自身の「強み」は「弱み」と紙一重?ビッグファイブで自身の特性を把握
[最終更新日]2023/11/06
皆さんはご自身の強みや弱みをどのくらい理解・把握できている自信がありますか?また、今の業務もしくは将来希望する仕事やポジションを獲得するために、それらを具体的にどういう行動や習慣に落とし込むべきか、じっくり考えたことがありますか?
「自己認識能力こそリーダーが伸ばすべき能力」というスタンフォード大学経営大学院の調査結果にもあるように、自己認識はビジネスパーソンにとって非常に重要なスキルといってもいいかもしれません。
そこで、今回はその自己認識をするための「ビッグファイブ」という手法を紹介します。
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目次
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診断ツールで、「特定のタイプに落とし込まれるのが苦手」という方は、ビッグファイブのアプローチがお薦め
パーソナリティ診断は、大きく「類型論」と「特性論」の2種類がある
自己認識をするためのパーソナリティ診断は、心理学の分野から、様々な診断方法が開発・提案されています。そして、それらの方法は大きく「類型論」と「特製論」の2種類に大別されます。まずこの基本的な背景を認識しておきましょう。
類型論
性格と別の要因を結びつけつつタイプ分けをして、「こういう要素を持っている人はこんな性格がある」としたものです。例えば、血液型や星座で人の性格を判断したりするのは、この類型論に分類されます。有名なものでは「ユングの性格8分類」や「シュプランガーの生活領域による6分類」などが挙げられます。
特性論
我々のパーソナリティはいくつかの独立した要素・特性で構成されている、という考え方をベースにして、それぞれの特性を測り、その度合いによって性格や得意・不得意などを判断する診断手法です。類型型が定性的な診断に対して特性論はより定量的であるため、他人との比較はもちろん、時系列で自分自身を時系列で比較が可能です。
ビッグファイブとは
パーソナリティ診断の類型論と特性論の中でも、現在、最も性格診断で効果的とされている診断手法が「ビッグファイブ」と呼ばれる手法です。ビジネスの分野をはじめ、ざまざまな分野で広く支持されています。
ビッグファイブは、人の性格を「外向性」「情緒安定性」「誠実性」「協調性」「開放性」の5つの要素に分解し、これらの特性の強さ、弱さ、バランスをもってその人の性格とその強みや弱みを判断していきます。
特性論に分類されるビッグファイブは、測定のアンケートなどに答えることで、その5つの特性が数値として客観的に示されます。
基本的に性格というは幼児期に決定して、根本的には変えれないとされていますが、その性格からもたらされる行動を変えることはできます。
そんな行動の部分をコントロールするためにも、数値によって客観的に自分自身の性格を認識し、その性格が起こしやすい行動や言動を把握することがこのビッグファイブの最大の目的となります。
米国企業の社長やリーダークラスになると、このパーソナリティ診断をもとにして、専属のコーチング専門家などがアドバイスをしながら、その自己マネジメントをサポートしている活用事例も多くあります。
欠点も強みになる、そしてその逆もしかり。それがビッグファイブ
人は少なからず自分の性格に悩んだり、コンプレックスを持つものです。ただそれはちょっとした勘違いで、どんな性格にも必ずポジティブとネガティヴな面が同居し、その行動は変えられるのです。
ある性格はポジティブな面しかない、という事は絶対にあり得ません。まずはこの事実を大前提としてしっかり認識しましょう。
例えば、社交的な人は「明るい」「人に好かれやすい」というポジティブな面がよくクローズアップされますが、一方で「強引」「人の話を聞かない」というネガティブな面が同居するため、そこから生まれる行動をコントロールしなければ、ある人にとってはそのネガティブな側面のみ評価されてしまうこともあります。
相対的に、相手の性格によっても見られやすい側面は変化します。つまり、我々が今まで悩んだでいたどこか感覚的な性格へ評価は、実はとても曖昧で不十分なものです。
各性格の特性と自身を客観的に捉えることで、初めて自分の「強み」や「弱み」と呼ばれるものをコントロールできます。ビッグファイブをはじめとしたパーソナリティ診断は、それをサポートするツールなのです。
