「人材派遣」を戦略的に活用していくために押さえたい3つのポイント

[最終更新日]2022/12/15

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派遣社員をすでに登用している企業や、これから登用する予定の企業は少なくないはずです。派遣制度は労働力確保のための手段としてごく一般的なものとなりましたが、果たして人材派遣の仕組みをしっかりと理解した上で活用できているでしょうか?

この記事では、人材派遣の基本的な仕組みや派遣社員と正社員との違い、人材派遣を活用する上で気をつけておきたいポイントを解説しています。人材派遣を活用する上で押さえておきたいポイントを確認しておきましょう。

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目次

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そもそも「人材派遣」ってどんな仕組み?

人材派遣の基本的な仕組みを確認する前に、次の事例を見てください。

  • 派遣社員を採用するにあたって、人物を確認するための面接を実施した
  • 派遣社員の能力が高いので、正社員にならないか?と本人に確認した
  • 部署内で必要になったので、契約内容にない雑用を派遣社員に頼んだ

これらの行為はすべて「NG」行為なのですが、ピンときたでしょうか。 まずは人材派遣の基本的な仕組みを確認しながら、なぜこれらの行為がNGなのかを考えてみましょう。

人材派遣の仕組みって?

正社員や契約社員、アルバイトといった従業員は、就業する企業に雇用されています(直接雇用)。これに対して、派遣社員は「派遣会社と雇用契約を結んだ従業員」であり、派遣会社から就業先へ派遣されているという違いがあります。

派遣社員の給与や残業代の支払は、派遣元である派遣会社が行います。派遣社員が行う仕事の具体的な指示や休憩の取得、残業の有無など、現場での指揮命令下で行うべきことは派遣先企業が責任を負います。

派遣社員を採用する場合、派遣会社へ条件を伝えて条件に合う人材を紹介してもらいます。「顔合わせ」などの名目による面接行為が横行していますが、派遣先企業が派遣社員を面接することは禁止されていますので注意が必要です(後述する紹介予定派遣の場合は異なります)。

派遣社員は一般的に3ヶ月程度の契約期間で派遣先企業にて就業します。3ヶ月経過時に契約を更新するかどうかは、派遣先企業・派遣社員双方の意向を派遣元が確認した上で決定します。派遣先企業が一方的に決めることはできません。

人材派遣の種類

一般派遣(登録型派遣)

前の項までで述べた一般的な人材派遣がこれにあたります。派遣で働きたい人は派遣会社に登録し、希望する条件の案件があった場合は派遣会社を通じて派遣先を紹介され、契約期間内のみ雇用契約を結ぶ働き方です。派遣先企業と派遣社員双方の意向が合致すれば、契約を更新して就業を続けます。

多くの場合、時給制で働くことになり、通勤交通費は支給しないケースがほとんどです。派遣先での契約が更新されない場合は契約満了となり、次の派遣先が見つかるまでの期間は給与の支払いはありません。

紹介予定派遣

上述の一般派遣と同じように時給制で就業を開始しますが、3ヶ月間など一定の派遣期間を経て派遣先で正社員に登用されることが前提となっている点が一般派遣との大きな違いです。派遣期間は実質的な試用期間の一部となりますので、派遣社員・派遣先企業の双方にとってミスマッチがないか確認する期間を設けられるメリットがあります。

一般派遣とは異なり、あくまで正社員登用を前提として採用されますので、採用時には派遣先企業での面接選考を行うことが認められています。正社員登用後は派遣先との直接雇用に切り替わり、初めから正社員として採用された社員と同じ扱いとなります。

無期雇用派遣(常用型派遣)

正式名称は「特定労働者派遣事業」と言います。派遣会社と雇用契約を結び、指定された派遣先で就業します。派遣会社の正社員ですので、一般派遣のように時給制ではなく、月給制の固定給となります。よって、派遣先での就業期間が終了し次の派遣先が見つかるまで仮に期間が空いたとしても、その期間は月給が支払われます

待遇面においても、賞与の支給や福利厚生があり、一般的な正社員と同等のメリットを得ることが可能です。能力面で優れている派遣社員を派遣先での直接雇用に切り替える交渉も可能ですが、優秀なスタッフは派遣会社側が手放そうとしないケースも少なくありません。

人材派遣活用におけるメリット3つ

派遣社員の登用を検討する企業にはさまざまな事情があるはずですが、多くの場合、即戦力となる人材を確保したい、採用コストを削減したいといった理由がほとんどでしょう。そこで、人材派遣を活用する上でのメリットを知り、有効に活用することが重要になります。

人材派遣を活用する主なメリットを3つ挙げますので、自社や部署の状況に合致しているかチェックし、派遣社員を登用するタイミングとして適切かどうかを確認してみましょう。

