ノーコードとは?ローコードとの違いと開発ツールについて解説
[最終更新日]2023/10/17
  ここ数年で「ノーコード」という言葉をよく耳にするようになりました。
 プログラミング言語の知識を持たない非エンジニアでも手軽に開発できるツールとして、ノーコードは注目を集めています。 
一方で、次のような人もいるのではないでしょうか。
 「ノーコードという言葉は知っているけれども、まだ実際に活用したことがない」
 「手軽に使えるらしいけれども、開発と聞くと難しそうに思える」
 「ノーコードとローコードの違いがよく分からない」 
 では、ノーコードとはどのようなツールで、活用するメリットはどういった点にあるのでしょうか。
 また、具体的にどのような開発ツールがあるのでしょうか。ノーコードについて知っておきたいポイントをまとめました。 
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Index
目次
注目が集まるノーコードとは何?ローコードとの違いは?
ノーコード(No Code)とは、一言で表現すると「プログラミング言語を使わなくても開発可能なツール」のことです。
 ノーコードはさまざまな業界で注目されつつありますが、なぜ話題になっているのか、どのようなツールなのか疑問に感じている人もいるでしょう。
 また、ノーコードとよく似た言葉として「ローコード」という用語を聞いたことがあるものの、ノーコードとの違いがいまいち分からない人もいるのではないでしょうか。 
まずは、ノーコードとはどのようなツールなのか、ローコードとの違いはどんな点にあるのか、基本的な知識を整理しておきましょう。
ノーコードはプログラミングの知識が不要の開発ツール
従来、アプリやWebサイトなどを開発するには、プログラミング言語でコードを書く必要がありました。そのため、開発に携わるのは専門知識を持ったエンジニアに限られていたのです。
社内にエンジニアが在籍していない企業の場合、ちょっとしたツールを開発するだけでも外部の企業に委託し、費用と時間を投じて開発する必要がありました。
 しかし、ノーコード開発が広く普及し始め、ツールの種類も豊富になってきたことにより、誰でも手軽にツールの開発ができるようになりました。
 一例として、ノーコードは次のような場面で活用できる可能性があります。 
ノーコードを活用できる事例
 - ルーティンワークの入力作業を自動化したい
 - Webサイトの構築を自社で行いたい
 - 社内で使用する業務アプリを開発したい
 
 ノーコード開発ツールの特徴として、用意されたパーツをドラッグ&ドロップしていくだけで開発できる点が挙げられます。
 複雑な知識は不要で、誰でも手軽に開発ができるようになったのです。 
ローコードはより拡張性の高い開発ツール
  ノーコードとよく似た用語に「ローコード(Low Code)」があります。
 ローコードとは、一部でコードを書くプロセスが必要になるものの、基本的にはプログラミングの高度な知識を必要としないツールのことを指します。 
ノーコードと比べてややプログラミングスキルが求められますが、完全に自力でプログラミングする場合と比べるとはるかに手軽に、短期間で開発することができます。
 ローコードは自分でコードを書く必要がある分、ノーコードと比べて機能を実装できる範囲が広がります。
 ノーコードでは実装できなかった機能を持たせたい場合や、自社で求められている機能を独自に実装したい場合はローコードのほうが便利なことがあります。 
ノーコードとローコードの関係
| プログラミングの知識 | 拡張性 | |
|---|---|---|
| ノーコード | ほとんど必要なし | 低い | 
| ローコード | 一部で必要になる場合あり | やや高い | 
「プログラミングをかじったことはあるけれども、アプリケーションを開発するほどのスキルはない」という人や、「趣味でプログラミングをしたことはあっても、本格的な開発は未経験」といった人にとって、ローコードは強力なツールとなり得るでしょう。
ノーコードが注目される理由とは?
