「マーケティング」って何? もしあなたがマーケティング戦略に携わることになったら

[最終更新日]2019/07/26

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マーケティングという言葉そのものは、ビジネスに携わる人であれば必ず耳にする言葉でしょう。きっと皆さんの会社にもマーケティング部門があるはずです。時代とともに多くの考え方や手法が開発されているビジネスの常識的なワードの1つです。

今回は、もし皆さんがマーケティングを担当することになった時のため、ビジネスの常識ワードである「マーケティング」の基礎から重要ポイントまでを紹介していきます。

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目次

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そもそも、マーケティングとはどんなもの?

マーケティングの概要

マーケティングと聞いてどんなイメージを持ちますか?効果的な宣伝を打つこと?新しい製品のアイデア?将来の販売動向を予測?マーケティングという言葉はビジネス分野で溢れすぎているために、そのコアな定義を見落としがちです。

マネジメントの父と言われるドラッガーの言葉に、「マーケティングとは、顧客から始まるビジネス思考である」という言葉があります。この言葉から読み取れるマーケティングの抑えるべき定義のポイントは3つです。

  • 「思考方法」であること
  • 「顧客(市場)」を起点にすること
  • 「ビジネス」のためにあること

我々がイメージしがちな広告・宣伝や市場予測などは、あくまでこのマーケティングを経た結果、導かれた手段でしかありません。

大切なのは、これらの手段がどう導かれたのか?どう導くのか?そして、それを使って何を目指すか?そういったビジネスの設計図・戦略を描くのがマーケティング(もしくはマーケティング戦略)です。

マーケティング戦略と経営戦略の違いは?

マーケティング戦略はその成果が経営に直結することもあることから、しばしば「経営戦略」という言葉と混同されがちです。「マーケティング」をきっちり実践する上でも、この違いを把握しておくことは重要です。

経営戦略はマーケティングと同じ「ビジネスのためにあること」「思考方法」の点で共通していますが、戦略を描く上で「顧客」ではなく「会社そのものを起点にする」という点で異なります。

具体的には、会社の経営資源である「ヒト・モノ・カネ」を如何に使って、どんなビジネスをするのか、会社をどう持続的に成長させるのか、という思考です。一方、マーケティング戦略は、会社の製品、サービスや技術といった要素に特化した戦略なのです。

例えば、市場動向などのデータがあった場合、経営戦略はそのデータを元に、新規事業をする・しないなどの事業そのものの判断を導きますが、マーケティングは、どのようなアプローチでその市場で売り上げを上げるか、といった判断を導くのです。

マーケティング戦略とプロモーション戦略の違いは?

続いて、マーケティング戦略とプロモーション戦略の違いというのも混合されがちな関係のため、その違いを紹介しておきます。

マーケティング戦略の基本的な考え方の1つである「4P」「4P分析」という言葉があります。

  • 製品(Product)
  • 価格(Price)
  • 流通(Place)
  • 販促(Promotion)

4Pはマーケティングのための要素を、企業がコントロールできる4つの因子に分解したものです。顧客に対して自社の商品・サービスを提供する具体的な戦略を練るにあたり、4P分析としてこれらを分析・最適化することがマーケティング戦略の大前提とされています。

プロモーション戦略は、4Pの中の販促(Promotion)における戦略を指し、マーケティングの一部という位置づけです。

具体的には「広告宣伝」「広報(PR)」「販売促進」といった戦略に分かれていきます。実は、我々がよくイメージしがちな「マーケティング=効果的な販促や宣伝・広告」は、このプロモーション戦略と混合してしまっているのです。

現代社会で、なぜマーケティングが重要か

現代社会はグローバル化と情報化にともない、マーケティングが起点とすべき「顧客」そのものが、20世紀と今ではまったくその傾向は変わってきています。

具体的には、より多様化・細分化された価値観によって、マーケティングの要素はより複雑かつ高度になっています。

顧客起点の思考プロセスであるマーケティングが複雑・高度化されている今、もはやマーケティングができなければビジネスは難しい、ということも意味しています。例えばそれは、パソコン無しでビジネスをするようなものかもしれません。

