今さら聞けない「コンセプト」の意味。「テーマ」との違いやビジネス上での活かし方を解説
[最終更新日]2023/11/06
企画立案などを行う際、「まずコンセプトを決めよう」などといわれることがあります。
コンセプトが重要なものであることは多くの人が認識しているはずですが、「コンセプトとは具体的に何か?」と問われると、明確に答えるのは簡単なことではないと感じる人も多いのではないでしょうか。
たとえば、コンセプトと似た概念として「テーマ」があります。コンセプトとテーマの違いをはっきりと区別して使うことができているでしょうか?
本記事では、コンセプトとはそもそも何を指すのか、テーマとの違いやコンセプトがなぜ必要なのかを解説しています。
コンセプトを作る際に重要となるポイントもあわせて解説していますので、企画立案などに携わる機会のある方はぜひ参考にしてください。
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Index
目次
そもそも「コンセプト」と「テーマ」って別の意味なの?
はじめに、そもそもコンセプトとは何か、基本的な定義から確認しておきましょう。
コンセプトについて理解する上で重要になる考え方の1つとして、テーマとの違いが挙げられます。
コンセプトとテーマはしばしば混同して使われていることがありますが、両者は本来はっきりと区別されるべきものです。
テーマとの違いを明確化することで、コンセプトへの理解を深めることもできるはずです。コンセプトとテーマの違いについて、詳しく解説します。
コンセプト=「概念・考えの軸」
コンセプト(concept)は日本語の「概念」に相当し、物事に対する基本的な考え方や統一的な視点のことを指します。
「統一的」とあるようにコンセプトは不変であり、企画を貫く価値観や世界観の「軸」にあたります。
たとえば、映画『ターミネーター』シリーズであれば、「『機械に制圧された未来』を回避するための、人間の奮闘」などが作品のコンセプトといえるでしょう。
バリ島をイメージした飲食店であれば、「店内のインテリアや店員の服装、ホスピタリティに至るまで、バリ島のリゾートエリアを彷彿とさせる空間」がコンセプトとなります。
企画においては、判断に迷ったり議論が迷走しそうになったりした際は、常にコンセプトに立ち返って確認することが大切です。
先のレストランの例であれば、南国風という印象から「沖縄料理のゴーヤチャンプルーも提供したい」というアイデアを思いついたとしても、「バリ島のリゾートというコンセプトから逸脱している」ことを理由に却下すべきだと判断できるのです。
テーマ=「主題・伝えたいこと」
テーマ(theme)は日本語の「主題」に相当し、物事の前提となる「伝えたいこと」を指します。企画意図や企画趣旨と呼ばれることもあるように、コンセプトの前提となるのがテーマといえます。
映画『ターミネーター』シリーズでいえば、「(機械との対立構造によって際立つ、)人間の弱さと逞しさの二面性」といった、本質的に伝えたいメッセージがテーマに相当します。
飲食店であれば「バリのリゾート気分を味わえるレストラン」といった土台となる部分がテーマといえるでしょう。
企画を具現化していく過程で、具体的な行動の基調となる考え方がテーマといえます。
先のレストランの例であれば、「バリ島から直輸入したインテリアを配置する」「店員のユニフォームはバリ島のリゾートホテルを参考にする」といった計画を策定していく際、テーマに基づいて判断していくことになるでしょう。
つまり、コンセプトはテーマありきで決めていくべきものであり、テーマよりも先にコンセプトを決定するということは本来あり得ないのです。
ビジネスシーンでの「コンセプト」は「テーマ+切り口」
コンセプトとテーマを映画・レストランの2つの例を使って解説してきました。
どちらの例においても、テーマは「登るべき山」にたとえることができます。「あの山の頂上を目指す」と決めることが、テーマを決定するということです。
これに対して、「どのルートから登るべきか」「登山の過程でどんなツールが必要か」を考えていくことが、コンセプトを決めていくプロセスにあたります。
このように、コンセプトとは「テーマ+切り口」と捉えることができます。
ビジネスシーンにおいては、企画趣旨が決定し、次に企画をどう具現化していくかを詰めていくにあたり、コンセプトを考えていくことになります。
山がどこにもなければ登山の仕方を考える必要がないように、テーマは根本的な目的であり、その目的を達成するための方策がコンセプトに相当します。
