いまさら聞けない「ビッグデータ」とは?これから先、世の中はビッグデータでこう変わる!

[最終更新日]2023/10/17

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いまさら聞けない 「ビッグデータって何?」

ここ10年ほどの間に「ビッグデータ」という言葉は一般的なものとなり、実際に耳にしたことのある方も多いのではないでしょうか。

では、次のように聞かれた場合、皆さんはどう答えますか?

質問1.ビッグデータとはどういうものですか?
質問2.なぜビッグデータが重要視されているのでしょうか?
質問3.ビッグデータはどんなところで活用されていますか?

このように問われると、正確に答えるのは簡単でないと感じる人も多いはずです。
そこで、ビッグデータの本来の意味と、今後世の中でどう活用されていくのかをまとめました。ビッグデータについて理解を深めたい人は、ぜひ参考にしてください。

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Index

目次

ビッグデータとは?

私たちは日常生活の中で、意識しないうちに膨大な量のデータを残しています。

たとえば、過去1週間であなたが買い物をした行動を振り返ってみてください。
たとえあなた自身は忘れてしまっていても、店舗のPOSには購買データの1件1件が蓄積されています。
購入した日時、商品、価格、数量をはじめ、コンビニであれば顧客の性別・年齢層などもデータとして残しているからです。

こうした購買データはあなたの嗜好や行動パターンといった「人となり」を知る上での貴重な情報となり得ます。世の中の人が毎日のように全国各地で買い物をしますので、購買データ1つ取っても天文学的なデータ量になることは想像に難くないでしょう。

ビッグデータを言葉通りに捉えると「大量のデータ」ですが、単にデータ量が多いということではありません。
購買データがそうであるように、新たなデータが発生する頻度が高く、多様な形式・性質のデータが含まれています。このようなビッグデータの性質は「3V」と呼ばれています。

ビッグデータの「3V」とは

ビッグデータの 「3V」 ■Volume (量) ■Variety (多様性) ■Velocity (頻度)
Volume(量) 膨大なデータ量とそれらを処理する能力
Variety(多様性) 文字、画像、動画など多様なデータ形式
Velocity(頻度) 頻繁かつ不規則に新たなデータが発生する



ビッグデータは、画像や動画などの「規則性のないデータ(非構造化データ)」も扱う

データイメージ

ビッグデータを理解する上で重要なポイントとして「非構造化データ」(規則性のないデータのこと)が含まれる点が挙げられます。

これまで「データを扱う」際は、帳簿やExcelデータなど表形式で蓄積されるものを指すことが一般的でした(そのような類のデータを、「構造化データ」といいます)。

ですが、ビックデータでは画像や動画といった構造化されていないデータも扱います。

「構造化データ」と「非構造化データ」とは

従来、データという言葉が指すものは構造化データに限られていました。データベースに書き込まれた売上データや顧客データなど、決められたルールに則って理路整然と記録された情報を「構造化データ」と呼びます。

一方で、例えばいま皆さんが見ているPCやスマホの画面に映し出された文字や画像もれっきとしたデータであり、前述の構造化されたデータよりもはるかに目に触れる機会が多いでしょう。

そのほか、ビジネスで頻繁に使われるメールやWord・PowerPoint・PDFといったドキュメントファイル、音声や映像、GPSの位置情報や各種センサーが感知した情報は「非構造化データ」と呼ばれます。

狭義のビッグデータとは、構造化データと非構造化データを指していると考えていいでしょう。



ビッグデータの扱う範囲は、「構造化データ+非構造化データ」

ビッグデータの扱う範囲は、「構造化データ+非構造化データ

構造化データと非構造化データが「狭義の」ビッグデータと述べたのは、これ以外に広義のビッグデータも存在するからです。

下図はビッグデータが指し示す範囲のイメージを表したものです。

広義のビッグデータには、データを処理・蓄積・分析するための技術そのものも含まれます。また、それらを扱う人材・組織もビッグデータに含まれる概念として扱われることがあります。

総務省「情報流通・蓄積量の啓作手法の検討に関わる調査研究」(平成25年)


出典:総務省「情報流通・蓄積量の啓作手法の検討に関わる調査研究」(平成25年)



先に挙げた購買データの場合、顧客の購買履歴が羅列されているだけですので、そのままではほとんど役に立ちません。
重要なのはそれらデータをどう抽出し、活用しやすい形式に加工するかという点です。

つまり、膨大な情報がビッグデータとして意味をなすためには、データを適切に処理・蓄積・分析する手段や、それらを扱う人・組織の存在が不可欠なのです。

ビッグデータの活用によって、できること

ビッグデータに含まれる範囲が意外と幅広いことについて述べてきました。
では、ビッグデータを活用することで、どんなことが可能になるのでしょうか。

ビッグデータ活用には多くの可能性があり、現状で活用しきれていないデータも数多く残されています。一方ですでに実用化され、私たちの暮らしの中で役立てられているケースもみられます。

