「投資診断士」の資格は取得したほうが良い?メリット・特典・取得がおすすめの人
[最終更新日]2022/12/15
2019年から新たに登場した金融系の資格「投資診断士」について、皆さんはどのくらいご存知でしょうか。
いまや終身雇用がいよいよ限界を迎え、先行きが不透明な時代になりつつあります。さらに、健康寿命が伸びており、経済面では「長生きのリスク」といったことも言われるようになっています。
こうした時代においては、投資について知識を持ち、適切に資産を形成するための金融リテラシーが従来よりもいっそう重要性を増していくはずです。
今回は投資に関するアドバイスを行う「投資診断士」の資格について解説します。
<スポンサーリンク>
Index
目次
投資診断士ってどんな資格?
近年、若手〜中堅の会社員の間で投資への関心が高まりつつあると言われています。
これまで会社員が収入を得る方法としては「労働」が主体と長らく考えられてきました。
しかし、より主体的に手持ちのお金を「運用」することによって労働以外の収入源を持ち、中長期的な資産形成を図ることの重要性に気づく人が増えています。
一方で、投資と聞くと「失敗したら後悔しそう」「難しそう」といった理由から、投資を躊躇してしまう人も少なくないのが実情です。
投資診断士とは、こうした時代情勢を受けて投資する上で必要とされる知識を幅広く身につけ、適切なアドバイスや啓蒙を行うことのできる人材を増やすことを目的として設けられた資格です。
《投資診断士®の概要》
実施団体 | 一般財団法人投資診断協会 |
---|---|
取得方法 | 投資診断研修の受講・認定試験に合格 |
受験資格 | 特になし |
主な研修内容 | ・投資診断協会 基本理念 ・投資に関する基礎知識 ・投資商品について(株式、債券、投資信託、生命保険、不動産投資、FX、派生商品(デリバティブ)、 代表的な貯蓄型投資商品、現物投資、暗号資産(仮想通貨)など) ・制度投資(確定拠出年金、NISAなど) ・ポートフォリオの考え方 ・投資診断士®とは |
FP(ファイナンシャルプランナー)との違い
金融系の資格として以前から知られているものとしてFP(ファイナンシャルプランナー)があります。
投資診断士も金融系の資格ですが、FPとのちがいはどういった点にあるのでしょうか。
違いその➀:国家資格か民間資格か
FP技能士は1級から3級まですべて国家資格であるのに対して、投資診断士は民間資格です。
ただし、税理士や会計士といった士業資格では独占業務が定められていますが、FP技能士・投資診断士はいずれも独占業務が認められていないという点は同じです。
独占業務とは
業務独占(「業務独占資格」ともいいます)とは、その業務に必要とする資格を有する者でなければ携わることを禁じられている業務を、独占的に行うことができることを言います。業務独占資格は、国家資格の分類の一つです。
違いその②:習得する知識の範囲
FP技能士は「くらしとお金」といった広範囲にわたる専門知識を習得しますが、投資診断士は投資商品やポートフォリオの選定方法など、投資に特化した知識を習得します。
言い換えれば、FPは「お金の専門家」、投資診断士は「投資の専門家」と表現できます。
違いその③:アドバイスする分野
FP技能士がアドバイスするのは「ライフプラン」全体から見た資金計画や設計です。
そのため、保険の見直しや家計の管理方法といったアドバイスも行う場合があります。これに対して投資診断士は投資に役立つ商品解説やポートフォリオに対するアドバイスが中心となります。
資格取得の難易度は?
