いまさら聞けない「株式会社」の「株式」ってどういう意味?

[最終更新日]2019/07/26

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日本に星の数ほどある株式会社。おそらく自営業を営んでいる人や公務員、士業などをのぞけば、大多数の人は自身が働いている場所も「株式会社」が多いでしょう。

しかし一方で、大人であっても株式会社の意味を正確に理解していない人は一定数います。この記事では、知らなかったとしてもいまさら聞けない株式会社の意味やその仕組みについて説明します。

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目次

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そもそも、株式会社ってどういう意味?

株式会社は、基本「資本」と「経営」を分けて運営されている

まずは株式会社の仕組みがどのようになっているか説明します。

株式会社は会社経営の源泉となる「資本」の所有者と、会社の経営を行う人を分離する会社形態です。このとき資本となる資金、資本金を提供した人が「株主」となります。また、経営を行う経営者は株主による集会である「株主総会」での選出により決まります。

株式会社は、このように資金を出す人と経営者が分離されていることが最も重要かつ基本的な特徴です。さて、株主は資本金を「払いっぱなし」になるわけではなく、以下のような権利と責任が発生します。

  • 株主総会に参加する権利
  • 利益分配をうける権利
  • 会社の経営に対する有限責任

株主総会は経営者を始め、会社経営上重要な事項を決定する集会で、株主はこの総会に参加することができます。

また、会社の経営の源泉と出しているわけなので、株主は会社の利益分配をうける権利があります。これは一般的には配当金や株主優待として実現します。

一方で株主は、会社の経営に対し有限責任を負います。会社が損を発生させ資本金を毀損させた場合は、保有する株式の割合にしたがい、株の価値が毀損します。

もし破綻した場合は、資産分配で優越する債権者への資産分配後の資産額しか分配されません(現実的にはほぼゼロになります)。一方で、株式の価値がゼロの水準までしか損失を被ることがない=責任を負う必要がないので、「有限責任」と呼ばれます。

「株式」とは、会社が資金を集めるために発行する証明書のこと

さて、前章で説明の通り、「株主」は会社の資本金の出し手となるわけですが、続いて「株式」とは何か説明します。

株式会社が事業を始めるとき、既存の資本だけでは充分に事業を行うことができません。借金をするのも手ですが、あまり大きな借金=負債を抱えては経営が不安定になってしまいます。

こうした時には、新たに資本金を出資してくれる人、つまり株主になってくれる人を募ります。すでに存在する株式会社が新たに株にて出資を募ることを「増資」といいます。

この時、無事資本金を出してくれる人が現れた場合に、その出してもらった金額に応じて、「会社の資本金の一部を出していること」に対する証明書が発行されます。これが「株」であり、より正式に言うと「株式」となります。

株主は社長のみ…という会社は、「オーナー企業」

さて、ここまで説明したとおり、株式会社とは本来「資本」の出し手である「株主」と経営者を分離する仕組みですが、現代日本においてはこの分離が必ずしも成立していない場合も多いです。

というのも、法律上株主を保有している人がそのまま経営者となることは特段禁じられてはおりません。株式の過半数を所有してしまえば自分で経営者を自分に指名することが可能になります。このように全株主、もしくは過半数の株主が家族や本人で経営者と重複している会社をオーナー企業といいます。

無名の中小企業や零細企業では外から株主を募って出資してもらうのは困難なので、オーナー企業となっていることは多いです。特に出来立ての会社であれば自分自身が自己資金から出資して株主となるしかないので、スタートはたいていオーナー企業です。

一方、一部大企業でも戦略上オーナー企業のまま成長する例もあります。飲料の大手、サントリーなどはその好事例です。

株式会社と他の形態の会社の違い

ここまで説明しました株式会社は日本の企業形態として多く見られるものですが、会社には株式会社以外の形態もあります。また、株式会社自体も2006年の新会社法で大きく変化しております。ここでは株式会社自体の変化や、他の形態との比較差異を紹介します。

そもそも、株式会社の形態は2006年の「新会社法」で大きく変化した

旧株式会社(2006年より以前) 現在の株式会社
最低資本金の額 1,000万円 1円
資本金の出資者 発起人が収支額に応じて株主に 発起人が収支額に応じて株主に
株式の公開 任意 任意
必要な最低役員数 取締役3名、監査役1名
取締役会を設置
取締役1名
役員の任期 2年 2年
※株式譲渡制限がある場合は10年
社会保険の加入 義務 義務
社員数制限 なし なし
決算の公告義務 あり あり
重要事項の決定機関 株主総会 株主総会

実は、株式会社自体が2006年の新会社法施行により大きく変わりました。主な変更点を一覧にすると上記の通りです。基本的に、以前より株式会社が簡単に設立できるように改正が行われました。この改正は起業を促進する狙い、そして前述の通りけん制機能が働きやすい株式会社をより普及させることを主目的に行われました。

特に変更の大きい部分としては、まず資本金の制約が1000万円→1円と変わり、実質資本金がほぼなくともよくなりました。また、取締役・監査役が合計4人→1人となり、3人以下でも株式会社を設立できるようになりました。これにより家族経営の企業などでも株式会社化する余地が生まれました。

株式会社と有限会社の違い

株式会社 有限会社
最低資本金の額 1円 300万円
資本金の出資者 発起人が収支額に応じて株主に 出資額に応じて社員となった者は株式会社に移行
株式の公開 任意 不可
必要な最低役員数 取締役1名 取締役1名
役員の任期 2年
※株式譲渡制限がある場合は10年
なし
社会保険の加入 義務 義務
社員数制限 なし なし
決算の公告義務 あり なし
重要事項の決定機関 株主総会 株主総会