ビッグデータ活用によってできることと、実際の活用事例について次の3つの観点から紹介します。

  • 未来の予測や異変の察知
  • 利用者個々のニーズに即したサービスの提供
  • これまでの業務運営の効率化や新産業の創出



未来の予測や異変の察知

ビッグデータによって得られるのは、過去の出来事に対する分析だけではありません。
特定の要因が重なると生じやすい出来事の傾向が分かれば、未来の予測にも活用できます。

たとえば、過去の購買データから消費者の嗜好を分析し、次に購入する可能性の高い商品に絞ってプロモーションを行うことができるのです。

あるいは、異変を察知することで災害や事件を未然に防ぐことにも役立ちます。
一例として、車のアクセルを踏み間違えたことによる事故のデータから、異常な操作がみられた場合に車を減速・停止させるといった技術が想定できます。

そのほか、過去の犯罪データから危険な場所や時間帯を割り出し、リスクの高いスポットへの警備を強化するといった活用方法も考えられるでしょう。

事例1:「今年はどの田で育った米が美味しいか」の可視化(石川県羽咋市の事例)

羽昨市における活用方法と衛星画像解析結果


引用元:総務省「ICT 分野の革新が我が国経済社会システムに及ぼすインパクトに係る調査研究」



石川県羽咋市では、上空から近赤外線デジタルカメラで撮影した画像を元に、水田で育つ米のタンパク質含有量を測定し、「今年はどの田で育った米が美味しいか」の可視化を実現しています。

美味しいとされる米のタンパク質含有量は6.5%以下といわれており、その基準に達している米を収穫前の状態から確認したり次年度以降の施肥量調整に役立てているのです。
これら品質向上の取り組みもあって、同市で出荷される米は「ブランド米」として多くの飲食事業者や消費者から好評を得ています。

こうした技術を実現するためには、従来は「1,000万円以上かかる」とされていましたが、同市では既存の米国商用衛星に撮影を依頼し、そこで得たビッグデータの解析ツールを地元企業に開発してもらったことで、数十万円のコストで運用できています

ビッグデータを活用するにあたって、必ずしも自前でゼロの状態からシステムを開発する必要はなく、既存の仕組みやサービスを活用することでその恩恵を受けることもできるのです。




利用者個々のニーズに即したサービスの提供

情報をビジネスに活用することは、ビッグデータ以前から行われてきました。
しかし、まだ活用されていない膨大な量の情報が残されており、より利用しやすい形で情報を取り出すことができればビジネスに有用な情報として活用することができます。

たとえば、家電の修理を依頼された場合、従来であれば担当者の経験や知見によって修理が必要な部品や修理方法を判断してきました。

ですが、機器の型番と過去の修理履歴を照合できれば、修理に必要な部品を自動的に判別できますので、担当者の経験や知見の有無にかかわらずピンポイントかつスピーディな修理が可能になるでしょう

このように、ビッグデータを活用することで利用者個々のニーズに即したサービスを提供しやすくなり、利便性やサービスの質向上に寄与していけるのです。

事例2:その人の運転スキルに見合った、自動車保険の提案(Progressive社の事例)

Progressive社における活用


引用元:総務省「ICT 分野の革新が我が国経済社会システムに及ぼすインパクトに係る調査研究」



米国Progressive社では、自動車の運転状況を監視する端末を運転車に提供しています。
運転日時や場所、速度、急ブレーキの履歴を取得した上で、個々の運転スキルに見合った自動車保険を提案しているのです。

従来、自動車保険は契約者全体の年齢・車種と事故のリスクを保険数理で算出し、保険料を決定していました。見方を変えると、契約者個々の運転状況が十分考慮されていたとは言いがたく、実際に事故を起こしていないかどうかが保険料を決定する上で有力な判断材料となっていたのです。

ユーザーごとの運転状況を詳細に把握できるようになることで、保険料の算出根拠がより最適化され、大多数の運転車にとって保険料を大幅に安くできるというメリットがあります。

同社はこのサービスを提供したことにより、全米の自動車保険業界で第3位に急成長を遂げています。




これまでの業務運営の効率化や新産業の創出

ビッグデータ活用により、これまで人の目や感覚で判断してきた業務を定量的なデータに基づいて進めることができます。

たとえば、回転寿司の皿にICチップを取り付け、寿司がレーンに流れている時間を正確に計測できれば、効率的な鮮度管理に役立てることが可能です。

また、ビッグデータ活用が新産業の創出につながることもあります。

原油の貯蔵量が原油価格と深く関わっていることは広く知られています。
原油タンクの屋根は原油の上に浮かんだ状態になっているため、人工衛星の画像を解析することで原油タンクの壁面に映る影の長さが分かり、地球上にある2万4,000個以上の原油タンク残量をほぼリアルタイムで知ることができるのです。

こうして得られた原油残量の月次・週次データが、原油先物市場の先行きを予測するための参考指標として売買されることは想像に難くありません。ビッグデータによって従来は存在しなかった産業が創出されている好例といえるでしょう。