ビッグファイブを実際に測ってみよう
もしかしたら、皆さんも会社の研修など性格診断アンケートに答えた経験があるかもしれません。ビッグファイブを実際に測るための方法は、現在もさまざまな研究と開発がされており、より簡便かつ精度の高い手法の研究が重ねられています。
その中でも、米テキサス大学が開発した「10の質問票」を用いた測定法は、現在最も優れた測定法の1つとして多くの分野で支持されており、あらゆる言語に翻訳されているほどです。今回はその「10の質問票」を使った測定と、測定結果の活用方法を説明していきます。
ビッグファイブの測り方
項目1から項目10までの言葉があなたが自身にどのくらい当てはまるかについて、下の枠内の1から7までの数字のうち最も適切なものを括弧内に入れてください。文章全体を総合的に見て、自分にどれだけ当てはまるかを評価してください。
- 全く違うと思う :1
- おおよそ違うと思う:2
- 少し違うと思う :3
- どちらでもない :4
- 少しそう思う :5
- まぁまぁそう思う :6
- 強くそう思う :7
私は自分自身のことを……
- 項目1 ( )活発で、社交的だと思う
- 項目2 ( )他人に不満を持ち、もめごとを起こしやすいと思う
- 項目3 ( )しっかりしていて、自分に厳しいと思う
- 項目4 ( )心配性で、うろたえやすいと思う
- 項目5 ( )私いことが好きで、変わった考えを持つと思う
- 項目6 ( )控えめで、おとなしいと思う
- 項目7 ( )人に気をつかう、優しい人間だと思う
- 項目8 ( )だらしなく、うっかりしていると思う
- 項目9 ( )冷静で、気分が安定していると思う
- 項目10 ( )発想力に欠けた、平凡な人間だと思う
【採点方法】
外向性 =項目1の点数+(8ー項目6の点数)
協調性 =(8ー項目2の点数)+項目7の点数
勤勉性 =項目3の点数+(8ー項目8の点数)
情緒安定性=項目4の点数+(8ー項目9の点数)
開放性 =項目5の点数+(8ー項目10の点数)
ビッグファイブの結果から、自身の行動特性を知る
ビッグファイブの測定結果がでたら、5つの項目の点数を確認してみましょう。そして、下の図を参考にして各特性の点数から「高い」「低い」のどのポジションに位置するかを確認します。
5つの特性とその「高い」「低い」のポジションには、それぞれに「行動特性」(強み)と「ネガティブにとらえた場合の印象」(弱み)が示されています。
どの項目のどのポイントにも「強み」と「弱み」が同居しているのが特徴で、点数は何かの良し悪しを示しているのではなく、「強み」「弱み」が何であるか、どの程度のバランスかを導くための指標となります。
まず、測定で示されたご自身の「強み」と「弱み」を認識しましょう。「弱み」はリスクと捉えて、発生しやすい行動や発言への対処を意識する必要があります。各特性の「強み」「弱み」については、1つずつ詳細を説明していきます。
「情緒安定性」が持つ、強みとリスクそれぞれに対処する
情緒安定性が高い
変化に強く、常に落ち着いた心理状態を保てるのが強みです。プレッシャーがある環境下でも冷静に振る舞い、的確な判断を導ける能力を持つ傾向にあります。
弱みは、その冷静すぎる振る舞いゆえに、緊急性の認識に欠けていると思われたり、自信過剰と思われてしまうことです。何かの状況に置かれたときに、気持ちの持ち方はそれぞれで、他人が自分と同じ心理状態ではないという点、相手の目線に立つ意識を心がけるのが大切です。
情緒安定性が低い
考えるよりも先に行動するタイプのため、スピード感と行動力に長けているのが強みです。反応力もあるため、人とのコミュニケーションも得意です。逆に弱みは、感情の起伏が激しく気が短い傾向にあります。
ストレス耐性も低いため、ちょっとしたことに影響されたり、冷静さを失ってしまいがちです。感情を意識的に言語化するなど、予め対処法を決めておくことで防ぐことができるものです。感情のコントロール・スキルを意識して学んでいくのがポイントです。
「外向性」が持つ、強みとリスクそれぞれに対処する
外向性が高い
社交的で積極性があるのが強みです。人と過ごすことをことを好み、明るい性格であるため、場の雰囲気を盛り上げたりすることに長けています。
一方で人の話をあまり聞かなかったり、目立ちたがりのため、威張っていると思われたり、人をうんざりさせたり疲れさせてしまう弱みがあります。日頃から相手の話を聞く姿勢をもつことと、自分が話をするときは敢えて間をとったり、相手の意見をきく場面づくりの意識が大切です。
