「ブランディング」って何?もしあなたがブランディング戦略に携わることになったら
[最終更新日]2019/07/26
「ブランド力の強化」「ブランド・イメージの向上」「ブランディングの推進」ー。
経営者の説示などで一度は耳にする、今や企業に取って欠かすことのできないこれらのフレーズ。
大切なことー、という印象はあるものの、具体的に何をすべきなのか?というのは、その業務を与えられてようやく考えることになる、不確かなフレーズであるのも事実です。
例えば、ブランディングとマーケティングとは何が違うの?魅力的なプロモーションするための方法なの?どんなメリットがあるの?
今回は、そんな「ブランディング」の正しい意味と取り組みのポイントを紹介していきます。
Index
目次
<スポンサーリンク>
そもそも、「ブランディング」とはどんなもの?
ブランディングの意味
ブランディングとは「商品やサービスが顧客にとって価値のあるものだと認識してもらう活動」を指します。
例えば、「ビールならアサヒが一番」「スマートフォンならずっとiPhone」「航空会社ならいつもANA」といった、「○○ならこの会社」という”こだわり”のある商品やサービスを、皆様もお持ちだと思います。ブランディングのゴール・イメージとは、まさにこういった”こだわり”を顧客に持ってもらうことともいえます。
では、もう少し踏み込んで考えてみましょう。
なぜ、私たちはそういった”こだわり”をもって、再びその商品・サービスを選ぶのでしょうか?
実はこの問いに、ブランディングの大事なエッセンスが隠されています。
ここで、冒頭に挙げた例を想像してみましょう。
- 「のどごし爽やかなビール飲みたいときはこれ」
- 「毎シリーズとも裏切らない洗練されたデザイン」
- 「どこにいくにもベストなフライト時間がある」
といった、顧客が実現したいモノ・コトを叶えてきた「信頼感」が積み上がって出来たイメージが浮かびませんか?
つまり、ブランディングの「価値のあるものだと認識してもらう」というのは、信頼を築く行為であり、ブランディングの意味を言い換えると、「商品・サービスを通じてお客様の目的を叶え、信頼を築いていく活動」ともいえるのです。
ブランディングの由来
この「プランティング」という単語は、牛や羊などの家畜市場の専門用語「livestock brading」を語源した用語で、自分の家畜と他人の家畜を区別するために、焼き印を使って区別する行為を意味します。
また、「ブランド」(brand)も同様に、「焼き印」(burn)というドイツ語が語源とされています。
多くの方が「ブランド」という言葉を聞いたとき、パッと思い浮かべるのは、「シャネル」「グッチ」「オメガ」「ベンツ」などの高級ブランドや、そのシンボルマーク、ロゴではないでしょうか。
実は、「焼き印」というブランドの由来を知れば、ブランドと聞いてロゴを想起するのは、決して偶然でないことがわかります。
実際、過去の「ブランディング」の多くは、ロゴやデザインにフォーカスすることでの「差別化」を目的とする手法が中心でした。
それが21世紀に入り、その概念は拡大し、マーケティングの結果として蓄積される無形資産とされてきた背景があるのです。
現代社会において、ブランディングが重要視されている背景
ある商品・サービスが差別化されるのとは逆に、顧客にとって、他と区別のつかない商品・サービス群に属することを「コモディティ化」といいます。
モノと情報が溢れている現代は、競合他社が追随しやすい環境=コモディティ化しやすい市場環境になっていることを、私たちは再認識する必要があります。
そして、ブランディングが、そんな市場で生き残るための有効な戦略として、企業に重要視されています。
では、ブランディングが一体どんな効果をもって、現代のコモディティ化を打ち破っていくのか、そのポイントを紹介します。
サービス・情報の氾濫に伴い、多くの企業の製品・サービスで「コモディティ化」が促進されている
例えば、ドラッグストアで歯磨き粉を買う場面を想像してみましょう。
棚には、おそらく20種類以上の商品が並んでいることでしょう。
果たして、この中から何を基準に商品を選ぶのか。また、自社の製品であれば、どうやって顧客に選んでもらえるのか、少し考えただけでも頭が痛くなる問いではありますが、まさにこれが、現代の企業が直面する「コモディティ化」の現状です。
また、現代社会のキーワードでもある「グローバル化」、特に、経済発展著しい中国や韓国の企業の台頭が、コモディティ化をさらに加速させている要素であることも忘れてはいけません。
例えば「iPhoneX」でついに実現したボタンレスの画期的デザインも、1年も経たずして、中国各社がボタンレスの機種を発表。
また、商品サイクルの早い化粧品の分野では、日本企業が発表までに1年を要する新製品を、韓国企業は半年のサイクルで商品化し、次々と流行を掴んでいきます。
このように、どれだけ魅力的な商品やサービスを生み出したとしても、あっという間に類似品が生まれてしまう現状を、まずはしっかりと認識する必要があります。
コモディティ化を打破するブランディングとは
さて、このコモディティ化によって差別化されなくなった商品・サービスを、最も簡単に差別化する方法は何なのでしょうか?
