モチベーションは本当に必要? 「上がらない・維持できない」からの脱却法

[最終更新日]2023/11/06

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最近モチベーションが上がらない……
モチベーションがなかなか維持できない

こんなセリフを口にしたことはないでしょうか。

一般的には、モチベーションが高い状態は仕事の質が高まりやすく、成果にもつながるといったイメージが持たれています。逆も真なりとすると「成果につながる質の高い仕事をするには、モチベーションを上げればよい」ということになります。

しかし、そもそも仕事をする上でモチベーションは必須のものなのでしょうか。モチベーションとの付き合い方について考えてみましょう。

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モチベーションってそもそも何?

モチベーションとうまく付き合っていくには、まず「モチベーションとは何か」から知る必要がありそうです。

このモチベーションという言葉は、ビジネスの世界で近年かなり多用されるようになり、一種のバズワードのようになっています。モチベーションの意味を取り違えたまま過ごしていると、もしかしたらモチベーションに当たらないものまで高めようと躍起になっているのかもしれません。

まずは「モチベーションとは何か」「モチベーションを上げるとはどういうことなのか」から明確にしていきます。

モチベーションとは何なのか?

モチベーションとは「何かするときの動機づけ・目的意識」を意味する言葉です。この定義を改めて考えてみると、「何かするときの」という前提付きになっていることが分かります。

つまり、モチベーションが湧くとき、すでに「何かをしよう」と決めている、あるいはすでに行動を始めている状態のはずなのです。順序としては、何かをしようと決める→動機づけ・目的意識が定まる→モチベーションが上がる、となるのが本来なのです。

では、「最近どうもモチベーションが上がらない」と言うとき、この順序はどうなっているでしょうか。まず「モチベーションを上げる」が先立ち、「モチベーションが上がったから何かしようと思えた」ということになります。実はこの時点で、すでにモチベーションの定義から外れているのです。

モチベーションが高いから行動する気になった、と感じるのであれば、それはモチベーションではなく、仕事に対する「テンション」や「やる気」に近いものでしょう。このように、モチベーションは本来自然と湧き上がってきてしかるべきもののはずですが、モチベーション以外のものへと読み変えられ、拡大解釈されがちなのです。

モチベーションは上げることができない!?

最近モチベーションが下がり気味だ。モチベーションを上げて頑張らないと!」といった言い回しを耳にしたとき、違和感を覚えるでしょうか?とくに違和感がないという人は、もしかしたらモチベーションの意味を履き違えているかもしれません。

前項で触れた通り、モチベーションとは「動機づけ・目的意識」のことです。目的意識だけを無理矢理奮い立たせようとしても、多くの場合空回りしてしまったり、行動が伴わなかったりする結果に終わってしまいがちです。仕事以外の例で考えると分かりやすいかもしれません。

  • 今より痩せたいと思っているものの、具体的に何か行動しているわけではない。
  • 英会話をマスターしようと思い参考書を買ったものの、本棚にしまったまま。

どちらも第三者から見たとき「本気でやろうとしていない」と映るはずです。つまり、目的意識が「あるようでない」「形だけの動機になっている」わけです。

むしろ、「まずは1日2キロのランニングから始めよう」「通勤時間の中で10分間は必ず参考書を開こう」といった行動レベルで習慣化したほうが、効果は表れやすいでしょう。モチベーション「だけ」が単独で上がることはなく、無理矢理上げたとしてもあまり意味がないのです。

必要なのはモチベーションではなく“〇〇”?モチベーションを上げる前に大切な事

モチベーションは無理矢理上げればいいものではない、と述べてきました。モチベーションを取って付けたように「上げる」ことはできそうにありません。

もしかしたら、私たちはしばしばモチベーションを別のものと取り違えているのかもしれません。取り違えているものの正体が分かれば、よく言われている「モチベーションが上がる」という状態に自分を持っていく術を見つけやすくなるかもしれません。モチベーションと取り違えやすい3つの要素について見ていきましょう。

すぐ仕事に取り掛かるために必要なのは、モチベーションではなく「テンション」

モチベーション(=目的意識)さえあれば、すぐにやるべき仕事に取り掛かるはずだ、と思うかもしれませんが、実際はそうでもないことは前に述べた「ダイエット」や「英会話」の例の通りです。しかし、「モチベーションが上がらない」と表現されるケースの多くが、「やるべきことに取り掛かれていない」「行動に移せていない」ことを言い表しているのではないでしょうか

目の前のやるべきことに、とにかく着手してしまう。そのために必要なのはモチベーションではなく「テンション」です。「いずれ痩せよう」と思っている人よりも、「とにかく今日、ジムの会員になって、毎週火曜と金曜は通うことにしよう」と目の前のことを決めてしまう人のほうが効果を早く実感できる確率が高いはずです。

