私の管理職体験談:福祉施設の管理責任者として、「関わる人たち」と向き合う働き方を。

[最終更新日]2023/03/11

体験談
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私の管理職体験談:福祉施設の管理責任者として、「関わる人たち」と向き合う働き方を。

現在、福祉施設である「就労継続支援B型」の管理者として日々働いています。
就労継続支援B型とは、病気や障がいを抱えている方や年齢や体力などの面で雇用契約を結んで働くことが困難な方に、軽作業などの就労訓練を提供する福祉サービスです。

利用者の人たちがいかに施設を利用しやすいようにするかを考えたり、改善すべき点がいくつか出てきたら書き出して、すぐに行動に移せるようにしています。

日々の業務で意識していることは、「関わる人たちが、どうなってほしいか」ということ。サービスを利用する方もそうですし、職場の仲間や関係者の方々に対しても、常に相手がどうなると良いかを考える。

以前の私は「日々、トラブルなく、和気あいあいと仕事ができればいい」というようなスタンスでした。
ですが、管理職の立場になって、そしてある出来事がきっかけで、そんな風に思うようになりました。

今回は、そのときのことをメインに、お伝えして行こうと思います。







春の恋人さんさん(男性 30歳)
職業
福祉・医療
職種
福祉施設管理者
年収
約450万円
従業員規模
22人(うち部下4人)
地域
宮城県

Index

目次

施設での、私の働き方と、苦手なこと。

計算が大の苦手

長時間の就労が困難であったり、心身の状態が不安定で安定した雇用契約が結べない方が、私たちの施設を利用しています。
ですので、私たち職員は利用者の方々と頻繁にコミュニケーションを取りながら、心身の状態を確認することも求められます。

そういった働きかけによって利用者の方々との関係が深まったり、感謝してもらえることも多いです。それは、私の大きなやりがいにも繋がっています。

一方で、私がどうしても苦手だったのが、「作業工賃の計算」でした。

就労継続支援B型の施設では、軽作業を行う利用者の方々に対して作業工賃が生じます(利用者様へお支払いするお金です)。

私は元来、数学というか算数が大の苦手で、二桁以上の数字が目に入ると途端に眼をそむけたくなるくらいでした。

施設に入職したときに、上長から「作業工賃は絶対に間違えてはいけない」と言われて、その業務のときはかなり緊張しながらやりました。



管理責任者になって、思ったことは2つ。

絶対無理という気持ちと慢心があった

2年半前に「サービス管理責任者」に任命されました。

サービス管理責任者とは

サービス管理責任者は、障害福祉サービスを提供する事業所において、適切なサービスが提供できるように全体的な管理を行う、いわばその事業所の「まとめ役」です。

主な業務内容は、支援プロセスの管理、スタッフ(サービス提供者)への指導・助言、関係者や関係機関との連携などがあります。

この施設に入ってまだ2年も経過していない時でしたし、更には私自身「コンプレックスの強い」タイプで、それまで「自分はダメだ、仕事ができない」ということばかり考えているような人間でしたので、

「いやいやいや、絶対無理…!」

と思ったものです。

ですが、私にはもう一つ、別の性質もあって。
それは、「見栄っ張り」ということです。

変にプライドが高く、たとえば人から見下されたり軽んじられるは大嫌いです。
だから、

「俺もとうとう、サービス管理責任者になったか…」

というような慢心も、正直なところありました。

その気持ちは、社長から

社長

「君だったら大丈夫だよ。何かあれば俺もサポートするからさ」

と力強いお言葉をかけていただいた言葉もあって、一層強まりました。



最近、私に対する利用者さん達の態度がおかしい。

利用者さん達から雑談を振られなくなった

管理責任者に就任したことについて、利用者さんたちからは「おお!おめでとう」「さすが〇〇さん!」といった声をかけてもらいました。
それで私も、「私がサービス管理責任者になったことに、皆も納得して喜んでくれたんだな」と安心し、嬉しい気持ちにもなりました。

