部下からの報告の質に問題があると感じたときの対処法とは?
[最終更新日]2023/11/03
管理職の皆さんは、日ごろ部下から報告を受ける場面が数多くあるでしょう。
しかるべきタイミングで適切な報告を上げてくれる部下もいるはずですが、中には次のような部下もいるかもしれません。
- 報告内容が整理されていない
- 肝心な報告事項が漏れている
- 適切なタイミングで報告が上がってこない
- 報告内容が不正確なことが多い
- 報告したいのか相談したいのかが不明確
このように部下からの報告の質に問題があると感じた場合、どのように対処していけばいいのでしょうか。
本記事では、部下の報告の仕方を改善するためのポイントや注意点について解説しています。
部下から上がってくる報告の質に問題を感じている人は、ぜひ参考にしてください。
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Index
目次
部下からの報告の質に問題があると感じる代表的な3つの事例
部下から報告を受ける際、具体的にどのようなケースで問題があると感じやすいのでしょうか。
さまざまなパターンが考えられますが、その中でもとくに想定できる3つの事例についてまとめました。
ご自身の部下に当てはまるケースがないかチェックしてみましょう。
事例①:報告するべき情報に抜け漏れがある
報告してほしい情報に抜けや漏れがあると情報を十分に得ることができず、管理職としてはストレスを感じやすくなります。
肝心な情報が抜け落ちていると、報告そのものの意味が薄れてしまうと感じる人も多いのではないでしょうか。たとえば、次のケースを見てください。
《報告事項に抜け漏れがあるケース》
- 部下
-
「課長、失礼します。A社からの納品ですが、納期を延ばしてもらいたいとの申し入れがありました」
- 課長
-
「そうなのかい?先方はいつまで延ばしたいと?」
- 部下
-
「納期は3日後ですが、もう1日待ってほしいとのことです。4日後であれば、確実に納品できるそうです」
- 課長
-
「なるほど。1日の遅れなら、どうにか調整できそうだな。それで、なぜ急に納品が遅れたんだい?」
- 部下
-
「いえ、詳細は定かでないのですが、とにかく1日だけ待ってほしいとのことでした」
- 課長
-
「原因が分からないと、本当に1日待てば納品されるのか確証が得られないよね?」
- 部下
-
「……」
上の例では、取引先の納期遅延という異常事態に対して、遅れる原因が重要だと管理職は判断しています。
1日程度の遅れであれば重大事ではなさそうだと考えている様子の部下の報告を聞いて、肝心な報告事項が漏れていると感じるはずです。
事例②:報告の段取りが悪く要領を得ない
報告の順序が整理されていないなど、要領を得ないのも大きな問題です。
報告事項のうち、重要な点は何であるか、優先的に報告すべきことは何かを部下が判断できていないと、報告の段取りが悪くなりがちです。
次のようなケースは、要領を得ない報告の典型例といえるでしょう。
《報告内容が要領を得ないケース》
- 部下
-
「A社からの発注ですが、先方が今になって発注を検討したいと仰っています」
- 課長
-
「検討したい?一体どういうことだい?」
- 部下
-
「発注いただいた製品①は、他社製品で代替のきく在庫が大量にあるとのことです」
- 課長
-
「何だって?それはまずい。発注を取り下げるということ?」
- 部下
-
「いえ、製品①ではなく、製品②を発注したいと希望されています」
- 課長
-
「つまり、発注そのものの取り下げではなくて、発注内容の変更ということだね?」
- 部下
-
「はい、そうです」
部下から報告を受けた課長は、A社からの発注自体が白紙になってしまうことを最も危惧しています。
しかし、実際には単に発注する製品の種類を変更したいと希望しており、事務的な変更処理が発生するだけのことでした。優先的に報告すべき事項が混乱していると考えられます。
事例③:報告すべきときに報告がない
報告にはしかるべきタイミングがあります。
適切なタイミングで報告が上がってこないと、報告の意味をなさなくなってしまうこともあり得るからです。
次の例では、適切な報告のタイミングを逸したことで打つべき手が断たれる結果になっています。
