ITパスポートは取得しておくべき?取得するメリットとは?
[最終更新日]2019/11/14
ITパスポートはIT関連資格の中でも受験者が多く、非IT系業種のビジネスパーソンからも人気の高い資格の1つです。「何かIT系の資格を取得しておきたい」と考えたことのある人なら、一度は耳にしたことのある資格ではないでしょうか。
人気資格として知られる一方で、「IT系資格としては専門性が高くない」「取得しても実務で役立つかどうか・・・」といった声も聞かれます。
この記事ではITパスポートについて、実際の試験内容や難易度、取得するメリット、取得しておいたほうがいいのはどのような人なのか、といった点についてまとめています。
これからITパスポートの取得を検討している人や、ITパスポートに興味がある人はぜひ参考にしてください。
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Index
目次
ITパスポートとは?概要・試験内容・難易度をチェック
ITパスポートは人気のある資格のため、毎年多くの人が関心を寄せ、受験を検討しています。
そのため、試験内容や難易度についてさまざまな憶測を含めたウワサが飛び交いやすく、誤解を招きやすい部分も少なくありません。
しかし、不正確な情報に基づいて受験する・しないを決めてしまったり、「合格率が高いようだから」などと準備が不十分なまま受験当日を迎えてしまったりするのは良くありません。
まずはITパスポートがどのような資格なのか、正確に理解してくことからスタートしましょう。
ITパスポートは情報処理系では受験者数がトップクラスの国家試験
IT・情報処理系の資格は種類が多く、受験者数も資格によって大きく異なります。主なIT系資格の種類と2018年度の年間の受験者数は次のようになっています。
資格 | 略号・通称 | 受験者数 |
---|---|---|
基本情報技術者 | FE | 155,928人 |
ITパスポート | iパス | 107,172人 |
応用情報技術者 | AP | 101,442人 |
情報処理安全確保支援士 | RISS | 45,627人 |
ITパスポートはIT系資格の中でも受験者数は上位にランクインする人気資格であることが分かります。
資格には大きく分けて3種類があります。
- 国家資格(医師、税理士など)
- 公的資格(秘書検定・日商PC検定試験など)
- 民間資格(TOIEC、MOSなど)
上に挙げた4つのIT系資格はいずれも国家資格であり、取得することで知識や技術が一定水準以上に達していることが国から認定されることになります。
ITパスポートの試験内容とは?どんなことが出題される?
ITパスポートの試験は、大きく分けて3つの分野から出題されます。
- ストラテジ系・・・・・35問程度 1,000点満点
- マネジメント系・・・20問程度 1,000点満点
- テクノロジ系・・・・・45問程度 1,000点満点
合格基準は、いずれの分野も1,000点中300点以上となっています。
試験時間は120分で、コンピュータに問題が表示されるCBTと呼ばれる方式で受験します。
各分野の出題範囲は次の通りです。
《ストラテジ系》
企業と法務、経営戦略、システム戦略
《マネジメント系》
開発技術、プロジェクトマネジメント、サービスマネジメント
《テクノロジ系》
基礎理論、コンピュータシステム、技術要素
IT系の資格と聞くと「プログラミングなど専門的な内容ばかり出題されるのでは?」といったイメージがあるかもしれませんが、ITパスポートに関してはITに関する幅広い範囲から出題され、知識を問われるのが特徴です。
ITパスポートの難易度は?他のIT系資格と比べて難しい?
ITパスポートの取得に関心がある人の多くは、資格の難易度が気になっているのではないでしょうか。 主なIT系資格の合格率は次のようになっています。
資格 | 合格率 |
---|---|
基本情報技術者 | 25%前後 |
ITパスポート | 50%前後 |
応用情報技術者 | 20%前後 |
情報処理安全確保支援士 | 15%前後 |
基本情報技術者や応用情報技術者は、プログラマやSEに求められる知識、情報処理安全確保支援士はセキュリティ分野の知識について問われるのに対して、ITパスポートは非IT業界のビジネスパーソンも知っておくべき基礎的な知識から、やや専門的な内容にも踏み込んだ幅広い知識が問われるのが特徴です。
そのため、IT系資格の中でもITパスポートの合格率は比較的高めとなっています。この数字を見る限り、IT系資格の中では易しめの資格と言えるでしょう。
ITパスポートを取得するメリットとは?
