「管理職をやるのがつらい…」と思ったときに考えたい4つの解決策
[最終更新日]2023/11/06
2017年5月、キャリアインデックスが「有識者に向けた仕事に関する調査」を実施しました。
その設問の中で「管理職になりたくない」と考える若手世代が20代男性で51.9%、20代女性で83.1%、30代男性で48.7%、30代女性で84.2%もいることがわかっています。
とはいえ、会社はキャリアや実績に応じて中間管理職に抜擢される可能性は高く、昇進してから「辛い」と感じる人も少なくありません。
そこで今回は、管理職やマネージャーに抜擢されて辛いと思う理由やそれを乗り越える方法について、お話しします。
Index
目次
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「管理職・マネージャーが辛い」と思う理由とは
管理職の仕事は、年々増加傾向にある
かつての日本では、昇進して管理職になり昇給することがサラリーマンとして当然のことという風潮がありました。
ですが現代では、「責任が重くなる」「ストレスが増加する」などの理由で、管理職を志向しない若者が増えています。
その背景には、マネジメント環境が大きく変化したことがあげられます。
2016年3月に産業能率大学が行った「第3回上場企業の課長に関する実態調査」によると、マネジメントの現場を3年前と比較すると、大きく変化したと感じている管理職が多いことがわかりました。
変化した中で一番多かった回答が「業務量が増加」です。
次に多かったのが「成果に対するプレッシャーが強まっている」ことでした。
これは、プレイングマネージャーが増えていることも関係していそうです。
次いで「コンプライアンスのための制約が厳しくなっている」ことがあげられており、セクハラやパワハラ、マタハラなどを訴える社員が増えていることも影響していることでしょう。
合わせて、外国人社員や非正規社員が増加していることや、育児や介護など様々な理由で労働時間や場所に制約がある社員が増えることでの職場環境の変化も見逃せません。
そうした職場環境が通常に勤務をしている社員の業務負担につながり、メンタルの不調を訴える社員の増加に関係していることも、理由の一つといえるでしょう。
かつての管理職は業績を上げるために部下の管理をすることが最優先でしたが、そうしたマネジメント方法では組織運営が成り立たない現実があるのです。
参考:あなたが管理する職場の状況は、3年前と比べてどのように変化していますか?(複数回答)
組織からは常に成果を求められ、それに伴い業務量も増えていってしまっている
では、なぜ管理職やマネージャーという役割を担うのが辛いと感じるのでしょうか。
その理由は、管理職やマネージャーにはさまざまな責任が生まれるからです。
まず、管理職は自分の担当部署が正しく業務内容を理解し業績をあげる責任を負い、会社には常に結果を出すことが求められます。
個人としてのパフォーマンスではなく、チーム運営を行う必要があるのはもちろん、結果を出すために部下を管理するのではなく成長を促しながら、業務改善の余地がないかどうかを模索し、組織のモチベーションアップや維持にも配慮しなければなりません。
業務改善には時間がかかり、一時的に業績が停滞することもありますが、会社の幹部は目先の業績を重視するため、管理職やマネージャーが叱責されるケースも少なくないようです。
そのため、管理職やマネージャーが精神的に追い詰められやすいのです。
また、上司と部下の板挟みになることが増えるにも関わらず、自分が相談する相手は少なくなるというジレンマがあります。
上司が求めることと部下の要望が真逆なことも多く、どちらの言い分にも一理あると思い、すべてを一人で抱え込んでしまう中間管理職やマネージャーもたくさんいるようです。
一般社員であれば、上司や先輩に相談しながら仕事を進めていけますが、管理職やマネージャーが悩んだり迷ったりした時に、上司や同じ立場の同僚に相談を持ち掛けることで、自分の評価が下がるというリスクを抱えるケースがあるのも事実です。
また、プレイングマネージャーの場合は、チームだけでなく個人としても結果を出すことが求められます。
プレーヤーとしての実績とマネジメント業務を両立することは、それほど簡単なことではありません。
そのため、一人で悩むことが多くなってしまうのです。
こうした状況に陥りやすいことも、管理職やマネージャーが辛いと感じる原因といえるでしょう。
管理職になると、同じ境遇の人が減って孤独感を感じることも多い
管理職やマネージャーは、組織の中で孤立しがちです。
その背景には、会社の幹部に業績を上げることだけでなく、煩雑な仕事を任されやすいポジションであることがあげられます。
