ミスが多い部下をどう指導する? 管理職・マネージャーが知っておきたい心得
[最終更新日]2023/11/03
管理職・マネージャーの皆さんにとって、部下との接し方は永遠のテーマともいえるほど悩みが尽きないものです。日々、部下とどう接していけばいいのか試行錯誤している人も多いことでしょう。
中でも対応に窮するのが、ミスの多いタイプの部下ではないでしょうか。
「繰り返し指導しても、なぜ同じミスを繰り返してしまうのだろう?」
「どうすればうっかりミスや見落としを減らせるのだろう?」
今回は、こうした悩みを解消するために知っておきたいポイントを解説します。ぜひ参考にしてください。
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Index
目次
仕事でミスが多い部下に見られる特徴3つ
はじめに、仕事でミスが多い部下によく見られる特徴について整理しておきます。仕事における「ミス」にもさまざまな種類があり、ミスのパターンに応じて対処法を検討することが大切です。
次の特徴に当てはまるようであれば、部下が仕事でミスをする原因になっていると考えられます。
- #1 仕事の段取りが悪い
- #2 報連相ができない
- #3 「なぜミスしたのか」を分析しない/改善策を探らない
仕事の段取りが悪い
仕事を進めるにあたって、いつまでに・何を・どれだけやっておくべきか、大まかな計画を立てる必要があります。いわゆる「仕事の段取り」ですが、ミスが多い部下はこの段取りが苦手なケースが少なくありません。
段取りが悪いタイプの人は、仕事の重要度に応じて優先順位づけをするのが苦手です。そのため、さほど重要でないことに時間を割いてしまったり、逆に重要度が高く入念にチェックするべき仕事を軽く受け流したりしがちです。その結果、重要な局面でミスをしやすくなります。
仕事の段取りは効率よく業務を進めるために必要とされるだけでなく、ミスを防ぐ上でも重要な意味があるのです。もしかしたら、部下がミスをするたびに指導するよりも、仕事の段取りの仕方を指導したほうが効果的かもしれません。
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報連相ができない
報連相は仕事の基本とよく言われます。しかし、適切に報連相を行うのは決して簡単なことではありません。
部下によっては、自分の仕事に自信がなく報連相がしづらいと感じている人もいます。報連相の結果、ミスを指摘されたり追及されたりすることを恐れ、結果的に仕事を一人で抱え込んでしまうのです。
あるいは、自分の力で仕事を完結させたいという責任感が裏目に出ていることもあります。部下としては報連相を怠っているつもりはなく、上司に頼らず自力で仕事を進めようとしているのかもしれません。
ミスが発覚する前に良くない兆候が見られれば、上司としても事前に対策を講じて指導しておくことができます。適切な報連相がなされない限り、ミスの多さを根本的に解決するのは難しい場合もあるのです。
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「なぜミスしたのか」を分析しない/改善策を探らない
過去に部下がミスを指摘した際、「次からは気をつけます」とよく言っていませんか?もしそうだとすれば、有効な改善策を講じていない恐れがあります。
おそらく、部下自身はそれまでも気をつけて仕事に取り組んでいたはずです。ところが結果的にミスをしてしまい、講じた対策が「次からは気をつける」だったのであれば、ミスの原因を的確に分析できていない可能性が高いのです。
なぜミスをしたのかが分析できていないと、改善策を講じることはできません。再び同じミスを繰り返す可能性が高く、「何度ミスをしても懲りない」「反省していない」と上司の目に映ることがあります。
上司にとって「失敗から学び、再発防止策を講じること」は当然のように思えたとしても、部下にとっては当たり前ではないかもしれないのです。
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ミスが多い部下への正しい指導のポイント
ミスが多い部下を指導することは、上司にとって少なからず負担やストレスを感じるはずです。しかし、「なぜこれほどミスが多いのだろう」とイライラしても部下のミスは減りません。有効な指導方法を見つけ、根気よく対処していくしかないのです。
前項で挙げた部下の特徴に応じて、次のポイントを実践していきましょう。部下が苦手とする部分を上司がフォローするイメージです。
仕事内容を細分化する
仕事の段取りが苦手な部下に対しては、仕事を小さな単位に切り分けて細分化するのが効果的です。たとえば、報告書を作成するのであれば「報告するべき項目を挙げる」「優先順位を決める」「必要な資料を集める」といった各段階に分け、それぞれいつまでに何をすればいいのかを具体的に指示するのです。
こうすることで、部下が現在どの段階まで仕事を完了したのかが可視化されます。また、部下が苦手とする仕事の傾向がより分かりやすくなり、強化するべきポイントも見えてきます。
いずれは仕事の段取りを覚え、自分で進められるよう、徐々に切り分ける単位を大きくしていくといいでしょう。この方法でミスが解消されれば、段取りの悪さがミスを誘発していたと分かるはずです。
上司からも積極的にコミュニケーションを図る
報連相が苦手な部下の場合、上司から積極的にコミュニケーションを図ることが大切です。もしかしたら、部下にとってあなたは「相談しにくい上司」かもしれません。上司が常に忙しそうに見えたり、上司が「怖い」「威圧的」と感じていることが報連相を妨げる原因となっていたりするケースも想定できるのです。
