私の管理職体験談:自分は、部下の「写し鏡」。

[最終更新日]2021/07/13

体験談
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私の管理職体験談:自分は、部下の「写し鏡」。

アパレル業界で20年働いています。

中学生の時に「東京コレクション」に刺激を受け、憧れのショップ店員さん、服に囲まれた仕事をしようと決めました。
19歳の時に気になっていたアパレルショップへ「募集していませんか?」と直に聞きに行き、アルバイトとして雇ってもらいました。その後社員となり、今もその会社で働いています。

私の性格はというと、接客業なのにも関わらずかなりの「人見知り」です。
接客の時は仕事スイッチを入れるので、自分が持っている知識やスキルを発揮した接客スタイルを作っています。

真面目で頑張りすぎるほど頑張り屋さん、と友人には言われます。猪突猛進型で仕事でもプライベートでも1度気になったらとことん自分が満足行くまでやり遂げるタイプです。

趣味は特にありません。
あえて言うなら、「仕事が、趣味」。
休日も仕事のことばかり考えています。提案した販売戦略やマーケティングでの成果を実感できた時が、いちばん幸せを感じられます。

jhb0117さん(女性 歳)
職業
小売業(アパレル)
職種
販売
年収
非公開
従業員規模
約40人
地域
東京都

Index

目次

アパレル店長をしていて、一番大変なことは。

アパレルショップ

店長業務を始めたのは、今から10年以上前の25歳の頃です。
当時、レディースショップの店長を任されていました。

店長になって「これは大変だな」と最初に思った仕事は、「売上目標の達成」。
本社の提示してくる売り上げ目標はいつも高めでしたので、常にどうしたら売上を増やせるかを考えて試行錯誤を続ける日々でした。

そして次に大変さを感じるようになったのは、「スタッフのモチベーション管理」でした。
これは売上とも直結していて、私の店舗は個人売上制で、販売実績しだいでお給料にプラスαがでる実力環境でしたので、スタッフが「販売実績を伸ばそう」と高いモチベーションを掲げてくれれば、店舗全体の売上も上がりやすくなります。そして、当然その逆も然りです。

スタッフがモチベーションを持って売上に貢献してくれるようになるためには、適切な接客・接遇、そして販促等のスキルを高める為の育成も大事ですし、体力やメンタル面のフォローも必要となります。

──それと、職場の「人間関係」
店長なりたてのときに、私はこの点をあまり見られていませんでした。

私のショップには、「派閥」が存在した。

派閥のイメージ
スタッフ

「今月で、辞めさせてください」

あるとき、私はスタッフ(ここでは「A」とします)からそう告げられました。

Aは勤務して3年の中堅スタッフでした。個人売上成績も良く、かつモチベーションも高く仕事に臨んでくれていたので、彼女からの辞意は私を少なからず驚かせました。
辞職の理由は、

A

「名前は明かせないが、他のスタッフと険悪になって、居づらくなってしまった」

──とのことでした。

何度か引き留め交渉をしてみましたが、Aの意思を覆すことはできず、結局彼女は退職してしまいました。

次に気になったのは、Aの話していた「他のスタッフと険悪になった」という話でした。
普段業務をしていて、スタッフは皆互いにコミュニケーションを適度に取り合っていて、仲が悪くなっているとはとても思えなかったのです。

ただし、これはゆくゆく観察してみると、スタッフ間で2つの派閥があることに気付きました。

  • 派閥1:パート主婦B(36歳)、アルバイト主婦C(26歳 新人)
  • 派閥2:独身女子D(28歳)、パート主婦E(25歳 新人)

このうち、パート主婦Bはいちばんの古株スタッフで、独身女子Dはショップの稼ぎ頭でした。
退職したAは派閥1のほうに属していたようでしたが、なぜこんな派閥ができてしまったのか、まったくもってわかりませんでした。

ですが、皆いい大人ですし、普段接していてどちらかの性格や振る舞いに根本的な原因や問題があるとも思えませんでした。

(ちょうど人の入れ替わりもあった直後だし、いずれ収まるだろう)

Aの退職は残念でしたが、それを彼女たちに話してぶり返すのはあまり良くないだろうと、私はこの件に関してはそのまま放っておくことにしたのです。

ですが、これが良くありませんでした。
ふたつの派閥は更に関係が悪化していき、とうとうショップの雰囲気までギスギスするようになってしまったのです。

派閥のリーダーに、面と向かって言われたこと。

面談のイメージ

アパレルショップでは、リピート顧客の創出がとても大切です。
そのため、販売スタッフは「次もまたショップに来てもらえるように」と、お客様への対応を行います。そしてそれは個人の売上成績にも大きく関わりません。

