見栄を張る性格(虚栄心)を直したい!今日から実践できる3つの改善策
[最終更新日]2023/11/06
「こんな樹の名を知っている? その葉は散るまで青いのだ。葉の裏だけがじりじり枯れて虫に食われているのだが、それをこっそりかくして置いて、散るまで青いふりをする。あの樹の名さえ判ったらねえ」
——太宰治『葉』より
太宰治の生涯と作品は「人から良く思われたい」という虚栄心と深く関わっていた、と評されることがあります。作品の端々に見え隠れする道化や露悪的な傾向もまた、虚栄心の裏返しだったのかもしれません。
私たちもまた、多かれ少なかれ誰しもが虚栄心を持っています。見栄っ張りな性格は一般的に良くないとされているため、できれば直したいと考えている人もいることでしょう。
今回は、見栄っ張りな性格を直すために実践できる改善策について解説していきます。
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Index
目次
そもそも、見栄っ張り(虚栄心)って何?
人は誰しも、自分自身の欠点からは目を背けたいと感じるものです。
一方で、見栄っ張りな性格が災いして人間関係がうまくいかなかったり、素直な自分の気持ちを伝えられなかったりすると、「どうにかしてこの性格を直せないだろうか?」と感じることがあるでしょう。
見栄っ張り(虚栄心)を改善するには、そもそも「見栄っ張り」とはどのような心理なのかを知っておく必要があります。見栄っ張りとは何か、どのような特徴のある性格なのか、はじめに確認しておきましょう。
自分を実際以上に大きく見せようとしてしまうこと
【虚栄心】
自分を実質以上に見せようと、みえを張りたがる心。(デジタル大辞泉)
辞書の意味にある通り、見栄っ張り(虚栄心)とは自分を実際よりも大きく・良く見せようとする心理を指します。実体以上の誇張した自分を演じ、周囲から称賛されたり注目を集めたりしたい——。
そのような傾向のある人を「見栄っ張りな人」「虚栄心の強い人」と言うことがあります。
虚栄心と似た言葉に自尊心があります。混同しやすい言葉ですが、実際は全く異なる意味を表しています。
自尊心とは自分自身を尊ぶ心のことですから、周囲からどう思われようと価値は揺らぎません。
しかし、虚栄心の基準は自分以外の人なので、周囲の人に自分をより良く思わせたいという考えが前面に出てしまうのです。
見栄っ張りな人の特徴
極度の負けず嫌い
見栄っ張りな人は、勝ち負けや優劣で物事を判断したがる傾向があります。
他人よりも自分のほうが常に優位に立ちたいと思っているため、少しでも自分が劣る可能性があると「より大きな自分」「より優れた自分」を相手に見せようとします。
裏を返せば、勝ち負けにばかりこだわっており、人との違いや多様性を認める視点を見失いがちです。
どんな場面でも自分が一番でないと気が済まない人や、自分の意見に賛同してもらえない状況が我慢ならないタイプの人は、虚栄心の強さが負けず嫌いな性格となって表れていると考えられます。
学歴や年収などのステータスにこだわる
学歴や年収といった分かりやすい指標は、見栄っ張りな人の拠り所となりやすいと言えます。
わざわざ言う必要のない場面で学歴や年収を口にしたり、実際よりも脚色して良く見せた経歴を伝えたりする傾向のある人は、少しでも自分を良く見せたい・優れていると思われたいという気持ちを強く持っています。
社会的なステータスは分かりやすく、人から「すごい」「羨ましい」と思われやすいため、見栄っ張りな人はひときわ強く意識していることも少なくありません。一方、自分自身の経歴や現在の境遇に自信が持てずにいると、強烈なコンプレックスになりやすい部分とも言えるでしょう。
ブランド物を身につけたり、外見を着飾って見せたりする
見栄っ張りな性格は「人より見劣りしたくない」という気持ちとなって表れることがあります。
典型的な例を挙げるなら、服やアクセサリーにブランド品を選んだり、高価な持ち物を好んだりすることでしょう。外見を着飾ることで、少なくとも見た目上は人よりも優位に立っているように感じられるからです。
ブランド物や高級品は価値があるものとして広く認知されているため、自分を良く見せるために金銭面で無理をしてまで買い求める人もいます。
現在の収入や暮らしぶりに見合わないものを身につける傾向があるようなら、見栄っ張りな面があると考えられます。
年下や後輩についお金を使ってしまう
見栄っ張りな人の中には、年下や後輩に食事をよくご馳走したり、お酒の席でお金を多く出していたりすることがあります。
一見すると面倒見の良い先輩のように思えますが、実は「立場は自分のほうが上」「裕福だと思われたい」といった心理が表れている場合があります。
実は懐事情が厳しいときでも、無理をして奢ってしまうような人はこの傾向があると言えるでしょう。
ご馳走して相手に喜んでもらいたい気持ちよりも、自分の力や立場を見せつけたい気持ちが勝っているようなら、見栄っ張りな性格に当てはまると考えられます。
見栄っ張り(虚栄心)の背景には何がある?
