「商標登録って何?」初心者でもわかる! 方法とメリットを徹底解説
[最終更新日]2022/12/15
商標登録は、企業が「商品の名前」を勝手に他に使用されることのないよう、自社が商品の名前を使用する権利があるものとして登録するものです。漠然とその存在と意味合いは知っているけど、商標登録の効果ややり方を正確には知らないという方が多くいます。
今回の記事では、商標登録の意味合いや効果を改めて確認し、また商標登録を行うための方法を詳しく説明します。商標登録の実施を検討している方は是非参考にしてください。
Index
目次
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商標登録とは?
商標登録のメリットや実施方法を確認する前に、まずは商標登録とは一体何なのか、そしてその前に「商標」とは何なのかを説明します。
商標・商標登録それぞれの意味合いや商標登録の歴史をしっかりと知っておくことで、商標登録のメリットについてより理解が深まりますし、「なぜ現在の商標登録がこのような手続きを踏むようになったのか」も納得がいくようになるかと思います。
商標=その商品の「名前」
商標はある商品やブランドを「表す」もので、主には商品やブランドの「名前」ですが、現在ではロゴなど図形の組み合わせや音声(CMで流れる音声・短いメロディなど)でもって「その商品の名前を象徴するもの」が構成されます。また、「役務商標」といって、形のある商品だけではなく、銭湯・レストランなどのサービスを提供することに関する「商標」も認められるようになっております。
商標は、文字・図形・記号・色彩・立体・音声等(これらの商標を構成する要素を標章と呼びます)の組み合わせからなります。必ずしも全要素を満たす必要はなく、その「商品」を象徴する上で必要な一つ・もしくはいくつかの標章の組み合わせにより商標は形成されます。
一例を挙げると、クロネコヤマトの宅急便の場合は、「クロネコヤマトの宅急便」という名前自体が標章の一つですが、同様に、クロネコの図形もまたクロネコヤマトの宅急便の標章となります。クロネコヤマトの場合はこの文字(名称)と図形により「クロネコヤマトの宅急便」という配送サービスを意味する役務商標となります。
商標登録制度の歴史
続いては商標登録制度の歴史について説明しますが、実は意外にも同じように知的財産権保護にあたる特許法や意匠法よりも早く制定されております。日本における商標登録制度は明治17年の「商標条例」により始まりました。
当時は近代化に向かう中で商品も近代工業化により大規模に販売する商品が増えてくる中、先に成功した商品を「模倣」して利益を稼ぐ事例が後をたちませんでした。そのような中で、「その商標を使用する権利」を確立させ、このような悪い商売を防ぐために、商標条例は施行されました。
その時点で、登録主義(登録しなければ権利が発生しない)、先願主義(先に出願し認められたものに権利が発生する)など、現在にも続く商標の基本原則は確立されています。一方で、先に挙げた「役務商標」が追加される、テレビやラジオ、インターネットでの使用を想定した制度変更など、その時々で「商標に対する権利を明確にし、保護する」上で必要な調整が行われながら今に至っています。
どうして商標登録が必要なの? メリット解説
前章にて商標の意味や、その登録制度の歴史を確認しました。現在ではこの商標登録制度を世の中の無数ともいうほど多くの企業や団体が活用し、各々の商標を登録しております。商標登録制度が広く普及しているのは、それだけ商標登録制度を利用するメリットがあるためです。
商標登録制度には大きく分けて以下の3つのメリットが存在します。同制度を利用する前に、改めて商標登録制度のメリットを確認しましょう。
その商標は、権利者だけのものになる
商標登録の基本的な効果は「その商標を使用する権利が登録者だけに付与される」ことにあります。同じ商標を他人が勝手に利用することはできないのはもちろんですが、「似たような商標」を利用することもできない決まりとなっています。
また、一度登録すれば、日本全国においてこのルールは適用され、日本全体で商標の権利が保護されることとなります。