※参考記事:日経ビジネスオンライン「衛星写真で景気が分かる」



事例3:「花火」と「灯篭流し」。より売上を期待できるイベントはどっち?(城崎温泉の事例)

城崎温泉


画像引用元:城崎温泉公式HP



城崎温泉では、外湯券をスマートフォンのICチップ機能で利用できるようにすることで、観光客の行動パターンを定量的に分析しています。
温泉街で開催するイベントとして花火や灯籠流しが知られていますが、果たしてどちらがより売上に寄与する企画となるのか、従来であれば現地の関係者が体感や経験を元に判断するしかありませんでした。

そこで活用したのが、デジタル外湯券のICチップによる位置情報データです。
データから、花火のように観光客が立ち止まって楽しむイベントよりも、灯籠流しのように温泉街を歩きながら観光できるイベントのほうが各店舗の売り上げ増につながることが分かりました。

ビッグデータ活用によって、温泉街をさらに活性化するための効果的なイベント企画を定量的に判断できるようになった事例といえます。

ビッグデータの活用で、私たちの仕事や生活は今後どうなる?

ビッグデータはすでに私たちの身近なところで活用されており、今後もさまざまな産業に影響を与えていくであろうことが実感できたはずです。
では、ビッグデータの活用は私たちの仕事や生活にどのような影響を与えていくと予測できるのでしょうか。

テクノロジーによるイノベーションは、私たちに多くの恩恵を与えるとともに思わぬデメリットをもたらすこともあります。ビッグデータ活用によって今後予測される影響について確認しておきましょう。




ビジネス・市場では、ビッグデータによる経済効果は高まる一方、企業格差も生じやすくなる

企業イメージ

ビッグデータ活用により、従来は人間が経験則に基づいて判断してきた事柄を定量的・客観的に判断することができるようになります。

日常業務の効率化やサービス利便性の向上がビッグデータ活用によって可能となり、業績を大きく伸ばす企業が現れるでしょう。こうして経済成長が促され、社会全体としてはビッグデータの恩恵を受けられる面も多々あると予測されます。

一方で、ビッグデータを有効に活用できる企業とそうでない企業の格差はますます開いていくでしょう。

すでに業界トップの企業群と業績劣位企業群ではビッグデータの活用に差が生じており、経営戦略の見通しや日常業務のオペレーションにおいて大差が開きつつあるという研究結果があるほどです。

こうした傾向に今後ますます拍車がかかり、企業間格差が生じやすくなっていくことが予想されます。

株式市場においても同様で、AIによるビッグデータ解析を駆使して1秒間に数千回の売買注文を行う高頻度取引/高速取引(HFT)が存在感を増しています。

人間によるオペレーションでは到底追いつかない実績をあげていくことが容易に予測できることから、今後は株式市場の位置づけや意義そのものが問われていく可能性があるでしょう。




日常生活では様々な解析データの恩恵を得られるが、同時に多くの情報を共有(提供)することにもなる

データの共有イメージ

昨今、多くのコインパーキングでチケットレスサービスが導入されつつあります。
自動車のナンバープレートを画像解析することで車両を特定し、チケットを介さずに駐車料金を請求することが可能になっているのです。

ここで重要となるのが、運転車自身は車両の情報を「提供した」という認識が薄い点です。

従来であれば個人の特定が可能な情報は「提供する・しない」をユーザー自身が判断し選択できました。
ところが、今後はコインパーキングの事例のように自覚していないところで情報が提供され、活用されているケースが増えていくと予想されます。

市街地にはすでに無数の監視カメラが設定されており、収集された画像データがテロ対策などに役立てられる一方、路上を歩いているだけで知らず知らずのうちに「いつ、誰がその場所にいたか」といった情報を提供していることになるのです。

ビッグデータの活用は、大量のデータを随時収集・蓄積していくことが前提になっています。
年齢・性別や居住地のみならず、購買行動、趣味嗜好、通院歴や病歴まで、あらゆる情報が共有され活用されていく可能性があるでしょう。

ビッグデータは私たちの暮らしの利便性を向上させる一方で、多くの情報を共有・提供していくことが前提になっている点を理解しておく必要があります。

まとめ)ビッグデータ活用の恩恵とリスクを多面的に捉えよう

多面的イメージ

ビッグデータ活用により、これまで見過ごされてきた大量のデータを有効活用できるようになり、私たちの暮らしはますます利便性の高いものとなっていくでしょう。

同時に、活用されるデータの範囲が大幅に拡張され、私たちは日々何らかの情報を提供しながら生活していくことになります。新たなテクノロジーの台頭は、常に恩恵とリスクが隣り合っているのです。

今回紹介してきた事例を参考に、自社のビジネスでビッグデータを活用できそうなシーンをぜひ考えてみてください。

もしかしたら、従来は存在し得なかった新たな着想が生まれ、新規ビジネスのチャンスに気づくことがあるかもしれません。同時に、1人の生活者としてビッグデータ活用の恩恵とリスクをバランスよく捉え、理解を深めていきたいものです。




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