それから数か月が経って、私はあることに気付きました。

業務中に利用者さんから話しかけられることが、殆どなくなっていたのです。もちろん作業内容に関する質問やレクチャーの際にはコミュニケーションを取りますが、それ以外の雑談をする機会が、以前と比べて大分減っていました。

施設に来る利用者さんは、普段から「だれかと話したい」と思っている人が多く、よくよく観察してみると私以外のスタッフとのコミュニケーションを多く取っているようでした。

(なぜ、皆私に話しかけてこないようになってしまったんだろう…)

不思議に思いましたが、いくら考えても答えは出てきません。
「それなら」と思い、私は自分から積極的にコミュニケーションを取るようにしました。

そのとき、とある利用者さんから、こんなことを言われました。

利用者さん

「〇〇さん。余計なことかもしれないけど、人間というのは調子に乗った時が一番怖いです。思わぬ落とし穴があるかもしれませんよ」

調子に乗ったとき」?「思わぬ落とし穴」?いったいこの人は何を言っているんだろうと思いましたね。
でも、その日家に帰ってひとりで振り返ってみたときに、気づいたのです。

私は、若くしてサービス施設責任者になれたことに有頂天になっていました。
まさに、調子に乗っていたのです。いつも「自分はこれでいいんだ」と思っていました。

私に指摘してくれた利用者さんは、50代半ばで容姿も小ぎれいにされたダンディな方です。以前は大手企業でバリバリ働いていたそうですが、体調を崩して現在この施設を利用されています。

その利用者さんや他の利用者さんから、ここ最近の私はどのような姿で映っていたのか──。
そのことに、はじめて向き合うことができました。





当時のことを振り返って、思うことは。

利用者さんに気づかせてもらえた。

利用者さんの言葉はずっと忘れることはないだろうし、忘れてはいけないと思っております。

立場が人を創る」とはよく聞く言葉ですが、私の場合は少し良くない作り方をしてしまったのでしょう。

施設責任者になってから私は、周囲のことを殆ど見れていませんでした。もちろんやるべき仕事はやっていましたが、それは相手のことを見ての仕事ではなかった。

職員とのチームワーク、役場や医療機関との連携、そして利用者さんとのコミュニケーション。
いつも、「自分がどう振る舞うべきか」が先行していました。

作業工賃の計算もそうです。計算が苦手だという想いでいっぱいで、それを受け取る利用者さんの気持ちを殆ど考えられていませんでした。

このままではいけないと気づかせてくれたのは、意見を言ってくれた利用者さんです。 「私がどうするべきか」ではなく、「関わる人たちが、どうなってほしいか」をもっと意識していこうと心に決めました。





管理職として、大切にしたいこと。そして、これから目指していきたいこと。

管理職として一番大切なものは、「周囲への配慮と感謝を忘れない」こと

管理責任者になって、早2年半が経ちました。
今では、利用者さんとのコミュニケーションも多くなり、職員との連携・チームワークも強まったと思っています。

大分遠回りもしましたが、ようやくこのポジションでの「望ましい働き方」が、見えてきたような気がしています。

現在目指していきたいことはたくさんあります。

まず利用者様のお役に立って力になることです。そして、相談をされれば真摯に向き合い、解決をすることができる人間になりですし、していきたいと思っております。

それから、今の職場を「もっと次世代にも通用する就労継続支援B型施設にしたい」と思っています。

施設で利用者さんが携わる軽作業は、部品加工や食品づくり、そのほか農作業や手工芸、クリーニング等様々です。最近はWeb制作などIT関連の仕事もあるのですが、施設の設備がまだ整っていないこともあって、充分な作業を提供できていません。

もっとパソコンやモニターの台数を増やし、そして職員のスキルも向上して行けば、より良い作業を提供でき、それは利用者さんの工賃を増やすことや、自立支援にもつなげていけると思います。

そして、管理職として一番大切なものは、「周囲への配慮と感謝を忘れない」こと。これまでの私が言うような言葉ではないかもしれませんが、部下に胸を張ってそう教えていけるようになりたいです。