部下の代表的な4タイプと効果的なコミュニケーション方法とは?
[最終更新日]2023/11/03
「部下が考えていることがつかめず、コミュニケーションが取りづらい」
「実は苦手なタイプの部下がいて、どう接したらいいか分からない」
このような悩みを抱えていませんか?
いわゆる「合わない」タイプの部下がいる場合、良くないとは思いながらも苦手意識を持ってしまうのは誰にでも起こり得ることです。
一方で、上司の側が内心で苦手意識を持っているということは、部下としても上司との関係に悩んでいる可能性があります。
人間関係の悩みはお互いにとってストレスとなりやすいので、できれば解消して良好な関係を築きたいものです。
そこで、本記事では臨床心理学や組織行動学をもとに構築されたコーチング理論をもとに、コミュニケーションスタイルをタイプ別に分類する方法を紹介します。
部下とのコミュニケーションを改善したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
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Index
目次
部下とのコミュニケーションが取れない・難しいと感じる原因
はじめに、部下とのコミュニケーションに苦手意識を持ってしまう原因について解説します。
コミュニケーションが取りづらい原因をつい相手に求めてしまいがちですが、上司自身の受け止め方や捉え方が原因となっていることもめずらしくありません。
とくに次の3パターンのうち、いずれかに当てはまっている場合は注意が必要です。
自分とは考え方・物事の捉え方が違うと感じる
コミュニケーションにおける判断基準が自分自身の感覚に偏っていると、相手の考え方や物事の捉え方に違和感を覚える場面が多くなる傾向があります。
たとえば、仕事の締切1つ取っても「遅くとも締切の前日までには完了させるべきだ」と考える人と、「締切当日に間に合えば問題ない」と考える人がいます。
言葉の定義や捉え方には幅があるため、このように期待する行動と言葉の間にずれが生じてしまうことがあるのです。
無意識のうちに判断基準が上司自身の感覚に偏っていると、部下の行動が期待している範疇になかった場合、「どうも伝わらない」「なぜそのような行動を取るのだろう?」と疑問やストレスを感じやすくなります。
その結果、「合わない」と感じる部下を上司自身が作り上げてしまうのです。
考え方や物事の捉え方が自分とは異なると感じる場面が多いようなら、知らず知らずのうちに判断基準を自分自身に置いていないか疑ってみる必要があるでしょう。
響く褒め方・効果的な叱り方が分からない
反対に、部下の反応をあまりに気にしすぎていると、部下にとって響く伝え方が分からないといった悩みを抱えやすくなります。
実は上司の言葉が響いていたとしても、表面に出てくる反応は部下によって異なります。コーチングにおいては「感情表出」と呼ばれ、感情を表に出す人と控えめにしか表現しない人がいるのです。
部下の様子を日頃からよく観察することは上司にとって重要ですが、表に出てくる反応のみを見て判断していると、かえって表面的な理解に終始してしまう恐れがあります。
「褒め方」「叱り方」といった技術的な部分よりも、相手の内面や考え方の傾向といった深い部分を理解しようと心がけることのほうが重要です。
部下に響く褒め方や効果的な叱り方が分からないと感じている人は、部下の反応に振り回されていないか振り返ってみましょう。
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世代の違いや経験の差として捉えてしまっている
コミュニケーションがうまくいかない原因を世代の違いや経験の差といった無関係なことに見出してしまうと、問題の本質を見失いやすくなります。
部下と上司で年齢や社歴に差がある場合はとくに注意が必要です。「まだ若いから」「入社〇年目だから」といったことが頭をよぎった経験がある人は、このパターンに当てはまっている可能性があります。
部下との年齢差や社歴の差は今後も埋まることがないため、ここに原因を見出しているうちは解決を図るのは難しくなってしまいます。本来であれば上司の側に改善するべき点があったとしても、「仕方がないこと」として見過ごしてしまう原因にもなり得るでしょう。
世代の違いや経験の差に原因を求めるのではなく、コミュニケーションのあり方にしっかりと向き合って解決策を模索する必要があります。
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自己主張と感情表出の2軸による部下の代表的な4タイプ
コーチング理論では、人の考え方や物事の捉え方を「自己主張」と「感情表出」の2軸によって分類します。2軸の要素が強く出ているかどうかによって、下図の4タイプに分類されます。
4分類は優劣や上下関係を示すものではなく、あくまで傾向を知るための手がかりです。
必ずしも1つのタイプに該当するわけではなく、「コントローラー寄りではあるものの、アナライザーの面もある」といった複合的な特徴を持つ人もいます。
