「目標管理制度(MBO)」について、正しく理解していますか?MBOの効果的な導入&実施法

[最終更新日]2022/12/15

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皆さんの組織・チームで、「目標管理制度(MBO)」を導入されているという方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。

そもそも、組織・チームは何かしらの「目標」を掲げているものです。
目標管理制度はそれら目標達成へのアプローチと社員への「評価」をあわせて行えるということで、効率的な組織運用を目指しやすくもなります。

一方で、「目標管理制度(MBO)」の正しい内容や実践方法について、「あまりよく分かっていない」「なんとなく実施している」という組織・チームも少なくありません。

そこで今回は、「目標管理制度(MBO)」とは何か、その導入と実践の方法についてお話しします。

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目次

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まずは、目標管理制度(MBO)の概要とその目的を正しく理解!

目標管理制度(MBO)とは

「目標管理制度(MBO)」(以下「MBO」と記します)は、1954年にピーター・F・ドラッガー氏が提唱した組織マネジメント手法の一つで、正式には「Management by Object」といいます。

ピーター・フェルディ・ドラッカー(1906-1964年)オーストリア・ウィーン生まれのユダヤ系オーストリア人経営学者。「現代経営学」あるいは「マネジメント」(management)の発明者。

出典:wikipedia-ピーター・F・ドラッカー

MBOの目的は、「組織の目標」を達成するための「個人目標」を打ち出し、それら2つの目標達成に向けて「組織と個人が共に成長していくこと(または結果を出していくこと)」にあります。

つまり、MBOとは「組織に与えられた目標を社員一人ひとりが自らに置き換え、自分が何をすべきかを個別に目標設定し、達成するために自主的に管理することで主体性を磨き、大きな成果につなげていく」ための概念なのです。

また、MBOは社員ひとりひとりが目標を掲げ、そこにアプローチしていける為の「社員の自主性」を重視するマネジメント手法でもあります。

「上司が部下の業務や行動を管理する」という旧世代の日本社会で見られたマネジメント手法とは、MBOはやや対極に位置することも意識しておくと、よりMBOの概念理解も進められることでしょう。

目標管理制度(MBO)の「本来の役割」

MBOの目的は、「組織と個人の目標を繋げ、双方の成長・成果を果たすこと」にあると先にお伝えしました。

こう書くと、MBOの役割とは「目標達成のためのツール」と解釈されがちですが、そうではなく「組織が人を適切にマネージメントするためのツール」と捉えたほうが適切でしょう。

例えば、とあるサービス会社で「1億円の利益を出すこと」と「利用する人たちの日々の幸福感を高められるサービスを提供し続けること」を目標として掲げており、かつMBOを導入していた場合、社員はそれら目標に寄与できうる自らの目標を設定し、そしてその為の活動を行うことになります。

ここで意識したいのは、MBOの「社員が自主的に自らの目標を掲げ、主体的に活動する」という仕組み自体が、結果として組織の発展に繋がるということです。

これと真逆になるのが、社員ひとりひとりが行う業務を組織が完全に管理する仕組みです。ワンマン社長が社員を手足のように扱う──といった組織も、その部類に当てはまるでしょう。

両者の違いは「組織として人(社員)をどう扱うか」にあります。MBOのほうがより社員の自主性や主体性を重んじているのが分かりますよね。

※ 一つ補足しておくと、「組織として人(社員)をどう扱うか」という課題への唯一解が「MBO」になるということではありません。
近年では様々なマネジメント手法が出てきていること、今回はその中でも多くの企業で取り入られているMBOを中心にお話していることをご了承ください。

MBOは、元々は「人事評価」がメインではなかった?

ここで、「MBOは人事評価のためのツールではないの?」と疑問に思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。

たしかに、MBOは人事評価のタイミングに扱われますし、目標達成の度合いが各人の評価を定めるうえで重要となります。

ですが、MBOの主たる目的を「評価制度の為」と捉えるのは、やや本質の主従が逆転していると言わざるを得ないでしょう。

MBOを考案したドラッガーは、「部下と上司が適切にコミュニケーションを取りながら、部下の意欲や意志と会社の方向性とを近づけて目標設定を行い、その達成を支援し、最後に達成度の評価を行うことが、組織とそこに関わる個人の成果・成長を高めていくための効率的な仕組みになるだろう」と考えました。

