管理職が知っておきたい、「Z世代」の価値観について
[最終更新日]2022/12/15
管理職の皆さんは、若手の社員と接していて「考えていることがよく分からない」「価値観が自分たちの頃と全くちがう」と感じたことはありませんか?
「ミレニアル世代」「Z世代」といった言葉で若者の価値観が定義されているのを見かけることがあります。
何となく「自分たちとは価値観が異なるらしい」「これまでの世代と何かがちがう」と捉えている人も多いことでしょう。
今後、新卒採用や第二新卒で入社してくる若手社員はこうした世代になりますので、管理職としては接し方を考えておきたいところです。
今回は、新しい世代の台頭として注目されている「Z世代」に焦点を当てていきます。若手社員の価値観を知り、歩み寄るためのヒントになれば幸いです。
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Index
目次
Z世代とは?定義と背景をおさらい
生まれた年代によって価値観や考え方に影響を受けるという、いわゆる「世代論」の考え方は古くからあります。「ベビーブーム」や「団塊の世代」といった言葉は、誰もが耳にしたことがあるでしょう。
Z世代は現在の10代から20代半ばに相当する世代ですが、「ミレニアル世代」など若手を指す呼び方は他にもあるため、混同しやすい面があります。
そこで、まずはZ世代とはどの年代を指す言葉なのか、定義と背景についておさらいしておきましょう。
Z世代と呼ばれる年代はどこからどこまで?
世代による分類に明確な定義はなく、アメリカと日本では解釈が異なるなどさまざまな言説があるのが実情です。
1つの目安として、リンダ・グラットン著『ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図』で言及されている定義を紹介します。
- ベビーブーム世代:1945〜64年頃の生まれ
- X世代:1965〜80年頃の生まれ
- Y世代:1981〜95年頃の生まれ
- Z世代:1996年以降の生まれ
X世代という言葉を初めて用いたのは、ハンガリーの写真家ロバート・キャパ氏で、当時の人々にとって未知の価値観を持つ新しい世代という意味合いで作られた言葉でした。
Y世代、Z世代はこれに続く世代という意味で定義されてきた経緯があります。
この区分によれば、2020年時点でZ世代は25歳以下の人々にあたります。企業で言うところの新卒から第二新卒に相当する世代がZ世代と考えていいでしょう。
Z世代とミレニアル世代のちがい
Z世代と合わせてよく耳にする言葉に「ミレニアル世代」があります。
ミレニアル世代とは、上の区分で言うところのY世代に相当します。ミレニアル世代とZ世代に共通する特徴として、物心ついた頃にはPCやスマートフォンといったデジタルガジェットが身近にあった点が挙げられます。
そのため、ミレニアル世代やZ世代を指して「デジタルネイティブ世代」と呼ぶこともあります。
ミレニアル世代は2020年時点で26歳〜40歳に相当します。
「ミレニアル世代=若者」と思っていると、案外その年代が幅広く、すでに40代も含まれていることに驚く人も多いのではないでしょうか。
言うまでもなく、Z世代とミレニアル世代ではその価値観や考え方も大きく異なります。
《Z世代とミレニアル世代のちがい》
Z世代 | ミレニアル世代 | |
---|---|---|
育ってきた時代の状勢 | 不況 | 好景気 |
考え方の傾向 | 実用主義 | 理想主義 |
重視する価値観 | 貯蓄やコスト削減 | 購買行動を通じた体験 |
こだわる傾向 | 自分らしさ | ブランド志向 |
Z世代が育ってきた期間の時代情勢を知る
Z世代が育ってきた時代は、世界が大きく変化した時期でした。その中には好ましくない変化も多く含まれています。
代表的な出来事として、1997年のアメリカ同時多発テロが挙げられます。
この事件以降、世界はテロの脅威に備えるようになり、メディアでは世界各地で勃発したテロについて報道されるようになりました。
Z世代は物心ついた頃からニュースなどでテロの話題に触れる機会が多く、この世界が不安定で寄る辺ない場所だと無意識のレベルで刷り込まれているのです。
もう1つの出来事として、2008年のリーマンショックに端を発した世界的な不景気です。
この頃は子どもだったZ世代の中には、収入が減少し経済的に困窮する両親の姿を見て育った人も多くいます。