では、なぜ近年になってノーコードが注目されているのでしょうか。ここには主に2つの理由が挙げられます。
 1つめの理由として、DXの潮流が挙げられます。
 DXによって業務効率化や合理化を図ろうとする企業が増えていますが、そのためには新たにツールを開発する必要に迫られることがあります。 
 従来であればSIerなどに依頼し、開発費用を投じて実現するのが一般的でした。
 しかし、ノーコードによって社内の非エンジニアが開発することができれば、システムやアプリケーションの開発を内製化することができます。 
結果的に費用・時間の節減につながり、開発のハードルを大幅に下げることができるのです。
 2つめの理由として「2025年の崖」と呼ばれる課題が挙げられます。
 従来から活用してきたシステムの改修が困難になっている事例は、多くの企業で年々顕著になりつつあります。 
既存のレガシーシステム(=老朽化、肥大化・複雑化、ブラックボックス化したシステム)を完全に入れ替えるほどのコストはかけられないものの、ソースコードが古すぎてブラックボックス化している事例は多くの業界で問題になっています(下図参照)。
 さらに、IT人材の不足も深刻化しています。2015年には17万人が不足しているといわれていたIT人材は、2025年には43万人不足すると推定されています。
 今後、必要なタイミングでシステムを開発していく上で、自社の非エンジニアが開発できるツールが求められていたのです。 
  経済産業省「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」(平成30年9月7日)より抜粋
 https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/20180907_report.html 
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コラム:ノーコードは昔から私たちの身近にあった!?
ノーコードはあたかも近年になって台頭してきた技術のように思われがちですが、実はずっと以前から私たちの身近に存在していました。
 たとえば、定型的なタスクを自動化する仕組みとしてExcelのマクロ機能がありますが、これは一種のノーコードといえます。
 あるいは、ブログサービスにはプログラミングを一切することなくブログを立ち上げ、運営していくことができるサービスが多数あります。 
こうした「プログラミング言語の知識がなくても利用できるツール」は、広い意味でのノーコードと捉えることができるのです。
ノーコードの代表的な開発ツール3選
ノーコードでの開発についてより分かりやすいイメージを持っていただくために、ノーコードのメジャーな開発ツールを紹介します。
ノーコードで開発できるツールは多種多様なものがあるため、用途や目的に合わせて選ぶことが大切です。
ちょっとしたタスクの効率化が実現できるものから、本格的にアプリを開発できるものまでありますので、どのようなことができるのか試しに触れてみるといいでしょう。
Webサイト開発ツール「Wix」
 WixはクラウドベースのWeb制作プラットフォームです。
ブラウザ上で手軽にWebサイトを構築することができ、HTMLやCSSといったWeb開発の知識がなくても本格的なホームページを作ることが可能となっています。
作成可能なWebサイトは幅広くあり、企業HPはもちろんのこと、ブログやネットショップなどのページを作ることもできます。
ADI(人工デザイン知能)によって、いくつかの質問に答えるだけでニーズに合ったコンテンツを生成してくれる機能も備えていることから、短時間でホームページを作成したい人にもおすすめのサービスといえます。
基本的な機能は無料で利用することができますので、自社商品のPRのためにWebサイトを立ち上げたいと考えている人は試しに使ってみるといいでしょう。
タスク自動化ツール「Anyflow」
  Anyflowはタスクを手軽に自動化できるツールです。
 GmailやGoogleスプレッドシート、Slack、クラウドサインといった多数のSaaSと連携できますので、現在使用しているツールと組み合わせて使うことができます。 
たとえば、クラウドサインで締結した契約書をGoogleDriveやDropboxといったクラウドストレージに自動で保存してくれる仕組みを作ったり、Slackにコマンドを入力するだけで勤怠管理システムに自動で打刻してくれる機能を実現したりといったことが簡単にできます。
2020年11月よりZoomとも連携しており、オンラインミーティングの予定をカレンダーに入力したり、Zoomリンクを参加者へ送信したりといった工程の自動化も可能となっています。