会社が管理職やマネージャーの責任下にある部下や組織の状況を考慮することなく、結果だけを重視するケースも多々あります。
一方で部下が会社が求めている業務内容や役割を理解せず、個人の業績にだけ注力してしまい、チーム全体の輪が乱れ成果があがらないこともあるでしょう。
さらに個人の業績が高く、若くして管理職やマネージャーに抜擢されると、年上の部下に軽んじられ、チーム運営に支障をきたすこともあります。
年齢に関係なく、管理職やマネージャーとして部下をコントロールすることを求められますが、それを行うためにはマネジメントスキルが不可欠です。
マネジメントと一口にいっても、「職場の課題形成と目標設定」「現場での品質・コスト・時間・安全などさまざまな問題解決と改善」というパフォーマンス面と、「組織の活性化」「メンバーの個人目標の達成支援と育成」という組織あるいは人づくりの両面を担う必要があります。
こうしたマネジメントスキルは勉強して得られるものではなく、個人での能力が高い人は部下に仕事を振り分けることが苦手で、仕事を抱え込む傾向が強いことで孤独感を深めていく傾向があるようです。
さらに管理職やマネージャーとして任されたプロジェクトなどが難航した場合、責任感のある人ほどその結果と自分の仕事ぶりを同一視し、自らを否定されたような気持ちになり、上司や部下に話ができなくなるケースも見られます。
そこに上司からの叱責や部下のマネジメント、業務不振などが重なることで、辛さが倍増してしまうのです。
その結果、職場に相談相手がいないと感じ、孤独感を深めてしまいがちです。
管理職を続けるのが辛い…と思ったときに、取り組みたい4つの対策
管理職やマネージャーになったからには、会社から求められる職責を担わなければなりません。
とはいえ業務範囲も広がりますし、これまでとは違うスキルを求められることも多く、仕事を続けていく辛さを感じる管理職やマネージャーが多いのも事実です。
もし、あなたが管理職やマネージャーを続けるのが辛いと感じた時には、まず対策を講じるのが大切です。
そこで、取り組んでほしい4つの対策をご紹介しておきたいと思います。
「信頼できる優秀な部下」を見出して、育てていくこと
管理職やマネージャーは、リーダーとなって部署に与えられた職責を果たす責任を負います。
それは、自分一人が努力することで達成することはできません。
そのため、業績をあげられる組織運営が不可欠です。
それを実現するために重要なのは、自分の右腕になってくれる信頼できる部下を見出し、育てることでしょう。
会社に求められる目標と果たすべきミッションについてきちんと理解し、それを達成するために何をすべきかを自ら考え行動し、わからない時には指示を仰げるのが、腹心の部下の理想です。
最初からすべてを兼ね備えている人材は少なくても、仕事に真摯に取り組む部下であれば、経験や対話を通して成長を促すことはできます。
そのためには、業務を行う際に口をはさみすぎず、まず自分で考えさせるというプロセスが必要です。
論理的思考力がなければ、先を見越して行動したり、自分で判断することができないからです。
ただし、管理職やマネージャー側は、部下の失敗を自分でフォローし、それを成長につなげるという覚悟を持たなければなりません。
それが、部下との間の信頼関係を築くことにつながっていくのです。
自分を成長させる機会を意識して増やす
管理職やマネージャーに抜擢される一般的な理由は、個人の業績が評価されたことです。
ですが、個人として成果をあげることと、組織の結果を出すことでは求められるスキルが異なります。
また、大手企業であれば管理職やマネージャー向けの研修会などが行われますが、中小企業の場合、マネジメントを学ぶ機会がないまま組織運営を任されるケースも少なくありません。
そんな時には、自分に欠けているスキルを自分で伸ばす機会を意識して増やすことが大切です。
リーダーとして自分に必要なスキルは何かを理解して学ぶとともに、仕事につながる人脈を広げることも重要なポイントになります。
昇進によって変化する仕事環境に対応するためには、それまでの仕事に対する姿勢や考え方を見直すことが必要になるケースもあります。
そのため、プライベートで勉強会や異業種交流会に参加し、自分とは違う価値観やスキルを学んだり、さまざまな経歴の人と交流することで視野を広げ、自分の成長を促すのもおすすめです。
仕事の評価と人格は別だと割り切る
それまで個人成績がよく、会社に評価されていると実感できていた人ほど、管理職やマネージャーになってチームの目標が達成できないことを叱責されるのが辛いと感じる傾向にあるようです。
管理職やマネージャーになれば、会社の幹部に直接しかも厳しく叱責される機会が増えますし、それを避けるのは難しいものです。