派遣元企業が間に入るため、労務管理等の手間がない

社員を直接雇用した場合、出退勤や残業時間といった労務管理を行う必要があります。これに対して、派遣社員の場合は派遣会社が間に入っているため、実質的に総務・経理関連の業務を派遣会社に外注しているのと同じ状況になります。派遣先企業は現場での指揮命令に徹することができ、必要な労働力やスキルを無駄なく獲得しやすいメリットがあります。

ただし、労務管理が一切不要なわけではない点に注意が必要です。一例として、派遣社員に残業を指示する場合、残業が必要かどうか、どのような業務内容を指示するかの判断は派遣先企業が現場レベルで行います。必然的に、派遣先企業では派遣社員の労務状況を把握する必要があり、多くの場合、この役割を中間管理職が担っています。

また、出退勤の管理に関しても、入退室時刻を派遣先企業の担当者が承認し、その結果を派遣会社へ報告するのが一般的です。このように、派遣社員だからといって労務管理の手間が一切かからないわけではありません。

必要な時に必要な人材を確保することができる。

時期によって繁閑の差が著しい業界・企業では、繁忙期に派遣社員を登用することがあります。これは、派遣社員であれば必要な時期に必要なスキルを持つ人材を確保しやすく、採用にかかる時間・労力を削減することができるためです。

ハイスキル人材の派遣社員を確保できた場合、効率的に労働力を確保できる以外にもさまざまなメリットが期待できます。たとえば、ハイスキル人材が投入されることによって既存の社員が刺激を受け、結果的に部署全体の士気高揚につながったり、従来は見過ごされていた社内の問題点や課題が明確になり、効率化につなげられる機会となったりすることもあります。

日本の雇用制度は終身雇用を前提として設計されているため、一般的に人材が流動化しづらく、同じ顔ぶれの社員が長年共に働き続けることが少なくありません。一過的にスキルの高い人材が社内に投入されることによって、採用コストの削減以外にも多くのメリットをもたらす可能性があるのです。

育成にかかるコストを抑えられる

新卒採用であれば、社会人としての基本的なビジネスマナーに始まり、業界知識や職種特有のスキルについて一連の研修を行う必要があります。これには期間・コストを要するため、戦力になるまでにどうしても時間がかかるという欠点があります。中途採用で即戦力となる人材を確保する方法もありますが、適任と言える人材が見つかる保証はないため、マッチングに関しては運頼みの面があるのは否めません。

これに対して、派遣社員であれば経験業務やスキルセットを派遣会社が確認しているため、即戦力となる人材をスピーディに確保することができます。契約後、すぐに実務に投入できる場合もありますので、採用後の育成にかかるコストを抑制する効果が期待できます。

ただし、派遣期間が満了すれば派遣社員は別の派遣先で就業することになりますので、社内でスキルやノウハウが蓄積されないというデメリットと表裏一体であることは押さえておく必要があります。

なお、人材派遣料は財務上、外注費として変動費に計上することができるため、アウトソーシングと同様に固定費の削減に寄与します

正社員と派遣社員の具体的な違いは?

ここまで見てきたように、人材派遣制度は上手に活用することでさまざまなメリットを得られる反面、正社員とは異なる点も多いため、登用するにあたっては理解しておくべきこともいくつかあります。

こうした違いが生じる根底には、派遣社員が派遣会社の従業員であり、派遣先で直接雇用している社員ではないという事情があります。この違いをしっかりと理解した上で、人材派遣を活用することが求められるわけです。
正社員と派遣社員との違いにおいて、とくに理解しておくべき2つのポイントをご紹介します。

責任を伴う仕事を任せられるか

派遣社員は必要な業務知識やスキルを持つプロフェッショナルという位置づけで登用されています。したがって、派遣社員だからという理由で正社員との間に業務内容の差を設ける必要は原則的にありません。

ただし、ここには例外もあることに注意が必要です。たとえば、派遣社員の契約期間を超える範囲で責任を負う必要がある業務であれば、必然的に正社員が担当するのが妥当ということになります

また、派遣社員は有期契約ですので、契約満了後はスキルやノウハウが社内に蓄積されず、散逸してしまうというデメリットがあります。たとえば、正社員の総合職が担当する業務の中には、担当顧客の専任窓口として「会社の顔」となるケースもあるはずですが、派遣社員が専任で顧客の担当窓口となった場合、契約満了に伴って担当を変える必要が生じます。

こういった場合、顧客にとっての不都合を強いる可能性があるため、派遣社員ではなく正社員に担当してもらう必要があるでしょう。このように、派遣社員には事実上任せられない業務もあることを理解しておく必要があります。

職場でのコミュニケーションの違い

派遣社員が新たに獲得した業務知識は、契約満了に伴って社外へと出て行ってしまいます。そのため、派遣社員に対して積極的に教育投資をしない企業が多いのが実情です。現場レベルでは、「必要な業務手順や社内ルールを覚えてもらう」必要はあっても、新たなスキルの獲得や苦手な業務の克服にはあまり関心が払われない可能性が高いと考えられます。