そのため、モノやお金といった経済的な価値を絶対視することなく、より本質的で自分にとって大切と思える「目に見えないもの」を大切にする傾向があると言われているのです。
このように、Z世代の内面を読み解く上で社会的・経済的な出来事の中でも重要なものは押さえておく必要があるでしょう。
これらの事象を見聞きしてきた経験が、彼らの価値観に大きな影響を与えていることは十分に考えられるのです。
Z世代の特徴とは?管理職の世代との価値観のちがい
ブランドよりも自分らしくいられることを大切にする
Z世代の特徴を表すキーワードの1つに「多様性」があります。多くの人がどう評価するかを気にするのではなく、好みやものの感じ方は人それぞれであるのが自然と感じる人がZ世代には多いと言われています。
その象徴として「ブランド」に対する捉え方が挙げられます。
ミレニアル世代の親はバブル世代にあたるため、その影響を強く受けて育ったミレニアル世代はブランドに対して肯定的な捉え方をする傾向があります。
これは購買行動に限らず、「学歴」や「一流企業」といった世の中で広く認知されている価値観に迎合しやすいという特徴でもあります。
これに対してZ世代は、ブランドよりも「自分らしくいられるかどうか」を重要視していると言われています。
高価なものを所有したり身につけたりといったことが、自分にとって心地よい状態でないと判断すれば見向きもしないのです。
また、「成功してタワーマンションに住みたい」「一流大学を卒業して一流企業に勤めたい」といった欲求も、他の世代と比べると低い傾向があります。
SNSにおけるコミュニティや感動の共有を重視する
Z世代がスマホで日常的に利用しているアプリの上位を占めるのがソーシャルメディア(SNS)です。
下の図は総務省が平成30年に実施した調査結果です。10代・20代のソーシャルメディア利用時間が他の世代と比べて多いことが確認できます。
平成30年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書(総務省情報通信政策研究所)
SNSを利用するにあたって、Z世代は不特定多数の人に自分のプライベートを見てもらいたいのではなく、知っている人、身近な人と感動を共有したいという心理が強く働く傾向があります。
情報を発信するのであれば、自分のことを理解してくれる相手、自分のことを理由もなく攻撃するリスクの低い相手であってほしいと考えているのです。
物心ついた頃にはSNSがあり、日常的にSNSに接してきた彼らにとって、SNSは便利なツールであると同時に炎上などのリスクとも隣り合わせのツールです。
そのことをごく自然に学んできたZ世代にとって、SNSは不特定多数の人に向けて貪欲に情報を発信するためのツールではなく、現実世界で認知できる範囲の人とのつながりを強めるためのツールとして利用されているのです。
同様の理由で、LINEにおいても「既読スルー」に対して寛容な考え方の人が増えていると言われています。
Z世代にとってSNSは特別なツールではなく、現実世界と地続きのコミュニケーションツールになりつつあることの表れと言えるでしょう。
お金よりも信用に価値を感じる傾向がある
若者は転職に対する抵抗感が少ないと言われることがありますが、Z世代に関しては必ずともそうではありません。
仕事のやりがいや収入よりも、安定していて長く続けられる仕事を好む傾向があると言われています。
前述のリーマンショックだけでなく、Z世代は「日本が豊かだった時代」の残影をもはや全く見ることなく育っています。
経済的に豊かになることで幸せになれるという価値観が、すでに実感として感じ取れなくなっているのかもしれません。
同時に、企業に対する信頼度も他の世代と比べて低くなっていると指摘されることがあります。
莫大な収益を上げている企業よりも、社会にとって貢献度が高く多くの人々に役立つ活動をしている企業を高く評価する傾向があるというのです。
(出典:A.T. カーニー 未来の消費者に関するグローバル調査)
近年、多くの企業がSDGsに対する取り組みを強化していますが、新たな世代の消費者に対して企業価値を訴求し続けていくには、単に「儲かっている」「売上が多い」というだけでは通用しなくなっていることと、Z世代のこうした価値観は決して無関係ではないでしょう。
Z世代の価値観を理解することの重要性とは?
