チャンクアップ・チャンクダウンって具体的にどうやるの?本当に効果ある?
[最終更新日]2023/11/03
「チャンクアップ」、「チャンクダウン」という言葉を耳にしたことは、誰しも一度はあるのではないでしょうか。
主に、部下のマネジメントの際に扱うコーチングはじめ、カウンセリング等で利用されるコミュニケーション手法のひとつとして語られることの多いチャンクアップとチャンクダウンですが、それらのみならず他の多くのビジネスシーンで有効活用していくことが可能です。
そこで今回、「チャンクアップ」と「チャックダウン」の概要と具体的な使用方法について詳しくご紹介していきたいと思います。
「チャンクアップ・チャンクダウンをはじめて知った」という方も、「言葉は知っていたけどあまり利用したことが無かった」という方も、この記事を読めばきっと日々の業務に役立てていくことができるでしょう。
ぜひご覧ください!
Index
目次
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そもそも、チャンクアップ・チャンクダウンってどういうもの?
仕事にはトラブルがつきものです。
大抵のトラブルはすぐに解決するかもしれませんが、ときになかなか解決の糸口が見えず、関わる人たちとああでもないこうでもないと議論を長引かせてしまうこともあるでしょう。
議論が長引く際には、関わる人たちとで同じ問題について語っているはずなのに、「見ているポイントが違う」「論点や視座のずれがある」といったことがよく起こりえます。
例えば、チームの売上向上施策について皆で議論していたつもりが、いつの間にかチーム内の人間関係の話になったり、とある人物の勤怠状況の話になったり──。
チャンクアップ・チャンクダウンは、そんな議論の「迷宮入り」の際に、参加している人たちの視点・視野のピントと目線を合わせていくうえで役立てられる手法です。
この手法は、チーム内の問題解決のみならず、もちろん部下育成でのコミュニケーションであったり、対外的にはクライアントのニーズをつかむ際にも役立てられ、非常に汎用性が高いものです。
ここからは、そんなチャンクアップ・チャンクダウンの詳しい説明と、具体的な使い方について見ていきましょう。
チャンクアップは、いわば「ものごとの真因」「本来の目的」を探求する、WHY(動機付け)の思考
チャンクとは、「まとまったかたまり」を意味します。ここでは問題や課題の「論点」と解釈すると良いかもしれません。
そして、チャンクアップとは「まとまったかたまり(論点)を更に上位の視点から観察する」ことを言います。
よく、「木を見て森を見ず」という言葉がありますよね。これは、まさにチャンクアップされていない状態──目の前のことでいっぱいっぱいになって、視野が狭くなってしまっている状態を説明する言葉です。
チャンクアップは、狭くなってしまった視野をいったん広げていく──つまり、木の周囲にある森の存在を私たちに気づかせてくれるのです。
例をもって説明してみましょう。
たとえば、AさんとBさんとで「チームの売上を向上したい」という課題を話し合っていた際に、チャンクアップでアプローチすると以下のようになります。
- Aさん
-
「ところでさ、なんで僕たちはチームの売上を向上しないといけないんだっけ」※チャンクアップ
- Bさん
-
「そりゃ、上司から言われたからだろ?」
- Aさん
-
「うん、そうだよね。でもなんで?──なんで、僕たちの上司は今、売上向上を重要視しているんだろうね」※チャンクアップ
- Bさん
-
「先月リリースした新商品の売上が、想定していたよりもかなり低かったからじゃないかな」
- Aさん
-
「なるほど。としたら僕たちのチームは、その先月リリースした新商品自体の売上を伸ばすのと、それ以外の既存商品の売上を伸ばすのと、どちらを優先すべきだろう」
- Bさん
-
「そりゃあ、新商品の売り上げを伸ばすべきだよ」
- Aさん
-
「どうしてそう思うんだい?」※チャンクアップ
- Bさん
-
「だって、今回の新商品は、これまでの僕たちの培ったノウハウと、そして想いが込められているからね。この商品が売れなきゃ、僕たちのチームの未来はないと言っても過言ではないくらいだよ」
- Aさん
-
「つまり、僕たちは自分たちのチームの未来を切り開くためにも、新商品を多くのお客様に知ってもらって利用してもらい、そして売り上げを伸ばしていく必要があるってことだね」
- Bさん
-
「そういうこと!だから、僕たちが頑張らないと」
──上記の会話でポイントとなるのが、Aさんが何度か「なぜそうするの?」と質問することによって、Bさんに課題の背景にある要因(より上位概念)に対する気づきと発言を促しています。
この会話が無ければ、もしかしたらAさん達のチームは売り上げを伸ばす施策としてやや時代遅れの既存商品を一生懸命売ろうとしていたかもしれませんし、ふと「自分たちはなんでこんなにあくせく働かないといけないんだ」と我に返って、モチベーションを下げていたかもしれません。
また、Aさんの問いは、「(それをするのは)どうしてだろう?」という、いわゆる「WHY(動機付け)」のにつながる質問をされていることに気付きましたでしょうか。