《報告すべきタイミングを逸したケース》
- 部下
-
「課長、A社の発注ですが、追加発注されたいそうなので、明日の納品数は変更になります」
- 課長
-
「どれだけ追加したいと希望されている?」
- 部下
-
「あと800ケース追加されたいとのことです」
- 課長
-
「800ケースも倉庫に残っているのかい?先方にはどう返答したの?」
- 部下
-
「おそらく大丈夫かと思い、承知しましたと伝えてあります」
- 課長
-
「ここ数日、注文が集中しているから在庫切れになるかもしれないぞ」
- 部下
-
「すぐに倉庫へ確認してみます」
***
- 部下
-
「申し訳ありません、倉庫に確認したところ、すでに在庫切れで順次配送とのことです」
- 課長
-
「やはりそうか。どうするの?先方にお詫びを入れなくてはならないよ」
- 部下
-
「……」
上の例では、比較的大口の追加受注があったにも関わらず、部下は納期前日まで報告を上げていませんでした。
その結果、すでに打つ手はなく先方にお詫びしなくてはならない事態に発展しています。
管理職としては、なぜすぐに報告しなかったのか不満を感じるでしょう。
部下からの報告の質が悪くなる原因
先の事例では、それぞれの場面で管理職は次のように感じるはずです。
「なぜ肝心なことを先に報告してくれないのだろう?」
「報告する順序をどうして自分で考えられないのか?」
「しかるべきタイミングで報告しないのはなぜなのか?」
こうした不満を感じたとき、管理職としてはつい部下自身の能力や性格に目を向けがちです。
しかし、部下からの報告の質が悪くなる原因は「報告のあり方」そのものにあるとも考えられます。
部下の立場になったとき、次のような状況では報告がしづらい・報告すべき事項が分かりにくいと感じる可能性があるでしょう。
報告するべき事項が不明確
「毎日必ず報告を上げる」といったルールを部下に課している場合、部下は義務的に報告していることが考えられます。
このようなケースでは、上司が何を知りたいと思っているのかが十分に理解できておらず、部下は形式的に報告してしまいがちです。
報告の本来の意義が理解できていないと、部下にとって「上司から怒られないこと」「至らない点やミスを指摘されないこと」が目的化してしまう恐れがあります。
そのため、「報告をきちんと上げてほしい」と伝えると、部下の側はますます萎縮して当たり障りのない報告を上げるようになっていくでしょう。
報告の目的と、報告してもらいたい事項が部下との間で共有されているか、改めて確認しておく必要があります。
報告する手順への理解不足
上司に報告するたびに報告の順序をゼロベースで考えていると、報告には思いのほか大きな労力を要します。
部下自身が報告の手順をテンプレート化できておらず、しかるべき手順を理解していないことが原因と考えられます。
ビジネスにおける報告には一定の「型」があり、型に当てはめて報告事項を組み立てることで抜け漏れを防げること、適切な優先順位づけをしやすくなることについて、レクチャーしておく必要があるでしょう。
上司にとって「当然理解しているべきこと」だったとしても、部下にとっては未知のノウハウということは十分に考えられます。「いつかできるようになるだろう」と安易に考えず、報告の手順への理解を深めるよう促していく必要があります。
報告するべき適切なタイミングが分からない
報告が後手に回りがちな部下は、もしかしたら報告するべき適切なタイミングが分からないと感じているのかもしれません。
過去に部下から受けた報告に対して、軽く受け流すような態度を取ったり、重要視していないと思われかねない素振りを見せたりしたことはないでしょうか。
もしそのようなことがあれば、部下としては「些末なことは報告ないほうが良いようだ」「報告しても聞いてもらえない」と感じ、報告を上げるべきタイミングを逸しやすくなります。
プレイングマネージャーなど、管理職も実務を抱えていて多忙に見える場合はとくに注意が必要です。
部下は上司の仕事を邪魔しては申し訳ないと感じ、報告するタイミングを見極めかねている可能性があります。部下が報告のタイミングを逃してしまう原因の一端は、管理職の側にあるかもしれないのです。