外向性が低い
思慮深く内向的な性格のため、客観的な判断と物事を深く考察することに長け、一人の環境下でも高い集中力で物事に取り組むことができるのが強みです。
一方で、複数人と関わるような状況が苦手であり、遠慮がちなために、自分の思ったことを相手に伝えられず自己嫌悪やストレスを抱えてしまう弱みを持ちます。意識的に、コミュニケーションやプレゼンテーション、人との付き合い方に関して学ぶことが必要です。
「開放性」が持つ、強みとリスクそれぞれに対処する
開放性が高い
創造性と感受性が高いのが強みです。知的好奇心が旺盛で、様々な角度から物事を大局的に捉えることに長け、イノベーティブなアイデア発想力を持ちます。
一方で、その大局的な視点や現実離れした意見ばかりで議論してしまう傾向から、周りからは「また理想論か…」と相手にされなくなってしまいます。「相手に伝わって動いてもらってこそ意味がある」という意識で、自身の発言や発想を相手にわかりやすく伝える心掛けが必要です。
開放性が低い
データに基づいた分析や判断に長けているのが強みです。問題や課題に対して現状や現実をみることに非常にこだわりを持つために、正確に事象のメカニズムを掴み、具体策へつなげる問題解決力を持ちます。
一方で、データがないと判断ができないために保守的になりがちで、チャレンジングな決定ができないのが弱みです。この弱みに対しては、より大局的な決定が求められる経験を進んですることで、自らの経験データを積み上げることです。リスクの小さい意識決定などから経験を積んでいくのがポイントです。
「協調性」が持つ、強みとリスクそれぞれに対処する
協調性が高い
思いやりが強く、相手の意見をきちんと聞いた判断ができる強みがあります。他人からの信頼を得やすいため、特にチームでの仕事を円滑に進めることができる力を持ちます。
一方で、相手の顔色を伺ってしまう傾向にあるため、断ることができずに仕事を受けてしまい、結果、仕事量がパンクするなどの恐れがあります。自分がなぜ他人に好かれたいのかを自問してみましょう。また、好かれようという意識から、フェアであろうという意識への転換も大切です。
協調性が低い
競争心が高くチャレンジングが点が強みです。多くの人がやめたほうがいいと尻込みをしてしまうような場面でも、構わずにどんどん飛び込める強さを持ちます。自分に自信を持ちやすいため、自ずと周りから秀でやすい傾向があります。
一方で、攻撃的な面があるため、相手に対して批判的な言葉や威圧的な態度を取ってしまい、しばしば協力が得られにくくなります。発言をする前に「こんなこと言うとまた怒られるかもしれないけど…」といった発言を和らげる前振りを入れる癖をつけましょう。
「勤勉性」が持つ、強みとリスクそれぞれに対処する
勤勉性が高い
与えられた仕事に対して粘り強く取り組み、相手が求めている以上のもの、もしくは要求を完璧にこなそうという熱意と責任感を持てるのが強みです。
一方で、熱意ゆえにハードワークをしてしまう、もしくは完璧主義ゆえに細かいことを気にしてしまい、判断力に欠けてしまう点が弱みです。これらの弱みに対しては、判断の際は「どれが一番重要な要素か」という問いを常にすることと、ハードワーク気味の人は「1日の仕事時間の削減」を日々意識することが大切です。
勤勉性が低い
非常に柔軟な判断や対応が強みといえます。何を判断する意思決定スピードが早く、少ない情報の中でも物事を迅速に判断して前に進める力を持ちます。
一方で、仕事の仕方が雑になりがちで、十分な分析が必要な場面でも感覚や勘に頼った判断をしてしまい、「あの人はあてにならない」と周りからの信頼感を失いやすい点が弱みです。自分の判断した結果や作成した資料などは、他人に必ずチェックしてもらうようにすることで、その弱みをカバーしていきましょう。
ビッグファイブでメンタルの土台作り
ビッグファイブの特性に同居する「強み」「弱み」によって、いままで認識していなかった側面、一方的に「強み」や「弱み」としかみていなかった特性の特徴など、多く気づきがあったと思います。
そして何より、ここで気づけた強みや弱みについて、結びつく行動や言動を、日々の仕事の中で認識することが重要です。
すぐに対処は難しいので、まずは気づくことから始めるだけも効果的です。ぜひビッグファイブを有効活用して、ビジネスライフに必要なメンタルの土台作りをしていきましょう。
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