HRTechによる「戦略人事」時代の到来を意識していますか?

[最終更新日]2020/09/24

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HRTechによる「戦略人事」の時代到来

皆さんの勤務先では「人事」に関する業務はどのように捉えられていますか?
人事は文字通り「人」に関するあらゆる業務を扱います。そのため、人事関連の業務を担うのも「人」の役割だと長らく思われてきました。

ところが、近年になって人事領域へのテクノロジー活用(HRTech)が注目を集めています。
評価や人材配置など、従業員のキャリアを左右しかねない重要な判断を人ではなくAIに委ねていいのだろうか?と疑問を抱いたことがある人もいるのではないでしょうか。

なぜいまHRTechが注目されているのか、どのような分野に活用が期待されているのかなど、この記事ではHRTechの基礎から最近の動向までをまとめています。

実際にHRTechを効果的に活用している企業の事例も紹介していますので、HRTechについて理解を深めたい人、将来的にHRTechの導入を検討している人は、ぜひ参考にしてください。

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Index

目次

HRTechとは?なぜいま注目されている?

近年、X-Tech(クロステック)があらゆる業界で産業の仕組みを大きく変えようとしています。

参考:X-Tech(クロステック)とは

X-Tech(クロステック)とは既存の業界のビジネスとAIやビッグデータ、IoTなどといった先進的なテクノロジーを結び付けて生まれた新たな製品やサービス、あるいはその取り組み

X-Tech(クロステック)とは、既存の業界のビジネスとAIやビッグデータ、IoTなどといった先進的なテクノロジー(情報通信技術)を結びつけて生まれた新たな製品やサービス、あるいはその取り組みを指します。

近年、X-Techにより既存の産業構造や市場が再定義され、様々なビジネス領域が新たに形成されつつあります。

金融におけるFinTechや、教育におけるEdTech、不動産におけPropTechなどはそのX-Techの一例です。

X-Techの中でも、人事領域における技術の活用が「HRTech」です。
しかし、これまでも人事管理システムなど人事領域でのテクノロジー活用は決してめずらしいことではありませんでした。

では、なぜ近年になってHRTechが注目されているのでしょうか。HRTechの基本的な概念と、注目されている背景について整理しておきましょう。




HRTech=人事領域でのテクノロジー活用

HRTechはHuman Resource(人材)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた言葉です。人材領域においてテクノロジーを活用し、より効果的・効率的に業務を進めることを指しています。

人事に関する業務は多岐にわたっており、しかも組織内の複雑な課題を抱えていることが少なくないため、人事担当者に負荷がかかりやすいという特徴があります。

たとえば、採用業務1つとっても、新卒採用と中途採用を毎年実施している企業にとって書類選考や面接選考は一定以上の時間と労力を割かなくてはならない業務となります。

従業員の勤怠や労務に関する業務は毎月の締め日には必ず発生します。さらに、人事考課や配属といったシビアな判断を担うこともあるため、人事は時として「憎まれ役」になる場合もあると言われることがあります。

このように、そもそも人事の仕事は業務量・業務内容の両面で担当者にとって高負荷であり、組織が大きくなればなるほど人によるオペレーションには限界がありました。




HRMS(人事管理システム)とのちがい

多忙な人事業務を効率化するために、いわゆる人材管理システムを導入している企業も数多くあります。
勤務先で、SAPやOracleといった企業が提供するERP(Enterprise Resource Planning 「基幹系情報システム」)を活用している人もいるでしょう。

こうしたHRMS(人材管理システム)と、HRTechはどのようにちがうのでしょうか。

最も大きなちがいは、HRTechがクラウド技術によって進展してきた点です。

従来、ERPをはじめとする企業向け業務ソフトウェアは高額な製品であり、導入・運用するには相応のコストと時間を必要としました。

ところが、クラウド型サービスでHRTechを活用できるようになったことで、イニシャルコストを大幅に抑えられるようになったのです。
これにより、大企業だけでなく中小企業もHRTechを活用できるようになり、広く認知されるようになったのです。