このことを踏まえた上で、4タイプそれぞれの特徴を確認していきましょう。
リーダー気質の「コントローラー」
コントローラーは自己主張が強いものの感情表出は控えめなタイプです。
自分の意見を持っており決断力があるため、仕事を自発的にこなして結果を出していくリーダー気質の人が多いと考えられます。
一方で、行動の結果や物事の成果に強いこだわりを持つ傾向があり、保身を感じさせる言動や回りくどい態度を嫌います。
上司との関係性においては、上司の指示をそのまま鵜呑みにすることなく自分で判断する主体性がある反面、自分のやり方を頑なに貫こうとするところがあります。
「〜するべきだ」「〜しなくてはならない」などと自分をコントロールしようとする相手には反発しがちで、高圧的な態度を取る上司とぶつかることも少なくありません。
コントローラータイプの部下に対しては指示を単刀直入に伝えつつ、できるだけ判断を委ねて信頼を寄せる姿勢を見せることが大切です。
盛り上げ役の「プロモーター」
自己主張が強く感情表出も豊かであることから、チームの盛り上げ役になることが多いタイプです。
独自性を重視しており、アイデアマンと呼ばれる人もこのタイプによく見られます。
チームを仕切るのが得意で目立つポジションにやりがいを見出しますが、他の人の長所を承認し強みを引き出すのも得意であることが多く、持ち前の創造力を発揮して優れた成果を挙げる場合もあります。
反対に、考えを否定されたり理詰めで注意されたりすることは嫌う傾向があるため、基本的には「褒める」「自由に進めてもらう」といった姿勢で臨んだほうがうまくいくことが多いでしょう。
目標やビジョンを共有できれば強力なリーダーとなることも考えられますので、大枠の方針を伝えた上で意識的に褒めることを心がけましょう。
人間関係を重視する「サポーター」
自己主張は控えめであるものの感情豊かで、人との関係性を重視するタイプです。
周囲の人を援助したり、相手の心情に配慮して物事を進めたりすることに長けています。
周囲の人との調和を大切にするため決断に時間がかかりやすく、その場の雰囲気に影響されて意見や主張が変わることもめずらしくありません。
こうした特徴から、とくにコントローラータイプの人から見ると優柔不断で目的や意図がよく分からないと思われることがあります。
上司としてはサポータータイプの部下は扱いやすく、関係性が実際以上にうまくいっていると錯覚しがちです。
しかし、断らないのをいいことに無理難題を要求したり、仕事を丸投げしたりするとストレスを抱えやすいタイプでもあるため、気遣いや配慮を重視する姿勢が求められます。
理論・分析を得意とする「アナライザー」
自己主張・感情表出とも控えめで、感情よりも理論や分析にもとづいて行動するタイプです。
計画を重視し、客観性もあることから、細かな作業でも粘り強く慎重に進めることができます。
事実ベースで考えることが得意である反面、新しいアイデアを出したり前例のないことに取り組んだりするのは苦手とする傾向があります。
アナライザータイプと真逆のタイプであるプロモーターは、アナライザーから見ると「お調子者」「飽きっぽい」と映ることがあります。
反対に、プロモーターから見たアナライザーはドライで冷たい印象を受けることがあります。
アナライザーの部下は勢いに任せて仕事を推進するタイプの上司を苦手とすることが多いので、抽象的な指示や急な計画変更は避けたほうが無難でしょう。
褒める際にはどこがどのように良かったのかを具体的に伝えるなど、論理性を大切にする姿勢で臨むことが大切です。
コーチング式タイプ分けをコミュニケーションに応用するメリット
コーチング理論にもとづくタイプ分けについて述べてきました。自身の部下に当てはめて考えると、どのタイプに該当するのかイメージできたのではないでしょうか。
では、部下のタイプを知ることでコミュニケーションにどのようなメリットがもたらされるのでしょうか。
部下のタイプを見極めること自体が重要なのではなく、タイプに応じた対処法や改善策を講じてコミュニケーションをより円滑化することが本来の目的です。
部下のタイプを知ることを通じて、次のことを実現しやすくなるでしょう。
部下の考え方・物事の捉え方の傾向を理解しやすくなる
同じ指示を出した場合でも、部下によって捉え方は異なります。
考え方のおおよその傾向を知っておくことで、認識の食い違いや温度差が生じるリスクを抑えることにつながります。
また、仮に捉え方が想定と異なっていると感じた場合も、部下が日頃からどのように物事を捉えているのかを知る手がかりがあれば、部下の思考回路を理解する上で役立つでしょう。
コミュニケーションにおける食い違いがトラブルに発展するケースの多くは、「相手の考えが理解できない」と感じることが発端となっています。
4タイプの分類はあくまでも目安に過ぎませんが、タイプが異なれば捉え方や考え方も全く異なる場合があることを理解するための手助けになるはずです。
相手に響く適切な言葉・表現を選びやすくなる
相手に合わせた適切な伝え方をする上で、言葉や表現の選び方は非常に重要です。
