【おすすめ映画】「フラガール」働く人たちに改めて観てほしい映画#4

[最終更新日]2020/05/11

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2006年公開当初、いわゆる「スポ根」もののイメージが強かったためか、あまり目立たなかった映画『フラガール』

その後、徐々に口コミで評判を呼び、大ヒット映画として知られるようになりました。福島県いわき市にある「スパリゾートハワイアンズ」設立当時の実話をもとにした映画として、多くのファンを集めています。

フラガール

この映画をなぜ「働く人たちに観てほしい」のか——。

それは、『フラガール』が激動の時代を生きた人々の姿を描いているからです。今でこそフラダンスショーを観るために多くの人が訪れるリゾート施設となっていますが、昭和40年当時のいわき市は炭鉱の町でした。

映画の舞台となった常磐鉱山は昭和51年に完全閉山し、のべ4,400人あまりの炭鉱夫が解雇されています。
移り変わっていく時代の渦中で、人々は何を想い、何に打ち克ってきたのでしょうか。

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目次

映画「フラガール」の概要

タイトル フラガール
公開日 2006年9月23日
上映時間 120分
映倫区分 G
オフィシャルサイト https://blog.excite.co.jp/hula-girl/
スタッフ 監督:李相日
脚本:李相日・羽原大介
制作総指揮:李鳳宇
企画・プロデュース:石原仁美
キャスト 松雪泰子
蒼井優
豊川悦司
岸部一徳
徳永えり
山崎静代

『フラガール』ってどんな映画?

参考:福島県いわきの昔の風景 1957~1958(Youtubeより)

1960年代、エネルギー革命によって世界中が石炭から石油の時代へと移り変わっていました。

その波は日本各地にあった炭鉱にも容赦なく押し寄せます。福島県いわき市の常磐炭鉱もまた、事業縮小を余儀なくされ炭鉱夫を大量解雇せざるを得ない現実と、町としての主力産業を失ってしまう恐怖におののいていました。

そんな折、町おこし事業として持ち上がったのが「常磐ハワイアンセンター」の建築計画でした。
東北の雪国にハワイを作るという構想、スタッフは元炭鉱夫、ダンサーは炭鉱夫たちの娘という事業計画に、地元の人々は冷ややかな視線を送っていました。

ダンサーたちを手ほどきするため、招かれたのは元SKD(松竹歌劇団)ダンサーの平山まどか(松雪泰子)でした。

石炭の採掘を「穴掘り」と呼んで憚らず、高飛車な態度に徹する平山に対して、ダンサー候補生となった紀美子(蒼井優)は猛反発します。

地元の人々の間ではダンサーが仕事と認められないばかりか、町の生き残りを賭けたハワイアンセンター事業自体も支持されない有様——。

この絶体絶命の状況から「フラガール」がどのように誕生し、今に至るのかを描いています。

映画『フラガール』の名ゼリフ

石炭から石油の時代に変わっていく——。これは紛れもない事実であり、炭鉱の町を生きた当時の人々も理解していたはずです。

しかし、これまで長く続いてきた暮らしや仕事への誇り、そして変化する価値観への反発が、とくに作品前半で集中的に描かれています。

当時を生きた人々の心境がどのようなものだったのか、それが生々しく表現された名ゼリフの一部を紹介します。

死んだ親父も、じっちゃんも、石炭掘りだった。

大人になったら、山に入るのが当たり前だと思ってた。

時代が変わったからって、どうして俺らまで変わんなきゃなんねえ?

勝手に変わっちまったのは、時代のほうだべ。

紀美子の兄、洋二朗(豊川悦司)が、酒場で遭遇した平山に吐露した言葉です。

炭鉱の歴史は長く、古くは江戸時代に採掘が行われていた記録が残っているほどです。
脈々と受け継がれてきた採掘の仕事が、自分の代で終焉を迎えてしまうという理不尽な事態をやすやすとは受け入れられない心境が伝わってきます。

ハダカ踊りでラクして稼ぎてぇんなら、てめえ1人でやれ。

尼っこら遊びの道具にすんな。

山の女は子ども産んで育てて、山で働く亭主を支えるもんだ。

昔ながらの価値観を重んじ、誇りとする女性の代表格として紀美子の母・千代が描かれています。

レッスン場に千代が押しかけ平山と口論になった際、千代が言い放った言葉です。
今でこそプロフェッショナルとして認知されているダンサーですが、当時は「遊び」と見なし、男衆に媚を売るいかがわしいものと捉える人も少なくなかったのでしょう。

30年やって、紙切れ1枚でおしめーか!