有限会社は、もともとは株式会社化するうえで、取締役会の設置や資本金規模の充足など制約が大きかったため、より「小規模でも簡単に近い性質の会社を設立する方法」として設定されていたものです。2006年の新会社法で新たに設立ができなくなるとともに、既存の有限会社は「特例有限会社」と名を変えましたが、依然日本には約143万社の有限会社が存在します。

同じ新会社法において株式会社の設立要件が大きく緩和されたため、以前より有限会社のメリットは減りました。現在でも残っている有限会社のメリットとしては、役員任期がなく、手続きなしに同じ役員で長期間経営が可能なことと、決算公告が不要であることがあげられます。

一方で、以前より株式会社との差異は減り、社会的な信用力も株式会社の方が高いことから、企業が一定程度大きくなった場合には株式会社化する動きが以前より活発になっています。

株式会社と合同会社(LLC)の違い

株式会社 合同会社
最低資本金の額 1円 1円
資本金の出資者 発起人が収支額に応じて株主に 出資者全員が「社員」
株式の公開 任意 株主が存在しない
必要な最低役員数 取締役1名 社員1名
役員の任期 2年
※株式譲渡制限がある場合は10年
なし
社会保険の加入 義務 義務
社員数制限 なし なし
決算の公告義務 あり なし
重要事項の決定機関 株主総会 社員総会

合同会社は2006年の新会社法において有限会社に代わる小規模の会社に向く企業形態として新たに設定されました。出資者がそのまま社員として会社経営にかかわることができる会社形態です。

また有限会社の最低資本金は300万円ですが、株式会社の最低出資額が1円に引き下げられたのを受けて、合同会社も最低出資金は1円となっております。社員の任期が存在しないため、長期間同じ社員により経営が行われていても総会で決を採る必要がなかったり、決算公告が不要といったメリットが合同会社にはあります。

一方で、株式会社で働くけん制機能が限定されますので、社会的な信用力は一般的には株式会社よりは低くなっております。

株式会社の役員・管理職になったら、まず押さえておきたい行動3つ

ここまでで説明した株式会社の仕組みやほかの形式の会社との違いを前提とすると、役員・管理職になった時に、資本の所有者たる株主の反感を買うことなく、円滑に会社経営を進めていく上で押さえておきたいポイントが大きく分けて3つあります。

  • 決算公告は、会社の状態と方針(想い)が見られる重要資料。必ずチェックを
  • 役員の意思、株主(出資者)の意思を知る
  • 「今の会社で働くのは誰の為か」を常に考える

それぞれ、順を追って見ていきましょう。

決算公告について、理解と知識を深めておく

株式会社においては、定時株主総会後に遅滞なく決算公告をすることが求められております。これは、会社の経営成績や財務情報を開示することを指します。決算の内容を公にすることで、株式会社は外部の目の監視を受けるため、適切に会社経営を行おうとします。あまり知られていませんが、決算公告は会社法にて定められている株式会社の義務です。

この決算公告自体の仕組みを理解することも重要ですが、役員や管理職は、必ずこの決算の内容にしっかりと目を通し、自社の経営状態や財務状態、そして、会社が今後どのような方向性でビジネスを行っていくのかを知っておく必要があります。

そのうえで、会社の良いところはさらに伸ばし、また弱いところは改善するよう、自分はどのように働きかけていくか考えていかなければなりません。

役員の意思、株主(出資者)の意思を知る

前述の通り株式会社は経営者と株主を分離することでけん制機能を働かせるところに重要な特徴があります。

経営者も株主も本来会社を維持発展させたいという思いは同じはずですが、各々が目指すところは微妙に異なっていることが常です。

例えば、経営者は今すぐ利益を出して自分の報酬を高めたいと思っている一方、株主は中長期目線から投資を優先させるべきと思っている、といったように、両者の希望がずれているということはよく起こります。

こうした状況にある株式会社で管理職や役員として働く場合は株主と経営者、もしくは自分以外の役員の微妙に異なる「意思」を理解することが大切です。

それぞれの「意思」を理解した上で、組織のバランスが保たれ、かつ会社発展に寄与するように自信は判断を下し、仕事を進めていく必要があります。

「今の会社で働くのは誰の為か」を常に考える

管理職、経営者となった場合は、会社は何のためにあり、自分はそこで誰のために働くのか意識しながら働くことが肝要です。

まず、仕組みから言うと株式会社は間違いなく「株主」のためです。株主のために適切に利益をだし、また株式会社が存続されるように意識し、そのなかで自分は最適の仕事をするよう勤める必要があります。

一方で現実的には経営者が目指す会社の在り方のために働く部分が多分にあります。また、上位層にいけばいくほど、部下たち社員たちが安定して働き生活できるようにする、という側面も出てきます。

そして、もちろん会社と付き合いのある顧客や社会発展のためでもあります。

このように株主会社のなか働く場合は「誰のため」か、答えは様々ですが、まず、「株式会社」は「株主のもの」であるという原則を認識しつつ、いま「誰を優先すべきか」常に考えながら仕事に取り組むことが大切です。

株式会社の本当の意味を知ることは大切

株式会社とは、「株式」を発行することで、会社の資本の所有者を株主とし、経営と資本を分離する仕組みです。所有者と経営者を分離することで経営者にけん制機能が働きます。

従って会社経営が誰かの独善的になることを防ぐことができます。従って「株式会社」の形式は大きな会社組織を安定運営しやすいしくみであることから、現代社会において広く普及した会社形態となりました。

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