商標登録を完了させることにより、商標権を侵害したものに対しては使用の差し止めはもちろんですし、その商標不正使用によって利益を得ていた場合は、損害賠償請求も可能です。
また商標権の侵害は刑事罰の対象にもなっています。また、先に商標を登録してしまえば「先願主義」の原則により、他人に同じ商標を登録されてしまうことも、防ぐことができます。このように「商標を自分だけが自由に使用できる権利」を明確にするところに商標登録の最も基本的なメリットがあります。
商標権を活用し、宣伝効果を上げられる
商標登録の副次的な効果として、ブランドイメージ確立等による宣伝効果、品質を知らしめる効果があります。商標登録が認められたということは、その「商標」の正当性を日本が認めたということになりますので、社会的な信用力の向上につながりますし、その商標を持つ商品は「国が認めた安心できる商品」として間接的な品質保証にもなります。
また、近年においては、検索エンジンで自社Webページがヒットする順位を上昇させるいわゆる「SEO対策」がデジタルマーケティングにおいては重要ですが、大手の各検索エンジンは商標登録を完了させることで、その商品自体や製造・販売元が検索にヒットしやすいようにすることが可能です。
もちろん、インターネットに限らず商標は広告・宣伝において独占的に利用することが可能です。 このように、商標登録は製品やサービスの「ブランド化」に大きく寄与するというメリットがあります。
更新し続ける限り、半永久的に権利は守られる
この商標登録ですが、さすがに、商品・サービス自体が消滅したり、販売元や提供元が大きく変わる場合が想定されるため、一度登録すれば永遠に保護されるというわけにはいきません。実は一度登録した場合の商標権の効力は10年間とさだめられております。
しかし、特許庁に「更新登録料」を支払うことで、次の10年間も商標権を維持することができます。この更新に回数の制限はありませんので、10年に一回忘れずに更新さえすれば、商標権は半永久的に守られるということになります。
実際に高島屋のロゴの例では、はじめての商標登録は1904年ですが、110年以上経過した現在においても、定期的に更新登録されることで、現在でも高島屋の商標として生きています。
商標登録にまつわるトラブルの例
さて、このように明治時代から整備されてきた商標登録制度ですが、過去には商標をめぐってトラブルが起きた事例もあります。
商標登録をしたが、実は先行して販売している商品があった、民営化して商標登録したら、実は中小企業によって登録済になっていた、類似の名前で売りだしたら訴えられた、といったように様々なタイプのトラブルが過去起きています。ここではそうしたトラブルの事例をいくつか紹介します。
トラブルその① 「かに道楽」をめぐって
「かに道楽」は大阪に本拠地を置く老舗カニ料理専門店ですが、今回テーマの商標登録についてはは同社は昭和47年に行なっていました。ところが、愛知県の老舗かまぼこ店「ヤマサちくわ」が「かに道楽」という商品を販売していることが判明したのです。かに道楽からの要望にヤマサちくわが応じなかったため、かに道楽は2016年8月に提訴しました。
この時のトラブルを複雑にしたのは、ヤマサちくわの「かに道楽」という商品が、「かに道楽」商標登録前の昭和45年から発売されていたことでした。先に商品を販売していた場合、その事実と「周知性(ある程度有名な商品であった)」ことが認められると、たとえ先に商標登録した他者がいたとしても、そのままの商標で商品を販売し続けられるというルールがあるためです。
最終的に2017年になってヤマサちくわが同商品を販売を取りやめたため和解に至りましたが、ヤマサちくわが徹底的に争った場合には、係争は相応に難航する可能性がありました。
トラブルその② 「ゆうメール」をめぐって
日本郵便の旧冊子小包の配送サービスについて「ゆうメール」という商標で認知されております。しかしこの「ゆうメール」という商標は先に札幌メールサービスが商標登録しており、日本郵便側の使用差し止めを求めて訴訟が起こされました。