さて、ここからが本題です。見栄っ張りな性格を直したいと考えている人は、そもそもなぜ虚栄心が強くなりがちなのか、その原因を把握しておく必要があります。
見栄を張ってしまう原因として考えられるのは、主に次の2つです。
自分がどちらの傾向に近いのか確認してみましょう。場合によっては、両方の傾向を持ちあわせていることもあるでしょう。
いずれにしても、虚栄心の背景にある感情を探ってみることで、見栄っ張りな性格を改善していく糸口が見つかるはずです。
- 自分に自信を持ちたい
- 周囲からの評価を上げたい
自分に自信を持ちたい
見栄っ張りな人は表面的には自信満々のように見えますが、本当は自分に自信がないケースが少なくありません。「バカにされたくない」「低く見られたくない」といった思いを内に秘めていて、その反動から少しでも自分を大きく、優れた者のように見せようとしてしまうのです。
見方を変えると、虚栄心の大きさはコンプレックスの強さに比例していると考えられます。
たとえば、収入が低いことがコンプレックスの人ほど無理をしてでも高級品を身につけ、本当は満足な収入が得られていないことを隠そうとします。
学歴コンプレックスが強い人ほど、知識をひけらかしたり学歴が低い人を見下してしまったりするのです。
ただ、こうした表面的なコンプレックスの隠蔽は、かなり高い確率で周囲の人たちから見抜かれています。
すると、見抜かれているかもしれないという危機意識によってさらに見栄を張る悪循環に陥りかねません。
自分に自信を持ちたいのであれば、自分以外の金品やステータスを拠り所とする発想そのものを改めていく必要があるでしょう。
周囲からの評価を上げたい
自分に自信がないわけではないものの、望んでいるほど周囲から評価されていないと感じている人もいます。
いわゆる承認欲求が強いタイプの人が該当します。自分には優れた一面があり、もっと賞賛されてしかるべきなのに、周囲の人は自分の価値を分かってくれない、と感じているケースが考えられます。
SNSなどで自身の充実した暮らしぶりを熱心に投稿するような人の多くは、自分が思い描く自画像と、周囲の人に映る実像との間にずれがあると感じています。
「自分はもっと認められるべきだ」「自分の良さを分かっていない人が多い」といった思いが高じて、等身大の自分を上回る理想像を周囲に知らしめようとしてしまうのです。
こうした人のことを「リア充アピール」「意識高い系」などと揶揄する言葉があるように、自分の良い面ばかりを周囲に見せようとするさまは、実は痛々しいものとして映っていることも少なくありません。
人には誰しも弱い部分や醜い一面があります。自分だけは例外であり続けようとするのではなく、弱点も含めて隠さず見せていく勇気を持つ必要があるでしょう。
見栄っ張りな性格を直すための3つの対策
- SNS上の人間関係から一度距離を取る
- 信頼できる相手からアドバイスをもらう
- 小さな成功を重ね自信をつける
SNS上の人間関係から一度距離を取る
『デス・ゾーン』は、2018年に他界した登山家、栗城史多氏の半生を描いたノンフィクション小説です。
単独無酸素登頂に挑戦する姿を生配信してSNSで注目を集めたものの、エベレスト登頂に失敗し、滑落死してしまった青年の半生を描いています。
栗城氏は自身を「元ニート」「元引きこもり」と称していましたが、実際はそのどちらでもありませんでした。
また、過去に幾度も自力での下山が困難になるなど、登山家としての実力が伴っていなかったとも言われています。自身が作り上げた虚像が膨れあがっていき、結果として生命までも失ってしまった、SNSがもたらす悲劇を象徴するような痛ましい出来事でした。
