上司とあなたは「良きパートナー」ですか?快適な職場環境を実現する「ボスマネジメント」のススメ
[最終更新日]2023/11/03
「ボスマネジメント」とは一般的な上司部下の関係とは逆に、「部下が上司をマネジメントする」ことを指します。仕事の目的達成や、成果を高めるために部下が上司にうまく働きかけ、上手にコントロールしていくコミュニケーションスキルを指します。
この記事では、この「ボスマネジメント」を職場環境で取り入れることのポジティブな効果について説明します。
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いつの時代も、「上司との関係」は社会人の大きな悩みの一つ
旧来より、上司と部下の関係というのは組織構造において必要である反面、その立場の違いがしばしば問題をはらむ関係性でした。上司と部下という上下関係が生じれば、必然的に上司から部下への命令構造ができあがります。
すると、どうしても上司が部下を、上司の目的のためにうまく動かす、という考え方に終始しがちですし、部下は、上司に嫌われるリスクや、評価されないリスクなどを恐れて上司のいう通りに行動するようにします。
結果として部下は主体性や積極性を失っていきますし、上司と部下の相性が悪ければ、しばしば部下の精神状態に支障をきたしたりします。もちろん部下の主体性の欠如が組織全体のパフォーマンスを下げることにもつながります。
このように上司と部下という関係は組織構造において不可欠なものである反面、その誤ったあり方により組織の可能性を阻害し、また部下という組織の構成員に害をもたらしうる構造なのです。
上司との関係は、「与えられるもの」ではなく「共創していくもの」
こうした部下の主体性のない、受け身的な考え方は、上司があらかじめいるところに部下である自分が置かれていて、上司と部下の関係性が「外から与えられたもので、自分の意志の介在の使用がないもの」という意識が強く働いていることに起因します。
一般的に組織の配置は自分で決められるものではなく、上司を選んで部署につくことができないため、このような感覚に陥ることは無理のない部分ではあります。
しかし、だからこそ上司と部下の関係を「共に創っていくもの」であるという意識を持つことはとても重要です。この意識を持つことで、主体性が生まれ、部下が自分から上司との関係性を構築しようと働きかけられるようになります。
上司と部下の関係は「与えられるもの」ではなく「共創していくもの」という発想を持つことが、今回テーマとなっている「ボスマネジメント」を取り入れる上での大きなポイントとなります。
「ボスマネジメント」とは
一般的にマネジメントとは上司が部下に行うものであるとの意識にとらわれがちです。しかし、部下が自分の仕事のパフォーマンスを向上させるために、上司と理解を深め、お互いの目的意識を共有し、また自身の仕事の方向性を認識してもらうことで、上司が部下の仕事の成果に起用するように動いてもらうよう、上手に働きかけることは重要です。
このように部下の仕事をうまく運ぶために上司をうまくコントロールすることを「ボスマネジメント」と言います。ボスマネジメントの上手い部下が増えれば、部下全体のパフォーマンスが向上し、結果的に組織全体のパフォーマンスが向上します。
また、部下は主体的に組織の中で関係構築を図るため、部下に自主性が芽生えるとともに、部下の精神に悪影響を及ぼすリスクも低下します。
このように「ボスマネジメント」は上司・部下の組織構造のジレンマを解決させるコミュニケーションスキルであるといえます。
ボスマネジメントを効果的に進める、4つのポイント
ここまでで組織においてボスマネジメントを取り入れることのメリットを説明してきましたが、元来上下関係が成立していしまっている組織構造の中でボスマネジメントを完璧に取り入れるのはそう簡単なことではありません。
ここではボスマネジメントを促進するうえでの4つのポイントを説明します。これらを実践することで、次第にボスマネジメントが上手にできるようになっていきます。
コミュニケーションの機会を増やす
まず基本的なことですが、上司とのコミュニケーションを増やしていくことです。上司と部下の関係でありがちで望ましくない在り方として、部下が上司の指示を待ってばかりいて、自分から積極的にコミュニケーションを取りにいかない例です。
ボスマネジメントの基本はまず、部下が自分の考えや仕事の求める方向性を積極的に発信できるようになることです。どんなに理解のある上司だって、部下が「自分がどうしたいのか、どうありたいのか」発信してくれないことには、部下が仕事をしやすいように動くなどという芸当は困難です(中にはいるかもしれませんが、それは上司がとてもデキる上司ということになるでしょう)。
従って上司をうまく動かしていきたいと思うのであれば、まずはコミュニケーションの機会を増やすことが大前提です。今まで話しかけられるのを待つだけだった上司に自分から会話をしたり、仕事に関する提案をしたりするようなる最初のポイントです。
上司の「タイプ」を分析する
続いてのポイントは上司がどのようなタイプの上司なのかコミュニケーションを図りながら観察し、分析することです。上司も人間ですので完璧であったり、完全に公平であることなどありえません。