この考えに則すると、「評価」は組織の成果・成長を高めていく為のプロセスの「一要素」になるということですね。

一方で、現在は日本のみならず海外においてMBOを「評価ツール」主体で解釈する企業・人々はすくなくありません。
なぜそのような傾向が現れているのかというと、世の中の「成果主義」の高まりから活動の成果を迅速かつ効果的に評価する仕組みが強く求められるようになり、そこにMBOの仕組みがはまりやすかったからだと言います。

たしかにそういった評価の際にMBOの仕組みは有効でしょうが、そもそものMBOの目的にある「組織と個人の目標を繋げ、双方の成長・成果を果たす」ことへの意識がおざなりにならないよう、私たちは注意すべきでしょう。

目標管理制度(MBO)の、導入メリット4点

さて、ここからは実際にMBOを導入する際の組織および私たち個人のメリットにどのようなものがあるかについて見ていきましょう。

押さえておきたいのは、以下の4点です。

  • メリット#1 「個々のモチベーションがアップする」
  • メリット#2 「個々の能力開発につながる」
  • メリット#3 「個々のスキルアップにつながる」
  • メリット#4 「人事考課がしやすい」

それぞれ、順を追って見ていきましょう。

MBO導入のメリット#1 「個々のモチベーションがアップする」

組織目標を達成するためには、上司から部下まで所属社員全員の業務が滞りなく進む必要があります。

その際、上司から与えられた仕事をこなすのではなく、部署のメンバー一人ひとりが自分がやるべきことを自覚し、自分の目標に置き換えて達成するための努力をすることが重要となります。

MBOを導入することで、組織目標を達成するために自分がやるべきことが明確になり、課された目標を達成して評価されれば、一人ひとりのモチベーションがアップします。

MBOは、仕事は『やらされるもの』ではなく、『主体的に取り組むもの』という認識を私たちに投げかけてくれます。その認識は、成果を出していこうというモチベーションに繋がり、行動も活性しやすくなるでしょう。

MBO導入のメリット#2 「個々の能力開発につながる」

管理職が部下と個人目標についてすり合わせを行う際に、1つ意識してほしいことがあります。

それは、部下一人ひとりのスキルを把握したうえで、「簡単には達成できないが、少し努力すればできる」というレベルで個人目標を設定することです。

大きな個人目標を掲げると、与えられた部下は「できるわけがない」と、最初から努力を放棄してしまう傾向があります。

しかし簡単ではないけれど努力した結果、目標達成でき評価されるという経験をすると、それが部下の自信となります。

また努力するプロセスにおいて、仕事の仕方に創意工夫を凝らすことが、個々の能力開発にもつながるのです。

MBOの仕組みはこれら経験の機会を創出をしやすく、このこともMBOの大きなメリットの一つと言えるでしょう。

MBO導入のメリット#3 「個々のスキルアップにつながる」

MBOの導入によって、部下一人ひとりの能力が開発されそれが習慣化されると、個々のスキルアップにも繋がっていきます。

組織の仕事は一人で完結するものではありませんので、個人目標を達成するプロセスにおいて、関係するメンバーとの関わりに目が向くようになります。

自分だけでなく、チームとしての問題意識が育まれるようになるのです。

また、仕事を円滑に進めるうえで状況分析や情報収集が不可欠なことがわかり、そうしたスキルも養われていきます。

評価を求めて目標達成を目指すなかで、自主性や自己管理能力も磨かれていき、チームや組織内での、成長・スキルアップの相乗効果が起きやすくなるのです。

MBO導入のメリット#4 「人事考課しやすい」

「目標管理制度(MBO)」の導入は、部下の成長を促すことだけではありません。

管理職の立場で考えると、「目標管理制度(MBO)」導入により人事考課がしやすくなるのも大きなメリットといえます。

組織目標を達成するために、部下一人ひとりの能力に応じた個人目標を設定することになりますので、その達成率も効果も明確になります。

個人目標を設定する際に、それを数値ができるようにしておくことで、管理職が部下一人ひとりを容易に評価できるのです。

日本企業の多くが実際に「目標管理制度(MBO)」を、人事考課に取り入れているのもそのためです。

目標管理制度(MBO)の運用効果を最大限高めていくための、ポイント3点

「目標管理制度(MBO)」は、導入すればよいというものではありません。

やり方を間違えると、組織運営の妨げになる可能性もあるからです。

個人のモチベーションやスキルを向上させながら、組織目標を達成するために「目標管理制度(MBO)」を取り入れるなら、運用効果が上がるポイントを守ることが大事です。

そこで「目標管理制度(MBO)」の運用効果を上げるポイントを、3つにまとめてみました。

  • 組織・チームの目標・優先事項を正しく理解する
  • 部下が適切な目標を作成していくために、最大限の支援を行う
  • 期間中は、なるべく多くの「振り返り」の機会を設ける