ただし、そのお客様が毎回必ず同じ販売スタッフに相談するとは限りません。
そうした些細なお客様の取り合いが数回あったことが、2つの派閥ができた原因であったことを私は後になって知りました。

気付けばお客様対応以外でも、2つの派閥は業務を分裂して、その派閥内で完結させてしまうような働き方をしていました。つまり、ショップとしての一体感はほとんどなくなってしまい、互いをけん制しているような、ピリピリとした緊張感が見られるようになってしまったのです。

さすがにこの状態はまずいと思い、私は2つの派閥のリーダー的存在であるBとDと面談をして、「もっと全員で助け合い、協力してほしい」とお願いをしました。

その場ではBとDは「わかりました」と言ってくれましたが、それ以降の日も状況はあまり変わりませんでした。

ときを同じくしてショップの売上が落ちはじめてきて。
それを派閥の影響と決めつけるのは早計だったかもしれません。ですが、私もだんだんと焦りが出てきてしまい、スタッフに対しての指導やフィードバックの際に無意識に厳しくなってしまうことがありました。

そして、変わらず交流が断絶したままのBとDの態度にも苛々が募っていました。

ある時私はBとDをそれぞれ個別に面談を持ち掛け、「今のあなたたちの態度は、店の売上にも悪影響を与えている」とはっきり言いました。

Bは私の様子からこれは只事ではないと読み取ったのか、終始「申し訳ございません」、「すみませんでした」と言い続けていました。

でも、Dの方は、まったく違う反応を私に返してきました。彼女は、私にこう言いました。

D

「店長は、私たちのことを本当に理解してくれてないんですね」

結局、派閥の原因は私にあった。

号泣するイメージ

「理解していないというのは、どういうこと?」

Dは私の質問には応えず、代わりにこう言いました。

D

「私、売上へのプレッシャーがキツくて、もう耐えられません」

そう言って、Dは私の前で号泣しました。
私はしばらくの間、何も言えずにただただDのことを眺めていました。

そして、ようやく気付きました。

皆、個人売上目標を達成するために、必死になっていたということ。
そして、私はそうしたメンタル面に関わるフォローは、あまりしてこなかったこと。
それどころか、Dが言うには、いつも売上管理に苦心している私を見て皆さらにプレッシャーを募らせていたということでした。

結局、派閥の原因は私にあったのです。

自分の業務が忙しく、なかなかスタッフの些細な変化に気づいてあげることが出来なかっただけでなく、普段からちゃんと話しやすいような環境を作れていなかった事に気が付きました。

思い返せば、業務に関する話や接客、ディスプレイに関する指導などの育成をメインとした話はしょっちゅうしていましたが、人間らしい他愛ない日常会話は殆どしていませんでした。

気を許せるような上司ではなかったのだと、辞める段階になるまで相談されることのない上司だったのだと、痛感しました。

私とスタッフは、「合わせ鏡」。

人材育成

今でも、当時のことをよく想い出します。 あれ以来、私は一緒に働くスタッフの心のケアをとても意識するようになりました。

私がスタッフを気にかけることでスタッフも私を気にかけるようになり、いつの間にか派閥はなくなりました。それだけではなく、私自身も以前よりも業務に心の余裕を持てるようになったのです。

売上目標は依然厳しいものでしたが、スタッフ達の頑張りを感じて励まされることも多くなりました。

「自分自身は、相手の写し鏡」

これは、昔読んだ『鏡の法則』という本に書いてあった一節です。

スタッフの心の状態は、私の心の状態でもあり、また私がより良い状態を目指せば、スタッフもまたそれに反応してくれること。

そして、同じ職場という空間の中で、居心地は反響して育てていくものだということが分かりました。

◇ ◇ ◇

それから13年が経ち、私は結婚を機にその職場から違う職場へと異動となりました。

現在は本部でWebサイトの運営ディレクターをメインで行っております。

Webサイト運営となると、スタッフと会話をすることよりもキーボードをタイピングする頻度の方が圧倒的に多くなります。

ですが、実店舗に関わる企画の提案やオリジナル商品の提案、マーケティングをする際には必ず実店舗のスタッフの声を聞いたり、私自身不安なことがあればすぐに立場関係なく相談をするように心がけています。

これからチャレンジしたいことは、全店舗のスタッフを巻き込んで、もっと仕事を楽しめるような環境作りと職場作りを提案していくことです。

私が仕事を楽しめていられれば、きっと身近にいるスタッフ達もまた仕事を「楽しい」と思ってくれやすくなるでしょう。そうして売上にも繋げていければ、得られるやりがい、達成感はもっともっと、大きくなると思っています。