過去に部下から相談を受けた際、「自分で考えてみて」と何気なく応じたことがないでしょうか。あるいは、つい感情的になってしまい、部下を萎縮させるような言動が見られたことはないでしょうか。こうした経験があると、部下は上司に「相談しにくい」「報告するのが怖い」と感じるようになります。
部下とのコミュニケーションとは、「分からなければ聞いて」と伝えることではありません。日頃から部下が話しやすい関係を築いていく必要があるでしょう。また、部下が報告するタイミングを見極めやすいよう、「終業前に毎日報告する」など明確なルールを決めておくことが大切です。
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具体的な行動が可能な改善策を提案する
ミスの原因分析や改善策の考案が苦手な部下の場合、上司の側から行動レベルの改善策を提案するといいでしょう。伝票の記入漏れが多い部下であれば記入すべき項目をチェックリスト化したり、顧客ごとに注意点をリストアップしたりすることで、ミスを防ぐことにつながるはずです。
漠然と「気をつけなさい」と伝えても、部下は何をどう気をつければいいのか十分に理解していない可能性があります。改善策は具体的な行動レベルに落とし込み、客観的に見て「必要な行動を取ったかどうか」が検証できるようにしておくことが大切です。
ただし、改善策が「指示」になってしまうと、部下が自分自身で改善策を講じる力を伸ばせなくなってしまいます。改善策は「提案」に留め、具体的に何をするかは部下が自発的に考える余地を残しておきましょう。
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改善が見られたら意識的にポジティブな声掛けを行う
ミスを効果的に防ぎ、仕事を円滑に進められれば部下自身も心理的な負担が軽減されるはずです。ミスを防ぐメリットの大きさを実感すれば、部下は自発的にミス防止策を講じるようになります。
ここで重要になるのが上司による「小さな成功体験の積み上げ」です。以前はミスをした仕事をミスなく遂行できたときや、行動レベルで改善が見られたときは、「前よりも良くなった!」「安心して任せられる」といったポジティブな声掛けをしましょう。
人は誰しも他者から褒められると嬉しく感じるものです。ミスを防いだことで褒められたという経験がモチベーションとなり、期待されている成果を持続できるよう無意識のうちに努力するのです。改善が見られたら意識的に部下を褒め、きちんと良い面を見ていると伝えることが大切です。
部下への指導でとってはいけない行動・発言
ミスが多い部下を指導する際、上司が避けるべき行動・発言があります。指導方法を誤ると、かえって部下の意欲を削いだり、場合によっては離職の要因となったりすることもあるため注意が必要です。
とくに次の2つの行動・発言については、部下への指導時に十分配慮をするべきでしょう。
他の社員の前で注意する
部下を指導する目的は「改善を図ること」にあります。部下に精神的なダメージを与えたり、恐怖心を植え付けたりするのが目的ではありません。
仕事でミスをしたこと、ミスを上司から指摘されて指導を受けたこと自体が、部下にとってはネガティブな出来事であるはずです。まして、他の社員が見ている前で指導を受けるようなことがあれば、指導された内容以上に「恥ずかしい思いをした」という印象が強く残ってしまうでしょう。
ミスをした部下を指導する際には、別室に呼ぶなどして周囲の社員が知り得ない形を取ることが大切です。「ミスをすると叱られる」といったイメージを周囲の社員に与えて萎縮させないためにも、十分な配慮をすることを忘れないようにしましょう。
否定的・断定的な発言をする
ミスをした部下は、すでに上司よりも弱い立場にあります。さらに上司から否定的・断定的な言い方をされてしまうと、改善策を講じるどころではなくなってしまい、萎縮するばかりでしょう。
とくに次のような発言は厳に慎むよう注意する必要があります。
- ミスを性格や人格に結びつける発言(例:「いつもだらしない」など)
- 部下の考えや行動を否定する発言(例:「考えが甘すぎる」など)
- 正論を振りかざす発言(例:「前に指摘した通りの結果になった」など)
- 決めつける発言(例:「〇〇したら△△な結果になるに決まっている」など)
強い言葉を使っても、部下のミスが改善するわけではありません。どうすれば部下がミスを防げるようになるのかを一緒に考え、解決に向けて動けるようにサポートする姿勢でのぞむことが大切です。
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【実体験 私の場合】「ミスの多い部下」と、どう関わったか
ここからは、私が実際に「ミスの多かった部下」に出会ったときのことをお伝えしようと思います。
その部下は、とても素直で仕事にも前向きな、20代前半の青年でした。
誰にも分け隔てなく話しかけ、気遣いの言葉も(上司の私に対しても)良く見られました。
ですが、業務に関してはとにかくミスが多かった。
ひとつの企画書において、多いときは数十か所のミスがあるのです。
以前に指摘したことを繰り返しミスしているところも多くありました。
部下が何か業務内容を提出するたびに、私は彼に注意することになります。
たまに、「なんでここまでミスをするんだ」と感情的に注意してしまうこともありました。
そして、配属時は友好的であった私(上司)とその部下の関係は、段々とぎこちないものになっていきました。
その後、ミスの多かった部下はどうなった?
