ファシリテーションって具体的にどうやるの? 多くの組織・チームに求められるファシリテータの役割

[最終更新日]2019/07/26

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「ファシリテート(facilitate)」は、「物事を楽にする」「(周囲の)行動を促す」といった意味の言葉です。

会議の場での「ファシリテータ」を経験されたことのある方もいらっしゃるかもしれませんし、中には初めてこの言葉を聞いた方もいらっしゃるかもしれません。

ファシリテーションは、チームワークを行う上で重要な役割を担っています。

ファシリテーションを効果的に取り入れることによって、会議や業務がはかどり、良い結果を生み出すことができます。

今回は、そんなファシリテーションについて解説していきたいと思います。

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目次

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ファシリテーションとは? 

ファシリテーションとは、いったいどんなもの?

ここで「ファシリテーション」という言葉の解釈について説明します。

と言っても、ファシリテーションの解釈の幅は広く、明確に定義づけをすることはできません。

ファシリテーションの解釈について、ある書籍では以下のように定義づけしています。

複数人が集まり何かをしようとしている場において、
どうすれば互いの協働を促進し、
創造的な成果を生み出すことができるだろうか?

──この問いに答えるのがファシリテーションという技法

参考:ファシリテーション 実践から学ぶスキルとこころ(岩波書店)

たとえば会議の場で考えてみましょう。

会議には若手やベテラン社員まで、年代も性別も様々な人が集まっています。
当然、そこで飛び交う意見も一つではなく、いくつもの意見が出されることでしょう。

しかし、そんなときに会議全体を取りまとめる役割が不在となると、ただ何種類もの意見が交わされるだけで、円滑な会議とは言えないように思いますよね。

ファシリテーションは解釈の一つとして、「(会議などの)集まりの場において、様々な意見を取りまとめ、最大限に活かしつつ、目的(ゴール)に導いていく」技法・役割のことを指します。

なぜ近年、ファシリテーション型アプローチが求められるようになってきたのか

近年、ビジネスの場においてファシリテーションの需要が高まってきています。

その理由の一つとして、ビジネス環境の多様化があげられるでしょう。

多数の企業が海外進出に向けて事業形成を行ったり、従来の考え方だけではない多様な価値観に触れようという試みが増えてきました。

そんなビジネスのグローバル化に伴い、会議の場においても、部署の垣根を越えた意見交換が重要視されるようになったのです。

部署ごとの異なる意見をまとめ、一つの目標に向けて会議を進行していく。そんなファシリテーションによる効果が望まれる社会へと変わりつつあります。

また、ITの発展に伴い、企業と顧客の距離が縮んだことも要因の一つです。
二者間の距離が縮んだぶん、問題解決へのスピード感もこれまで以上に求められるようになってきたのです。