紀美子の親友・早苗の父親が炭鉱夫の仕事を解雇され、解雇通知を受け取る場面で経営陣に対して言い放ったセリフです。

現代で言えばリストラにあたるわけですが、国を支える産業に身を粉にして貢献してきたと自負していた当時の労働者にとって、解雇という現実がいかに信じがたく、衝撃的なものだったかが分かります。

先生、おら、今まで生きてきた中で、一番楽しかった!

解雇された早苗の父親は、ダンサーの衣装を纏って浮かれた様子の早苗にやり場のない怒りをぶつけます。

父親に髪を切られ、暴力を振るわれた早苗は、ダンサーへの道を諦めざるを得なくなってしまいます。

その後、早苗の一家は炭鉱のある北海道・夕張へと転居していきました。このセリフは、早苗が去り際に平山へと伝えた一言です。母親代わりとなって家事に徹する日々を送ってきた早苗にとって、ダンスのレッスンに熱中したひとときは「生きてきた中で一番楽しかった」にちがいありません。

作品中では描かれていませんが、夕張炭鉱の閉山は昭和52年、常磐炭鉱閉山の翌年でした。

早苗の父親は生きていくために職を求め、炭鉱夫として働き続けられる土地へと移ったわけですが、遅かれ早かれ炭鉱の仕事はなくなる運命にあったのです。

うちの父ちゃん、お国のためだぁって寝る間も惜しんで石炭掘って山ん中で死んだ。

今まで仕事っつうのは、暗い穴ん中で歯ぁ食いしばって、死ぬか生きるかでやるもんだと思ってた。

だけど、あんなふうに踊って、人様に喜んでもらえる仕事があってもええんでねえか?

紀美子の母・千代は、ダンサーになるという紀美子の夢を頑なに認めませんでした。

ところが、あることがきっかけとなって紀美子の真剣な思いを理解し、陰ながら応援してあげたいと考えるようになります。

自らの価値観が古くなっていくことを理解し、新しい価値観を受け入れるには苦しみが伴うはずです。

これは千代の個人的な心境の変化を表すセリフであると同時に、現実を受け入れ、自らも変わろうとしていく人々の思いが凝縮されたセリフとも言えるでしょう。

なぜ、これほどまでに千代の考えが変わるに至ったのか——。この点は、ぜひ映画を観てたしかめてください。「たしかに、これは認めざるを得ないだろうな」と実感することでしょう。

新しい時代を迎え入れることの苦しみと、その先にあるもの

フラガール

(C)2006 BLACK DIAMONDS

平穏な日常が、この先もずっと続いてほしい——。そう願うのは、きわめて自然な心境でしょう。

しかし一方で、私たちの暮らしはいとも簡単に、そして劇的に変化してしまう可能性とも常に隣り合わせです。
私たちの暮らしが、仕事が、生き方が、これまでと全くちがうものになってしまう時代に遭遇したとしたら、皆さんは何を思い、どのようにして生きていくでしょうか。

洋二朗の言葉を借りれば「変わってしまったのは時代のほうだ」と時代を恨み続けるか、次の時代に向けて古い価値観を刷新しようと試みるか——。後者のほうが合理的だと頭では理解していても、染みついた習慣や慣れ親しんだ考え方を変えるのは決して易しいことではありません。

今でこそ「スパリゾートハワイアンズ」は福島を代表するリゾート施設となり、全国規模の知名度を誇っています。

しかし、東北地方にハワイを作るという構想は荒唐無稽なものと当初は思われたはずですし、素人がダンサーとして舞台に立つまでにも相当な困難があったはずです。

時代の大きな変わり目にあって、新しい時代を迎え入れることの苦しみと、その先にあるものの一典型を映画『フラガール』は描いているのです。

まとめ)これからの10年、あなたはどう生きますか?

現代を生きる私たちもまた、大きな岐路に立たされています。

今後10年間で現存する職業の半数は消滅するとも言われ、かつては安定していると言われてきた職業ですら、テクノロジーの進歩によって人から機械へと代替されていくと言われています。

パンデミック(感染症の世界的流行)が生活様式や産業構造を大きく変えていく可能性を指摘する声も聞かれます。『フラガール』に登場する炭鉱夫たちは、決して他人事ではないのです。

どんな時代においても、どこかで大きな変化に遭遇する可能性があります。肝心なのは、訪れた変化にどう対処し果敢に挑んでいくか、この点に尽きるのではないでしょうか。

映画『フラガール』に描かれた、時代情勢の劇的な変化に苦しみながらも乗り越えてきた人々の姿は、大きな変化を迎えようとしている時代を生きる私たちに重要な示唆を与えてくれるはずです。

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