管理職体験談:「あなたのもとでは働けません」部下数名から退職届を叩きつけられた日。
[最終更新日]2023/11/03
神奈川県にあるデイサービスセンターで働いています。
役職は施設管理者兼生活相談員になり、主に施設の運営全般を行っています。
カリンさん(男性 49歳)
- 職業
- 民間福祉事業所
- 職種
- 施設管理者兼生活相談員
- 年収
- 500万円
- 従業員規模
- 50人
- 地域
- 神奈川県
Index
目次
管理職としての私の仕事。
こちらは民間の福祉施設になりますが、いくら民間の施設とはいえ、売り上げがなくては運営が成り立ちません。
ですので、外部への営業活動も行っていますし、懇親会を定期的に開催したりといった宣伝活動も行っています。
そうして取ってきた仕事は施設の職員に共有され、その後具体的にどう取り組んでいくかを職員一同、確認します。
営業と現場の職員の連携が重視される業務でもあります。
私自身の性格はと言えば、昔から怠け癖が強く、できるだけ最短ルートでできる方法は無いかと考えてしまいます。
ですので、世間が思うようなきちっとした管理職像からは程遠い人間だと思います。
チームの成果=私個人の成果と勘違いして……。
私がまだ管理職になりたての頃の話です。
慣れないことはたくさんありましたが、業務も滞りなく進めているつもりでいました。
ある時、ついに地域での売り上げが施設内でトップになりました。
しかし、まだ未熟だった私は、その手柄を「自分が頑張ったからこそ」だと思い込み、かなり驕り高ぶってしまったんですね。
今思えば、あれはチームメンバーの尽力があってこそ。私一人では決して出せなかった結果だと分かるんですが……。
そんな風に舞い上がっていた私は、知らず知らず部下たちにも横柄な態度で接するようになってしまったのかもしれません。
ある時、部下数人が「あなたのもとでは働けない」と退職届を出しに来たのです。
私は一生懸命に引き留めましたが、一度失ってしまった信頼は、そう簡単に取り戻せるものではありませんでした。
職場を去っていく部下たちの後姿は、今でも忘れられません。
それからは、失った部下の穴を埋めようと、残りのメンバーと共に奔走しましたが、負の空気は職場に蔓延し、売り上げも見る見るうちに低迷の一途を辿ってしまったのです。
それから、私は。
当時の私は、自分自身を顧みる余裕もなく、ただ去っていった部下たちへの恨みつらみだけを抱えているような状態でした。
去っていった部下たちのように、残された部下たちもまた、私に対して負の感情を抱いていることは明白でした。
しかし私は、崩れてしまった人間関係を立て直すための妙案は思いつかず、ただ目の前の業務を淡々とこなしている、といった有様でした。
そんな日々がしばらく続いた頃でしょうか。
傾いていた業績もようやく軌道修正を図ることができ、ふと今までの自分の行いを振り返る余裕が生まれたのです。
思い返す自分の部下たちへの態度は、それはそれはひどいものでした。
私が部下として、私のような振る舞いをする上司のもとで働いていたとしたら、おそらく私だって退職届を出していたかもしれません。
そして現状、業績を再び安定に持ち込めたのも、私一人の尽力によるものなんかではなく、私に不満を抱きながらも、共に闘ってくれた部下がいたからこそでした。
それに気が付いてからは私も態度を改め、少しずつ部下たちとの交流の機会を増やすよう心掛けました。
そうすると、次第に部下たちの考えや価値観なども見えるようになってきて。
それからは嘘みたいにスムーズに、業務が進んでいくようになりました。
どうやら私は、部下たちのことを大きく誤解していたようです。
自分からは何も動かない、こちらから指示を出してやらない限りは仕事が進まない、そんな風に思っていた自分をひどく恥じました。
彼らと同じ目線に立てたことで、ようやく「チーム」としての本当の結果を出せるようになったと感じています。
<スポンサーリンク>
当時を振り返って。
当時を振り返ってみて思うことは、あの時の自分はとことんまで「個人の成績」にしか目を向けていなかったんだな、ということです。
管理職である手前、ある程度の成果が求められることは避けられませんし、それに伴うプレッシャーは、実際に管理職になってみないと分からないと思います。
私の場合は、管理職になったばかりの頃に、変に調子よく結果を出してしまったことが、その後の管理職としてのあるまじき振る舞いに繋がっていってしまいました。
「部署の成績は俺の成績」と、心のどこかでそう思っていたばかりに、あのような悲劇が生まれてしまったのだと思います。
私はよく、
「カリンさんって、本当、部下の事ほめないですよね」
そう言われていました。
- 私
-
「そりゃあ、褒めてばっかりじゃ部下は育ちませんからねー」
そんな風に、能天気に笑っていた自分が、今では本当に許せません。
「褒めなかった」のではなく、おそらく私は「褒めたくなかった」のでしょう。
今後、私が目指したいこと。
今と昔では、管理職に対するイメージも大きく変わりました。
若い頃は「管理職は上からの指示で仕方なくなるもの」という認識でいました。
私自身が管理職になった当初、そういう心づもりだったのです。
しかしそれではまるで役に立たないと、あの一件で知ることができたのです。
たとえ上からの指示であっても、そこからの動き方はその人自身で切り拓いていくものです。
そこに、管理職として、ひいては人としての真価が問われているのだと思います。
ある程度の経験を経てきた今、新たに管理職に対して抱くイメージは、
「組織の全員の幸せを願うこと」です。
私自身、まだ向こう10年以上は社会人生活が続いていく予定です。
残された期間で、本当の意味で真摯に「部下育成」に取り組んでいきたいと思っています。
これは半分は、私の罪滅ぼしでもあると思っています。
<スポンサーリンク>