IT系資格の中でも、ITパスポートは初歩からやや専門的な内容まで、幅広い知識を扱っています。そのため、難易度の面でもIT資格の中では易しめで、比較的取得しやすい資格と言えるでしょう。
ただし、実際に合格しようと思ったら、それなりに勉強してのぞむ必要があります。そこで、勉強期間を確保してでもITパスポートを取得するメリットについて、ポイントとなる点を挙げてみます。
ITパスポートの取得を検討している人は、自分が求めているメリットと合致しているか確認しておきましょう。
IT関連の基本的な知識が身についていることを証明できる
先に述べた通り、ITパスポートの出題範囲は3つの分野にわたっています。それぞれの分野で問われる知識は次のようになっています。
ストラテジ系
IT全般とその周辺における経営全般の知識が問われます。組織論やシステム戦略、法務などについて学ぶ必要があります。
問われる知識の一例
- コンプライアンス
- OJT
- 組織形態
マネジメント系
開発技術、プロジェクトマネジネメント、サービスマネジメントの3分野から出題されます。詳しい技術的な知識というよりも、開発や保守の大きな流れを捉えることが重視されます。
問われる知識の一例
- システム開発プロセス
- 詳細設計書
- 仕様変更
テクノロジ系
コンピュータに関する基礎理論、システム、技術要素の知識が問われます。上の2分野と比べて、より技術寄りの知識が必要になるのが特徴です。
問われる知識の一例
- パスワードの組み合わせ数
- 2進数の演算
- 論理集合
ITパスポートを取得することで、こうしたIT関連の基礎知識が身についていることを証明できるメリットがあります。
IT関連の基本的な知識を幅広く学ぶことができる
幅広い範囲から出題されるITパスポートに合格するには、いろいろな分野の知識を身につける必要があります。
ITパスポート取得に向けた勉強に取り組む機会がなければ、もしかしたら今後も学ぶことがなかったかもしれない分野についてインプットを集中的に行うチャンスを得られることは、大きなメリットの1つと言えます。
実務を通じて知識を身につけていくこともできますが、多くの場合、目の前の仕事をこなすことに追われてしまい、知識を体系的に学ぶチャンスはなかなかありません。
その結果、「何となくは知っているけれども、しっかりと理解しているか怪しい」といった知識が多くなる傾向があります。
ITパスポートの取得に向けて学ぶことの中には、すでに知っていることや聞いたことのあることも含まれているはずですが、それらの知識をいったん整理し、体系的に学び直すことにも役立つのです。
企業によっては取得を推奨している場合もある
IT関連の知識やスキルは、同じ組織に属する人の間でもまちまちです。
PCなどに詳しい人もいれば、実務で使う機能以外はあまり分からないという人もいるかもしれません。IT系の分野は技術の進歩が早く、新しい技術が次々と台頭しますので、常に学び続ける必要があります。
しかし、こうした話題に対する興味関心も人それぞれのはずですので、企業としてはできるだけ多くの社員に一定以上の知識を身につけてもらう方法を考える必要があるのです。
そのための手段の1つが「資格取得の奨励」です。
受験料を補助してもらえる制度があったり、取得者は考課に加味してもらえたりする企業もあります。さらには、昇進時にITパスポートか、または同等の知識があることを証明できる資格を取得していることが条件となっている場合もあるほどです。
このように、企業全体でITパスポートの取得を奨励しているのであれば、取得しておくメリットは十分にあると言えるでしょう。
ITパスポートに関するウワサの真偽を検証
ところで、ITパスポートは人気資格である一方、いろいろなウワサを耳にする場面が少なくない資格でもあります。
この記事を読んでいる人の中には、「知り合いからITパスポートは○○だと聞いた」「取得しても○○だと言われたことがある」といった経験から、取得に向けて一抹の不安を抱えている人もいるかもしれません。
そこで、ITパスポートについてよくあるウワサの真偽を検証すべく、3つの角度からウワサの理由や発端を考えてみます。
取得してもあまり役に立たない・基本的な内容が中心と言われる理由
IT系資格は種類が多く、国家資格だけを見てもさまざまな目的で受験する人がいます。
基本情報技術者や応用情報技術者などは、主にITエンジニアと呼ばれる職種の人が受験するケースが多くなります。こうした資格は一般的なビジネスパーソンが受験する資格としては専門性の高い内容と言えます。
たとえば、データの整列で用いられるバブルソート、マージソート、ヒープソートのそれぞれの長所・短所は、エンジニアにとってはごく基本的かつ必須の知識ですが、一般的なビジネスパーソンとしてはマニアックな部類に入る知識と言えるでしょう。こうした知識を問われるのが基本情報技術者の試験なのです。
一方、ITパスポートは技術的な知識だけでなく、経営やマネジメントなど広い意味でのITの知識が身についていることを証明する資格です。
そのため、ITエンジニアをはじめIT業界の人から見ると「基本的な内容」と映ることがあります。
IT系資格の中では合格率が高いだけでなく、資格全般の中でも簡単な部類に入る?
ITパスポートの合格率はおよそ50%前後です。これを他の資格と比べてみると、合格率が同じぐらいの資格には「秘書検定」「配管技能士」「アマチュア無線技士」などがあります。
いずれも資格取得に向けて一定以上の知識が必要であり、勉強しておかなければ合格できない資格ばかりです。
世の中には難関と言われる資格もたくさんあります。一例を挙げると、
- 司法書士・・・5%前後
- 土地家屋調査士・・・10%前後
- 中小企業診断士・・・20%前後
といったように、合格率が低くなかなか合格できない資格もあります。
こうした難関資格と比べると、勉強に何年間もかけるほどの大変さではないかもしれません。
ただし、そうは言ってもITパスポートを受験した人のうち半分は不合格となるわけですから、しっかりと準備して試験にのぞむ必要があります。全く勉強しなくても合格できるほど甘い試験ではありません。
管理職がわざわざ勉強に時間を割いて取得する資格ではない?
