管理職なら知っておきたいSOGIハラ対策

[最終更新日]2020/09/09

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管理職なら知っておきたいSOGIハラ対策

SOGIハラという言葉をご存知でしょうか?「聞いたことがない」「言葉は知っているが、内容はよく知らない」という方は、次の事例について考えてみてください。

とても仲の良さそうな部下の男性2人がいます。2人が毎日ランチを一緒に食べに行っているのを見て、上司がこんな冗談を言ったとします。

「君ら、本当に仲が良いなあ。実はホモなんじゃないか?」

この上司の発言について、あなたはどう感じますか?

ただの冗談なので気にしない。
良くはないが、咎めるほどのことではない。
明らかなハラスメント行為と感じる。

もし上記の➀または②に近いと感じた方は、もしかしたらSOGIハラに対する意識が希薄かもしれません。

この記事ではSOGIハラとは何か、なぜ企業がSOGIハラ対策を講じる必要があるのかを解説しています。
SOGIハラに対する理解を深める上で、ぜひ役立ててください。

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Index

目次

SOGIとは?基本的な定義・概念について確認

SOGIは「ソジ」または「ソギ」と読みます。近年、国連を中心として世界中で関心が高まっている用語の1つとして知られています。

いわゆる性的マイノリティに関わるトピックであることから、あまり職場でオープンに語られてこなかった事象かもしれません。

性的マイノリティに関する用語として、LGBTという言葉があります。SOGIとはどのような定義の言葉なのか、LGBTとのちがいはどんな点にあるのか、まずは基本的な定義や概念について確認しておきましょう。




SOGIの定義

SOGI性的指向および性自認

SOGIとは「性的指向および性自認(Sexual Orientation and Gender Identity)」の頭文字を取った言葉です。
性的指向とは、好きになる相手の性のことを指し、性自認とは自覚している性のことを指します。

世の中には異性を好きになる人もいれば、同性を好きになる人もいます。
また、男性の身体を持って生まれた人の中には、自身を女性と認識している人もいれば、その逆もあり得ます。

こうした性に関する属性すべてを包括する概念がSOGIです。
つまり、SOGIは性的マイノリティの人だけが関係する概念ではなく、異性を好きになる人、身体的な性と自覚している性が一致している人も含めた概念なのです

この「全ての人が関わる」という点がSOGIの重要なポイントと言えるでしょう。

SOGIは生きている限り誰しもが関わるものであり、性的マイノリティの人だけが気にするべきことではありません。
他人事にしないこと、どんな性的指向・性自認の人も関わっていることを認識する必要があります。




LGBTとのちがいとは?

近年広く知られるようになった言葉としてLGBTが挙げられます。LGBTとは「レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー」をはじめとする性的マイノリティを指す言葉です。

LGBTの存在が世の中で広く認知されるようになったことで、より多様性を認め合う社会に向けてまた1つ前進したと言えるでしょう。

一方で、LGBTの概念は「性的マイノリティと、それ以外の人」という線引きを無意識にしやすいという欠点も抱えています。
つまり、「自分は性的マイノリティではないから、あまり関係ない」と捉えられる傾向があるのです。

注意しておかなくてはならないのは、LGBTに該当する人だけがSOGIに関わるわけではないという点です。
前述のように、性的指向の対象が異性の人も、性自認が身体的な性と一致している人も含め、SOGIはあらゆる人が該当する概念です。

LGBTとSOGIを同列に見なしてしまうと、一部の人だけが関係する概念と誤解しやすいため、十分に注意しておく必要があります。




個性や多様性を尊重する意識の高まりとSOGI

冒頭の事例では、上司は部下に対してほんの冗談のつもりで「まるでホモみたいじゃないか」と発言しています。

このとき、部下の2人のどちらか、あるいは両方が本当にホモセクシャルである可能性を完全に否定することはできません。

また、周囲でこの発言を聞いていた人や、「上司がこんな発言をしたらしい」と又聞きで耳にした人の中に、性的マイノリティの人がいないとも限らないのです。さらに、こうした差別的な言動そのものを不快に感じる人も、自身の性的指向や性自認に関わらず存在する可能性があります。

このように、自覚せず不意に発言した言葉の中に、周囲の人を不快にさせたり傷つけたりする要素があるかもしれない、というのがSOGIの重要な点です。

世の中は個性や多様性を尊重する方向へと確実に進んでいます。
こうした意識が高まっていることをよく知らないまま不用意な発言をすることによって、同じ組織で働く人や身近な人を深く傷つけている可能性があるのです。

SOGIハラとは?どんな言動がSOGIハラにあたる?