コンセプトとテーマを混同しているケースでは、本来ならテーマを考える段階でコンセプトについて議論を始めている可能性があります。
コンセプトは「テーマ+切り口」であることを踏まえて企画を考えることが大切です。
なぜビジネスに「コンセプト」が必要なのか
コンセプトとテーマの違いや、コンセプトの基本的な概念について整理できたでしょうか。
ここからは、ビジネスにおいてなぜ「コンセプト」が必要とされるのか、その重要性や意味合いについて確認していきます。
企画を立案する際、しばしばコンセプトの重要性が指摘されることがあります。コンセプトを明確にしておくことで、どのようなメリットを得られるのでしょうか。
コンセプトの重要性を実感する場面として、具体的に次の3点が挙げられます。
- 業務・企画を進めていくうえで「ブレ」が起きにくい
- 「ニーズがあるか」が明確になる
- ミーティングの回数を減らすなど、業務の効率化に繋がる
業務・企画を進めていくうえで「ブレ」が起きにくい
企画を決定していく過程では、ブレーンストーミングによってアイデアを無作為に出したり、複数名でアイデアを持ち寄ったりすることがあります。
一見すると魅力的に思えるアイデアがいくつも出されるケースもあるはずですが、あらゆるアイデアを実行しようとすれば企画趣旨に「ブレ」が生じる恐れがあります。
企画以外の一般的な業務改善案などを話し合う場合も同様です。
業務改善の提案において「作業を効率化する」「残業を減らす」ことが目的であるにも関わらず、「ダブルチェックをトリプルチェックに強化する」といった方策を講じてしまうと、かえって作業量が増えてしまい、効率化とはかけ離れた結果をもたらすでしょう。
効率化のための負担軽減がコンセプトであることを、あらかじめ話し合うメンバー間で共有しておく必要があります。
このようにコンセプトを固めておくことで、業務や企画を進めていくうえでの「ブレ」を起きにくくし、同じ方向へ進むための議論をしやすくなるのです。
「ニーズがあるか」が明確になる
前述のように、コンセプトは具体的な行動の基調・判断基準となります。テーマを具体的な行動レベルに落とし込んでいく過程で、「いつ」「どこで」「誰に」「何を」「なぜ」提供するのかを明確化していくことになるでしょう。
このとき、仮にテーマそのものにニーズがなかったとすれば、コンセプトを策定していく際、すぐさま困難に直面するはずです。
先の「バリ島をイメージしたレストラン」で、現地から輸入した原材料で調理しようと考えた場合、仕入れに必要なコストを計算することになります。
原価をもとに提供するメニューの価格帯を試算した結果、客単価が2,000円になったとします。出店する予定のエリアには安価なファミレスやファストフード店が多いとすれば、そもそも一食2,000円を支払ってバリ島の料理を食べに来る顧客は稀でしょう。
このように、コンセプトを詰めていくことで、そもそもニーズがあるかどうかが明確になっていきます。
コンセプトを固めることは、ビジネスとして実現可能なアイデアかどうかを見極めることにもなるのです。
ミーティングの回数を減らすなど、業務の効率化に繋がる
コンセプトが不明確な企画では、話し合いが迷走しやすくなります。
ミーティングに参加するメンバー間で「何を」「何のために」「誰に向けて」提供するための企画であるかが共有されておらず、各々が思いつきで発言しやすくなるからです。
それぞれのメンバーが思うままに発言してしまうと、議論が想定外の方向に進みやすくなり、結果的にミーティングの回数が増えてしまう恐れがあります。
「何度も話し合いを重ねているわりには議論が前進しない」と感じるようであれば、そもそもコンセプトが明確になっていない可能性があります。
コンセプトを明確にしておくことで、ミーティングの目的や話し合うべき事項を共有しやすくなり、効率的に話し合いを進めることができます。
もし議論が迷走する兆候があれば、コンセプトに立ち返って適切な議論かどうかを判断すればいいからです。
このように、コンセプトを固めておくことで結果的に業務を効率化し、目的達成に向けて組織のリソースを集中させることにもつながるのです。
コンセプトを作る際に大切な3つのポイント
ビジネスを推進していく上でコンセプトが重要な役割を果たしていることへの理解が深まったでしょうか。
では、実際にコンセプトを作る際にどのようなことを意識すればいいのか、ポイントを確認しておきましょう。
前述のように、コンセプトは物事に対する基本的な考え方や統一的な視点のことを指します。
裏を返せば、コンセプトの方向性が誤っていると、ビジネスの方向性そのものが的外れなものとなってしまうこともあり得ます。