投資診断士の資格を取得するには、公式テキスト1冊と360分の研修動画の視聴によって知識を習得し、資格登録試験に合格する必要があります。試験の出題方式や出題数は下記の通りです。
試験方式 | 筆記試験(選択式) |
---|---|
出題数 | 60問 |
試験時間 | 60分 |
合格基準 | 60点以上(100点満点) |
2020年9月現在、受験者の合格率は公表されていませんが、勉強用の教材の分量や試験での出題数・試験時間から推察すると20〜30時間ほどの勉強時間で合格可能と考えられます。
同等のレベル感の資格としては、簿記3級やFP3級などが想定されます。
いずれも簿記やFPの入門編の資格ですので、資格取得の難易度としては易しい部類に入ると言えます。
金融に関する専門知識を持っていない人でも、テキストと研修動画でしっかりと勉強することによって合格を目指せるレベルの資格と考えられます。
投資診断士のメリット
投資診断士は新しく登場した資格ですので、取得することによってどのようなメリットがあるのか気になっている人は多いはずです。
せっかく取得するなら、メリットを多く感じられる資格を選びたいと考えるのは自然なことです。
投資診断士を取得するまでのメリットと取得した後のメリットとして、主に次の3つが挙げられます。
- 短期間・低単価で取得可能
- 客先への営業力のアップ
- 資格保有者限定の特典が受けられる
短期間・低単価で取得可能
投資診断士の資格取得に向けた勉強としては、申し込み後に送られてくるテキストと研修動画となります。
スクールなどへ通学したり実技試験を受けたりする必要はありませんので、自分のペースで学習を進め、比較的短期間で取得することができます。
働きながら時間を見つけて勉強したいと考えている社会人にとって、取得までの期間が短くて済むことはありがたい点です。
また、資格取得までのコストがそれほどかからないこともメリットの1つです。
取得までの費用は、下記の通り「研修受講料」と「資格試験料」の2つです。
勉強に必要なテキストや動画視聴料もこれらの費用の中に含まれており、トータルでも4万円台で取得できます。「資格取得=高額な費用が必要なのでは?」といった心配は無用です。
項目 | 金額(税別) |
---|---|
研修受講料 | 33,000円 |
資格試験料 | 10,000円 |
合計 | 43,000円 |
客先への営業力のアップ
投資診断士の資格取得者には認定証が発行され、会社の名刺などにも「投資診断士」と資格名を記載することができます。
投資に関する専門知識を有することが客観的に判断できるようになりますので、お客様からの信頼を高めることにつながります。
お客様は大切な資産を運用することになるわけですから、金融商品に対してきちんと理解している人から説明を受けたいと考えるのはごく自然な心理です。
特定の会社が販売する商品を勧めるだけでなく、投資全般に関して多岐にわたる知識を持ち、より中立な立場でアドバイスしてくれるというイメージが「資格保有者」にはあるものです。
このように、自身が資格取得者と伝えることによって、お客様から一目置かれることは十分にあり得ます。
資格保有者限定の特典が受けられる
資格取得者には説明資料テンプレートや統計数値、グラフデータといった営業に役立つツールが特典として付与されます。
こうした資料を自分でゼロの状態から作成するよりも効率的で、かつ他の営業担当者との差別化を図りやすくなるでしょう。
また、金融業界のプロフェッショナルが監修する記事を読めるメディア「ZUU online」のプロフェッショナルプランを無料で活用することができます。
投資に関する情報は日々刻々と変化しますので、情報収集のツールとしてプロフェッショナル向けのメディアに触れていることは強みになるはずです。
さらに、金融庁関連の情報や金融リテラシー向上に役立つメールが月に2回配信されるほか、資格保有者が参加できるセミナーも用意されています。
セミナーでは金融業界の著名人や金融商品に精通した講師の話を聞くことができ、参加者との交流会が行われることもあります。
こうした機会を通じて、より広い視野で情報を収集し、投資に対する知見を高めることにつながるでしょう。
投資診断士のデメリット・注意点
投資診断士は、投資に特化した初の資格としてユニークな存在です。登場したばかりの資格だからこそ注目度も高く、取得しておくことで話題づくりにもなるでしょう。
ただし、どのような資格にも言えることですが、投資診断士の資格を取得して得られるのはメリットばかりではありません。人によっては、投資診断士にデメリットを感じる点も全くないとは言えないのです。
とくに次に挙げる3点については、資格取得にのぞむ前に注意点として理解しておいたほうがいいでしょう。
- 教材・動画での独学なので、根気が必要