SOGIハラとは、SOGIに関するハラスメント全般を指します。性的指向や性自認に関して、ある人の言動によって不快な思いをする可能性があるとすれば、それはハラスメントにあたります。

問題を複雑にしている背景として、SOGIに関する話題はひと昔前まで軽い冗談として口にされていることが少なくなかった点が挙げられます。

冒頭の事例で挙げた「ホモみたい」といった発言も、昔であればテレビのバラエティ番組などで多くの人が耳にしたことがあるのではないでしょうか。

では、具体的にどのような言動がSOGIハラに該当する可能性があるのか、詳しく見ていきましょう。




SOGIハラとは?

ハラスメントに対する世の中の関心は、近年急速に高まっています。

セクハラやパワハラに関しては、もはや知らない人はいないと言っていいほど広く浸透し、常識がある人なら「いけないこと」だと知っているはずです。SOGIハラについても、セクハラやパワハラと同様、社会生活を送る中で常識的な事柄になっていく可能性が高いでしょう。

2017年1月にセクハラ指針が改定され、「被害を受けた者の性的指向又は性自認にかかわらず、当該者に対する職場におけるセクシュアルハラスメントも、本指針の対象となるものである」と明記されました。

これにより、性的指向や性自認に関する偏見に基づく言動はハラスメントと位置づけられ、違反した場合は懲戒などの処分の対象となりました。

セクハラと聞くと異性に対するハラスメントというイメージを持つ人が多いはずですが、SOGIハラはこれよりも広く、包括的な意味におけるハラスメントを問題視しています。

セクハラやパワハラが「冗談のつもりだった」では済まされないように、誰もがSOGIハラという問題を認識し、対策を講じていく必要があるのです。




SOGIハラに該当する可能性が高い言動の例

LGBT法連合会や人権NGOをはじめ、有志の個人で結成された「なくそう!SOGI」実行委員会のWebサイトでは、次のような事例をSOGIハラに該当する言動として挙げています。



差別的な言動や嘲笑、差別的な呼称

たとえば「ホモは気持ち悪い」「レズはいなくなって欲しい」といった発言がこれに該当します。人の外見や行動、発言を性的指向や性自認と結びつけてからかうことも差別と見なされるという点が重要です。



いじめ・無視・暴力

あの人はゲイみたいだから、自分たちも同じだと思われないように距離を置こう」といった考え方そのものが差別と言えます。性的指向や性自認を理由とした暴力行為が問題であることは言うまでもありません。



望まない性別での生活の強要

性自認が身体的な性と一致していない人に対して「女性は女性用の制服を着用しなさい」「女性らしく化粧をしなさい」「男らしく振る舞うように」といったことを押しつけるのは差別です。

望まない性別を強要されることが、本人にとって大変な苦痛を覚えることであると認識する必要があります。



不当な異動や解雇、不当な入学拒否や転校強要

たとえば、化粧をして出勤する男性社員に対して「お客様から変な目で見られるから、担当から外れてもらう」といった異動を命じるのはハラスメントです。



誰かのSOGIについて許可なく公表すること(アウティング)

ある人がゲイだと知って、「あの人、実はゲイらしいよ」などと望まない形で公表する行為はハラスメントです。

信頼していた人にアウティングされたことを気に病み、自ら命を絶った方の事例も報道されているように、人のSOGIについて誰かに話すことは本人を深く傷つける行為だと認識する必要があります。

参考:「なくそう!SOGIハラ」 




悪気のない冗談や軽い気持ちで発した一言がSOGIハラとなり得る

上の事例にもあるように、SOGIハラの問題点は「問題の大きさに対する認識の温度差」にあります。
本人にとっては重大かつ存在理由を左右しかねない問題であっても、無自覚な人にとっては「軽い冗談」「ちょっとした世間話」でしかない可能性が高いのです。