企業と顧客との接触機会を創出していく為に

インターネットが普及する前まで、顧客に影響力を及ぼしていた媒体は、テレビ、新聞、雑誌、もしくは街中にある広告に限られていました。現在は、web広告やSNSなどの媒体など一気に手段が増えています。おそらく日々目にしている我々ですら、どんな最新手法があるのか把握できないほどでしょう。

また、競争相手も同じ日本の企業がほとんどであったのに対して、今や世界が相手です。特に日本の場合は、今最も勢いのある中国が隣国であり、その影響は計り知れません。

この状況は、従来に比べて企業と顧客が接触する機会を増やすための定石が通用しなくなったことを意味すると同時に、新しいマーケティングを模索する必要があることを意味しています。

マーケティングは時代ごとに、少なからずこうした模索を繰り返してきたわけですが、現在はそれが最も高度・複雑化した状態といえるかもしれません。

「マーケティング3.0」の捉え方

マーケティングの神様とも言われるフィリップ・コトラーが提唱した「マーケティング3.0」という言葉が今注目されています。下記したように、時代と志向の視点からマーケティング概念の変遷を分類したとき、現代から将来の新たな概念として提唱されたものです。

  • マーケティング1.0・・・戦前・戦後 /「製品志向」
  • マーケティング2.0・・・1970年代~2000年前半/「顧客志向」
  • マーケティング3.0・・・現代~/「人間志向」

「人間志向」とは、具体的には「社会に貢献する」「世界により良くする」「価値観の共感」といったものを現代の人が求めている傾向があり、このニーズに向けたマーケティング戦略が必要である、という概念です。

背景にあるのは、地球温暖化や災害・貧困、もしくはテロといった社会課題、そしてモノが溢れるなかで、商品に魅かれる要素が機能や価格ではなくなってきたという「時代」を反映した概念です。

あくまでマーケティング3.0は時代の変化というマクロな視点から、顧客ニーズを考察した一例ですが、顧客を映すための鏡として、マーケティングが現代ビジネスにとって重要性を増しているとも言えるのです。

マーケティング戦略の、具体的な進め方

マーケティング戦略はここでまでの定義で紹介してきたとおり、「誰にどのように何を売っていくのか」を明確にしていくための思考アプローチです。その効果的な方法については、既に多くの分析手法が溢れており、商品・サービス、業界分野によってもその複雑性が増してきている現状があります。

今回は、次の5つのステップに分けて、あらゆる手法のベースとなる基本的なマーケティングの思考プロセスを説明していきます。

  • Step1 「現在の環境を知る」──市場調査・環境分析
  • Step2 「アプローチする領域を定め、ニーズに注目する」セグメンテーションとターゲティング
  • Step3 「自組織・自チームの、顧客への役割と強みを定める」ポジショニングとコア・コンピタンス
  • Step4 「具体的行動を移すための計画を建てる」プランニング
  • Step5 「実行し、振り返る」アクションと分析、再プランニングのサイクル

Step1 「現在の環境を知る」──市場調査・環境分析

マーケティング戦略の第一歩は、これからビジネスをしようとしている「市場」を知ることです。提唱されている分析手法は多くある中で、ここでは「環境分析(3C分析)」を紹介します。「環境分析」は、市場を3つの要素「3C」(顧客、ライバル、自社)に分けて、それぞれの要素を調査・分析する手法です。

主な調査事項は下記に示した通りで、ポイントは「顧客→ライバル→自社」を優先順位として分析していくこと。そして、定量化できるものは定量値で、意思決定プロセスなどの定性的なものは、より具体的なシチュエーションまで調査するがポイントです。

