私の管理職体験談:メンバーから陰で「アメリカザリガニ」と言われた私。
[最終更新日]2023/03/11
企業向けにシステム開発の仕事を請け負って、そのプロジェクトのマネジメントを行う──いわゆる、プロジェクトマネージャーの仕事をしています。
プロジェクトマネージャーとは
プロジェクトマネージャー(PM)とは、システム開発などのプロジェクトの計画・進行管理を主な仕事としたマネジメント職です。
納期や製品の完成度などをコントロールし、クライアントの求める成果を提供することがプロジェクトマネージャーの役割になります。
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私は基本的におとなしい性格で、あまり人に指図したりするのは得意ではありません。
ですが、論理的に物事を考えることが好きということもあり、一つずつ論理的に積み上げて仕事を進めるプロジェクト管理の仕事は「けっこう自分に向いている」と感じています。
いかたろうさん(男性 歳)
- 職業
- システム開発
- 職種
- SE、プロジェクトマネージャー
- 年収
- 約750万円
- 従業員規模
- 約450人
- 地域
- 大阪府
Index
目次
プロジェクトマネージャーの業務で最も求められることは、「決断すること」。
仕事をしていると、いろんなトラブルが起きるものです。
プロジェクトで発生した問題は、責任者の私が対処しなくてはいけません。
そこで主に必要となるのは、「決断」です。
もちろん周囲の意見は聞きつつも、最終的に決めるのは自分です。
プロジェクトチームは仲良しチームではないので、ときに「パフォーマンスの悪いメンバーの入れ替え」を決断することもあります。もちろん、メンバーからはあまりいい顔はされません。
──そうした時に、ふと孤独を感じる時があります。
ですが、プロジェクトマネージャーとはある程度メンバーとの適切な距離感を保つことが、求められるものだと、私は思っています。そして、その業務スタイルでこれまで、相応の結果を出してきました。
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「花形プロジェクト」に、マネージャーとして途中参加することになって。
「最も孤独感を持った決断」は、5年前のことでした。
当時、社内で大規模なシステム開発のプロジェクトが進行していました。いわゆる花形のプロジェクトだったのですが、私とは部署が違っていたので関わっていませんでした。
しかし、プロジェクトが中盤に差し掛かった際、「進捗がとても思わしくない」という噂が広がってきて。その数日後、プロジェクトを立て直すために私がマネージャーとして加わるように上司から指示を受けたのです。
進行中のプロジェクトの立て直しはこれまでもやってきていたものの、他部署のプロジェクトに途中から関わるのはこれがはじめてで、メンバーも知らない人がほとんどでした。
プロジェクトに関わって数日して、メンバーたちの間の会話で「アメリカザリガニ」という言葉を聴くことが何度かありました。──それは、私のことでした。
なぜ私がアメリカザリガニなのか、それは昭和初期に外来種として日本でも生息するようになったアメリカザリガニが、当時の国内の絶滅危惧種を食い荒らしてしまうなどの生態系に著しい影響を与えたことを、私の着任を皮肉って揶揄していたのです。
ですが、確かに私は彼らにとってそれくらいの影響があったのでしょう。
なぜなら、そのプロジェクトチームはチームとしてほとんど機能しておらず、3歩進んで5歩下がるといった毎日を繰り返していたからです。
私は早々にメンバーの配置換え、他チームに異動させて新たなメンバーを加えるといった決断を行って、その際にあからさまに私に悪感情を示したメンバーもいました。
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思いを大切にしすぎると、動けなくなる。
最終的に、プロジェクトは立ち直りました。
無事システム運用が開始されたときは、達成感もひとしおでした。
ですが、その感慨を共有できるメンバーはチーム内の一部でした。
結局、私はメンバーの大半と関係性を構築できないまま、プロジェクト終了になってしまったのです。
「もっとうまく立ち回れたかもしれない」と思うこともありますが、一方で、「しょうがなかった」と思う自分もいます。
メンバーと、プロジェクトの「ゴールイメージ」を共有することはとても大切で、同時にとても難しいものです。
どんなに説明しても、メンバーはプロジェクトのスタート時にはまだ自分の業務範囲しか見えていません。時間をかけて一緒に業務をしながら、数度のミーティングを重ねて、少しずつイメージを共有していくものです。
「プロジェクトマネージャーとしての決断」と「関わる人たちの思い」は、相反してしまうことが少なくありません。ですが、そのバランスを気にし過ぎると何もできなくなる。だから、今回はこれで良かったんだと思います。
管理職は、孤独。
プロジェクト管理の仕事を15年近く続けていますが、基本的に孤独です。
プロジェクトマネージャーは、メンバー、顧客、経営層の各ステークホルダーのちょうど真ん中に位置して仕事を行います。それぞれのステークホルダーに寄り過ぎることなく立ち回る必要があるので、特定の誰かと仲良くなることはほとんどありません。
さすがにこの孤独感にはもう慣れてきていますが、ごく稀に貰える感謝の言葉によっていつも救われている面もあります。
先に述べた大規模プロジェクトも、最終的には数人のメンバーから感謝の言葉を頂けました。
「人間は全員と仲良くできるわけではない」と割り切っていながらも、こうした感謝の気持ちをもらえるときが、たまらなく嬉しくもあります。
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私のこれからの、管理職としての働き方。
これからも、私は引き続きプロジェクトマネージャーとして働いていくことでしょう。
ですが、40代後半に差し掛かってからはこれまでのドライな業務スタイルだけでは物足りなさも感じるようになっている自分がいます。
考えていることは、後進の育成──つまり、人材育成です。
私がこれまで培った経験値は、私でしか扱えないものではなく、誰もが実践できるものです。
それを若い人たちに伝えていくことで、より成果を発揮しやすい組織になれるように思います。
最近、若いプロジェクトマネージャーたちに、「この仕事は孤独だよ」と伝えたところ、彼らは不思議そうな表情をしました。もしかしたら、私の業務スタイルは彼らにとっては旧型のものなのかもしれません。
彼らが孤独感を持たずにプロジェクトマネージャーとして活躍するイメージを私は思い描くことはできませんが、とはいえ私のやり方が唯一の正攻法ではないことはわかっています。
彼らは彼らなりの道を歩んでいくのでしょう。その際に、私のやり方についても学んでもらうことで、いっそうのパフォーマンスを出せるのなら、それは私にとっても良いことなのでしょう。