このような悲劇は、決して他人事ではありません。
SNSで「いいね」を多くもらいたいがために高級レストランへ行ったり、豪華な旅行に出かけたりする行動は続ければ続けるほどエスカレートしていき、後に引けなくなってしまいます。
もしSNS上の人間関係が見栄を張り続けなくてはならない原因になっているとしたら、思い切ってSNSと距離を取ってみてはいかがでしょうか。そうすることで静かな日常が戻り、自身の心にゆとりが生まれていくこともあるのです。
信頼できる相手からアドバイスをもらう
見栄っ張りな性格を直したいのであれば、時として耳の痛いアドバイスを聞き入れなくてはならないことがあります。どのような場面で見栄っ張りと感じるのか、その演出がどの程度周囲に「ばれて」しまっているのか——。
こうしたことを本音で相談できる、あなたにとって信頼できる相手を見つけましょう。ごく親しい間柄の人なら、あなたの行動や発言の傾向を熟知していて、見栄っ張りな一面があることも分かっているはずです。
その上で、どうすれば見栄っ張りな性格を改善できるのか、率直にアドバイスをしてもらいましょう。
おそらく、あなたが想像する以上に周囲の人はあなたのことをよく見ていて、自分自身では気づかないような心の動きや考え方の傾向を見抜いているでしょう。
見栄を張れば張るほど本音が見透かされていることが分かり、これからは同じようなことを繰り返したくないと思えるはずです。
見栄を張ること自体が「恥ずかしい」「意味がない」と本心から思えることが、見栄っ張りな性格の改善につながるのです。
小さな成功を重ね自信をつける
見栄っ張りな人ほど、本来の自分とはかけ離れた自己像を築き上げる傾向があります。
目標や理想を高く掲げることは大切ですが、実力や実体が伴わない高邁な理想を抱いてしまうと、理想像に追いついていない自分自身を恥じるようになってしまいます。その結果、人からすぐに見抜かれるような見栄を張ってしまうのです。
自分が目指す理想像と行動を一致させるには、小さくてもいいので成功体験を積み重ねていくことが最も近道です。
努力によって成功した体験の蓄積は、少しずつ本物の自信へと変わっていきます。
人から認められたいという思いには、他人からの視線以上に自分が自分をどう見ているか、評価しているかが深く関わっています。
努力によって達成した成功は根拠のある自信となり、周囲からの評価に左右されない心を持つことができるようになるでしょう。自分に自信が持てるようになることで、必要以上に自分を恥じたり無理に良く見せたりすることなく、自然体で生きやすくなっていくはずです。
まとめ)見栄を張る性格の改善は、言動を冷静に振り返ることから
今回は、見栄を張る性格の直し方について解説してきました。見栄を張るのは一般的には良くないと言われていますが、理想を高く掲げることや、より良い自分でありたいと感じることは決して間違いではありません。問題は、掲げた理想像を実現させるための手段にあります。
金品やステータスに頼ったり、周囲にどう映るかばかりを気にしていたりすると、自分自身の成長には寄与しません。その結果、言動と実体が乖離してしまうのです。
見栄を張る性格を改善するには、まず自分自身が日ごろどのような言動をしているのか、傾向を振り返ることから始めましょう。そして、客観的に考えて「見栄を張っている」「実体が伴っていない」と感じる部分があるようなら、焦らず少しずつでもいいので改善していくように心がけましょう。
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