戦略的な人材活用はあらゆる企業にとって喫緊の課題

HRTechへの注目度の高さは、多くの企業が人事戦略に高い関心を寄せていることの証左と見ることもできます。

企業にとって優秀な人材を採用することは年を経るごとに困難になっています。

今後ますます労働人口が減少していく中、能力のある人材を獲得することは企業にとって将来の明暗を分ける重大事と言えるでしょう。

人材採用のハードルが高くなっているのであれば、既存の従業員をより効果的に育成することや、能力・適性に見合った業務を任せることの重要度がいっそう高まっていきます。

このように、戦略的な人材活用は業種を問わずあらゆる企業にとって「待ったなし」の課題になるはずです。

これまで人事は「人」の感覚に依存して行われてきた業務の最たるものだったと言えるかもしれません。
裏を返せば、機械による定型的な処理は不可能と考えられてきた領域でもあったのです。

そのため、HRTechはテクノロジーの普及がやや遅れていた人事領域へと一気に流入し、一躍注目を集めることとなりました。

HRTechが大きく進展した3つの要因とは?

前述のように、人事管理システムをIT化するという動きはHRTech以前からありました。

近年、HRTechが急速に普及し注目を集めている背景には、テクノロジーの発達という大きな要因があることは間違いありません。

HRTechが大きく進展するきっかけとなったテクノロジーとして挙げられるのは、主に次の3点です。

個人用デバイスの爆発的な普及・浸透クラウド/ソーシャル型サービスの発展膨大なデータ収集とその分析・活用が可能に
  • 個人用デバイスの爆発的な普及・浸透
  • クラウド/ソーシャル型サービスの発展
  • 膨大なデータ収集とその分析・活用が可能に

これらのテクノロジーをいかに使いこなし、人事業務に活かしていくかがHRTechを実現する上でカギを握ると言ってもいいでしょう。




個人用デバイスの爆発的な普及・浸透

2000年代に入ってスマートフォンが一般消費者に広く浸透し、いわゆるモバイルデバイスが私たちの暮らしを一変させました。

これまでPCで行うしか方法がなかった通信がスマートフォンに代替されるようになり、私たちは場所を選ばず必要な情報にアクセスできるようになりました。

具体的には、社員の勤怠管理をスマートフォンから行うことができるようになり、テレワークや在宅勤務が多くの業種で可能になっています。

就職活動や転職活動を行う学生・社会人の多くは、スマートフォンで求人を探し、応募や選考日程の管理を行っています。

このように、個人用モバイルデバイスが爆発的に普及・浸透したことによって、以前は考えられなかったほど機動的に、場所を選ぶことなく人事・採用情報へとアクセスできるようになったのです。




クラウド/ソーシャル型サービスの発展

クラウド型サービスが発展したことのメリットは、企業にとってシステム導入のコストが下がったことだけに留まりません。

クラウドベースのサービスであれば、従業員は自分専用のデバイスに特別なソフトウェアをインストールすることなく、Webブラウザ経由でアクセスすることが可能となります。サービスを利用可能なOSや機種に依存せず、PCでもスマートフォンでもアクセスできるようになったのです。

また、SlackやChatworkといったビジネスチャット・ビジネスSNSが広く使われるようになり、これまでEメールやイントラネット経由で行われてきた社内コミュニケーションのハードルが大きく下がりました。

結果的に従業員間で共有可能な情報のギャップが埋まり、従業員エンゲージメントの向上に寄与しています。




膨大なデータ収集とその分析・活用が可能に

これまで人事情報は、入社時に提出された履歴書や入社後の人事評価といったように、定点的な情報しか得られていませんでした。

ところが、従業員の勤怠やソーシャルメディアでの行動をビッグデータとして蓄積し、分析することによって人事情報の客観的な判断材料は劇的に増えました。

たとえば、退職の兆候が見られる従業員の行動を勤怠情報から割り出すことも、個々人によってブレが生じやすい上司の感覚に頼るのではなく、客観的なデータに基づいて行うことができるようになっているのです。