また、幹部から与えられたミッションを部下に伝えたことで、猛反発をくらうケースもあります。
近年は職場や組織の専門職化が進んでいますが、管理職やマネージャーが任された部署の業務に精通しているとは限らないからです。
上司には叱責され部下には反発される状況は、職場での孤独感を深めますし、業績が伴わなければ自分を責めたくなる気持ちは理解できます。
責任感が強い人ほど、自分の仕事を批判されると人格否定されたように感じる傾向が強まりますが、それを同一視してはいけません。
仕事と人格の評価は、イコールではないのです。
上司や部下、同僚は、仕事をするうえで発生した人間関係であり、それが生涯同じ形で続くわけではありません。
仕事の評価は他人が行うことで、自分の考えと違って当然なのです。
仕事で批判を受けても、それがあなたの人間性を損ねることにはつながらないと割り切りましょう。
プライベートを充実させる
仕事と人格の評価が別だと割り切るためには、プライベートが充実していることも大事なポイントです。
帰宅後や休日に仕事上の悩みを引きずっていると、疲れをとることができません。
また、プライベートが充実していないと、人生をつまらないと感じてしまいます。
スポーツや映画鑑賞、読書、写真撮影、プラモデルの制作など、どんなものでも構わないので、趣味を持つことをおすすめします。
好きなことに没頭できる時間があれば、イヤなことを忘れられます。
そして、休日こそきちんと日光を浴びるのもおすすめです。
生活リズムを整えるうえでも、脳を活性化させる意味でも、日光を浴びるのが有効だからです。
ジョギングをするのは面倒でも、散歩や買い物のついでにウォーキングをするだけでリフレッシュ効果が高く、身体が疲れれば眠りに入るのもスムーズになります。
常に仕事について考えるのではなく、オンオフを切り替えて、自分が楽しめる時間を持つよう意識して過ごしましょう。
それでも「管理職が辛くてもう無理」という場合は
自分なりに管理職やマネージャーを続けるために対策を立て、実践してみたものの、どうしても辛くて無理だと感じてしまう人がいるのも事実です。
その状況でがんばり続けようとして、体調を崩したり、うつ病を発症してしまうケースも少なくありません。
そこで、心身の健康を損なうほど管理職やマネージャーでいるのが辛いと感じている場合の対処法も、ご紹介しておきたいと思います。
一度身近な人、またはカウンセラーに相談を
管理職やマネージャーを続けていくのが無理だと思うほど悩んでいるなら、本音を話せる相談相手を見つけることから始めてみましょう。
会社の上司やライバルにもなり得る同僚だと、悩んでいるあなた個人より会社の利益や組織上の立場を優先される可能性もあるので、一概に相談相手としてベストとは言えません。
勉強会や異業種交流会でメンターを探したり、個人に話すのがリスキーだと感じるならカウンセリングを受けるのも方法の一つです。
商業カウンセラーであれば守秘義務を負うので、会社の実情を話しても、それが外部に漏れる心配はありません。
職場環境や人間関係を改善することには直結しなくても、あなたが気持ちを吐き出せる場を持つことで、心理的に追い詰められにくくなるというメリットがあります。
管理職やマネージャーは組織内で孤独感を味わいやすいので、気持ちの逃げ場は不可欠です。
心身ともにダウンしてしまう前に、相談相手を探してみましょう。
辛い理由が、「変えられる問題」なのか「変えられない問題」なのかを整理する
管理職やマネージャーの仕事が辛いと感じる際、必ず理由があります。
その理由も「上司と部下の板挟みで精神的に疲弊する」「部下とそりが合わない」「業務が多すぎてこなしきれない」「仕事へのプレッシャーが大きくなった」など、人によってさまざまです。
そこで、自分が管理職やマネージャーとして仕事を続けることが辛い理由が、変えられる問題なのかそうでないのかを、まず整理することから始めてみましょう。
上司と部下の板挟みになることや部下とそりが合わない、仕事へのプレッシャーが大きくなる状況は、変えられない問題かもしれません。
しかし、相互理解をするためにコミュニケーションをはかったり、目標達成するために小さなミッションを段階的にクリアできるすることを意識するなど、自分の働きかけによって変化を生むのは不可能なことではないのです。
また、業務が多すぎてこなしきれない理由も、新しく増えた仕事内容を覚えたり、何でも自分でするのではなく部下に振り分けてしまうことで解決できるものもあります。
自分の状況を客観視して、それを解決する手段を見つけることも、管理職やマネージャーとして必要なスキルなのです。
「会社辞めよう」や「転職しよう」は最後の手段