- 資格更新料として、2年ごとに2万円がかかる
- 金融商品の販売・勧誘はできない
教材・動画での独学なので、根気が必要
投資診断士は決して難関資格ではなく、テキストや研修動画で勉強すれば取得を目指すことができます。
しかし、金融や投資に関する知識がよほど豊富な人でない限り、勉強することなく合格できるほど甘くはありません。研修動画は360分の長さがありますので、最低でも6時間の勉強時間を確保する必要があります。
まだ新しい資格ということもあって、試験対策や勉強方法に関する情報はほとんどありません。
そのため、資格取得を目指すのであれば独学で勉強を進めることになります。
仕事をしている人であれば、毎日少しずつ時間を作ってコツコツと勉強していくことになりますので、それなりに根気を要すると言えるでしょう。
合格するには根気強く勉強するしかなく、手っ取り早く投資診断士の資格を取得する方法はないと考えましょう。
資格更新料として、2年ごとに2万円がかかる
投資診断士は一度取得したら以降は何もしなくても維持できるわけではありません。
資格の有効期限は2年間となっており、取得から2年経ったら更新料を支払う必要があります。更新料は2万円です。つまり、取得した資格を維持するためには2年おきに2万円を収めることになります。
参考までに、FP技能士は一度取得すれば生涯有効な資格です。
このほかの代表的な金融系資格にAFPやCFPがありますが、いずれも年会費が必要で、CFPに関しては2年ごとに更新のための単位取得が必要になります。
このように見ると、投資診断士の資格更新料は資格維持のためのコストとしては決して高すぎるわけではないことが分かります。
投資診断士の合格者に提供されZUU onlineは本来なら月額4,980円ですので、この費用が無料になると考えれば元は取れていると捉えることもできます。
《金融系資格の新規登録・入会費と維持コスト》
新規登録・入会費 | 維持コスト | |
---|---|---|
投資診断士 | なし | 更新料:20,000円/2年 |
FP | なし | なし |
AFP | 10,000円 | 年会費:12,000円/1年 |
CFP | 5,000円 | 年会費:20,000円/1年 更新料:9,000円/2年 |
金融商品の販売・勧誘はできない
仮に投資診断士の資格を取得しても、たとえば「投資信託の〇〇はおすすめですよ」「△△ファンドに出資しませんか?」といった、直接的な販売や勧誘はできません。
金融商品を販売・勧誘するには、それぞれの商品の取り扱い資格を取得し、金融商品仲介業として登録を済ませておく必要があります。
投資信託であれば証券外務員資格の取得は必須であり、生命保険であれば生命保険一般課程試験に合格していなければなりません。日本FP協会も公式サイトで下記のように注意を呼びかけています。
参考:「金融商品の販売・勧誘について」 日本FP協会公式サイトより
「金融商品」の販売・勧誘に係る業務を行う場合には、当該販売・勧誘に係る「金融商品」の種別等に応じて「第一種金融商品取引業」又は「第二種金融商品取引業」の登録を受ける必要があります(金融商品取引法(以下「法」といいます。)第28条)。また、証券会社等の第一種金融商品取引業もしくは投資運用業を行う金融商品取引業者または登録金融機関の委託を受けて、以下のいずれかの行為(投資運用業を行う者が行う④の行為を除く。)を行う場合には、金融商品仲介業の登録を受ける必要があります。
①有価証券の売買の媒介(法2条8項10号に掲げるものを除く。)
②法2条8項3号に規定する媒介
③法2条8項9号に掲げる行為
④法2条8項13号に規定する媒介
投資診断士として可能なアドバイスは、あくまで「投資とはどういうものか」「投資によって得られるメリットと注意点」といった一般論の範囲に限られます。
各金融商品を取り扱うための資格を持たないまま提案・販売すると金融商品取引法に抵触しますので、アドバイスや啓蒙を行う際には実質的な勧誘にあたらないよう十分に注意する必要があります。
投資診断士の資格取得がおすすめな人
投資診断士は受験資格の制限がなく、誰でも挑戦することができます。
投資に関する知識を習得するための門戸が広く開かれている反面、どのような人が取得して活用する資格なのかイメージが湧かない面があるかもしれません。
そこで、投資診断士の資格取得・活用をおすすめしたいタイプの人について解説します。
もちろんここに挙げた以外にも投資診断士の資格を活用できる人はいますが、とくにおすすめできる人として次の4パターンが挙げられます。
こんな人は資格取得がおすすめ
- 投資に興味があり、知識を深めたいと考えている人
- 投資の魅力やメリットを多くの人に知ってもらいたい人
- 今後、金融関係の仕事に就きたい・転職したいと考えている人