こうした従業員の日々の様子を解析することによって、今後は企業にとって意思決定や将来の予測を立てるための材料として役立てることも可能になっていくでしょう。

HRTechの活用が期待される5つの分野

人事領域は長らく人の手によって処理されてきた分野であることから、HRTechの台頭によって今後急速に機械化・自動化が進むと予測されています。

企業における人事領域の業務は幅広く、HRTechの活用が期待される分野も必然的に多岐にわたるものとなります。

HRTechの活用が期待される分野として、とくに次の6分野が挙げられます。

採用管理システム人事管理システム労務管理システム勤怠管理システム教育・育成管理システム
  • 採用管理システム
  • 人材管理システム(タレントマネジメントシステム)
  • 労務管理システム
  • 勤怠管理システム
  • 教育・育成管理システム

どのような方面でHRTechの活用が見込まれているのか、1つ1つ見ていきましょう。




採用管理システム

人事担当者にとって負担の大きな業務の1つに採用業務があります。

求人メディアとの契約や打ち合わせ、募集広告の出稿、応募者の書類選考、面接選考の実施、採否の判断や合否連絡、入社意思の確認、入社に必要な手続きといったように、1人の社員を採用するまでには膨大な業務をこなさなくてはなりません。

こうした煩雑な採用業務をスリム化し、一元管理することを可能にしているのが採用管理システムです。応募者の履歴書管理、選考プロセスの進捗管理、面接評価データの収集、応募者とのやりとりの履歴管理といったように、これまで分散して行われてきた業務を一元管理することが可能となったのです。

近年では、書類選考の採否をAIが判断したり、求人票の広告効果をAIが採点したりできる仕組みも開発されています。データに基づく戦略的な採用活動が可能となり、企業の人材戦略を強化することに役立ちます。




人材管理システム(タレントマネジメントシステム)

多くの従業員を抱える企業において、人事情報は年々膨大な量となっていきます。
入社年月、配属部署、人事評価、異動の履歴、退職理由といったデータを適切に管理するだけでなく、人員配置や退職防止に役立てることができるようになるのです。

また、経年で分析を続けることにより、部署ごとの平均勤続年数や離職率、離職理由なども客観的なデータに基づいて分析できるようになります。

経営者や管理職が感覚で判断するのではなく、客観的な情報に基づいて意思決定を行えるようになるのがポイントです。

年数が経てば経つほどこれらのデータが蓄積されていき、その企業独自の人材情報として価値を持つことになるでしょう。

各部署が抱えている潜在的な課題や問題点を発見する上で、こうしたデータの活用が期待されています。




労務管理システム

社会保険や給与計算などの各種手続きは労務管理と呼ばれます。

マイナンバーの導入や健康保険料率の変更といった各種の法令・制度の変更に対応する必要がある上に、誤りや遅滞がないよう確実に手続きを完了させなくてはならない業務のため、人事担当者にかかる負荷は決して少なくありません。

HRTechの導入により、これらの手続きをオンラインで完結させられるようになり、手続きの進捗状況を可視化できるようになります。

煩雑な書類の管理をスリム化できる効果もあるため、人事担当者だけでなく各従業員の負担を減らすことにもつながります。

これらの事務処理を簡素化することによって、人事担当者は煩雑な事務作業から解放され、より戦略的な思考にリソースを割くことが可能となるのです。




勤怠管理システム

タイムカードによる勤怠管理は、従業員の打刻忘れが発生しやすいだけでなく、月次締めの時期には毎月のように勤怠情報の集計とチェックが発生する、負担の大きな業務の1つです。

パート従業員を採用している企業では、勤務シフトの作成や管理も行う必要があるため、各部署の管理職と人事担当者の連携をいかに図るかが課題となるケースもめずらしくありませんでした。

勤怠管理システムはこれらの情報を一元管理し、テレワークなど多様化する勤務体系の中でも勤怠状況を把握しやすくなっています。

また、従業員側にとっても残業や有給休暇、出張などの申請をスマートフォンやPCから行えるようになり、「書類を作成して承認印をもらうために会社に立ち寄る」といったムダを省くことができるようになります。

勤怠に関しても、生体認証やスマートフォンからの出退勤報告ができるようになることで、煩雑な申請処理から解放されるメリットがあります。




教育・育成管理システム

従業員に対する研修や継続的な教育・育成についても、LMS(Learning Management System)による一元管理が可能となります。

内定者研修や新入社員研修にはじまり、リーダー研修、管理職研修といった各種研修をeラーニングで行うことにより、研修担当者の負担を軽減するだけでなく、定期的・継続的な研修の実施がより実現しやすいものになります。