部下からの報告の質を高めるための具体的な方法
管理職が部下からの報告に不満を感じているということは、部下の側でも報告がしづらいと感じている可能性が十分にあります。
お互いにストレスを抱えた状態が続くよりも、具体的な解決策を講じていったほうが建設的でしょう。
そこで、部下からの報告の質を高めるための具体的な方法について解説します。もし実践していないものがあれば、ぜひ取り入れて改善を図っていきましょう。
報告すべき事項をフォーマット化する
単に「しっかり報告してほしい」と部下に伝えても、部下としては何をもって「しっかりとした報告」と呼ぶかが把握しにくいでしょう。
管理職として報告してもらいたい事項をフォーマット化し、部下と共有しておくことで、必要な報告事項や手順をルール化することができます。
フォーマット化といっても、報告のたびに文書を提出させる必要はありません。
報告事項として最低限必要な項目をまとめ、部下と共有しておきましょう。フォーマット化するにあたり、2W1Hを軸に構成することで抜け漏れを防ぐことができます。
2W1Hとは?
2W1Hとは「What」「Why」「How」の頭文字を取ったものです。
この3点を軸に報告してもらうことで、対象となる事象とその理由・背景、さらには具体的にどのようなアクションを考えているのかを効率的にヒアリングすることができます。
報告はもちろんのこと、業務の依頼時にも応用できる伝え方ですので、時間を取って部下にレクチャーしておく価値は十分にあるでしょう。
《2W1Hの活用例》
報告の仕方をレクチャーする
報告するべき順序や優先事項を教えるのは容易なことではありません。
部下によってはすでに要領を得ている人もいるはずですが、なかなか要領をつかめない部下にどうレクチャーしたらいいのか迷ってしまうこともあるでしょう。
そこで、物事を伝える際に役立つ話の構成の仕方についてレクチャーすることをおすすめします。
伝え方には一定の型があり、型に当てはめて報告することによって相手も理解しやすくなると認識してもらうことが重要です。慣れないうちは業務日報として文書にまとめてもらってもいいでしょう。
ホールパート法
はじめに全体像(Whole)を説明したのち、中身(Part)について詳細を報告する方法です。
はじめに概要を把握しやすくなるため、報告事項の要旨や重要度をつかみやすくなるでしょう。下の例にあるように、報告すべき事項の数をはじめに挙げてもらうと、より全体像を把握しやすくなるはずです。
《ホールパート法の活用例》
PREP法
はじめに結論(Point)を報告し、続けてその理由(Reason)と具体例(Example)を伝え、最後に結論(Point)をまとめる方法です。冒頭で結論を伝える必要があるため、部下は報告事項の要点をあらかじめ決めておく必要があります。背景や個別の事象を事細かに挙げようとするあまり、報告するべき要点のピントがずれてしまうのを防ぐ効果も期待できるでしょう。
《PREP法の活用例》
報告事項の緊急度・重要度について認識を共有しておく
部下からの報告は適時上がってくるのが理想ですが、部下の立場としては忙しそうな上司に時間を取ってもらうのは申し訳ないと感じる可能性もあります。
そこで、報告を受ける時間帯やタイミングをあらかじめ決めてしまうのも1つの方法です。
報告を定例化することで義務的な報告にならないよう、報告内容によってレベル分けをしておくといいでしょう。
下図のマトリクスを活用して、「緊急かつ重要」な報告事項は可能な限り早く伝えてもらいたいと話します。
その上で、緊急度・重要度のいずれかが高い場合は漏れなく伝えること、緊急度も重要度も低い場合は折を見て相談してくれればよいことを伝えましょう。
下記のように、具体的な事例を挙げておくと伝わりやすいはずです。
《緊急度と重要度のマトリクス》
《緊急度・重要度の具体例》
- ①重要かつ緊急の報告事項:トラブルやクレームに関する報告など
- ②緊急だが重要ではない報告事項:顧客からの一般的な問い合わせ対応、会議資料の確認など
- ③重要だが緊急ではない報告事項:大口受注に関する報告、中長期プロジェクトの動向など
- ④重要でも緊急でもない報告事項:事務処理に関する確認事項など自分で解決できる事項