会議において、その空間にいる人たちの思いを尊重することはもちろんですが、そもそものサービスの提供先=顧客の思いを叶えるための話し合いですよね。

ファシリテーションは、会社のメンバー同士の意見交換をスムーズに行い、最終的なゴール(顧客満足)へ導くための最適な技法のひとつと言えます。

ファシリテータによる会議の進め方 

ファシリテーション能力を備えた人材を「ファシリテータ」と呼びます。

ファシリテータは会議の場での進行役を任される機会が多いでしょう。

しかし、先ほども申し上げたように「ファシリテータ」は、会議の目的(ゴール)に向けて、メンバーの様々な意見を取りまとめ、会議の進行を促していく重要な役割です。

では今後ファシリテータとして会議に出席することがあった場合、どのような点を意識して進めていけばよいのでしょうか。

対話のための「テーマ」の用意、そして「場創り」を行う

ファシリテータとしての役割は、主に「テーマの用意」と、「場創り」です。

テーマとは、会議で取り上げるべき議題のことです。何を議題として集まったのかを明確にすることで、参加者の意識も変わってくると思います。

そして「場創り」は大きく分けて3つの工程があります。
事前準備」「導入」、そして「進行(コミュニケーション)」です。

「事前準備」は、会議に必要な人員であったり、どんな目的(ゴール)のために会議を行うのか、どんなやり方で進めていくのかを事前に決めておくことです。

「導入」は、実際に会議に入る前にメンバー全員で今の気持ちを共有し、スムーズに会議を進行していくための工程です。

そして最後にファシリテータとして求められる能力が「進行(コミュニケーション)」です。

会議が滞っていないか、意見を言い出しづらそうな人はいないか、会議の方向性に誤りはないか、常に気を配っておく必要があります。

話し合いを促進していく(探求を深めていく)為の「問い」を投げかける

もしも自分がファシリテータを務める会議において、想定していたほどの盛り上がりが見られない場合、どのような対応ができるでしょうか。

話し合いの場を活性化させる方法の一つに、「問いを投げかける」ことがあげられます。

この「問いを投げかける」という方法について、あるベテランのファシリテータの方はこのように言っています。

問いは、相手に新たな思考と気付きを提供します。その問いが良いものであればあるほど、その問いは価値のある贈り物になるでしょう。──『問いはギフト』なんです

しかし、ただ参加者に向けて問いかけをすればいいというわけではありません。注意していただきたいポイントが3つあります。

1. その問いは、相手にどのような影響(心象)を与えるか?

「問い」と聴いてすぐに思い浮かぶのが、「なぜ(WHY)?」という訊き方です。

ですが、この「なぜ(WHY)?」という訊き方は、場合によっては相手にストレスやプレッシャーを与えてしまうことがあります。例えば、「なぜ、それが出来なかったのでしょう?」「なぜ、その目標が達成できなかったのでしょう?」という問いは、相手にとっては「自分の落ち度」を責められているように感じるものだからです。

「その背景には何が(WHAT)あったのでしょう?」であったり、「どうすれば(HOW)今後改善していけそうですか?」という風に、直接的なWHYの訊き方だけでなく、WHATやHOWの訊き方も交えて、問いを投げかけていくと良いでしょう。

2. 「答えありき」の問いになってしまっていないか?

もしあなたが「こういう答えが望ましい」という想いを持ち、かつ相手からもその答えを期待しながら問いを行ったとしたら、それは「問い」ではなく「誘導」になってしまいます

ファシリテータが行う「問い」は、場が活性され、そしてファシリテータ含めた参加者全員が新たな気付き・発見を得る為に行われるものです。

問いは「答え合わせ」ではなく、「探求」を目指すことを意識されると良いでしょう。

3. 「沈黙」を恐れてはいないか?

会議の場で流れる沈黙は重く、気まずさを感じてしまうかもしれません。

しかし、その沈黙はネガティブな理由だけとは限りません。まだ自分の中で答えを考えているからこそ沈黙している可能性もあります。

焦って軌道修正を図ろうとすると、かえって会議の場がクローズド(閉鎖的)なものになることもありますので注意が必要です。

構造化していき、合意形成を促していく

話し合いによって複数の意見が交わされることが想定されます。

ファシリテータとしての役目は、それらの意見を構造化し、分かりやすくまとめられるスキルが求められます。

たとえば似たような意見が多数見られた場合、参加者の同意を得ながら「この意見とこの意見は、つまりは〇〇といった形でまとめられる」といったふうに紐づけすることで、さらに会議の場が円滑に進んでいくことでしょう。

反対に、対立関係にある意見を取り上げることによって、優先的に解決すべき問題が明確化されます。

そうした臨機応変な構造化のスキルは、ファシリテータとして強みとなるでしょう。

そして、さらに重要なのが「合意形成」を図るスキルです。

会議が長引き、マンネリ化してしまうことを防ぐため、どこかのタイミングで会議の終了を図るスキルが必要となってきます。

この時に大切なのが、安易な多数決などの方法で、少数派の意見を押し込めてしまう結果を避けることです。

やはり人によって考え方も様々なので、100%の賛同を得られる会議はなかなかないでしょう。

それでも、なるべく参加者の全員が納得できる形にまとめられる力量も、ファシリテータには求められるのです。

「何が起ころうと、起きるべきことが起こる」。それを受けとめるのがファシリテータ

ファシリテータとして会議に出席した場合、どのように会議を進めるべきかシミュレーションを行ったり、ある程度の計画を練るかもしれません。

しかし会議当日は当初の計画通りに進まないことも十分に考えられます。そんな時、「あれほど時間をかけて計画したのに……」と落ち込んでしまったり、ストレスが溜まってしまうかもしれません。