人はテンションが高いとき、こうした迅速な行動を取りやすくなります。ただし、テンションは一時的に高めることは工夫しだいでできるのですが、長続きしないのが特徴です。いわゆる「三日坊主」になりやすいのはそのためです。

やる気がでないのは「モチベーションがないから」ではない

モチベーションが上がらないと表現される状態の多くが「やる気が起きない」と同義なのかもしれません。モチベーションが低いからやる気が起きない、と考えられているケースが少なくありませんが、実はモチベーションとやる気は関係ありません。

身の覚えのある人がいるかもしれませんが、「とりあえず始めてみたら、スケジュールが予想よりタイトだと分かってやる気にならざるを得なかった」「やっているうちにコツがつかめてきて、完成形をイメージしやすくなった」といった経験をすることがあります。このように「やる気」は「作業した結果」から得られるものです。

何もしない状態でやる気だけを捻り出すのは容易ではなく、まして、湧いて出てきたように無理矢理作り上げたモチベーションを根拠にやる気を奮い立たせるのは無理があります。

やる気が起きないのは何もしていないからであり、モチベーションが原因ではありません。ここを間違えてしまうと、「まずモチベーションを上げなければ」といったように誤った対策に注力することになります。それよりも、まずは目の前のタスクに着手してしまうことを考えたほうが「やる気」につながる可能性が高いのです。

効果を出すために必要なのは、モチベーションではなく「プロ意識」?

前述の「やる気は着手することで湧く」を深掘りしていくと、「できるだけ早く着手しなくてはいけないという意識のほうが重要」ということになります。モチベーションが高い・低いではなく、まして「モチベーションが上がったら始める」などといった本末転倒な考えではなく、目の前のやるべきことを確実にこなすという「プロ意識」を持つことのほうが成果に結びつきやすいのではないでしょうか。

プロ意識を高めることで、次のメリットが得られます。

  • 仕事に着手するまでの時間を最短にできる
  • 仮説と検証をくり返すPDCAが高速化する
  • 体調や気分に左右されず仕事を安定的に進められる

モチベーションは取って付けたようなものでは意味がありません。どうすれば目の前の仕事の質をより高められるかを考え抜き、工夫を加えて改善を続けるプロセスを楽しむことで、持続的なモチベーションが育っていきます。モチベーションはそのものを「上げる」ものではなく、「上がっていく」ものなのです。

効果的に「モチベーション」を活用するためのポイント4つ

ここまで、モチベーションは意図して上げられるものではないことについて見てきました。自分でコントロールするのが難しいのであれば、モチベーションが上がった・下がったといったことに振り回されず、うまく付き合っていく方法を見つけたほうが効果を得やすいはずです。

そこで、モチベーションと上手く付き合いつつ活用していくための方法について、4つのポイントに絞ってまとめてみました。日々の仕事の中で即実践できるものばかりですので、取り入れられそうなものからぜひ実戦してみてください。

ポイント1)とりあえずやってみる

モチベーションが上がらないと思っていた状態は、実は「やる気」が起きる状態に自分を持っていくことができていない状態だったりすることが少なくありません。前述の通り、やる気を起こして物事を始めるのではなく、まず着手してみることで後からやる気が付いてくるものなのです。

そこで、何となくやる気が起きないときこそ強制的に目の前の仕事に着手してみることをおすすめします。やるべきことをTo Doリストに挙げておき、とにかく何か1つでもいいので始めてみましょう。どんな単純なルーティンであっても、「より効率よく進めるにはどうしたらいいだろう」「もっと良いやり方はないだろうか」と自問することで徐々に集中した状態に自分を持っていくことができるようになります。

このとき、「この仕事にどんな意味があるのだろう」といった抽象度の高い考えはあえて度外視しておくのがコツです。とにかく目の前の仕事に着手することが目的ですので、仕事の意味合いや効果について先回りして考えてしまうと、「やらない理由」を挙げて結局何もしない原因になりやすいからです。

ポイント2)テンションは上がり下がりするものだと認識する

「日によってモチベーションが上がったり下がったりする」という場合、おそらくモチベーションとテンションを混同しています。その日の心身のコンディションにテンションが左右されるのは誰にでもあることです。気分が落ち込んでいるときや体調が優れないときは、どうしてもテンションが上がらないものです。

こうした状態のとき、無理にテンションを上げようとすると空回りすることが多いので注意が必要です。テンションが上がらない日があって当然と考え、体調を整えたり気分転換を図ったりしたほうが、結果的にテンションを高めることにつながりやすいのです。

生真面目な人ほど、「今日はモチベーション(=テンション)が上がらない。自分は仕事への意欲が足りないのではないか」などと気に病んでしまいがちです。偶然にもテンションが上がり予想以上の成果を出せた経験がある場合は、テンションが高い状態の自分を基準にせず、「うまくいく日もあれば、そうでない日もある」ことを念頭に置いて仕事に取り組むことが大切です。

