コロナウイルス関連報道で私たちが注視しておきたいデータとは?
[最終更新日]2022/12/15
コロナウイルス感染対策に伴う外出自粛が解除されたものの、依然としてウイルスは世界中に存在しており、予断を許さない状況が続いています。
記事を読まれている皆さんにとっても、自部署の出勤体制をどうするべきか、日々の報道を参照しつつ頭を悩ませている問題なのではないでしょうか。
2020年7月現在、日々報道されるコロナウイルス感染者数は自粛解除からじわじわと増えており、不気味な様相を呈しています。
しかし、報道されているのはあくまで「感染者数」であり、その他の指標があまり聞かれないのも事実です。
では、コロナウイルス関連の報道について、私たちはその情報をどのように捉え、どのように判断を下すべきなのでしょうか。参照していただきたい4つの数値を整理しつつ、判断の拠り所について考えていきましょう。
<スポンサーリンク>
Index
目次
コロナウイルス関連報道でよく聞く「感染者数」はどう捉えたらいい?
連日、テレビや新聞ではコロナウイルス感染者数が報じられています。皆さんは、この数値がどのように集計されているのか疑問に感じたことはないでしょうか。
実は、厚生労働省は5月10日更新分より、それ以前と集計方法を変更しています。なぜ集計方法が変更されたのか、具体的にどのような変更が行われたのか、まずは把握しておきましょう。
感染者数はどのように集計されている?
コロナウイルス感染症は、感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)により、事象発生時の対応が定められた指定感染症です。
指定感染症の感染状況を国が把握するために、従来は医療機関から各地域の保健所へ報告が上がり、さらに自治体へ報告されるといったフローが取られていました。発生届には次の事項などを記載することになっています。
感染症発生届に記載する事項の例
- 患者の氏名、住所、職業
- 症状
- 診断方法
- 感染原因、経路、地域
ところが、感染者数が増加するにつれて医療機関が多忙になり、発生届が未送信のまま放置されたり、保健所が発生届の内容確認に時間を要したりする事態に陥りました。
さらに、東京都の例では保健所から自治体への報告をFAXによって行っていたために、FAXが殺到し通信エラーが発生するなど、正常な集計が行えない状況が生じていました。
そこで、厚生労働省は5月10日更新分より集計方法を変更し、国独自の集計から都道府県が集計・公表する人数を積み上げる方式にしたのです。
つまり、私たちが現在目にしている感染者数の報道は、各自治体から上がった感染者数の合計ということになります。
PCR検査の精度はどの程度正確なのか?
新型コロナウイルス感染の陽性判定に用いられているPCR検査は、鼻の穴から綿棒を入れ、鼻咽頭の粘膜から検体を採取することで行われます。
採取した検体にウイルスの遺伝子が含まれているかどうか、遺伝子の増殖を繰り返して検出を試みる方法です。
PCRの原理
PCR検査の正確性について、一般社団法人日本疫学会のWebサイトでは下記のように解説されています。
中国の武漢市にある華中科技大学の医学院附属病院のアイらの研究では、新型コロナウイルス感染が疑われ、肺炎の検査のための胸部CT検査と新型コロナウイルスのPCR検査の両方を受けた1014人のデータについて分析を行ったところ、最初にPCR検査を受けた際に、陽性だったのは59%(601/1014)であり、その後、PCR検査を繰り返したところ、最初にPCR陰性だった15名の患者さんがPCR陽性になるまで平均で5.1日を要したと報告しています。
このように、新型コロナウイルスに既に感染していると考えられるのに、早い段階では、60~70%くらいしかPCR検査が陽性にでない可能性が報告されています。
つまり、仮に新型コロナウイルスの陽性者であっても、検査を実施するタイミングによっては30〜40%が陰性と判定される可能性があることになります。
このように、PCR検査によって判明した感染者数は決して正確無比とは言えないことが分かります。
感染者数はおよそ2週間前の状況が投影されている
さらに忘れてはならないのが、日々報道される「新規感染者数」はその当日に新型コロナウイルスに感染した人の数ではないという点です。
ある人が体調不良を訴えて医療機関を受診して検査を受け、判明した検査結果が公的機関に報告されるまでの期間は10日前後を要するとも言われています。つまり、体調の異変を感じてからウイルスに感染していることが公になるまでに10日前後が経過していることになります。
さらに、感染してから症状が出るまでに期間がかかることを考慮すると、連日報じられている感染者数は2週間程度前の感染者数が投影されている可能性があるのです。
このように見ていくと、感染者数は不確実な面を多々抱えた数値と言わざるを得ません。よく言われているように、検査数が増えれば感染者が判明する頻度も高まることから、検査数との関連性も考慮する必要があります。つまり、感染者数だけを見て事態の深刻度を判断するのは性急と考えるべきなのです。
では、私たちは何を拠り所としてウイルスの感染状況を知ればいいのでしょうか。次項より、感染者以外の指標として参照しておきたい4つの数値について解説します。
注目すべき4つの数字
- 死亡者数
- 入院治療等を要する者
- 陽性率
- 実効再生産数
なお、「東洋経済オンライン」「日本経済新聞」では、新型コロナウイルスの国内感染状況に関する報道発表資料を日々掲載・更新しています。
いずれも随時更新されており、グラフ化されていて見やすいため、まずはこれらのページをブックマークに追加しておくといいでしょう。
新型コロナウイルス感染状況を知る上で重要な数値➀「死亡者数」
新型コロナウイルスによる「死亡者数」とはどのような数値?