判断に迷ったら都度立ち返るための不変のコンセプトを作るには、次の3点を意識しておく必要があります。
- 「誰に向けて行うのか」ターゲットを明確にする
- 最終地点(ゴール)を見据えたうえで考える
- コンセプトシートを作成する
「誰に向けて行うのか」ターゲットを明確にする
コンセプトを考える際にありがちな誤りとして、「自分は何がしたいのか」「どんなものを作りたいのか」を真っ先に考え始めてしまうことが挙げられます。
しかし、コンセプトを作る目的がビジネスの「軸」の形成にあることを踏まえれば、最優先すべきは市場のニーズであることは明白です。
コンセプトを作るにあたり、まずは「誰に向けて行うのか」を明確にし、ターゲットを絞り込んでおきましょう。
「幅広くいろいろな人に受け入れられる商品」「誰にでも使ってもらえそうなサービス」といった方針はコンセプトとはいえません。
製品やサービスを利用する人がどのような課題を抱えているのか、悩みの深刻さや解決に向けた努力の度合い、心情的な背景まで含めて、具体的な人物像を想定しておく必要があります。
たとえば、
「出世したい30代男性の会社員が、資格を取得したいものの意欲が湧かず、何か具体的な行動を起こしたいと考えている」
「共働きの40代の夫婦が、親子で気軽に食事ができるレストランを探しているが、リーズナブルでおいしいレストランが見つからず困っている」
といったように、できるだけ具体的な状況を想定しておくことが大切です。
最終地点(ゴール)を見据えたうえで考える
コンセプトは企画を具現化していく上で判断基準となるべきものですが、コンセプトを考える際には企画のスタート地点だけを見ていては適切なものにはなりません。
コンセプトは必ず最終地点(ゴール)を見据えた上で考える必要があります。
例えば、前に挙げた「資格を取得したい30代男性」のゴールは、「資格に対して『自分にもできそうだ』『すぐに始められそうだ」』と思ってもらえること」と設定できるでしょう。
このように、最終地点を見据えることは「ターゲットが結果的にどのように行動してほしいのか」という結果を想定しておくことを指します。
ゴールに到達するためのコンセプトを考えていくことによって、現実味に欠けるアイデアや無駄なプロセスを省き、企画をブラッシュアップすることにつながります。
コンセプトシートを作成する
コンセプトを考えていくにあたって、思考を整理しながら進めることと、抜け漏れを防ぐことが非常に重要です。
そのためには、コンセプトを考える上で必要な要素をまとめた「コンセプトシート」を作成し、活用していくのが効果的でしょう。
コンセプトシートの一例として、下図のような書式が想定できます。
コンセプトの前提となるテーマに始まり、最終ゴールをイメージするまでのプロセスが、コンセプトシートを作成する過程で完徹できる仕組みになっています。
ポイントは、テーマから最終ゴールまでが一つのストーリーのようにつながりが見られるように作成することです。
テーマから最終ゴールにつながらないとすれば、ターゲットの想定やニーズ、具体的な訴求内容・手法のいずれかに無理があることが考えられます。
コンセプトシートを作成する中で、そもそもテーマ設定が適切であるか、最終ゴールが明確にイメージできているか、といった点をチェックする役割も果たしているのです。
コンセプトシートは基本的に思考を整理するためのものですが、実際にプロジェクトが動き出してからも定期的に見返し、場合によってはプロジェクトメンバー間で共有してもいいでしょう。
常にコンセプトに立ち返る上で、明文化されたフォーマットがあると共通認識を形成しやすくなるはずです。
まとめ)コンセプトを強化して企画力の向上を図ろう
今回は、ビジネスにおいて頻繁に使われる「コンセプト」の本来の意味合いや意義について解説してきました。
理解しているようでいて実は見落としがちだったポイントや、いつの間にかテーマとコンセプトを混同していた点が見つかった人もいるのではないでしょうか。
当たり前と思われがちな言葉だからこそ、本来の意味や意義を定期的に見直し、基本に立ち返っておくことが重要です。
確固としたコンセプトを打ち出せるようになれば、企画の実行力が高まるだけでなく、企画の実現に向けたチームの結束力が高まるなど、副次的な効果も期待できるはずです。
本記事で解説してきたポイントを参考にコンセプトを強化して、ぜひ企画力の向上に役立ててください。
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