それは、「価格を下げること」に他なりません。
一方で、皆様もご存知のように、価格下げることは一時的な効果でしかなく、長期的にみると有効な打開策とはいえません。
では一方で、ブランディングはどうでしょうか?実はブランディングは、その効果を発揮したとき、コモディティから抜け出すと同時に、価格競争を回避することが可能になります。
さらにそれが強化されると、宣伝費などの削減までを狙うことができます。
そんな都合の良いことができるの?と思うかもしれませんが、実現している企業は多くあります。
例えば、スターバックスは、値下げやTVCMを一切していません。
むしろ時々で、値上げを行ってさえいるのです。
しかしながら、毎日、どこの店舗も混み合っている光景を、皆様もご覧になっているのではないでしょうか。
そんなスターバックスのような強いブランドを作り上げたブランディングの効果、それは次のステップで形成され、企業の事業に大きく貢献してくれるのです。
ブランディングの効果
- step1:差別化
他の商品・サービスより良いことに気づいてもらう - step2:意思決定のシンプル化
次回も同じ商品・サービスを選んでもらえる - step3:顧客化(ファン化)
同じブランドや企業の他の商品・サービスを試してもらえる - step4:価格競争の回避
価格差による差別化は不用になる - step5:宣伝費の削減
訴求は不要になり、さらに口コミなど宣伝をしてくれる
ブランディング戦略がうまく行っている企業」の事例3選
ブランディングに成功することは、一定層の顧客に支持を得ることだけでなく、その商品・サービスのユーザーでなくても、あるイメージが想起される状態ともいえます。
つまり、ブランディングの成功企業に上がる企業は、必然的に、皆様が知っている企業ともいえるでしょう。
ここでは、そんな皆さんがご存知の企業に加えて、中国人なら誰でも知っている中国の新興企業を含めた3つの成功企業のブランディングをご紹介します。
国や市場は違うものの、どの企業も、これまで解説してきたブランディングの意味や有効性をしっかりと把握、実践している好事例です。
事例1:スターバックスコーヒー
ブランディングの成功企業として、必ず事例として挙げられる同社。
強いブランドを作るエッセンスが詰まっている「定石」だけに、紹介すべき事例としては、やはり外せません。
先ほど、TVCMをしていないと紹介をしましたが、同社はその代わりに、人材育成に費用も時間も掛けているのが最大の特徴です。
広告、材料、パッケージ、店舗立地や内装といった商品・サービスに最もダイレクトに関わる要素以上に、同社で働く社員の満足を向上させることで、働きたい企業としての差別を図ることに成功しています。
何より、社員も会社を一歩でれば、一人の顧客です。
同じゴールを目指す社員との信頼関係を結ぶことで、顧客としての信頼関係も同時に築かれることはとても自然な流れともいえます。
専門的な視点を加えると、ブランディングには、顧客に対して行う「アウターブランディング」と社内(社員)に行う「インナーブランディング」に大きく分れます。
特に、現在では同社に習ったインナーブランディングを重要視する企業が増えてきています。
事例2:無印良品
日本ではもう馴染みの同社。
もはや、同社のユーザーでなくても無印良品=「シンプル」というイメージを確固たるものにしているブランディングの代表企業でしょう。
実はいま、無印良品は、海外事業が非常に好調です。