「死亡者数」とは、新型コロナウイルスに感染した結果、不幸にも命を落とした方の人数です。
7月17日時点での国内での死亡者数は累計984名です。命を救えなかった方々がこれほどいらっしゃったのは非常に残念なことです。
一方で、日本での新型コロナウイルスによる死亡者数は、世界的に見て例外的に少ない水準となっています。
7月時点でアメリカでは14万人以上、ブラジルでは7万8千人以上の方々がコロナによって命を落としています。
これに対して、台湾での死亡者数は7名、ベトナム0名、タイ58名など、他の地域と比べて東アジアや東南アジアの一部の国で死亡者数を抑えることができていると指摘されることがあります。
黄色人種は他の人種と比べてコロナに対して耐性があるのではないか、といった言説も聞かれるものの憶測の域を出ていない状況です。
なぜ死亡者数が重要な数値なのか
私たちが新型コロナウイルス感染を恐れる最も大きな理由は、「命を落とす恐れがあるから」です。
感染したものの重症化しない人もいるため、感染=死を意味しているわけではありませんが、若者を含めて命を落とすリスクが全くないわけではありません。中には重症化してしまい、回復後も後遺症が残る場合もあるようですので、できれば感染したくないと考える人が多いのは当然です。
ただし、リスクの大きさを考えた場合、命を落とす人が多いのかどうかは社会的な影響という面でも注視しておくべき数字です。
その観点で捉えると、7月17日時点での死亡者数は全国で「前日比0名」となっており、少なくとも7月前半は国内の死亡者数が極めて少ない状況にあることが確認できます。
新型コロナウイルス感染状況を知る上で重要な数値②「入院治療等を要する者」
新型コロナウイルスによる「入院治療等を要する者」とはどのような数値?
入院治療等を要する者とは、病院などの医療機関にかかり、感染症に対する治療などが必要な人の数です。
ここでの「要する」の意味合いについては、他の病気や怪我とは考え方が異なりますので注意が必要です。
前述の通り新型コロナウイルスは法令で定められた指定感染症のため、感染が判明した場合は適切な医療行為を受けなくてはなりません。放置すればクラスターの発生などさらなる感染拡大につながる恐れがあるためです。
よって、入院治療を「要する」人には、感染者のうち重傷者だけでなく軽傷者や無症状の人も含まれます。入院治療等を要する=重傷者というイメージを持たれがちですが、新型コロナウイルスに関してはそうではないことを前提に数値を捉える必要があります。
なぜ入院治療等を要する人数が重要な数値なのか
「入院治療等を要する者」の数値は、医療現場がどれほど逼迫しているのかを知る上で重要な数値です。
東京都内では一時期、病院での病床数が不足する事態となり、ホテルなどの宿泊施設へ軽傷者を移した経緯があります。
病床数が逼迫すると重傷者への対応に手が回らなくなるだけでなく、他の病気ですぐに入院や手術をしなくてはならない患者に適切な医療を提供することができなくなる恐れがあります。
そのため、新型コロナウイルス感染症の深刻度を判断する上で、入院治療等を要する人数が増加傾向にないかどうかは注視する必要があります。
なお、同じく医療機関の状況を知る上で役立つ数値に「退院・療養解除」の人数があります。
たとえば、7月17日時点で全国の入院治療等を要する者は前日比+369名だったのに対して、退院・療養解除は前日比+270名でした。この2つの数値を比較すると、入院した人数が退院した人数を上回っていることから、病床を必要とする人の全体的な人数は徐々に増えていることが分かります。
新型コロナウイルス感染状況を知る上で重要な数値③「陽性率」
新型コロナウイルスによる「陽性率」とはどのような数値?