管理職やマネージャーに昇進すると、それまで以上に会社から結果を出すことを求められます。
自分なりに努力したつもりでも成果をあげられず、叱責を受けることで自信をなくす人もたくさんいます。
孤独感を味わいやすい管理職やマネージャーが1人で悩んだ結果、退職や転職を選択するケースもあるでしょう。
ですが、管理職やマネージャーを辞めるために退職や転職をするのはおすすめできません。
退職することで一時的に管理職やマネージャーを辞めることができても、キャリアやスキルのある人材は転職先で再び昇進する可能性が高いからです。
とはいえ、心身に変調をきたした状態で、職責を果たすのは難しいものです。
そんな時にはまず勤務先に、降格を申し出てみるのも一つの方法です。
ただし、減給やその後の昇進に悪影響を及ぼす可能性が高くなるという、リスクは覚悟しておきましょう。
私の体験談:管理職が辛い…と思った時とその後
管理職としての私の環境は
私が広告代理店の制作部のマネージャーに抜擢された時には、ディレクター兼ライターである私にも、部下となったグラフィックデザイナーやCMや動画制作を行う映像ディレクターにも利益目標の数字が設定されていました。
この利益目標は原価率計算ではなく、自分が営業して、あるいは営業マンが受注した仕事の制作費から経費を引き、会社が定めた係数をかけて計算するルールになっており、その達成率が査定で最重視されていたのです。
もともとクライアントをもって転職した私は、目標の達成率が高いことからマネージャーに抜擢されましたが、通常の広告代理店の制作メンバーは自ら営業をすることはありません。
当然、部下たちの目標達成率は低く、業務をこなすために採用したパートの人件費も経費として制作費から引かれていたため、モチベーション高く仕事をするのが難しい状況でした。
率先垂範を念頭に置きチームで数字をあげる方法を考える
私はプレイングマネージャーだったので、個人数字と課の目標を同時に達成することを求められました。
そこで、自分が提案しやすいクライアントの仕事から、自分の部下の数字につながる企画を意識して提案することから始めたのです。
自分が受注した仕事で部下に数字を回しつつ、そうした提案を増やすために営業マンへの根回しを始めました。
コンペに積極的に参加するようにして、新規のクライアントの開拓にも力を注いだのも工夫の一つです。
そうして自分の個人目標は達成しつつ、部下とのミーティングを重ね、企画書作成やプレゼンテーションの役割分担をして、チームで協働するという雰囲気づくりを心掛けたのです。
そのうえで仕事を任せっぱなしにしない、よほどのことがない限り部下より早く出社して最後に帰り、自分が真摯に努力していると認めてもらえるよう努力しました。
とはいえ、経営陣には目標数字が達成しないことや、部下の勤務態度について叱責されることが多く、部下からは会社の経営方針に納得いかない不満が噴出し、その中で成果をあげる方法を考え実践する中で少しずつ疲弊していきました。
その後、どうなったか。
部下と向き合って協働する機会は増えましたが、残念ながら全員が個人目標を達成することはできませんでした。
ですが、査定の際に数字以外にがんばってくれたことを明記し、経営陣や人事担当に伝える努力は惜しまなかったつもりです。
それが会社に認められず、昇給を見送られるばかりか、賞与がカットされる部下もいましたが、勤務先では日常茶飯事だったので、私個人に不満が向かうことはありませんでした。
とはいっても部下に対しては責任を感じており、自分のマネジメントに問題があるのではないかと考え、勉強会や異業種交流会に参加して、コーチングを学んだこともあります。
相手を変えるのではなく、自分を変えることを意識することで、自分がモチベーションダウンしないよう心掛けました。
その後、会社の方針についていけなくなった私も当時の部下も転職を選びましたが、今でも外部ブレーンとして仕事でつながりを持てる信頼関係は築けたので、よい経験だったと思っています。
まとめ できることから取り組んでみましょう!
今回は、管理職やマネージャーに抜擢されて辛いと思う理由やそれを乗り越える4つの取り組みについて、お話ししました。
管理職やマネージャーを続けるのは辛いと考える人も多いでしょうが、
- 信頼できる部下を育てる
- 自分を成長させる機会を増やし考える幅を広げる
- 仕事と自分の評価を混同しない
- オンとオフが明確になるようプライベートを充実させる
など、対処するために取り組める方法があります。
自分の見方や考え方を変えることで退職や転職を回避できるので、この記事から自分にできる取り組みを見つける参考になれば幸いです。
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