2017年の連結海外売上比率は、前年比20%増の35.1%。
これを牽引したのが、中国や欧米の「シンプル」なライフスタイルを好む顧客ニーズを捉えた戦略だとされています。
無印良品は「シンプル」を武器に、日本と海外では事業スタイル、その闘い方がかなり違います。
欧米では、もはや高級ブランドという位置づけですし、中国では、日本にはないカフェ、レストラン、ホテルといった事業を展開しています。
事業拡大・多角化は、ともするとブランドの価値観を崩しかねない戦略とも思われますが、同社の場合、その徹底的に統一されたイメージによる顧客化(ファン化)の効果で、むしろ派生する商品・サービスも試してもらえる効果を巧く活用しているといえます。
「その国の需要に合わせることを一番に考える」という同社の海外戦略は注目に値します。
その結果として、経験の無い事業でも大胆に展開できるのも、その前提として、ブランディングで積み上げてきた顧客との信頼の結果があったといえるでしょう。
事例3: mobike
最後に、海外(中国)企業の事例もご紹介しましょう。
「mobike」というレンタル自転車のサービスを聞いたことはありますでしょうか?
2016年開始から、わずか2年足らずで、中国の誰もが知りうる企業・成功を収めた企業です。
従来からある固定の駐車スペースを利用したレンタル自転車ではなく、スマフォと2次元コードの技術により、鍵の開閉と支払いを電子化し、どこでも乗り捨て自由なレンタル自転車を実現した大変画期的なビジネスです。
ただ、コモディティ化で紹介したように、どれだけ画期的な技術もすぐ競合がでてきます。
事実、中国では5~6社ほどの競合が半年足らずで参入し、街中に自転車が溢れました。
このmobikeの強さは、その技術と発想に溺れることなく、ビジネス開始当初からブランディング戦略をしっかり組み込んだことにあります。
ビジネス開始当初から「おしゃれ」「環境」をキーワードに展開。
他社が広告や低価格でシェア獲得を狙う中、mobikeだけは、同じキーワードを掲げる企業とのコラボレーション企画や、自転車のデザインを定期的にリニューアルし、今は、そのイメージに共感するユーザーの圧倒的な支持を得ています。
現代のコモディティ化の特徴を十分に認識した上で、ブランディング戦略を見事に組み込んだ好事例といえます。
管理職・マネージャーが「ブランディング戦略」を推進する際の3つのポイント
実際にブランディングを実施している企業では、役員や管理職の方が、数日間、あえて通常業務から離れた環境下で、徹底的に話し合いをする合宿のような取り組みもあると聞きます。
ブランディングは、そんなふうに集中し、時間をかけ、アイデアを生みだし、決定し、具体化をしていくプロセスです。
適切な手順を踏まないと無駄になることすらあります。
効果を出すためにも、次の3つの手順で進めていきましょう。
- step1:企業の達成したい理念を明確にする(振り返る)
- step2:理念をとどける対象を明確にする
- step3:対象への訴求方法を発想・具現化する
ポイント1:企業の達成したい理念を明確にする(振り返る)
実際、すでに多くの会社では経営理念が存在していると思います。
ただし、それがブランディングとして、有効姓を発揮するかどうかは、まずは下記の3点を再確認してみましょう。
- 一般的、抽象的な言葉になっていないか?
- 心から実現したい内容になっているか?
- 社会貢献要素が盛り込まれているか?