陽性率とは、検査を受けた人数に占める陽性者の割合です。2020年7月現在、全国での陽性率は公表されていません。
これは、陽性率の分母となる検査数を把握するのが困難なためと言われています。PCR検査数には、感染者が回復して退院する際、陰性かどうかを確認するために受ける検査も含まれており、正確な「検査数」を把握するのは容易ではないのです。
ただし、東京都に関しては5月8日より都内の陽性率を公表しており、随時更新される陽性率を知ることができます。7月17日時点での陽性率は6.3%であり、最も高かった4月中旬の31.6%と比べて低いものの、5月下旬には1%未満だったことを踏まえると徐々に陽性率が高くなっていることが分かります。
なぜ陽性率が重要な数値なのか
連日報道されている感染者数について、「PCR検査数を増やせば、判明する感染者が増えて当然」といった言説が聞かれることがあります。
これは理屈として正しい指摘であり、感染者だけを見ていても感染症の真の影響が見えてこないことを言い当てています。
そこで参照すべき数値が陽性率です。陽性者の割合が増えているということは、検査をまだ受けていない人の間でも感染が拡大している可能性が考えられるからです。
反対に、感染者が増えているように見えたとしても、陽性率が上昇していなければ感染は拡大傾向にはないと判断することができます。
なお、「わざわざ陽性率を算出しなくても、あらゆる人にPCR検査を行えば感染者の実態が分かるのでは?」と考える人がいるかもしれませんが、これは現実的ではありません。
患者から検体を採取するのは医師が行い、検査そのものは臨床検査技師と呼ばれる方々が行います。
臨床検査技師は平常時であれば対応可能な人数が配置されているものの、新型コロナウイルスのように短期間で検査数が爆発的に増えた場合はパンク状態になってしまいます。
まして、無症状の人が全員検査を受けるようになれば、本来必要な検査(有症状者の陽性判定、退院者の陰性判定)に手が回らなくなるのは明らかです。限られた検査数の中から陽性率を割り出しているのはこのためでもあるのです。
東京都の陽性数の推移
(日本経済新聞「チャートで見る日本の感染状況 新型コロナウイルス」より)
新型コロナウイルス感染状況を知る上で重要な数値④「実効再生産数」
新型コロナウイルスによる「実効再生産数」とはどのような数値?
実効再生産数とは、1人の感染者がどれだけ周囲の人に感染させるかを示す数値で、ウイルスの感染力の強さを示す指標として用いられます。
実効再生産数が「1」を超えれば感染は拡大していき、「1」未満であれば収束に向かうと考えることができます。また、数値が大きいほど拡大スピードが速くなり、小さいほど収束スピードが速くなります。
シンプルな考え方をすると、ウイルスが1人から別の1人へうつる場合と、1人から別の3人へうつる場合とでは、当然のことながら後者のほうがウイルスの蔓延は加速します。
このように、実効再生産数はウイルスの感染力から今後の感染の傾向を予測し、シミュレーションを行う場合などにも利用されることがあります。
なぜ実効再生産数が重要な数値なのか
実効再生産数は、ここまで挙げてきた数値の中で唯一「近い未来」を見通すためのヒントとなる数値です。
他の数値からは「現状の死亡者数」や「現状の陽性率」が分かるものの、感染が今後どのように拡大または収束していくのか予測するのは困難です。
これに対して、実効再生産数はウイルスの感染力を知るために役立てることができ、感染症が拡大傾向にあるのか縮小傾向にあるのか、今後の見通しを立てる手がかりになります。
これまでの実効再生産数の推移で最も高かったのは、全国では4月3日の2.27、東京都では3月29日の3.62です。
7月17日時点での実効再生産数(全国)は1.43と過去高かった時期と比べれば低い数値ですが、上述の通り「1」を上回っており、注視が必要な状況にあることが分かります。
まとめ)コロナ関連の数値を正しく読み解き、正しく恐れることが重要
新型コロナウイルスは未知の部分も多くある感染症を引き起こすウイルスであり、私たちにとって脅威であることは間違いありません。
「風邪と変わらない」などと軽く見る人もいるようですが、家庭内に高齢者や乳幼児が同居している人もいるはずですので、職場内でお互いの生活環境の違いを考慮するのであれば、決して感染症を軽く見ることなく感染予防のための対策を徹底するべきでしょう。
ただし、感染者数の報道などを目にして、いたずらに危機感を募らせることにも問題があります。
この記事に挙げた数値を随時参照しながら、今どのような状況にあるのか、どのレベルで警戒や対応が必要なのか、冷静な判断を下す必要があります。
コロナ関連の数値を正しく読み解くことで、新型コロナウイルスを「正しく」恐れる姿勢が私たち1人1人に求められているのです。
おすすめ記事
こんなお悩みはありませんか?
- 今のままキャリアを積んで行くべきか迷っている
- もっと活躍できる場所がある気がする
- 転職するか、今の会社に留まるかどうするべき?
満足できるキャリアパスを見つけるためのヒントをご紹介します。
<スポンサーリンク>