- 金融機関などですでに投資商品を販売している人
投資診断士は、比較的短期間で投資の概要を学ぶことができる資格です。現在すでに投資をしている方や、これから投資に挑戦してみたいと考えている人にとって、投資への理解を深める機会として存分に活用することができます。
投資の魅力やメリットについて身近な人に知ってもらいたいものの、どのような立場から伝えればいいのか迷っている人にも、投資診断士はおすすめの資格です。
投資診断士という肩書を得ることで説得力が増すだけでなく、専門家としてアドバイスもしやすくなるからです。
金融関係の仕事をしていきたい人や、すでに投資商品の販売に携わっている人であれば、取得することで得られるメリットはさらに大きいでしょう。
投資に関して一定以上の知識があることを対外的にアピールしやすくなり、顧客や取引先の信頼獲得に寄与するはずです。
投資診断士の資格取得の流れ
最後に、投資診断士を取得するまでの流れについて確認しておきましょう。
資格取得を目指す場合、「どんな勉強が必要か」「どのくらい勉強したらいいか」「試験の難易度はどうか」といったことに目が向きがちですが、受験申し込み試験会場の確認など、他にもやっておくべきことがいくつかあります。
いざ受験しようと思ったら試験会場が思ったよりも遠かった……、といったことのないよう、前もってしっかりと確認しておくようにしましょう。
- 受験申込み・入金
- 試験日と会場の選択
- 研修受講・受検
- 資格取得
受験申込み・入金
投資診断士の資格を取得するには、まず受験申込み手続きを済ませ、研修受講料33,000円・資格試験料10,000円(各税別)を入金する必要があります。
研修受講料にはテキストと動画教材の費用や送料も含まれていますので、別途教材費はかかりません。
受験申込みから3営業日以内に試験詳細の案内メールが届き、マイページにログインできるようになります。
このマイページへのログイン情報は資格取得が完了するまで必要になりますので、大切に保管しておきましょう。
試験日と会場の選択
メールで案内されたマイページにて試験会場と日程を選択し、あらかじめ試験の予約を取っておきます。
試験会場は国内260箇所から選ぶことができますので、自宅からの最寄りなど受験に都合の良い会場を選びましょう。
試験日程に関しては、申込みから3週間経過した日以降から選べます。合格するためにはしっかりと勉強しておく必要がありますので、勉強期間を考慮した上で試験日を決めます。
教材が到着するまでには入金して決済が完了してから1週間程度かかることに注意が必要です。
研修受講・受験
教材が到着したら、いよいよ試験勉強がスタートします。研修動画は基本的にテキストの内容を解説したものですので、動画を見た後の復習用として使うと効果的でしょう。
受験は会場で行われる集合試験と、テストセンターでコンピュータを利用して実施する「CBT」形式の受験があります。
参考:テストセンターの受験会場
合格するには100点満点中60点以上を取らなくてはなりませんので、重要なことから優先的に理解を深めていきましょう。
資格取得
集合試験で受験された場合は後日郵送にて合否の結果が通知されます。テストセンター(CBT形式)で受験された場合は結果が試験後にその場で通知されます。
合格者には後日、研修修了証と資格認定証が郵送されます。名刺に掲載可能な資格認定マークは、研修動画ページにて配信されます。投資診断士としての資格は取得から2年間有効です。
2年が経過すると資格更新料20,000円(税別)を納入して資格を更新する必要があります。
更新の際には再度更新確認試験を受講し、投資に関する最新の動向について学ぶことになっています。
まとめ)投資診断士は金融系の入門資格としておすすめ
かつては一部の資産家のものと思われがちだった投資は、ここ何年かの間にとても身近なものになりました。
ごく普通の会社員や主婦の方々が投資について興味を持ち、実際に投資をしてみたいと考えるようになっているのです。
こうした時代においては、投資に関するしっかりとした知識を持つことの重要性が増していきますし、投資に関する全般的なアドバイスができる人の価値がさらに高まっていくでしょう。
投資診断士は、金融系の資格の中では比較的ハードルが低く、入門資格としておすすめです。
投資に興味がある人はもちろんのこと、投資について理解を深めることで仕事に活かしたい人も、投資診断士の資格取得について検討してみてはいかがでしょうか。
おすすめ記事
こんなお悩みはありませんか?
- 今のままキャリアを積んで行くべきか迷っている
- もっと活躍できる場所がある気がする
- 転職するか、今の会社に留まるかどうするべき?
満足できるキャリアパスを見つけるためのヒントをご紹介します。
<スポンサーリンク>