいるはずですが、そもそもNFTとはどのようなものか、明確に理解できている人はまだ少数派と考えられます。

そこで、注目を集めているNFTの概要と将来性について解説します。ぜひNFTへの理解を深めるきっかけとしてください。

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Index

目次

NFT(Non-Fungible Token)とは?

NFTとはNon-Fungible Tokenの頭文字を取った言葉です。
Fungibleは「代替可能な」という意味の単語ですので、Non-Fungible Tokenは日本語で「代替不可能なトークン」「非代替性トークン」などと訳されます。

ブロックチェーン技術を実用化した事例として注目を集めているNFTですが、目で見たり手で触れたりできるものではないため理解しにくい面があるのも事実です。

そこで、まずはNFTとはどのようなものなのか、概要と注目される理由、将来性について確認しておきましょう。




NFT=ネット上のコンテンツに「唯一無二の価値」を持たせる技術

絵画など非デジタルのアート作品は本物にのみ価値があり、コピー品や贋作には価値がないことは世界中で知られる常識となっています。

一方、デジタルデータによって構築されたアート作品などのコンテンツは容易にコピーが可能であり、作品の価値を担保するのが難しいと考えられてきました。

そこで、改ざんできない何らかの仕組みによってネット上のコンテンツに価値を持たせる必要がありました。
改ざん不可能なデータとして白羽の矢が立ったのがブロックチェーン技術です。

ブロックチェーンはこれまで主にビットコイン(BTC)やイーサリアム (ETH)といった暗号資産で利用されてきました。

分散型ネットワーク上にトランザクション(取引)履歴を格納していくブロックチェーンは理論的に改ざん不可能であり、通貨としての信頼性を担保することができます。この仕組みをデジタルコンテンツの所有権や正規品であることの証明に利用しようというのが、NFTの基本的な考え方です。

NFT説明画像



なぜ今NFTが注目されているのか

NFTが注目される理由 1.仮想通貨により、ブロックチェーンが広く知られるように。 2.暗号資産以外へもブロックチェーンが応用されるようになった

NFTが注目を集めている理由として、主に2点が挙げられます。

1つめとして、NFT以前から盛り上がりを見せていた暗号(仮想)通貨の存在が挙げられます。
国家が発行・管理する通貨ではなく、インターネット上に散在する公開暗号鍵が通貨としての価値を持つという新たな発想は、世界に多大なインパクトを与えました。

そして、ビットコインをはじめとする暗号資産はまたたく間に投機対象となっていきます。2021年に入ると1BTC=600万円を超え、過去に興味本位でビットコインを購入し保有していた人が億単位の資産を築く「億り人」が誕生するなど、世界中で話題を席巻しました。

この出来事は、ブロックチェーン技術が広く知られる契機となったといえるでしょう。

2つめとして、暗号資産以外へのブロックチェーン応用が多くの分野で模索されてきたことが挙げられます。

代替できない」「唯一無二」「コピー不可能」といったブロックチェーンの特性は、価値を担保する手段を求めていたデジタルアートの分野と親和性が高いといえます。

冒頭で触れたように、NFTによって価値の正当性が保証されたアート作品が高額で落札され、ブロックチェーン技術が実用化された事例として注目を集めるに至ったのです。




NFTの今後の将来性について

将来性イメージ

NFTは主にアート作品などの分野で活用されつつありますが、固有の価値を担保することが求められるあらゆる分野で応用が可能といわれています。

一例として、不動産の所有権や会員権といった分野において、すでに実用化が進みつつあります。
今後は学歴や学習歴の証明、身分証明、著作権といった分野でも応用が見込まれています。

他にも、ゲーム内の仮想空間で購入した土地の所有権など、現実世界では証明が難しいとされてきたものの価値付けにも、NFTは今後ますます活用されていくでしょう。

NFTそのものはまだ歴史が浅く、広く利用され始めたのは2018年頃からといわれています。
NFTを活用したビジネスは始まったばかりであり、どのように応用され、市場がどこまで拡大するかは未知数の面があります。

2020年にはNFT市場は3億円規模に達し、2018年からの成長率は8倍を超えています。しかし、ビットコインの市場規模が100兆円を超えていることを考えれば、NFT市場の成長は予測できないほどのポテンシャルを秘めていると考えられているのです。

NFTのメリット・デメリット

多くの分野で活用が期待されているNFTですが、メリットとデメリットの両面があることは理解しておく必要があります。

NFTによって価値が立証されたアート作品などを購入する際はもちろんのこと、今後多くの業界でNFTを活用したビジネスに参入するケースが出てくるはずです。メリットを最大限に活かすのはもちろんのこと、デメリットをしっかりと把握した上で参入する必要があるでしょう。

