上司からの心に響いたひと言:「こんな後輩が育ってよかった」

[最終更新日]2019/09/04

体験談
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「こんな後輩が育ってよかった」

「こんな後輩が育ってよかった」

上司のニックネーム:マサさん(男性 50歳)
職業
清掃員
職種
清掃
年収
非公開
従業員規模
非公開
地域
岡山県

Index

目次

就職したくない。そんな私の元に舞い込んだ、幸運なお誘い。

私は大学四年生の時、就職に関してとても悩んでいました。

学生生活は、友だちと遊んで、それはそれは楽しい毎日だったので、
これから社会に出て、働いていくということに、強い抵抗感を覚えていたのです

まぁ、多くの学生が抱えるだろう悩みですよね。
要は社会に出ていないうちから、「きっと大変に違いない」と、勝負を投げていたのです。

当時私はアルバイトで清掃会社に通っており、
ちょうど就活時期が始まろうかという頃に、

上司

「ウチで正社員になってみる?」

と打診されました。

既に数年の勤務経験もあり、人間関係も出来上がっていたことから、
私はほとんど二つ返事でその誘いを受けたのです。

単純に「就職活動をしたくない」という、邪な気持ちが無かったかと聞かれれば、言葉を濁してしまいますが……。

大学を卒業後、正社員として働き始めてから、私は思わぬギャップに突き当たることになります。

(バイトもそんなに辛くなかったし、それなりに働いてればそれなりに給料をもらえるなんて最高じゃん)

と思っていたのですが、それは大きな勘違いでした。
実際にはアルバイトの頃よりも数十倍も仕事量が多く、
改めて「自分はあのとき学生だったから、簡単な業務だけを任されていたんだな」と悟ったのです。

職場は当然私が一番の若手で、ほとんどが私の父親か、もしくはそれ以上の年齢の方たちばかりで、常に緊張していたように思います。

入社したての日和見な気分はたちまち萎れていき、この先うまくやっていけるのか、不安で仕方のない毎日でした。

見た目は怖い上司。しかしいざ仕事を教わってみれば……。

私の指導役にあたってくれたのは、「マサ(ニックネーム)」さんという、50代の男性でした。
アルバイトの頃にはご一緒したことのない、はじめましての方です。

声が低くて、表情が読めず、初対面の印象は「すごく怖そうな人」という感じでした。

しかし実際に業務を教わってみると、教え方がとても丁寧でわかりやすく、
実際にはとても気さくな方だったので、すぐに好印象へと変わりました。

一人息子がいらっしゃるようで、休憩時間などは嬉しそうに息子さんのお話を聞かせてくれます。
お子さんの年齢は聞いたことはありませんが、もしかしたら私と同じくらいなのかもしれません。

私はどちらかというと物覚えの悪い方で、
学生の頃、はじめのうちはコンビニでアルバイトしていたのですが、
レジ打ちひとつきちんと覚えられず、しょっちゅうお叱りを受けていました。

マサさんが一度教えてくださったことを、私が覚えておらず、教える手間が増えてしまったことなど何度もあります。
申し訳ない気持ちでいっぱいですが、マサさんはそれでも決して声を荒げることなく、辛抱強く指導をしてくださります。

根っからのリーダー気質で、他の同僚たちにもとても好かれている人です。
私の理想の上司と言ってもまったく過言ではありません。

心に響いたあのひと言。

そんな私が、勤め始めて3年が経ったときのことです。

ようやく能力的にも体力的にも追いついてきたかという頃でした。

私が別部署へ異動することになり、マサさんと離れることになりました。

それは、社会人としては嬉しい報せです。
私の異動した先は一人に任される裁量の大きい部署で、ようするに「社会人として一人前になった」と認めてもらえたようなものですから。

しかしその一方で、散々お世話になったマサさんに、大した恩返しもできないまま離れ離れになってしまうことに、
寂しさと、ある種の罪悪感のようなものを抱えずにはいられませんでした。

異動を一週間後に控えたある日の休憩時間。
喫煙所でマサさんとご一緒しました。

「太郎丸さん、すみません。散々ご迷惑をおかけしてしまって」

マサ

「ははっ。確かに最初は、大丈夫かコイツ、と俺も頭を抱えたよ」

それからマサさんは、自分も、ここまで若い部下の面倒を見たのは初めてだったため、不安があったことも教えてくださりました。
いつもどしっと構えていて、落ち着いて見えたマサさんの、意外な内面を垣間見たような気がしました。

マサ

「でも諦めずに指導してよかったよ。こんな後輩が育ってくれたんだから」

何でもない風にマサさんは言いましたが、私にとってかけがえのない一言となりました。



そののひと言のおかげで、私は。

私は自分自身のことは棚上げにし、人にいざ物を教える立場となったとき、
相手に思うように伝わらなかったり、相手が一度で内容を理解してくれないと、内心苛立ってしまうようなところがありました。

全然、褒められた人間ではありませんでした。

しかしマサさんと出会い、仕事だけでなく様々なことを学んでいくなかで、
「相手でなく、常に自分に責任があるのだと思って物事に臨むこと」その大切さを身に染みて実感しました。

今度の部署では私に部下がつきます。

ついこの前まで自分もその立場だったためわかることもあります。
部下の不安な心をフォローしつつ、最後まであきらめずに部下の将来を思って責任を持つ。
そんなマサさんのような上司を目指したいと思っています。

今後、私が目指したいこと。

今となっては、マサさんと会えるのは定期的な会社での飲み会や忘年会の席くらいです。
その時には年齢の壁を越え、まるで歳の離れた兄弟のように二人ではしゃいでいます。

本当に、よき人間関係を築けたと思っています。

そして、あの日マサさんが何気なく言ったあの言葉は、
部下である私の心に深く届き、私自身の行動の礎になっています。

「教える/教えられる」という関係は、そういうものなのかもしれません。

たとえば私が部下の働きに助けられていると、身に染みて感じていたとしても、
それを本人に届けなければ、相手にも伝わりません。

今後私は、マサさんにもらったあの言葉を、
私の部下に直接言ってあげられる日が来るのを心待ちにしています。

そのためには、私も今以上に責任を持って、部下の指導にあたっていく所存です。