よくある誤解の1つに「うちの会社には性的マイノリティの従業員はいない」「聞いたことがない」といった認識が挙げられます。

自らの性的指向や性自認を公表している人がいる一方で、隠しておきたい・周囲に知られたくないと考えている人もいます。

こうしたことは人の内面に関わることなので、外見からは判断できません。公表していないからこそ悩んでいるのであって、「いない」「関係ない」と決めつけるのは本末転倒です。

このように、悪気のない冗談や軽い気持ちで発した一言がSOGIハラにあたる可能性があることを十分に認識しておかなくてはなりません。

SOGIについて「他人事」「自分は関係ない」と捉える人が減らない限り、SOGIハラ問題は解決の糸口が見えてこないのです。

なぜ今、SOGIハラ対策の重要性が注目されているのか?

SOGIハラについて、ここまで概要と注意点について解説してきました。

ところで、なぜ今、SOGIハラ対策の重要性が注目されているのでしょうか。

企業がSOGIハラ対策を講じる必要がある理由としては、主に次の3つの点が挙げられます。ご自身の勤務先はSOGIハラ対策が講じられているかどうか、なぜ今後はSOGIハラ対策を講じておく必要があるのか、ぜひご一緒に考えてみてください。




モデル就業規則によって企業の「常識」として位置づけられた

2018年1月に公表されたモデル就業規則では、第15条に「性的指向・性自認に関する言動によるものなど職場におけるあらゆるハラスメントにより、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない」とあります。

このようなモデル就業規則が公表されたことは、企業にとってセクハラやパワハラへの対策と同様、SOGIハラ対策が「常識」として位置づけられたことを意味しています。

セクハラやパワハラが常態化している会社が「ブラック企業」などと呼ばれることがあるように、SOGIハラにあたる言動を平然としてしまう従業員を放置している企業、それに対して対策を講じようとしない企業は、もはや非常識な組織とみなされるリスクさえあります。

SOGIハラを問題視する傾向は日本だけでなく全世界的な風潮であり、国としても良好な就業環境を維持する上で欠かせない対策と考えられているのです。




SOGIハラ対策に無関心な企業は時代から取り残されていく

職場のモラル意識は組織の経営方針や企業文化、伝統などと密接に関わっています。

経営者をはじめとする上層部がSOGIハラに無関心または否定的な考え方を持っている企業は、今後時代から取り残されていく可能性があります。

企業の文化や慣習は、実は多くの人の目に触れています。企業に出入りする取引先や商品を購入・契約する顧客をはじめ、さまざまなステークホルダーの目に触れる中で企業イメージが形成されていきます。

セクハラやパワハラ問題に関して言えば「今どき女性社員にお茶出しをさせている」「部下に暴言を浴びせる上司がいる」といった噂は、想像以上に多くの人が耳にし、企業イメージの悪化につながるリスクを孕んでいます。

たとえ冗談のつもりでも「ホモっぽい」「ゲイなのではないか」などといった発言をする人が組織の中にいると、「あの会社は時代錯誤ではないか」「世の中の流れから取り残されているのではないか」といった疑義を抱かせてしまう原因になり得ます。




優秀な人材を確保するには多様性への配慮は不可欠

企業にとって優秀な人材の確保は、言葉通り死活問題です。人材の確保が手詰まりになったり、たとえ採用できたとしても定着しなかったりすれば、将来の企業活動は先細りになってしまいます。

優秀な人材ほど情報感度が高く、企業の文化や土壌について関心を持っています。

SOGIハラ対策に無関心な企業や、具体的な対策を講じようとしない企業は、優秀な人材から敬遠される可能性があります。

なぜなら、SOGIハラはすべての人に関わる問題であり、その企業がどれだけ多様性を尊重しているかが分かる指標の1つとなり得るからです。

こうしたことは、採用面接や会社説明会など対外的な場だけで意識しても、一朝一夕には改善されないものです。日ごろからSOGIハラ対策をしっかりと講じ、名実ともにSOGIハラ対策への意識を高めていく必要があるでしょう。

SOGIハラ対策のために管理職ができることとは?