報告の質を改善する際の注意点
ここまで、報告の質が悪くなる原因と改善策について解説してきました。
具体的な報告の仕方をレクチャーすることで、部下との間で報告に関する共通認識が形成され、以前よりもスムーズに報告が進むようになるはずです。
継続的に質の高い報告を上げてもらうには、技術面だけでなく環境面にも配慮していくことが大切です。
次に挙げるのは、報告以前に上司と部下との関係性を良好に保つための注意点です。部下が心理的な部分で上司のことをより信頼し、適切な報告を上げやすくするためにも、できる限り改善を図っていくようにしましょう。
部下の心理的安全性を確保する
「報告内容によっては上司から叱責されるのではないか」などと部下が感じていると、適切な報告を上げにくくなることがあります。
とくに部下自身によるミスの報告をする場合はなおさらです。部下に対して威圧感を与えていないか、部下が萎縮していないかを、日頃から注意深く観察することが大切です。
報告を上げるのが苦手な部下であれば、レクチャーしたからといって報告の仕方を劇的に改善するのは難しいことも考えられます。
たとえはじめはうまくいかなくても、そのことを責めたり否定したりすることなく、部下の心理的安全性を確保するよう心がけましょう。
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報告に対して「指導」ではなく「ヒント」を与える
管理職にとって、部下を指導・育成することも仕事のうちといわれています。
たしかに部下の育成を促すことは重要ですが、報告を受けた際のアドバイスは必ずしも「指導」や「指示」である必要はありません。
部下自身が考えて解決できるよう、ヒントを与えて導くのも育成方法の1つといえます。
部下から上がってくる報告が常に「結果」とは限らないことにも留意する必要があります。
部下なりに解決策や改善策を講じ、取り組んでいる「過程」を報告している可能性もあるからです。
上司に報告するたびに「〜しなければならない」「〜するべきだ」といった断定的な回答が返ってくるようだと、報告そのものに対する心理的な抵抗感を高める原因になり得ます。
報告に対する回答は「指導」よりも「ヒント」を与える姿勢で臨みましょう。
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上司自身の弱みや失敗談をオープンにする
上司と部下の年齢差がある場合や、上司自身が実務能力に長けている場合はとくに、上司自身の弱みや失敗談を部下に対してオープンに話しましょう。
仕事ができる上司は部下にとって尊敬の対象となるだけでなく、「下手なことはいえない」と萎縮させてしまう面があるからです。
若手の頃、自身の失敗を上司に報告しにくかったことや、うまく報告できず注意を受けた経験が誰しもあるでしょう。
そういった経験を部下にこだわらず伝えていくことで、「言いづらい」「話しづらい」という部下の心理的障壁を少しずつ低くしていくことができるはずです。
パーフェクトな上司を演じるのではなく、不完全なところもあると知ってもらい、お互いに弱みを見せられる関係性を築いていくことが大切です。
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まとめ)部下の報告スキルを問題視する前に「報告のあり方」を見直そう
社会人の基本は「報連相」といわれるように、報告はビジネスにおいてごく基本的なことと思われがちです。
しかし、適切なタイミングで必要な報告を漏れなく上げるのは、決して簡単なことではありません。
もし現在、部下の報告スキルを問題視しているようなら、原因は部下の側にあると決めつけないように注意しましょう。
そもそも報告のあり方が適切であるか、報告しやすい環境を整えているか、といったことをていねいに見直し、改善を図っていくことが大切です。
報告のあり方を見直すことで、部下から上がってくる報告の質が大きく改善することも決してめずらしくありません。
ぜひ今回解説してきたポイントや注意点を参考に、報告のあり方を見直してみてください。
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