上司それぞれの癖や強み・弱みといったところがあります。上司をうまく動かす前段階として、そうした上司のタイプを知ることが肝要です。
尚、一般的に上司が果たす役割のカテゴリとして以下の7つがあります。どれか一つに当てはまるというよりは、どれも上司が担う機能のようなものです。
しかし、実際は上司によりこの7つのどれにストレスが置かれているかは人それぞれ異なります。まずは自分の上司が自分にとって以下の7つのどこに偏ってるか考えることも、上司のタイプを知る上では有用です。
- キャリア・コーチ・・・あるべき姿を実現するための相談相手
- アセッサー ・・・仕事や部下の評価者
- トラブルシューター・・・トラブル処理役や謝罪役
- スタンパー ・・・ものごとにGOサインを出す承認者
- ハイパー・プロフェッショナル・・・部下に仕事のノウハウを教える師匠
- コ・ワーカー ・・・一人ではできない仕事を代行するパートナー
- ネットワーカー ・・・必要な人脈の紹介者
上司の「期待しているもの」を知る
上司のタイプを知ったところで、上司が部下に期待しているものが何か考えます。上司は余程見捨てていない限り、常に部下に何かを達成することを期待しています。
部下の立場としては、仕事をこなすなかで、その上司の「役割期待」を十二分に達成していくことが、上司の信頼を深めるポイントです。上司をうまく動かすために、まずは自分が上司に求められていることを考え、極力仕事の中でそれを達成するように努めていくのです。
上司にとって部下が役割を充分果たすようになってくれば、より部下が仕事をしやすいように上司も上司なりに工夫するようになります。そうすれば部下の立場からしてみれば、上司を「自分の仕事がしやすいように」マネジメントしやすくなります。
このように、部下として仕事がしやすいようにマネジメントする大前提としてまずは、「上司が部下に期待しているもの」を知り、それにこたえて上司の信頼を勝ち取ることが、ボスマネジメントを実践するうえでの3つ目のポイントとなります。
上司との「素晴らしい協働のありかた」をイメージする
ここまでの3つのポイントをしっかり実施すれば、上司はもう自分が仕事がしやすいように動いてもらう素地は整いつつあるといえます。最後のポイントは、自分が仕事がしやすいように動いてくれるとして「どのように上司に動いてもらうのが効率的なのか?」を理解することです。
上司が自分の働きかけに応じて動いてくれる存在となったとしても、「上司がどう動けば自分の仕事がしやすくなるのか」理解していなければ、もちろん上司を動かして、仕事を上手にこなすことなどできるわけがありません。
先に分析済みの上司の特性も考えながら、自分の仕事においてどのように上司と協働していくのが、自分の仕事のパフォーマンスの向上につながるのか改めてイメージしてみましょう。
そのイメージが完成すれば、あとはそのイメージに従って上司とコミュニケーションをとり、自分の仕事がしやすいように動いてもらうように働きかけていくだけです。こうして、「ボスマネジメント」が完成するといえます。
私の事例──営業現場でのボスマネジメントでの実践
それでは営業職にいた私の知人の事例を説明します。私の知人の上司は、仕事はできるものの部下に対しては比較的厳しく当たるタイプの人で、知人の周囲にはその上司に疲弊する部下も多かったとのこと。
部下の多くは上司を怖がって、或いは慮ってあまり自分から積極的に意見をしたり、コミュニケーションを取ったりすることはなかったとのことです。
そこで私の知人は、積極的に自分から上司に話すようにしました。意見をするとかという大それたことではなく、まずは仕事について普通に相談するようにした、とのことです。その中で、上司の発想力やその発想を相手(主にその知人)に話す提案力は群を抜いていることを知りました。
また同時に、積極的にコミュニケーションを取っていけば、次に上司が「何を求めているのか」わかるようになっていきました。そのような関係性を構築したうえで、クライアント先に訪問する際、「ここぞ」という時には上司を積極的に同席させるようにしました(その打診も知人側から行って)。
すると、上司の発想力や提案力がクライアントとの打ち合わせの中でとても効果的にはたらき、自身のクライアントからいくつも案件を受注できるようになりました。
このように、ちょっととっつきにくい上司だからこそ、自分からコミュニケーションを取るように心がけ、上司を自分の仕事の中でうまく動かすようになることが、まさに「ボスマネジメント」と言えます。
部下が上司に積極的にコミュニケーションできる職場環境を
上司と部下はどうしても硬直的な関係とみなされがちで、部下は上司の指示に従って動くことしかできない存在となってしまいがちですが、それでは部下自身も、組織全体としても非効率や不具合をもたらしてしまいます。
部下が上司に上手に働きかける「ボスマネジメント」の実践により、部下が主体的に上司に働きかけながら仕事を行うことで、組織全体としても、部下自身としても良い効果が期待できます。
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