<3C分析>

 ・顧客(Costumer)    購買者の規模、市場の成長、購入頻度、    購買者の特徴、購買者の意思決定プロセス、 潜在顧客の可能性、など

 ・競合(Competitor)    企業名、業績・売上、市場シェア、歴史や成長性、商品・サービスの特徴、組織力、など

 ・自社(Company)    業績・売上、理念、戦略、市場シェア、商品・サービスの特徴、組織力、など

Step2 「アプローチする領域を定め、ニーズに注目する」セグメンテーションとターゲティング

ビジネスをする市場・環境の情報収集の次は、その情報をベースに「誰に売るか」を決める作業です。

まずはstep1で調査した顧客の情報をさまざまな角度から、分類・グループ化をする市場のセグメンテーションを行います。

年齢、性別、顧客の特徴や趣味など、切り分け方の発想は無数にありますが、セグメンテーションの狙いはその市場に潜在・顕在しているニーズの抽出です。ある商品・サービスを求める顧客がどういう傾向、共通点があるか、それらの関係性が明確になるセグメントを目指します。

納得する市場のセグメンテーションができたら、次に自社の商品・サービスを活かせる市場がどれであるかを選定するのが、ターゲティングです。

ここで、競合と自社について調査した情報を利用します。狙いの市場で勝負できるか、どう戦っていくか、製品はもちろん組織や資源という経営資源も材料に判断をしていきます。

なお、このstep2やstep3の作業にあたっては、実態を反映している良質なデータが欠かせません。充分信頼できるデータでなければstep1に戻りましょう。

Step3 「自組織・自チームの、顧客への役割と強みを定める」ポジショニングとコア・コンピタンス

ビジネスをする狙いの市場が決まったら、再度、自社と競合の調査結果を元にして、その市場における自社のポジショニングをしていきます。今の競合の位置を取りに行くのか、それとも誰もいない位置に入るのか、といった市場での取りたいポジションを明確にしていきます。

このポジショニングを決定していく具体的プロセスは、「自社とライバルを比較」→「自社の強みの認識」→「強みをどう活かすか」のステップで行います。自社が狙っている市場・顧客に対して、競合よりも優位性を持つ特性=コア・コンピタンスを突き詰めることで、ポジショニングを実現させるのです。

なお、コア・コンピタンスは商品・サービスだけに限らず、経営資源という視点に特化して人材・販売・流通などの視点から、差別化・優位性を確立していくという発想もありです。

自社の商品・サービスが、市場にいる顧客にとって重要であり、かつ競合が真似できない独自のものを徹底的に分析・議論して、築いていくことが成功の鍵となります。

Step4 「具体的行動を移すための計画を建てる」プランニング

step3までのステップで、目標と方針が決定したことになります。いよいよそれをもって、具体的な計画を立てるプランニングを行っていきます。プランニングでは上でも紹介した「4P」をもとに、何を実行していくかを決めていきます。

  • 製品(Product):コンセプト、デザイン、コンセプト
  • 価格(Price):設定する価格帯
  • 流通(Place):流通チャネル
  • 販促(Promotion):広告やイベントなど宣伝の方法

なお、step3のコア・コンピタンスの抽出の段階でも、「4P」のフレームワークを使うこともできます。これは「4P分析」と呼ばれます。プランニングのステップと混同しないよう注意しましょう。

目標と方針と矛盾がないよう、4つの項目それぞれで狙いの市場・顧客のニーズを満たすための具体的な内容を決定していきます。

ここで大事なポイントとして、4項目同士のマッチングの確認です。目標と方針がきっちり意識されれば自ずとマッチングはしていくものですが、各担当組織が違ったりすると、効果を相殺するアンバランスな施策ができるリスクもあるため注意が必要です。

Step5 「実行し、振り返る」アクションと分析、再プランニングのサイクル

最後のステップは実行するのみー、と言いたいところですが、実行以上にその結果の振り返りと、その振り返りの結果から各ステップを再修正できる再プランニングのサイクル作りが欠かせません。

ここまでのステップは、あくまで過去のデータを利用したシミュレーションでしかなく、また効果的と思われる戦略アイデアが多数挙がったとしても、資金の制約から、全てを実行しているわけではありません。

成功・失敗という結果だけをみるのではなく、自分たちのシミュレーションや実行した戦略を選んだ意思決定プロセスの精度を意識するイメージで、KPIなどを設定して、各ステップの因子のモニタリングが必要です。

これは商品が結果的に売れた場合にも言えることで、例えば、売り上げが当初想定した何倍もあった場合は、シミュレーションの良し悪しを疑う必要があります。何倍も売れた要因を分析しておかなければ、単に一発ヒットで終わってしまう可能性もあります。