SOGIハラ対策は企業が組織として取り組むべき課題ですが、管理職が自部署の従業員に対してできることから始めていく姿勢を見せることも非常に重要です。

部署単位で良い事例ができれば、今後社内に対してSOGIハラ対策の成功事例として紹介していくこともできるでしょう。

そこで、管理職の立場で取り組むことのできるSOGIハラ対策について、今日からできる行動の例をまとめました。ぜひ自部署で実践していただき、SOGIハラ対策を社内で広めていきましょう。




まずは管理職自身がSOGIハラについて理解し、自らの言動に気を配る

SOGIハラ対策に乗り出すのであれば、まずは管理職自身がSOGIハラについて十分理解し、自分自身の言葉や行動に注意することから始めましょう。

自部署の部下や上司にLGBTの人がいるかどうかではなく、「性的指向や性自認を明らかにしていない人がいる」という前提でのぞむことが重要です。

気をつけるべきことは「ホモ」「ゲイ」などの直接的な表現を使うのをやめることだけではありません。
「男らしい」「女性らしい」といった言葉を(ときには褒め言葉のつもりで)意識せずに使っていた場面がこれまでなかったでしょうか?

性別にまつわる自分自身の偏見や先入観があるのではないか?と疑い、もし思い当たることがあれば戒めていく必要があります。

仕事中に限らず、ちょっとした雑談や飲み会の席などでも、性別に関する発言はたとえ冗談でも控えるべきです。
「この人なら気にしないだろう」などと決めつけず、誰に対してもSOGIハラにあたる可能性のある言動は避けましょう。




部下をはじめ周囲の社員が好ましくない言動をした場合は注意を促す

部下をはじめ周囲の社員がSOGIハラに該当しかねない発言をした場合は、放置せず注意を促すようにしましょう。

時間が経って本人が忘れてしまってから注意しても響かないので、できるだけその場で「そういう発言は良くない」と明確に伝えるべきです。

好ましくない発言をした本人にとっては、「ほんの冗談のつもりだった」といったことがほとんどでしょう。
しかし、管理職が自らSOGIを念頭に置き、言動に気を配っていることが部下に伝わっていくことで、「ああいった発言はしてはいけない」という意識が徐々に浸透していくはずです。

部下の間で「〇〇課長はその手の話題に対してシビアだ」「〇〇部長の前で言うと注意を受ける」と認識されるだけでも、部下は発言に気をつけるようになるものです。

可能であれば、機会を設けてハラスメント全般に対する研修の場を持つと共通認識を持つことにつながり、さらに効果が増すでしょう。




社員の相談窓口の設置や対応ルールについても可能な限り提案する

総務や人事と連携して、ハラスメント被害に遭った従業員の相談窓口を設けるよう提案していくことも大切です。少なくとも「相談窓口の設置を検討している」と伝わるだけでも、SOGIに関する悩みを抱えている従業員にとって気持ちが軽くなるかもしれません。

ハラスメント被害は実際に発生しないことが望ましいのはもちろんですが、万が一にも起きてしまった場合に備えて対応ルールを決めておくことも提案してみましょう。

就業規則にハラスメント防止の項目があれば、SOGIハラの項目を追加することを提案するのです。国のモデル就業規則においても公表されていることですので、時代に合った就業規則にしていく意味では取り入れるべき要素と言えるでしょう。

ルールを整備するのは、罰則を設けることで従業員を処分するのが目的ではありません。規則があることが抑止力となり、組織内での共通認識として「いけないこと」「好ましくないこと」と認知されていくのです。

まとめ)企業のSOGIハラ対策は多様性への理解度を知る尺度になり得る

国のセクハラ指針が改定されたのが2017年、モデル就業規則にSOGIハラに関する事項が追加されたのが2018年ですので、SOGIハラ対策はすでに数年前から企業にとって重要な課題の1つになっています。

ひと昔前なら見過ごされていたことであっても、社会全体の目が厳しくなり、多様性を尊重することの重要性は今や常識の範疇になりつつあります。

企業がSOGIハラ対策を重視しているかどうか、実際に対策を講じているかどうかは、多様性への理解を知るための1つの尺度になり得ます。

もし自社のSOGIハラ対策が不十分と感じるようであれば、管理職が先陣を切って対策に乗り出しましょう。

長い目で見たとき、SOGIハラ対策に取り組んだことがリスク回避や人材確保へとつながり、結果的に企業にとってメリットをもたらすはずです。

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