また、研修の進捗状況や効果の測定に関しても、客観的なデータを元に判断しやすくなります。

達成度を見るための各種テストをeラーニング上で実施することにより、各従業員の達成度や学習状況をリアルタイムで確認できるのです。

こうした動きは、研修にかかる教材費や会場費用といったコスト面だけでなく、全体研修を実施する時間的・労力的な負担を減らすことにもつながります。

HRTechを効果的に活用している事例

ここまでで紹介してきたHRTechは、実現や活用が遠い将来に見込まれているものではなく、すでに導入・運用が始まっている技術です。

HRTechの導入によって、これまで人が介在しなくては処理できなかった業務が簡素化され、人事担当者はより戦略的な思考に集中しやすくなるのが特徴です。

具体的な事例として、3社のHRTech活用実績を紹介します。これからHRTechの導入を検討している管理職の方は、HRTechの活用によってどのような効果を得られているのか、ぜひ参考にしてください。




新卒採用のエントリーシート選考にAIを活用(ソフトバンク)

ソフトバンクでは新卒採用時のエントリーシートの選考にAIを活用し、選考時間の短縮を実現しています。

大量のエントリーシートに目を通し、次の選考に進む学生を決定するプロセスは人事担当者にとって膨大な時間と労力を要します。

採否の決定プロセスにおいても、担当者間での判断基準のブレや先入観による誤った判断を防ぐことができ、より公正で的確な採用基準を貫くことができるのです。

AIによる採用業務の負荷軽減は、採用担当者にとって応募者との面接やコミュニケーションにかける時間の確保にもつながります。

これにより、会社の魅力をより多くの学生に知ってもらうことができ、優秀な人材の確保を実現するための戦略へと集中しやすくなります。




従業員のデータをクラウド化して適材適所を実現(日立製作所)

日立製作所は2016年より「ピープルアナリティクス部門」を新設し、AIやビッグデータを活用した人事領域での戦略に活かしています。

従業員の日々の業務関連データを蓄積し、人事情報として活用できるようにすることで、プロジェクトに参加するメンバーの決定や従業員間での業務協力依頼をしやすくなり、仕事をスムーズに進められるようになっています。

また、従業員の行動変革を促す課題抽出、人材配置の適正化といった方面でもビッグデータは活用されており、感覚や印象によって人事戦略が左右されない客観的な判断を下せる仕組みを構築しています。

めまぐるしく変化する市場の環境に対応する上で、適材適所の人事は不可欠です。HRTechによってデータ解析に基づく人材配置を実現している優れた事例と言えるでしょう。




従業員の入退社に伴う手続きに要する時間を80%削減(加和太建設)

人事担当者にとって、従業員の入退社に伴う各種の事務手続きは大きな負担となります。
社会保険関連の書類作成、役所への申請、給与明細の発行、退職証明書の発行といった諸手続は、従業員が入退社するたびに必ず必要となり、省略することのできない業務だからです。

加和太建設では、こうした労務手続や管理業務に従来1週間かけていたところを、HRTechの導入によって1日に短縮することができたとのことです。

作業時間としてはおよそ80%削減できたことになり、人事担当者の負担が大幅に軽減できていることは想像に難くありません。

こうした事務手続きの簡略化は、人事担当者がより俯瞰的に組織を捉え、戦略的に物事を考える時間を作ることにも寄与しているはずです。

まとめ)HRTechの浸透は「戦略的人事」時代の到来を予見させる

従来、業務管理システムの導入は業務のスリム化や労務時間の短縮といった、主に効率化に焦点を当てて実施される施策でした。

しかし、HRTechによって人事データがより有効活用できるようになるとともに、人の判断に委ねられていた業務を客観的かつ統一された基準で処理できるようになります。

こうした動きは、従来の人事関連業務から大きく進展した「戦略的人事」の時代が訪れつつあることを予見させます。

HRTechの導入を検討している企業は、単にシステムの導入という観点のみならず、人事戦略全般をよりレベルアップさせることを見越しておく必要があるでしょう。

人事領域はHRTechによってさらに奥深く、面白いものへと変容していく可能性を秘めているのです。




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