NFTは歴史が浅い分野のため、全てのメリット・デメリットが明らかになっていると言いがたい面があります。その中でも、現状すでに判明しており、よく言われているメリットとデメリットについて解説します。




NFTのメリット

NFTのメリット ■唯一無二の希少性を創り出すことができる ■偽造や改ざん・破損・盗難のリスクが低い ■ネット環境があれば誰でも収集・交換可能
  • 唯一無二の希少性を作り出すことができる
  • 偽造や改ざん、破損、盗難といったリスクが低い
  • インターネット環境があれば、誰でも収集や価値交換できる

唯一無二の希少性を作り出すことができる

NFTを活用する最大の目的であり、かつ最大のメリットとして挙げられるのが「唯一無二の希少性」を作り出せる点です。
NFTは複製・分割ができないことから、NFTによって価値が立証されている作品は世界に2つとないことが明言できます。

NFTによって現在の所有者を特定できるだけでなく、これまでどのような人の手をわたってきたのか履歴を確認することができるため、確実に「世界中でここにしかない」ものとしての希少性を作り出すことができるのです。

また、NFTの発行者はトークンの誕生日や名称などのメタデータを独自に追加することができます。これにより、他のどのデータとも異なるオリジナリティを持たせることも可能です。



偽造や改ざん、破損、盗難といったリスクが低い

従来、Copy Rightを表記することでデジタルコンテンツの所有権を示してきましたが、偽造や改ざんのリスクを完全に排除できているとは言いがたいのが実情でした。

Copy Right表記は、いわば「コピーや改ざんをしてはならない」と主張しているのみであり、実際に偽造や改ざんをしないかどうかは扱う人々の良心や倫理観に委ねられていたからです。

しかし、NFTによって価値が立証されたデータは、偽造や改ざん、破壊、盗難といった行為を技術的に不可能なものにします

見た目では識別できないほど精巧に作られた贋作であっても、NFTが付与されているかどうかによって容易に鑑定できます。
たとえNFTそのものを偽造しても、NFTには取引の履歴がすべて記録されているため、偽物であることがすぐに分かってしまうのです。



インターネット環境があれば、誰でも収集や価値交換できる

NFTはトークンの一種ですので、データとして電子的に取引することができます。
インターネットに接続された環境さえあれば、NFTが付与されたコンテンツを購入・収集したり、別のコンテンツや暗号資産と交換したりすることが誰にでも可能となります。物理的な距離は問題にならないため、世界中のデジタルコンテンツを即時購入し、収集できるのです。

また、NFTは特定のプラットフォームに依存しておらず、クロスチェーン技術により異なるブロックチェーン同士で横断的に取引することができます。

コンテンツを扱う同一のサービス内でしか売買できないということがないため、特定の事業者に権利を独占されることがないというメリットもあります。




NFTのデメリット

NFTのデメリット ■「モノ」として所有することはできない ■価値付けが難しい
  • 「モノ」として所有することはできない
  • 価値付けが難しい

「モノ」として所有することはできない

NFTの長所であり弱点でもあるのが、物理的な「モノ」ではないことです。

NFTはブロックチェーン上に記録・保管されているデータに過ぎません。具体物を手に取って「これが私の資産だ」と実感したり、金庫に入れて保管したりといったことはできないのです。

この点はNFTによって価値を立証されるデジタルアート作品なども同様です。
物理的に存在しているモノではないので、ディスプレイなどのヒューマンインターフェースを通じて鑑賞するしかありません。

「モノとして存在していること」に価値を見いだしてきた時代にはなかった感覚であり、具体物がなくても「所有」しているという実感が湧くかどうかは個々人の感じ方しだいの面があります。



価値付けが難しい

冒頭で例に挙げたBeepleによるデジタルアート作品は75億円で落札されましたが、なぜ30億や50億ではなく75億円の価値があるのか、論理的に説明するのは困難と言わざるを得ません

「75億円で買い求めた人がいたから」としか説明しようがないため、NFTの価値付けは主観に基づいていると言われてしまえばそれまでなのです。

ただ、この点はあらゆるアート作品やエンターテイメント系コンテンツについて言えることです。
絵画などの芸術作品がそうであるように、愛好家やコレクターが存在する限り対象物には価値が生じます。

「NFTそのものに価値があるのか」という議論にあまり意味はなく、NFTによって保証されたコンテンツの価値は「求める人」によって成立していると理解しておくべきでしょう。