このように、日常業務の中で頻繁に発生する定型タスクを自動化することで、より創造的な仕事のために使える時間が創出され、生産性を高めることにつながるでしょう。
アプリ開発ツール「Yappli」
 Yappliはプログラミングの知識不要でiOSやAndroidネイティブアプリを開発できるサービスです。
パーツを組み合わせるだけで本格的なネイティブアプリが完成するだけでなく、管理画面から直感的な操作で更新作業ができ、ストア申請管理までワンストップで実現しています。
通常の工程で開発されたアプリと同様、性別や誕生日、エリアなどの会員情報にもとづくプッシュ通知機能を備えたアプリを作ることも可能です。拡販のためにアプリを活用したいと考えている企業にとって、手軽にDXを実現できる強力なツールとなるはずです。
クラウドベースのサービスのため、最新OSへの無償アップデートや新機能の追加に随時対応できるのも魅力の1つです。
手軽にアプリを開発し、スピーディにリリースしたいとき、重宝するサービスとなるでしょう。
ノーコードを活用して開発するメリット
 ノーコードが注目され、広く使われ始めている大きな理由は前項で触れた通りです。
 もしノーコードを活用することによって得られる恩恵があり、自社にとってメリットと感じられるのであれば、積極的に取り入れていくべきでしょう。 
 では、ノーコードを活用して開発すると具体的にどのようなメリットが得られるのでしょうか。
 主なメリットとして、次の3点を紹介します。 
非エンジニアでも開発することができる
  ノーコードを活用する最大のメリットは、プログラミング言語の知識を必要としない点にあります。
 業務に必要なツールを開発するにあたって、「こんな機能が欲しい」「こういうことを実現したい」と感じたら、すぐに試作品を開発して試験運用を開始することができるのです。 
 従来、システムの開発には多額の費用と期間を要してきました。
 インターネットが普及し始めた時代には自社ホームページを制作するために数百万円単位の費用が必要だったのに対して、現在では無料でWebサイトを構築できるサービスが一般的になっているのは、その好例といえるでしょう。 
 外部の開発会社に依頼する必要がなく、自社で社内エンジニアを新たに採用する必要もないため、非エンジニア人材を有効に活用することができます。
 開発に対するハードルが大幅に低くなったことは、ノーコードを活用する上での大きなメリットといえるでしょう。 
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機能の範囲内で簡単に拡張することができる
  ノーコードによる開発ツールには、すでに多彩な機能が備わっています。
 さまざまな機能を組み合わせ、自社で求められている機能を簡単に実装することができるのです。 
また、一度構築したシステムを改修するのも決して難しくありません。サービスが提供する機能の範囲内であれば、手軽に改修してより使いやすくすることができるのです。
 従来、システムの改修や拡張はいったん行ってしまうと簡単に変えることができないため、慎重に判断する必要がありました。
 これにより、レガシーシステムと知りながら長期間にわたって使い続け、結果的に改修・拡張するタイミングを逃してしまうといったことが多くの業界で行われてきたのです。 
ノーコードによって社内で手軽にシステムを改修・拡張できるようになれば、必要に応じて機能を追加したり、既存の機能を業務の実態に合わせて改修したりすることへの心理的・経済的な障壁を格段に下げることが可能となるでしょう。
開発したツールでバグが発生する確率が低い
  ノーコードによる開発では、提供されている機能を組み合わせてツールを組み上げていきます。
 1つ1つの機能はすでに検証されたものなので、それらを組み合わせて作られたプログラムでバグが発生する確率は低いといえます。 
 従来のシステム開発においては、リリース前後でバグが大問題を引き起こすケースが少なくありませんでした。
 致命的なバグが発覚してシステム全体が止まってしまったり、人が判断すれば起こり得ないトラブルが発生してしまったりすることは決してめずらしくなかったのです。 
しかし、ノーコードで開発されたツールには予測不能なバグが少なく、安心して活用することができます。運用開始後にバグを修正する工程を削減することができるため、すぐに業務に取り入れることができ、安定的に運用していくことが可能となるのです。
ノーコードを活用する上で注意しておきたい点
 ノーコードは非エンジニアでも開発が可能となる便利な仕組みですが、活用する上で注意しておくべき点もあります。