つまり、「WHY」の問いを建てながら、その課題の背景や真因、更にはその先に描きたい未来を探求していくのが、「チャンクアップ」なのです。
チャンクアップの質問イメージ
チャンクアップをするための質問としては、以下のようなものがあります。
- 「そもそも、その課題は、何のためにあるのでしょうか?(そうしようと思った理由は何ですか?)」
- 「その課題は、全体像のなかでどういう位置づけになるでしょう?」
- 「最終的に、どうなっていることが望ましいでしょうか?」
- 「この問題について、皆さんは今どんな印象を持っていますか?──また、なんでそう思いますか?」
- 「この問題の背景には、何があるでしょうか」
チャンクダウンは、「具体的な取り組み方」「意識から行動に遷移すること」を探求する、HOW(具体的行動)の思考
続いては、「チャンクダウン」について見ていきましょう。
チャンクダウンとは、起こっている問題に対して行動するにあたって、細分化し、具体策に落とし込んでいくことを言います。
チャンクアップとは逆に、「より細部を見据えていく」のがチャンクアップということですね。
チャンクアップを行うことによって、私たちがすべきことは明確になり、実践されやすくなって、問題解決に近づけていくことができるのです。
こちらも、先ほどの「チームの売上向上」について議論していたAさんとBさんのケースで見ていきましょう。
- Aさん
-
「ところで、新商品の売上は、具体的にどうやって上げていけば良いんだろうね。まずは、新商品の販売プロセスを見てみようか」※チャンクダウン
- Bさん
-
「えーっと、まずはプロモーションだよね。うちの会社はだいたいWebプロモーションを行っているから。それから、問い合わせがあった顧客へ電話して、実際に訪問して販売に持っていく──という流れだね」
- Aさん
-
「その流れで見たときに、改善ポイントはどこにあると思う?」
- Bさん
-
「プロモーションだろうね。そもそも、新商品に対する問い合わせが現状ほとんど無いからさ」
- Aさん
-
「なるほど。では、プロモーションをてこ入れするとして、具体的にはどんな対策があるだろう?」※チャンクダウン
- Bさん
-
「まずは、広告を出す媒体を増やしたり、効果の高い媒体に絞っていったり──。それから、広告のクリエイティブ(広告に実際に表示するデザインや文言)の精度を上げるための見直しもしたほうが良いだろうね。あとは、問い合わせフォームをもっとシンプルにして、閲覧者が気軽に問い合わせできるようにするとか…」
- Aさん
-
「いっぱい対策が出てきたね!どれからやろうか?」
上記の様な、チャンクダウンの「物事を細分化して具体的な対策に落とし込む」コミュニケーションは、もしかしたら「すでにやっている」等なじみ深さを感じられた方もいらっしゃることでしょう。
チャンクアップのポイントは、「具体的にはどうするか」、「どうやってやるか」といった、いわゆる「HOW(手法、対策)」の問いから発していくことです。
HOW(手法、対策)を辿っていきながら、行動に移せる段階までやるべきことを具体化していく──ということですね。
ちなみに、「チャンクアップとチャンクダウン、どちらから先に考えるのが適切か」という問いについては、かならずこちらのほうが良いというのはありませんが、基本的にはチャンクアップを先に進めておいた方がスムーズでしょう。
人は誰しも、自身の行動に目的や意義を見出そうとするものです。
チャンクアップを行ってその課題の真因や目的(WHY)を明確にしたうえで、チャンクダウンで具体的な対策(HOW)を定めていく──という流れを意識されると良いでしょう。
チャンクダウンの質問イメージ
チャンクダウンをするための質問としては、以下のようなものがあります。
- 「なにがあれば、その課題が解決しますか?」
- 「その課題を解決するための、具体的なアクションはなんでしょう?」
- 「何が必要で、何を優先して取り組むと良いでしょうか?」
- 「今から進める工程を、より細分化したらどうなるでしょうか?」
- 「問題を解決するための具体策には、どんなものがありますか?」
チャンクアップ・チャンクダウンを実際にやってみる<具体例付き>
仕事のなかでチャンクアップやチャンクダウンが役立ちそうだということは、理解していただけたと思います。
しかし、チャンクアップやチャンクダウンの質問方法を知っていても、それを自分の業務にどう活かしたらよいかがわからない方もいらっしゃることでしょう。
そこで、チャンクアップやチャンクダウンを実践するために、具体例に基づいて進め方を紹介したいと思います。
ぜひ実践してみてください。
「チームの雰囲気を明るくする」ことを、チャンクアップする
実際にチャンクアップ・チャンクダウンを行っていくうえで、今回は「チームの雰囲気を明るくする」というテーマで進めてみたいと思います。
まずはチャンクアップから行って見ましょう。
チャンクアップを行うポイントは、「なぜそれが必要なのか」「その背景には何があるか」(WHY)を明確にすることです。
皆さんの現在のチームを思い浮かべたときに、「チームの雰囲気を明るくする」必要があるとしたら、それは何故でしょうか。
いかがでしょうか。いくつかの要素がチャンクアップして出てきましたでしょうか?