NFTの実際の活用事例

最後に、NFTがすでに実用化されている事例について紹介します。

ここまでの解説で、NFTがどのようなものか理解できたものの、やはり自分には縁遠いもののように感じる人もいるはずです。しかし、次に挙げる事例を見ると、NFTは意外と身近なところで活用されつつあることを実感するのではないでしょうか。

NFTが今後どのように利用され、私たちの日常生活の中に溶け込んでいくのか、近未来の「資産」のあり方にぜひ思いを馳せてください。




SKE48のブロックチェーントレーディングカード「いきなりNFTトレカ」

SKE48×NFTトレカ

引用元:SKE48×NFTトレカ

アイドルグループSKE48は、ファンに向けてデジタルトレーディングカードを販売しています。

1枚1枚のカードはNFTによって固有のデータが付与されており、カードを複製できないだけでなく、これまでどのような経緯で人の手にわたってきたのかWeb上で履歴を確認することができます。カードの所有者は自分のコレクションを紛れもない自分だけの「資産」として保有することができるのです。

トレーディングカードをNFTによって価値付けすることは、アーティストが受け取るべき印税などの権利を適切に運用する上でも役立ちます。

これまでもトレーディングカードは中古市場で活発に二次流通してきましたが、中古品が売買されてもアーティスト側には報酬が入らないという問題がありました。

NFTによって売買履歴が追跡できれば、二次販売以降も印税を適切に把握してアーティストに還元することが可能となります。
このように、NFTで価値付けされたデジタルトレーディングカードはファン・アーティストの双方にとってメリットのある事例といえます。




バーチャルスニーカー 「AIR SMOKE 1™」

AIや3Dテクノロジー技術を駆使した先進的な商品を発表している1SEC社は、2021年4月、日本初となるバーチャルスニーカー「AIR SMOKE1™」を発売しました。

購入者はARやVRといった仮想空間上でスニーカーを着用することができます。
動画で確認できるように現実のスニーカーでは表現できない動きのある配色やスモークが噴き出すデザインが施されており、ファッションの概念を大きく変えていくポテンシャルを秘めています。

価格は5イーサリアムで、4月23日時点での日本円に換算するとおよそ124万円となっています。高額商品であるにも関わらず、販売開始からわずか9分で落札され、大きな話題を呼びました。

これまで実際に「着用」することが前提だったファッションアイテムですが、バーチャルスニーカーを皮切りに、今後は仮想空間上でファッションを楽しむ時代になっていく可能性があります

その際、自分自身が所有していることを証明するための技術として、将来的にNFTがますます活用されていくことを予見させる事例といえるでしょう。




Hashmasksのデジタルアート

hashmasks.com


画像引用元:hashmasks.com



Hashmasksは世界70名のアーティストが参加するプロジェクトチームであり、8ヶ月もの準備期間を経て発表されたのが上図のデジタルポートレート作品です。

約16,000点のポートレート作品があり、1点1点の作品を誰が制作したのかは明らかにされていません。
2021年1月に初版セールが行われ、作品は完売しましたが、その先デジタルアートが販売される予定については未発表です。
そのため、初版の希少性が高まり、人気作品の中には高額で取引されているものもあります。

Hashmasksの大きな特徴として、所有者が作品タイトルを変更できる点が挙げられます。
タイトル変更のためのトークンはNCT(Name Changing Toke)と呼ばれ、1日あたり10枚のみ配布されることになっています。

1,830枚以上のNCTを獲得すると作品タイトルを変更することができるようになり、作品1点あたり平均19回のタイトル変更が可能です。
NFTによって「1点もの」を所有できる魅力に加え、自分だけのタイトルを付与することで所有の痕跡を残せる点が、作品への愛着を深める要因となっていることは想像に難くないでしょう。

まとめ)既存の価値が転換する事例の1つとしてNFTを理解しよう

扉イメージ

デジタルコンテンツの価値をどのように保証するのかは、長らく課題とされてきました。「モノ」としての具体物がない以上、価値や所有権を立証するのは困難と考えられてきたのです。

ところが、NFTによってこの問題は一挙に解決へと向かいつつあります。
さらに、今回取り上げたバーチャルスニーカーのように、従来は存在し得なかった商品が開発され、今後ますます流通していくことになるでしょう。

このように、NFTは「所有」「取引」といった概念や価値観を大きく塗り替え、転換させていく可能性を秘めているといえます。

テクノロジーの発達によって、ライフスタイルやものの考え方に大きな変化が訪れることは十分にあり得ます。NFTを個別の事象として理解するだけでなく、物事の価値が大きく転換する事例の1つとして捉えてみてはいかがでしょうか。

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