管理職が忙しい業務の合間を縫って勉強し、取得を目指すほどの資格かどうか?については、「受験する人の向き・不向きや現状の知識量による」と言えるでしょう。
たとえば、現状でIT全般に対して苦手意識があり、IT関連用語があまり理解できないと感じている人は、部下との会話をスムーズに進めるためにも、一定以上の知識が身についていたほうが便利な場面が多いはずです。
これまでITに関わってこなかった人でも、今後はIT関連の仕事に携わることになる可能性も十分にあるでしょう。
ただし、ITパスポートを取得することによって管理職としてのキャリアパスに大きく寄与するとか、管理職として必要な知識や技能が目立って伸びるかと言われると、「そこまで影響力のある資格ではない」と言わざるを得ません。
管理職の方は、もしITパスポート以外に取得を検討している資格があるようなら、重要度や優先度によってはそちらを優先したほうが良い場合もあるかもしれません。
ITパスポートを取得したほうがいい人とは?
では最後に、ITパスポートを取得することでメリットを得やすいのはどんなタイプの人なのか?についてまとめておきます。
どんな資格にもメリットを得やすい人とそうでない人がいます。それぞれの資格が目指している知識・技能のレベルや、どのような目的で取得したいのかによって、ぜひ取得を目指したほうがいい人と、それほど急いで取らなくても良さそうな人がいるのです。
次の3つのうち、いずれかに当てはまる人は、ITパスポートの取得を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。
IT系の知識に不安がある・IT機器が苦手という人
どちらかと言うとIT系の分野が苦手な人は、ITパスポートの資格取得に向けた勉強を通じてITに関する基本的な知識を身につけることができます。
とくにIT系の用語の意味や一般的な使われ方に慣れるきっかけとなりますので、今まではIT関係で分からないことが出てくると社内の詳しい人を頼っていた、という人も、自力で調べて解決できるようになるための足がかりとなるはずです。
管理職の方であれば、これまでPCの調子が悪いときなど、IT系に詳しそうな部下を頼っていなかったでしょうか?
ネットで検索して自力で解決できるようになれば、困りごとを短時間で解決できるようになるだけでなく、周囲の人を頼らずに済みますので、結果的に業務効率が上がるというメリットもあります。
IT関連の部署や取引先と関わる機会がある人
自分自身がIT系の部署に所属しているわけではなくても、IT関連の部署と連携して仕事を進める機会がある人や、外注先など取引先にIT関係の企業があるという人は、ITに関わる基本的な知識を持っておいたほうがよいでしょう。
「相手はプロだから、頼めばやってくれるだろう」と考えてしまいがちですが、打ち合わせや商談の場で技術的な話が通じる相手かどうかによって、伝える側の労力やストレスは大幅に変わります。「この人は技術的な話も理解してくれる」と感じてもらえれば、ビジネスパートナーとしての信頼度がいっそう高くなることもあるでしょう。
反対に、技術面の話が分からないままビジネスの話をしていると、「このぐらい簡単にできるだろう」と思っていたことが実は技術的には無理難題だったり、「専門的な技術が必要そうだ」と推測していたことが初歩的な技術で実現できることだったりすることもあります。
また、見積額や作業スケジュールが適切かどうかを判断する上でも、技術的な事柄をある程度は理解しておかなくてはなりません。
取得を推奨している企業に勤務している人
現在の勤務先でITパスポートの取得が推奨されているのであれば、学習コストと身につく知識量を天秤にかけたとき、「取得しておいて損はない」資格と言えるでしょう。
受験料を会社で負担してもらえる場合や、取得したことで何らかのインセンティブが働く仕組みが用意されている場合は、ぜひとも取得しておいたほうがいいでしょう。
企業によっては、昇進時に情報セキュリティへの理解など一定以上のITリテラシーを求めるケースも増えています。
情報社会にあって、情報漏洩やサイバー攻撃といったリスクに無頓着でいることは、非常に大きなリスクに晒されていることを意味するからです。
一定レベルのITリテラシーがあることを周囲に知ってもらうためにも、国家試験であるITパスポートを取得しておくことはメリットになり得るでしょう。
まとめ)ITパスポートは「IT関連資格の入門編」と捉えよう
ITパスポートはIT系資格の中では基本的な部類に入る難易度で、非IT業界の一般的なビジネスパーソンが受験するのにも適しています。
ITに関する知識が「広く浅く」問われますので、IT系資格の入門編といった位置づけと捉えるといいでしょう。
あくまで入門編ですので、ITパスポートを取得すればIT系人材として高く評価されるとか、管理職としてのキャリア形成に際立って役立つというわけではないかもしれません。
しかし、IT系の知識を身につけたいと考えている人にとって、学習コストや難易度の面を考え併せると、取得を検討しておきたい資格の1つと言えるのではないでしょうか。
今後、ITに関する基本的な知識は多くの業界において必須のものとなっていくはずです。今までIT系の話題に苦手意識があった人も、ITパスポートの取得を機に苦手意識の払拭を目指してみてはいかがでしょうか。
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