ファシリテータが大切にしたいマインドの一つとして、「何が起ころうと、起きるべきことが起こる」という考え方があります。

これはOST(複数の人が集まる話し合いの場で、自己組織化を促す手法)の創始者であるハリソン・オーエン氏の言葉です。

ファシリテータが事前に準備した筋書き通りに参加者を誘導することは、円滑な会議ではなく、ファシリテータの自己満足で終わってしまうことになります。

質の高い会議とは「参加者全員が、そこで起きることを共有し、解決していくもの」であることが望ましいです。

ですので、たとえ想定していた流れに進まなかったとしても、焦らず受け止めていくことで、よりよい時間を参加者と共有していけるのです。

あなたが「ファシリテータ」を担うときに、意識するポイント3点

管理職になった場合、会議の場でのファシリテータを任されたり、ファシリテーション能力を身につけるよう求められる機会が訪れるかもしれません。

ここまで紹介したファシリテータの役割を見て、「なんだか難しそう」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

そこで、もしあなたがファシリテータとして会議に出席することになった場合に、「ここは意識しておいてほしい」というポイントを3点お伝えします。

ファシリテーションは、事前準備で9割が決まる!

先に述べた、会議に伴う「事前準備」は非常に重要です。
この事前準備を怠ってしまうと、会議自体の成功も望めない可能性が高くなってしまいます。

ファシリテータの経験が豊富な方ですと、この事前準備に少なくとも会議の3倍以上の時間をかけている方もいらっしゃるようです。

たとえば参加人数に見合わない規模の会場ですと、会議に臨むモチベーションも変化していきそうです。
そういった会場設定から人員確保までを、丁寧に行っていく必要があります。

また、参加者全員が忖度なく意見を言える場創りも必要です。

これに関しては「チェック・イン」の時間を設けてみるのも解決策の一つかもしれません。

「チェック・イン」とは、会議が始まる前の数分間で、年齢や役職に関わらず話したい人から順番に自分の気持ちを話す」時間です。

参加者全員で思いを共有できるので、その後の会議で自由な発言ができるきっかけにもなるでしょう。

参加者の想い、考えを引き出し、受け留める(自身は意思決定に関与しない)

よくお聞きするのが、「チームリーダーとファシリテータは同じ役割?」という疑問です。

会議を引っ張っていくリーダーに対し、ファシリテータは、参加者の思いや考えを引き出しながら、会議の進行を支援するような役割を担います。

そのため、チームリーダーとは少し意味合いが異なります。

ファシリテータは会議などの場において、自身は意思決定の権限は持っていません。先に述べたように、ファシリテータが会議の決定権を担ってしまうと「自己満足な会議」と化してしまう恐れがあるからです。

ファシリテータが正しく参加者の思いや意見を受け止めるには、以下のようなポイントを意識してみるとよいでしょう。

ファシリテータが「参加者の想い、考えを引き出し、受け留める」際のポイント

  • 対話を活性するための「問い」を提供する。
  • 参加メンバーの関係性を深めていく。
  • 断定的な言い方をしない(自分の考えにこだわらない)
  • “Yes,and”を意識したコミュニケーション(否定しない) 他人の意見を否定せずに、まずは受け止め、咀嚼する
  • 人の意見の背景を理解しようとする 相手の話の善し悪しをジャッジするように聞くのではなく、探究する姿勢で聴く ときに全体を俯瞰してみる。
  • 答えや結論を急がない。メンバーの気づき・内省が深まることに意識する

成功を「信じて願う」こと

そして最後に、ファシリテータとして忘れてはならない信念があります。

それは、「成功を信じて願うこと」です。

会議によって、何をもってして「成功」となるのかは様々だと思います。
ただ一つ共通して言えるのは、「参加者の思いや言葉が、会社の未来を切り拓いていく」ということではないでしょうか。

参加者によって、会議へ臨む姿勢も異なるかもしれません。「会社をよくしていくために」本気で臨む方もいらっしゃれば、あまり前向きではない姿勢で臨まれる方もいるのが、組織というものです。

そんな中ファシリテータとして、これだけは信じてみましょう。

「すべての人に素晴らしいところがある」

どんな参加者の思いにも寄り添い、受け止め続ける姿勢は、必ず周囲にも伝わるでしょう。

会議に向けての事前準備はもちろん大切なのですが、こうした心持ちの面もある程度整えておく必要があるでしょう。

まとめ 言葉や思いが未来を創っていく

会議に参加したすべての人の意見に耳を傾け、時に意見をまとめたり、常に進行を見守り続けるという作業はなかなか難しいものです。

しかしだからこそ、ファシリテーションという技法はこれからも重要視されていくことでしょう。

自分がファシリテータになった場合の気を付けるべきポイントや心構えについてお伝えいたしました。

ファシリテーション能力を身につけたいと願う方や、これからファシリテータとして会議に出席する予定の方に、この記事が一助となれば幸いです。

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