その部下に対して、私が指導したことについて紹介します。
- 提出物は、2回チェックする
- 提出物が他者の手に渡ったときに、その人に迷惑をかけないことをきちんと考える
- 文章は、実際に声に出して読んでみて誤字脱字がないか確認する
- 自分でチェックリストを作り、提出前に確認する
- チェックリストは事実ベースのチェックよりも、行動ベースのチェックを優先する(2回読み直したか、等)
- 他の人の納品物を確認して、自分との違いを確認する
これらを数か月にわたり伝えていっても、劇的な変化はありませんでした。
ですが、あるとき部下の提出物に、一つもミスがないことがあったのです(それはとても、珍しいことでした)。
私は部下に今回はミスが一つもなかったことを伝え、どんな点に気を配っていたのかを尋ねました。
すると部下は、今回もこれまでと変わらず、私が指導していたことを忠実にこなしていたことを告げました。そして私がしきりにミスのなかったことを褒めていることに対して、訝し気な表情をしていました。 そんな彼の様子を見て、私は2つのことを知ったのです。
ひとつは、部下自身も自分のミスの多さに悩んでいたこと。そしてもうひとつは、同時に部下は自分のミスの多さゆえに、重要な仕事を回されていないと理解していたということです。
──いえ、後者は正確な表現ではないかもしれません。任せている業務はとても重要なものでしたが、そこに私というチェック者がいた(そして提出物は私によって大幅に直されるのが常であった)ために、彼自身は自分が「役に立てている」という認識を持てず、ただただ「ミスをしないように」というネガティブチェックのみの観点で業務に立ち会ってしまっていたのでしょう。
明らかに言えることは、彼自身がその業務に対してずっと苦痛を感じていたということです。
私は、こういう風に提出物の品質を高めてもらうことはとても助かるということと、改めて任せている業務の重要性を部下に伝えました。
その後、驚くほど部下のミスは減ったのです。
ミスが減った理由はなんだったのか。私の解釈はこうです。
ひとつは、部下の経験。そしてもうひとつは、ポジティブな承認を得られたこと。
その二つが重なって、はじめて部下は「自分がこの業務を行う重要性」について前向きに認識できたのだと思います。
この部下のエピソードは、「ミスの多い部下」すべてに応用できるものではないかもしれません。
ですが、上司となる私たちは、ミスの多い部下は自分自身もそのことで悩んでいることが多いこと、そして人は誰しもポジティブな承認によって前向きになりやすいことについて忘れないように意識しておくべきなのでしょう。
まとめ)ミスの多い部下は「提案する」「サポートする」スタンスで指導しよう
ミスが多い部下は、部下自身がミスの原因に気づいておらず、改善策を講じられないことに起因するケースが少なくありません。
しかし、上司から指摘を受けたり叱責されたりしても、具体的な改善策に到達するまでには時間を要することがほとんどです。
部下のミスに対してストレスを溜めていても改善する見込みは薄いでしょう。「ミスを憎んで人を憎まず」の姿勢でのぞみ、具体的にミスを防ぐための方策を「提案する」ほうが建設的です。
おそらく、部下自身もミスがなくなれば仕事に自信を持てるはずです。ミスを防止できるように協力し、サポートするスタンスで指導していくといいでしょう。
本記事を参考に、ぜひ部下の良き伴走者となってください。部下を萎縮させる叱り方をするよりも、はるかに効果的な指導となるはずです。
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