たとえば、プロモータータイプの部下にとって「任せた」「頼んだぞ」といった上司の言葉は意欲を奮い立たされる一言かもしれませんが、サポータータイプの部下からは「丸投げされた」「気遣いに欠ける」といったネガティブな捉え方をされてしまう恐れがあります。
部下のタイプを知ることによってどのような伝え方をすれば響くのか、より論理的に推測しやすくなるでしょう。
適切な言葉・表現で指示を受けた部下は、自身が果たすべき役割や期待されている働きを認識しやすくなります。
その積み重ねが部下自身の成長やスキルアップにもつながっていく可能性は十分にあるでしょう。
部下のタイプを知ることは、長い目で見ると人材育成の面でも重要な意味を持っているといえます。
上司自身のタイプを知ることにも役立つ
自己主張と感情表出による4分類は、部下だけでなく上司自身のタイプを知る上でも役立ちます。
前出の図のうち、斜めに位置する「コントローラーとサポーター」「プロモーターとアナライザー」は対照的なタイプに当たるため、認識や捉え方に食い違いが起こりやすいといわれています。
対照的なタイプであることで良好な関係性を築くのが困難になるというよりは、相手と自分自身の違いを理解し、そもそもタイプが異なることを認識しておくことが大切なのです。
中でも、上司がコントローラーで部下がサポーターの場合や、上司がプロモーターで部下がアナライザーの場合は注意が必要です。
上司としては良かれと思って伝えている指示が、部下にとってはストレスを感じるものになっている可能性があります。
上司自身が自分のタイプを知ることによって、部下に与えかねないストレスを前もって察知することにも役立つでしょう。
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部下のタイプを参考にコミュニケーションを図る際の注意点
自己主張と感情表出による4分類は、部下のタイプを見極める上で利便性の高い方法といえます。
一方で、部下のタイプに応じてコミュニケーションを図る際には注意しておくべきポイントもあります。
ここまでの内容で「自分の部下はまさしくこのタイプだ」と直感したようなら注意が必要です。コミュニケーションの実践に活かす際には、次の2点を必ず意識しておきましょう。
「この人はこういうタイプだ」と決めつけないようにする
考え方の傾向を4つに分類する手法は、思考を整理し行動の方針を決定する上で活用しやすいメソッドです。
しかし、一歩間違えると「この人はこういうタイプ」と部下のことを安易に決めつけてしまう原因にもなり得ます。
前述のとおり、4分類は「人は必ず4つのタイプに分けられる」という意味ではなく、どの傾向が強く出ているかを知るための手がかりに過ぎません。
「プロモーター寄りだが、コントローラーの側面もある」「ふだんはサポーターでも、自身が担当する仕事ではアナライザーとして力を発揮している」といったことは十分に想定できるのです。
部下の側としても、直属の上司から思考や行動のパターンを決めつけられていると感じるのは決して気分の良いことではないでしょう。
人の性格や思考はまだら模様のように多彩な面を持っていることを忘れず、部下の今現在の様子をよく観察するよう心がけましょう。
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自己主張や感情表出のパターンは無数にあることを知っておく
4分類において指標としている自己主張と感情表出は、人によってさまざまな形で表れます。
自己主張の強さと聞くと「自分の意見を曲げない」「声が大きい」といった典型的な特徴をイメージしがちですが、「人の意見に流されず自分の考えを持っている」「上司のアドバイスに自分なりの解釈を加える」といったことも自己主張の1つの表れといえます。
感情表出についても同様で、「喜怒哀楽がはっきりしている」といった表面化しやすいパターンもあれば、「やや口数が減る」「前向きな発言が増える」といったようによく見ていないと気づかないパターンもあり得ます。
上司自身にとっての自己主張や感情表出の仕方を基準に考えてしまいがちなので、人によってほとんど無数のパターンがあることは理解しておく必要があるでしょう。
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まとめ)部下の特徴を知る手がかりとして4タイプの分類を活用しよう
今回紹介してきた4分類のどのタイプに部下が該当するかを判断するには、ふだんの部下の様子を振り返っておく必要があります。
改めて思い返してみると、これまであまり意識していなかった部下の優れた一面を発見したり、自分自身の部下への対応が偏りがちだったと気づかされたりすることがあるはずです。
このように、部下の特徴を知るための手がかりとして4タイプの分類を活用することで、より客観的な視点から部下とのコミュニケーションを見直していくためのきっかけをつかめることもあるでしょう。
4タイプの分類を活用して、ぜひ部下とのコミュニケーションを改善するためのヒントを見つけてください。
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