古代エジプトの遺跡から発掘された古代文字には、「近ごろの若者はけしからん」といった意味の文言が刻まれていたと言います。世代が変われば考え方や価値観も変化することは、これまで人類がずっと経験してきたことであり、致し方ない面もあると言わざるを得ません。
しかし、管理職にとってZ世代の価値観を理解することは、今後の企業活動にも大きく影響を及ぼしかねない重要な事項です。
なぜZ世代の価値観を理解することが重要なのか、そこには主に3つの理由があります。
新卒をはじめ若手社員がZ世代にあたる
新卒採用に苦戦する企業が増えています。どのような企業価値を訴求すれば若い世代に「刺さる」のか、PRの仕方を摸索している企業も多いことでしょう。
今後、新卒をはじめとする若手の社員を採用する場合、そのほとんどがZ世代になっていきます。
若い世代の感性を理解できるかどうかは、素朴に「世代間のギャップ」では済まされない、企業活動の存続や事業の継承にも関わっていく可能性があるのです。
採用だけでなく、若手社員の定着という点でもZ世代への理解は重要な意味を持っています。
仮に採用することができたとしても、数年内に退職してしまう社員が後を絶たないようでは採用コストを無駄にしてしまう恐れがあるからです。
入社して働き始めてみたら、「上の世代の社員に全く共感できない」「あんなふうになりたくない」と思われてしまったら、働き続けて行く上でのモチベーションも低下してしまうことは必至です。
今後入社するであろう世代全般に対する理解度という意味で、Z世代に歩み寄り理解を示す姿勢は重要な意味を持っています。
管理職の世代とは価値観が大きく異なる
現在、管理職として活躍している世代は、ベビーブーム世代からX世代が多勢を占めています。そこへZ世代の若手社員が部下としてついた場合、上司の世代の価値観のちがいに面食らってしまう可能性があります。
たとえば、管理職に昇進し活躍している人にとって、「努力すれば評価してもらうことができ、昇進も可能になる」という論理は、仕事に精を出す理由として一定の説得力を持つように思いがちです。
ところが、Z世代の若者にとってそのような価値観はもはや「共感できない」ばかりか、「なぜそんなことに価値を感じるのだろう」といった軽蔑に近い思いを抱く原因にもなり得るのです。
チームを鼓舞するためにしばしば使われる「目標達成」や「売上伸長」といった言葉も、Z世代には届かない可能性があります。むしろ、数字ばかりを追い求める上役の姿勢に嫌気がさし、職場を離れるきっかけを作ってしまう恐れすらあります。
このように、Z世代はそれ以前の世代とは価値観が大きく異なることを前提に、何に対して価値を感じているのかをていねいに読み解いていく必要があるでしょう。
これまでの組織における「当たり前」を見直すきっかけに
従来、日本の会社の多くは縦社会でした。実質的に終身雇用が崩壊したのちも、その名残を強く引きずっている組織は少なくありません。
たとえば、年齢や性別による処遇のちがい、組織内における発言力の序列、それらを前提に作られてきたビジネスマナーに至るまで、若い世代が違和感を覚えずにいられない企業の慣習は数多くあります。
Z世代の良い点として、多様性をごく自然に受け入れられることが挙げられます。
彼らのフラットな視点は、従来の価値観に慣れてしまった管理職にとって良い刺激となり、今一度これまでの「当たり前」を見直すきっかけを与えてくれるかもしれません。
SDGsをはじめ、世の中の風潮は多様性を受け入れる方向へと向かいつつあります。
だからこそ、新しい世代の価値観をヒントとして、これまで見過ごされてきた「当たり前」を見直していくことは重要な意味を持っているのです。
管理職がZ世代の社員に接する際の注意点
ここまで、Z世代の主な特徴と彼らの価値観を理解することの重要性について述べてきました。
管理職の方によっては、今すでにZ世代にあたる社員が部下の中におり、どう接したらいいのか悩んでいる人もいるかもしれません。
そこで、最後に目の前の課題として、管理職がZ世代の社員に接する際、どのようなことに注意を払えばいいのか考えてみましょう。