そのため、派遣社員自身が疎外感を覚えたり、周囲の社員がストレスを抱えたりする原因にもなり得ることを知っておくことが重要です。とくに、派遣社員よりも一緒に仕事をする正社員のほうが年下の場合、業務指示をする上で双方がストレスや不満を抱えにくくする配慮や工夫が必要となります。

また、忘年会など社内行事に派遣社員が参加してもらうかどうかは、企業によって対応が分かれるところです。経理上は正社員向けの経費として予算を取っていることがほとんどですので、派遣社員にも参加してもらうのであれば経費をどうするかを検討する必要があります。

人材派遣活用にあたって気を付けたい3つのポイント

いざ自部署で派遣社員を採用し活用する場合、どのようなことに気をつけたらいいのでしょうか。ここまで見てきたように、派遣社員はあくまで派遣会社の従業員ですので、実務上の指揮命令を超えた要求をするわけにはいきません。しかし、日常業務を共にこなしていくことになるため、正社員との間に情報格差や扱いの違いが生じないよう、できる限りの配慮をする必要があります。

人材派遣を活用する上で気を付けておきたい3つのポイントについて確認しましょう。

「正社員」と「派遣社員」と分けずに、平等に接する

派遣会社から来ている人」という点を過剰に意識してしまうと、社員との間に扱いの差が生じてしまうなど、派遣社員自身が疎外感を覚える原因となります。就業初日にはオリエンテーションの時間を設けるなどして会社について理解してもらう機会を設け、会社の一員として迎えていることを伝えるとともに、帰属意識を高めておくことが大切です。

派遣社員が就業する環境にも気を配りましょう。正社員と派遣社員で使用するデスクや備品に差をつけず、平等に扱うことで、意識の上でも対等に接するべきであることが伝わりやすくなります。社内での呼称についても「派遣さん」などと特殊な呼び方をせず、「〇〇さん」と名前を呼ぶよう最初の段階で徹底しましょう。

こうしたことの1つ1つは小さな出来事であっても、蓄積していくと「派遣社員を差別する職場」と思われてしまう可能性が出てくるため、正社員・派遣社員の間に不必要な垣根を作らないよう、細心の注意を払うことが求められます。

社内ルールや必要な業務スキルは、勉強会などの時間を設ける

派遣社員が派遣先で就業する期間は決して短いケースばかりではなく、数か月から半年、1年といった単位で就業してもらうこともめずらしくありません。その期間、業務上においても不都合なく仕事を進めてもらうためにも、独自の社内ルールや必要な業務スキルについてていねいに伝える時間を設けることが重要です。

よく言われることとして、「派遣社員」という外部の人材を上手に活用できる職場は、業務手順や社内ルールが言語化されており、明示できていると言えます。反対に、スキル面では問題ないはずの派遣社員が業務を遂行する中で戸惑ってしまう場面が目につくようであれば、手順やノウハウが属人的になっており、客観的に伝えられていないのではないか、と疑うべきなのです。

また、ハイスキル人材の派遣社員が採用できた場合、派遣社員が持っているスキルや知識を社員が吸収し、今後に活かしていくことも重要になります。派遣社員を社内の一員として扱うことは、そのようなスキルや知識を円滑にシェアする上でも大切な心がけなのです。

契約内容と業務内容の相違が起こらないように注意

派遣社員は、派遣先での業務内容を了承して派遣会社との間で労働契約を結んでいます。そのため、契約内容にはない業務内容を指示したり任せたりすることは契約違反であり、絶対にやってはいけないことの1つです。

よくある事例として、電話対応が契約内容に入っていたため来客対応も頼めるものと拡大解釈してしまい、来客へのお茶出しまでお願いしてしまう、といったものです。もともと来客対応全般を含む契約内容になっていれば問題ありませんが、契約内容の業務範囲がどこまでであるのか、よく確認しておくことが非常に重要です。

契約内容の相違が生じないようにするには、採用時点で派遣会社との間で業務範囲の摺り合わせを行うとともに、社内でありそうな事例を挙げ、契約内容を超えた業務にあたらないか確認しておくようにしましょう。万が一、就業開始後にイレギュラーな事例が発生しそうな場合は、そのつど派遣会社の担当者に確認を取りましょう。「おそらく大丈夫だろう」といった曖昧な判断で指示を出さないことが大切です。

人材派遣への理解度に職場のリテラシーが表れる

派遣社員を採用する上でトラブルになる事例においては、主に次の2点に原因があります。

  • 人材派遣制度に対する理解不足
  • 社員自身が派遣社員として働いた経験がないことによる配慮不足

この記事ではとくに前者について知識の整理をしてきましたが、後者もまた重要な視点です。一般的にトラブルになりやすい事例から学ぶなどして、派遣社員に気持ちよく働いてもらえる環境を整えていくことが大切です。

人材派遣制度への理解度や適切に運用できるかどうかの度合いには、職場のリテラシーが表れると言っても過言ではありません。

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