続いて、(振り返る)としたのは、既に企業の理念をお持ちの場合、人材、制度、環境、商品、サービス、など社内の状態が、その理念と矛盾やギャップがないかの確認のためです。
例えば、「お客様を笑顔にする~」という理念にもかかわらず、働いている社員の多くが笑顔で仕事をしていない。
「~安心・安全をお届けします」といって、慌てて接客していたり、猛スピードで運んでいたりしては、せっかくの理念も意味がありません。
何よりも最初にやるべきは、全ての基礎となる会社そのものの理念の共有と理念に基づく社内の人・モノ・コトのルール化です。
密度の高い情報発信のコアを作ることから始めましょう。
ポイント2:理念をとどける対象を明確にする
「考えに考えぬいた企業の理念、これを誰に届けたいですか?」
step2ではまず、こんな質問を自問してみましょう。
決して、自社の規模や製品やサービス、立地などの条件に制約されてはいけません。
いわゆるブレーンストーミング形式で、「届けたい人」をリストアップしてみましょう。
その際に注意するのは、決して、その対象がいわゆる「ユーザー」だけではないということです。
スターバックスの事例にもあったように、ブランディングには、インナーブランディングという視点があります。
ここを忘れると大変もったいないので、次の3つを常に意識しながら、発想を繰り返していきましょう。
- 顧客:集客
- 学生や転職者:採用
- 社員:組織
続いて、複数浮かんだもの、範囲の広いもの(世界の人に、子供から大人まで)を、理由も添えて、優先順位をつけてみましょう。
どうしても優先順位はつけられない!という場合も、それはそれで良いと思います。
結果的に、アイデアの1つ1つと意志決定に、納得感や強い想いがあることが重要で、それを醸成するプロセスでもあるからです。
ポイント3:対象への訴求方法を発想・具現化する
step2を経て決定した対象者は、例えるなら、企業にとって「我が社の理念をとどけますと約束をする相手」です。
そして、その対象が明確であるほど、訴求する方法のアイデアは出やすくなりますし、訴求方法にマッチングするか、その選択肢や分析も正確になってきます。
例えば、「大好きな地元に~」と、対象が「地元」であれば、全国版のTVCMをする必要はなさそうですし、いわゆるメディアを使った広告ではなくて「地元のボランティアに参加する」「地元に所縁のある人や商品とコラボする」といった発想にも繋がります。
もちろん、訴求方法としての広告は、今も非常に影響力を持っています。
さらに現在は、TVや雑誌はもちろん、SNSだけでもFacebook、Twitter、Instagram、とその選択肢やその特徴も多岐にわたっており、その細分化された媒体を逆手にも取れるはずです。
それは例えば、「Instagram」の利用者の特徴を知っていれば、「写真が好きな20代の女性に~」という対象に対して、全国版のTVCMよりも、「Instagram」が的確に伝えられそうだ、と判断ができます。
また、このstep3は、step1とstep2がしっかりできていなければ、スムーズにはいきません。
訴求方法のアイデアや、発想を具現化するためのアイデアがあまり出ない場合、もう一度、step1とstep2に戻るのも、手順のポイントといえます。
「何としても約束を守る」、といったモチベーションが、アイデア発想や具現化を後押ししてくれるはずです。
まとめ ブランディングは、「お客様との約束」
いかがでしたでしょうか?
もしかしたら、ブランディングはどこか「会社の自己啓発的な取り組みのようだ」という印象を持たれた方も多いかもしれませんね。
確かに実際はその通りで、ブランディングの意味でもご紹介したように、ブランディングとは「顧客と信頼を築くこと活動」であり、それは、人との信頼関係を築いていくのと同様に、「約束を守る」とか「嘘をつかない」、といった当たり前の立ち振る舞いや姿勢が、企業に求められているからです。
「当社はお客様にとってこんな企業です。こういうモノ・コトを提供します」という約束をする。
そして、長期的な視点に立った上で、約束にこたえる商品・サービスを絶えず考え、実現し、提供する。
人と信頼を築く難しさは、皆様もご存じのことと思います。
長い道のりで、決して、簡単なことでありません。
ただ、その結果、信頼できる人がそばに居ることが、どれほど心強いことか。
ブランディングの効果も、企業にとって、まさにその”心強さ”に例えられる素晴らしいものになるはずです。
ぜひここで紹介したポイントを参考に、素晴らしいブランディングを実践していってください。
<スポンサーリンク>