とくに注意しておきたい点として次の3点が挙げられます。明日からZ世代の部下に接する際には、ぜひ取り入れてみてください。
従来の組織における「当たり前」を押しつけない
管理職の人は、多くの場合その組織で評価され、昇進してきた経緯があります。そのため、自身が所属している組織の「当たり前」を今さら疑おうと思っても、なかなか難しい面があるかもしれません。
企業は新入社員を受け入れれば研修や実務を通じた教育を実施しなくてはなりません。これは企業の将来にとっても、新入社員自身の成長にとっても重要なことです。
ただし、指導や教育の名の下に価値観や考え方のレベルで若い世代に押しつけてしまわないよう注意が必要です。
一例として、近年はビジネスにおけるコミュニケーションのあり方も大きく様変わりしています。
管理職自身が慣れ親しんできたからと言って、電話やメールによる連絡手段が最善とは限りません。
LINEなどのチャットツールに慣れているZ世代にとって、ビジネスメールはいかにも非効率的で生産性の低い連絡手段として映っているかもしれないのです。
若手が仕事をやりにくそうにしているのであれば、「できるようになるまで指導する」だけでなく、なぜやりづらいのか、より良い方法があるのではないか、といった視点を持つようにしましょう。
管理職自身の若い頃と重ね合わせて考えない
若手の社員が部下につくと、管理職としては「自分が同じ年齢の頃は〇〇だった」といった比較をしがちです。
そして、場合によっては「〇〇ぐらいのことはあの年齢でできていた」といったネガティブな見方をしてしまうのです。
しかし、管理職自身が20代だった頃と、今のZ世代とでは価値観が大きく異なることは明白です。
激励するつもりで投げかけた言葉が若手社員にとってショックなものだったり、自身の価値観を否定されているように感じたりすることも考えられます。
自身の若い頃と比較するのではなく、目の前にいる部下が今どのように物事を感じ取っているのか、何を重要視しているのかを理解しようと努めることでスタートラインに立つことができるのです。
世代論でひとくくりにせず一人一人に傾聴し価値観を尊重する
この記事では「Z世代」といったくくりで解説してきましたが、実際にはZ世代にもいろいろな人がいます。
多様性を大切にする世代にとって、世代論こそは「レッテル貼り」「決めつけ」そのものとして映ってしまうかもしれません。
若い世代の社員に理解しがたい面があったとしても、「Z世代だからだろう」と安易に結論づけてしまうのではなく、なぜそのような発言・行動をするのかよく観察し、対話の機会を持つようにしましょう。
年齢が離れれば離れるほど、異なる世代の考え方や価値観を理解し受け入れるのは簡単なことではないかもしれません。
しかし、たとえ完全に理解できないことがあったとしても、理解しようと努めている姿勢は必ず相手に伝わるはずです。「Z世代のことは理解できなくても仕方ない」と諦めてしまわず、一人一人にじっくりと向き合って傾聴し、それぞれの価値観を尊重する姿勢を見せることが何よりも重要です。
まとめ)Z世代に理解を示すことは組織にとってプラスの効果をもたらす
SNSをコミュニケーションツールとして自然に使いこなし、金銭やブランドといった既存の価値に惑わされないZ世代の価値観は、新しい世代の台頭として注目を集めています。
「若手だから」「まだ社会経験が浅いから」といった尺度で押さえつけてしまうのではなく、彼らが持つ新しい価値観を知ろうとすることによって、知らない間に硬直化しつつあった組織に新しい風を吹き込むことにもつながるでしょう。
Z世代に理解を示し、彼らの価値観を知ることは、長い目で見れば組織にとってプラスの効果をもたらす可能性があります。
ぜひ新卒や第二新卒として入社してきた若手と積極的にコミュニケーションを図り、新しい価値観を取り入れるチャンスをつかんでください。
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