ポイント3)「モチベーションを上げる」ことを目的としない

ビジネスセミナーや講演会などに参加したことがある人は、セミナーを聞いた直後はモチベーションが上がった気がしたものの、数日経つとすっかり元の状態に戻ってしまっていた、といった経験をしたことがないでしょうか。モチベーションを高めることを目的としてセミナーに参加した場合、「せっかくセミナーに参加したのに・・・」と自己嫌悪に陥ってしまうかもしれません。

しかし、モチベーションは意図して上げられるものではありません。そのため、モチベーションを上げる目的で時間や労力、あるいはお金を費やしても、十分な効果が得られない可能性が高いのです。むしろ、モチベーションを上げるという名目で時間・労力・お金を費やすぐらいなら、そのリソースを目の前の作業を進めることに充てたほうが、結果的に物事がスムーズに進むことが多いのではないでしょうか。

モチベーションを上げること自体が目的化してしまわないよう、「モチベーションは上げられない」「モチベーションそのものは不要」と割り切っておいたほうがいいかもしれません。

ポイント4)習慣化することで、モチベーションに頼りすぎず効果が出せる

たとえば、ある資格を取得するために勉強する場合のことを考えてみましょう。「絶対に取得する」という目標を掲げた瞬間はモチベーションが高まった気がするのですが、いざ勉強を始めてみると続かない、という経験をしたことはないでしょうか。

どのような大きな目標を達成する場合であっても、そこに至るまでのプロセスは至って地道なものです。短期間で劇的に何かが好転することはめったになく、たいていは少しずつ積み重ねていったものが期間を経て結実するのです。目覚ましい成果をあげた人や成功者のサクセスストーリーは華々しいものとして映りますが、成功に至るまでにやってきたことは、蓋を開けてみれば地道な努力の積み重ねでしかなかない場合がほとんどです。

資格試験の勉強であれば、「毎日30分間」「週に1日は休み」と決めておき、淡々とその計画通りに進めていくことで、分厚い問題集をやり切るなど具体的な成果へと結び付きやすいものです。このように、小さなことでもいいので習慣化していくことで、モチベーションという漠然とした概念に振り回されず目標達成へと一歩一歩着実に進んでいくことができるのです。

【体験談】情報収集を強制的に習慣化して成功した事例

情報収集が苦手な部下をどうするか?という課題

「通勤の1時間、何してるの?」「……まぁ、大体寝てますね」

Web制作会社でマネージャーを務めるTさんは、5人の部下の情報感度について悩んでいました。実作業に直接関わる情報は敏感にキャッチするものの、顧客の要望を理解する上で欠かせない業界情報など、広範な情報を収集するアンテナの高さが5人とも不足していると感じていたのです。

あるとき、部下の1人に1日の過ごし方について聞いたことがあります。

「通勤に1時間ほどかかるそうだけど、その間は何をしているの?」

「通勤電車の中ですか?だいたい居眠りしていますね」

「本を読んだりメディアをチェックしたりしないの?」

「やらなくちゃと思っているのですが、見ているうちに眠くなってしまうんです」

聞けば、毎日見るのは芸能ニュースぐらいで、帰宅してからはひたすらスマホゲームをプレイしているとか。このままでは業界関連のニュースに対するアンテナが高くなることはなさそうです。

「一体何の意味があるのか」などと考えず、着実に実行する

そこで、Tさんは始業後15分間を「ネットサーフィンの時間」に充てました。メディアの情報に限らず、世の中で閲覧されているWebサイトのデザインやトレンドを15分間ひたすらチェックする時間としたのです。

「それって仕事をサボっているのと同じでは?」

「意味あるんでしょうかね・・・」

「さっさと仕事を始めたほうがよくないですか?」

Tさんの方針を訝る声もあがりましたが、とにかく半年間はその習慣を続けることにしたのです。

半月も経つと、部下に変化が表れはじめました。以前に見たことがあるWebサイトのデザインが変更されたことに気づいたり、「このデザインはどうかと思う」「自分は割と好きだけど」といった議論が生まれたりと、各々が得た情報をもとに考えるようになったのです。

情報収集を強制的に習慣化したことで、部署全体の情報感度を高めることにつながった事例と言えるでしょう。

モチベーションという「美談」を警戒しよう

あの人はモチベーションが高い
最近、どうもモチベーションが上がらない

こうした言い回しは、どことなくもっともらしい響きを持っています。そのため、モチベーションは「上げなくてはいけないもの」「ないと仕事が進まないもの」と考えがちです。

しかし、モチベーションそのものを意図的に上げて継続させるのは思いのほか困難なことですし、ましてモチベーションがないと仕事ができないというのは思い込みに過ぎません。

モチベーションという言葉に振り回されて肝心なやるべき仕事が進まない、などという事態を避けるためにも、モチベーションという「美談」を警戒することも必要なのかもしれません。

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