市場は毎日のように変化しています。企業側もその変化を常にモニタリングする体制と、フォローできる準備をマーケティング戦略として確立しておきましょう。

マーケティング戦略の事例集

最後にマーケティング戦略のまとめとして、実際のマーケティング事例を紹介します。現在、マーケティングの好事例はインターネットなどでいくつも参照することができますが、今回はここまでで紹介してきた各ステップにあった要素を反映している好事例をピックアップしました。

今後さらにマーケティングを学ぶ中で、事例を見る機会も多いはずです。そのときの事例の見方として、ぜひ参考にしてみてください。

事例#1 コア・コンピタンスの活かし方 -花王「めぐりズム 蒸気でホットアイマスク」―

2007年の発売以降、現在も勢いが衰えない花王の「めぐりズム 蒸気でホットアイマスク」。現在は中国をはじめとした海外でも売り上げを伸ばしている同製品は、発売当時、今までになかった市場を開拓したヒット商品の1つです。

そんな未開拓市場への進出を導いたセグメントとポジショニングもさることながら、それ以上にこの商品がマーケティングとして優れていた点は、コア・コンピタンスとそれを活かしたプロモーションにあると言えます。

当時、同社は本製品の発売に先立ち、「VDT作業での目の酷使による疲労実態と、蒸しタオルの温め効果を、実証」という大学との共同研究結果を発表しています。

花王は基礎研究こそが自社の強みであることを常に掲げており、今回のユニークな製品についても、その目新しさという要素に浮つくことなく、アカデミックな視点に立った販促を実施。

販促以外の「4P」も、そんな自社の強みに軸を据えたプランニングを実施したことで、顧客へその効果への信頼感や安心感を伝えることに成功しています。

後続の競合からは、価格を安くしたり、使い捨てでなくしたりと経済性を訴求するような類似製品がでたものの、健康系商品の一番の肝ともいえる効果の信頼性を同社の強みと併せて一貫して伝えた同製品は、他の追随を許さずこの市場でのポジションを獲得しています。

事例#2 再プランニングで見えた顧客接点の重要性 ―森永乳業 カップアイス「MOW」―

アイスクリーム市場は2011年から右肩上がりで、さらに市場拡大が見込まれている中、低迷が続いていた森永乳業の「MOW(モウ)」。発売の2003年から2009年までは伸びを続けたものの、その後売上は長期低迷。これを受けて2015年に大幅なリニューアルを実施し、見事にV字回復に成功しています。

リニューアルに際しては、再プランニングの手順を実施。その結果、顧客と接点を持つ場が少なくなっていたことを認識したそうです。

当時から変わらぬテレビCMと商品パッケージという訴求のままで、スマフォやSNSといった手段への対応が疎かになっていたそうです。

そのため、同製品の「強み」(素材本来のおいしさを楽しんでもらう)の伝達力が次第に弱まっていたこと、また、バニラアイスへの嗜好変化に関する情報収集も十分出来ずにいた、という結論に至ったそうです。

再分析からわかった課題への対応のため、同社は公式サイト上のユーザーの声や消費アンケートを通して、現代のバニラアイスへの顧客ニーズ(バニラの味わいをより感じるものが欲しい)を抽出。

4Pの「製品」は、このニーズを満たす材料を加えることで製品仕様を改善。「訴求」にもニーズへの訴求表現と、弱まっていた自社の強みを再訴求するためのインパクトを併せたパッケージデザインに改善し、V字回復を果たしたそうです。

現代ビジネスを勝ち抜くための武器として

今私は中国で仕事をしていますが、そのビジネスのスピード感にはいつも驚かされます。中国は研究や技術という点で日本に劣りますが、彼らの多くが大学や留学先で何を学んでいるのかというと、それはマーケティングだと言います。確かに中国人のビジネス成功者は日本の比ではありません。

今後、我々は増々こういう相手を競合にしてビジネスをしなければなりません。もはや備えるべき必須武器として、皆さんもマーケティングを自分自身のモノにしていって下さい。

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