──例えば、チームの雰囲気を明るくすることについて、以下のようにチャンクアップしていけるかもしれません。
チームの雰囲気をもっと明るくしたい理由は、「メンバー同士の関係性を向上させたい」「組織の人間関係が良好になることで、メンバー間で積極的な意見が出しやすくなる」といった想いがあり、そしてそれら想いは、「このチームで結束力を高め、満足できる成果を出したい」という最上位の願いにつながっているのかもしれません。
もしそうだとしたら、皆さんはメンバーに「チームの雰囲気をもっと明るくしませんか?」とだけ伝えるべきでしょうか。
それとも、「チームの結束力を高め、私たち皆が満足できる成果を出していくためにも、もっと普段の業務で雰囲気を明るくしていきませんか?」と伝えるべきでしょうか。
──当然ながら、後者の方がより多くの人から理解と共感を得られるでしょうね。
「チームの雰囲気を明るくする」ことを、チャンクダウンする
続いては、「チームの雰囲気をもっと明るくしたい。」というテーマで今度はチャンクダウンを行っていきましょう。
チャンクダウンの目的は、対象となる問題を細分化し、それぞれの対応策を見つけて実践に繋げやすくすることです。
仮に、あなたの所属するチームの雰囲気をもっと明るくする必要がある(つまり、現在はチームの雰囲気がやや暗い)として、その為にどんな対策、取り組みが考えられそうでしょうか。
ここからは、また例をもって説明していきましょう。
「チームの雰囲気を明るくしていく」ことをチャンクダウンしていき、その具体的対策や手法に目を向けていきます。
例えば「業務中または業務の合間に、チームの会話がもっと増えるようにする」「タスク割り当て、負荷分散を行って、業務の余裕を持たせる」という対策があるかもしれません。
ですが、それら対策は、具体的に行動するにはまだちょっと抽象度が高いですよね。
そこで、「チームの会話を増やす」について更にチャンクダウンを進めていき、「会議の場で自由な発言の時間を設ける」であったり、「席替えをして、会話の弾むメンバーでペアを組ませる」といった具体的な対策を出していくと、行動にも移しやすくなることでしょう。
その他、メンバーの負荷軽減を実現するためには、「業務効率化ツールを取り入れよう」と考え、評判の高い業務効率化ツールをいくつか比較検討していく等、──こうした取り組みを進めることで、対策も「有言実行」で進めやすくなります。
チャンクアップ・チャンクダウンした内容を俯瞰してみる
いかがでしょうか。
こうして課題や要素、対策を可視化して図にまとめると、チームや仲間内で話し合うべきポイントや優先順位も整理されやすくなり、冒頭であったような「見ているポイントが違う」「論点や視座のずれがある」といったことも起こりにくくなることでしょう。
また、問題解決の話し合いを行っている際、議論や思考が全体的に抽象的によりすぎてしまっている時にはチャンクダウンを、細かな出来事の羅列になり論点がずれていると感じた時にはチャンクアップを意識することがおすすめです。
管理職・マネージャーの方がこのチャンクアップとチャンクダウンの両方を使いこなせれば、組織・チーム内での話し合いはより円滑に進めやすくなるはずです。
チャンクアップ・チャンクダウンを実施する効果・メリットは──
ここまで、チャンクアップとチャンクダウンの概要と、その具体例についてお話してきました。
本章では、実際に実務でチャンクアップとチャンクダウンを活用した際に、どのような効果・メリットが期待できるかについてお話していきます。
特に意識しておきたい効果・メリットは以下の5点です。
- 効果・メリット#1 チャンクアップすることで問題解決の目的や意義が明確になる
- 効果・メリット#2 目的や意義を再認識することで行動への動機付けができる
- 効果・メリット#3 チャンクダウンをすることでクライアントや部下の本当の悩みが見えてくる
- 効果・メリット#4 問題解決のために何をすべきかが明確になる
それぞれ、順を追って見ていきましょう。