それぞれ、順を追って見ていきましょう。

組織・チームの目標・優先事項を正しく理解する

「目標管理制度(MBO)」を導入するにあたって、自分が率いる部署が経営陣に求められている仕事を正確に理解していなければ、それを部下の個人目標とリンクさせることはできません。

単に与えられた数値目標を達成するのではなく、その先の未来で何を求められているのかも踏まえ、自分が率いる組織でどんなスキルやシステムが必要かを見直し、優先順位をつけてから部下との話し合いに臨む必要があります。

部下が適切な目標を作成していくために、最大限の支援を行う

MBOを導入すると、部下一人ひとりと個人目標を設定するために話し合う必要があります。

ですが、多くの社員(部下)にとって、「目標を設定する」行為は決して簡単ではありません。
どのような目標が適切か、どのくらいの達成度合いを目指せばよいのか、悩みどころは多岐に渡るでしょう。

たとえMBOの目的である「組織と個人の目標を繋げ、双方の成長・成果を果たすこと」を丁寧に伝えたとしても、今度は部下の方で「どうやったら自分は成長するだろう?成果をだせるのだろう?」と悩むかもしれません。

そんなとき、管理職・マネージャーの方々に求められるのは「部下の目標を一緒に探求し、創っていく」行為でしょう。

その行為により、部下はより適切な目標──つまり自身が成長し、組織の成果・成長にも寄与できる目標を掲げやすくなるでしょうし、あなたとの信頼関係・協働への意識も高まることでしょう。

適切な目標を掲げていく際は、「SMARTの法則」を活用するのがおすすめ

組織であっても個人であっても、実現不可能と思われる目標を設定され、前向きに取り組もうと思える人は稀有でしょう。

また、努力せずとも達成できるような、難易度の極端に低い目標を設定するのも無意味です。
それらを回避していくうえで、目標設定を行う際に取り入れてほしいのが「SMARTの法則」です。

効果的な目標を立てる際に効果的なSMARTの法則。「Specific…明確に定義されていること」 「Measurable…評価基準があり、測定可能であること」 「Achievable…容易ではないが、達成可能であること」 「Relevant…チーム全体の方向性に関連していること」 「Time-bound…期限が設定されていること」

という5つの頭文字をとってつけられた名称です。
「SMARTの法則」を意識して目標設定すると、より適切な目標を掲げやすくなる、ということですね。

期間中は、なるべく多くの「振り返り」の機会を設ける

MBOは、「年間」まはた「半期(半年間)」といった期間で実施されることが多いです。

ここで起こりがちなのは、「当初に建てた個人目標を期間内ほとんど意識せずにいて、期間終了間際に慌てて達成に向けて活動する」というケースです。

そこまではいかなかったとしても、MBOを取り入れている企業にて、期間内に「日々の業務と並行して目標の達成状況を常にチェックできていたか」という問いに「YES」と答えられる人はあまり多くはいらっしゃらないことでしょう。

MBOに限らず、掲げた目標を達成する上で大切なことは、常に「振り返り」を行うことです。

振り返りを行うことによって、これまでの活動の良かった点や改善点が浮き彫りになり、次にすべきことやチャレンジできることが明確になるのです。

振り返りは、一人で行うよりも複数人で行ったほうが効果的と言います。
特に管理職・マネージャーの方は、部下の振り返りを支援する機会を持つことによって、部下の目標達成をより実現しやすくしていけることでしょう。

まとめ 「目標管理制度(MBO)」を適切に運用しよう

今回は、「目標管理制度(MBO)」とは何か、その導入と実践の方法についてお話ししました。
この記事をまとめると

  • MBOの目的は「組織と個人の目標を繋げ、双方の成長・成果を果たすこと」
  • MBOの役割は、「組織が人を適切にマネージメントする」であり、社員の自主的かつ主体的な活動を強化することにある。
  • MBOの運用効果を最大限高めていく為には、以下3点を意識する必要がある
    (1)組織・チームの目標・優先事項を正しく理解すること
    (2)適切な個人目標を掲げること(SMARTの法則)
    (3)期間中は、なるべく多くの「振り返り」の機会を設けること

の3つでした。

この記事を、「目標管理制度(MBO)」を運用するうえで参考にしていただけたら幸いです。

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