 どのようなツールであっても万能というわけではありませんので、デメリットとなり得る面も理解した上で活用していくことが大切です。ノーコードを活用する上での注意点として、主に次の3点が挙げられます。 
活用するにあたりプログラミング的な思考が求められる
  ノーコードは、用意されたパーツをドラッグ&ドロップして組み合わせていくだけで求める機能を実装することができます。
 コードを書く必要がないため、誰にでも開発が可能となるのは大きな利点といえます。 
 ただし、業務上の問題を解決するためにどのようなツールを開発すればよいのか、そのツールで実現するべき機能にはどのようなパーツの組み合わせが必要なのか、といったことを考えるにあたってプログラミング的な思考がある程度は求められます。
 ここで言うプログラミング的思考とは、筋道を立てて物事を考える論理的思考と言い換えてもいいでしょう。 
 イメージとしては、Excelでマクロを組む場合に、自動化するべき作業の手順を追っていくのと近い感覚と捉えていいでしょう。
 定型的な手順が明確になっているからこそマクロを組むことができるように、自分が何を実現したいのか、何を自動化したいのかを把握しておくための論理性が問われます。 
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サービス内で用意された機能の制約を受ける
  ノーコードの弱点として、拡張性が低い点が挙げられます。
 提供されているサービスの範囲内で開発を進めることになりますので、自社の業務内容に合わせて細部の設定を変更したいと思っても対応し切れない可能性があるのです。 
どうしても必要な機能がノーコードで実装できない場合、致命的なデメリットになり得るでしょう。
 より細かく調整を行いたいのであれば、ローコードのサービスを活用するなどの方法が考えられます。
 ただし、カスタマイズへの対応が柔軟になればなるほど、プログラミングの知識が求められる場面は増えると考えましょう。 
ノーコードで手軽に開発ができる分、サービス内で用意された機能に限定されるというデメリットがあることを理解しておく必要があります。
シャドーITが発生しやすい
 非エンジニアでも手軽にツールを開発できるのはノーコードのメリットですが、裏を返せば「いつ誰が、どんなツールを開発して運用し始めるのか」が管理し切れないともいえます。
部署単位、あるいは個人単位で独自のツールを開発することもできるため、企業が把握していないツールが蔓延する、いわゆるシャドーITの温床になりかねません。
シャドーITとは
シャドーITとは、業務上において従業員または部門が企業・組織側の許可なく利用するITサービスのこと。
たとえば以下のような行為がシャドーITに該当する。■仕事の続きを自宅でやろうと考え、個人で登録したオンラインストレージサービスを利用して業務上のデータを持ち出す
■LINEのようなチャットアプリを業務連絡に利用する
■仕事のメールを個人のスマートフォンのメールに転送する
 また、社員が個人的に開発したツールで自分の担当業務を効率化できたとしても、ノウハウが共有・蓄積されず、組織のリソースになりにくいという欠点も挙げられます。
 その結果、ノーコードを活用して業務を効率化する社員と、従来通りの仕事の進め方をする社員との間で生産性に格差が生じる可能性があります。 
ノーコードを組織で活性していくためには、「有益な情報やノウハウは積極的に共有する」といった風土や文化を築いていく必要があるでしょう。
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まとめ)ノーコードの活用でプログラミングがより身近な存在に
  近年、DXへの対応が各業界で加速しています。従来であれば、アプリやWebサイトを構築するには専門知識が必要となり、外部のSIerなどに委託して開発してもらう必要がありました。
 これにはコストや時間を要することから、多くの企業にとって一定のハードルになっていたことは間違いないでしょう。 
ノーコードによって、これまでエンジニアにしかできなかった課題解決がより手軽に実現可能となり、プログラミングはますます身近な存在になりつつあります。
 今回紹介してきたノーコードのメリットや注意点を理解した上で、ぜひノーコードを活用した業務効率化やDXの実現を検討してみてください。
 誰にでもプログラミングが可能となる未来が到来しつつあることを実感できるはずです。 
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