効果・メリット#1 チャンクアップすることでその問題の目的や意義を他者と共有されやすくなる
管理職・マネージャーの方が解決したい問題の多くは、「他者」が絡んでいるものでしょう。
そのため、問題を解決するためには自分1人ががんばるのではなく、周囲の人を巻き込む必要があることが殆どです。
そう考えると、関わる人と共通認識を持たなければなりません。
クライアントや部署のメンバーと、目の前にある問題をチャンクアップして一緒に考えることで、それを解決する目的や意義が共有されやすくなることでしょう。
効果・メリット#2 目的や意義を明確にすることで、チームの士気を向上できる
組織で働いていると、成果を上げるあるいは業務の効率化を図るため、解決すべき問題に直面するものです。
そんな時、問題を解決すべきことはわかっていても、関わる人が同じ気持ちで取り組むとは限りません。
しかし、関係者間でチャンクアップを行うことで問題を解決する目的や意義が明確になり、それを共通認識にできれば実践するためのモチベーション(動機付け)にも繋がります。
関わる人たちとで目的・意義を明確にし、士気を向上していくことは、チーム運営を進めていくうえで、とても重要な要素です。
効果・メリット#3 チャンクダウンすることでクライアントや部下の本当の悩みが見えてくる
問題を解決するためには、その原因を明らかにする必要があります。
しかし組織に起こる問題は、原因が複数あり、絡み合っていることが多いです。
そして、関係者の人数が多くなればなるほど、それぞれが抱える悩みが異なります。
チャンクダウンを行うと、起こっている問題の原因の一つひとつを言語化・可視化することができます。
また、話をする過程でそれまで管理職が気づいていなかった、クライアントや部下が持つ本当の悩みを知る機会にもできるのです。
本当の悩みを知り、それを解決する方法を一緒に考えることは、信頼関係の構築にもつながります。
効果・メリット#4 問題解決のために何をすべきかが明確になる
組織運営においては、チャンクダウンを活用する場面は多いでしょう。
例えば、「営業成績アップ」「業務の効率化」など、メンバー全体で共有するにはやや抽象度の高い内容が課題として挙げられることが多いからです。
課題の抽象度が高いままですと、メンバーによっては「今一つイメージが持てない」「自分にはあまり関係が無い」と思ってそのままにしてしまう人もいるかもしれません。
しかし問題の解決方法について、チャンクダウンで具体として落とし込み、関わる人全員が何をすべきかが明確になれば、当然ながら行動はされやすくなります。
組織やチームでの運営で、最も大切なことは「なにをすべきか」を明確にすることです。
その際に、チャンクダウンが大いに役立てられるということですね。
チャックアップとチャンクダウンは、実践していいくうちに自然と身に付いてくる!
今回は、「チャンクアップ」と「チャックダウン」の概要と、実際の活用事例、そして効果・メリットについてご紹介しました。
この記事をまとめると
- チャックアップは、「ものごとの真因」「本来の目的」を探求する、WHY(動機付け)の思考
- チャンクダウンは、「具体的な対策」、「実際の取り組み方」を見出す、HOW(具体的行動)の思考
- チャンクアップ・チャンクダウンを実施し関わる人と共有することで、「共通見解」「モチベーション」の向上が期待できる
の3つが挙げられます。
特に3点目の「関わる人との共通見解の育み」は、組織・チーム運営において絶対的に重要なものとなります。その育みの形成は一朝一夕で成り立つものではありませんが、その際にチャンクアップ・チャンクダウンはとても有効なツールとなって、皆様の業務の一助となりえることでしょう。
本記事の内容が、皆様の日々の業務活動やコミュニケーションにおいて、少しでもお役立てできますことを心より願っております。
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