日本郵便側はすでに郵政公社時代から使われていた「ゆうパック」と言う類似商標が周知されていたこと等を元に争いましたが、最終的には札幌メールサービス側が一審は勝訴しました。
その後、日本郵政側によって控訴されたのですが、やがて、両社によって和解しました。和解内容は明らかにされていませんが、現在も日本郵政は「ゆうメール」と言う商標を使用しており、「日本郵政側の商標使用を認める内容」であったと推察されます。このトラブルは「差し止めを命じられたが和解によって商標の継続使用が認められた事例」として認知されるようになりました。
トラブルその③ 「白い恋人」をめぐって
「白い恋人」といえば北海道の石屋製菓が販売する、代表的なお土産のお菓子です。当然商標登録はしっかりと行われているのですが、大阪の吉本興業がパロディ商品として「面白い恋人」を発売したことでトラブルは勃発しました。
石屋製菓は吉本興業を2011年に提訴し、商品の差止と損害賠償金1億2000万円を請求しました。争点は面白い恋人の「類似性」で、パッケージの外観や呼称等の観点から双方が似ているのかどうかが争われました。
最終的には2013年に両社は和解し、面白い恋人側に対しパッケージデザインの変更や一部のイベント等を除き近畿圏6府県での販売に限定することなどが決められましたが、面白い恋人という名称自体は使用継続が認められました。
商標登録までの3つのステップ
ここまで紹介した通り様々なメリットがある商標登録制度ですが、その利用法方法をよく知らないという方も多く、結果的に利用を諦めているという方も多くいます。ここでは、まだ商標登録を利用したことがない方向けに、商標登録の手順について説明します。
商標登録は①事前準備、②書類作成、③出願の3ステップに大まかに分類されます。以下で詳細を説明します。
ステップ1 事前準備
最初に自分が出願しようとしている商標が先に登録されていないかを調べます。もし登録隅であった場合は、出願しても却下されてしまいます。これは特許庁HPで簡単に調べることができます。
こちらの「呼称」のところに入力すれば、簡単に検索することが可能です。ちなみに、仮に同じような商標が登録済みでも、「区分」が異なれば登録可能です。「区分」については、当然自分が登録しようとしている商品やサービスに沿ったものを選択します。
自分が出願しようとしている商品やサービスで思いつくブランドを検索して、どのような区分になっているか見ておくとスムーズです。
ステップ2 書類作成
自分が出願する商標の区分が見えてきたら申請書類を作成します。書類の雛形は、特許庁のHPでダウンロードすることが可能です。
続いては適切に項目を埋めていくのですが、特に悩む人が多い箇所について書きに簡単に書き方を列挙しておきます。
【整理番号】:ローマ字・算用数字・ハイフンから10文字以内で先に登録隅でない限り自由に設定可能
【提出日】:郵送なら郵便局にもっていく日。直接特許庁に持参する場合は、持参する日を記載
【第 類】:商標を登録する区分を記載
【指定商品(指定役務)】:登録する商標がどんな商品、もしくは役務を示すものなのか記載
【識別番号】:はじめて出願する場合は空欄。一度でも出願経験があれば、識別番号が発行されているはずなので、それを記載
【住所又は居所】:個人の場合は住民票のある場所。会社の場合は登記場所を記載
各項目を記入し終えたら、特許庁に確認してもらうことが可能です。メールやFAXにて対応可能なようですので、特許庁に連絡して、確認を依頼してもらうといいでしょう。ホームページからメールで連絡することも可能ですが、電話で連絡した方が早く進めることが可能です。
ステップ3 出願
特許庁による確認が終わったら、あとは出願するだけです。出願に際しては「特許印紙」というものを準備します。郵便局や特許庁で購入することが出来るので、前もって準備しておきましょう。印紙の金額は、以下の通りです。
出願料金:3,400円+(区分数)×8,600円
特許印紙は必要金額を申請書類の左上に貼ります。
次に出願方法ですが、大きく分けて2つあります。まず、郵送で出願する場合ですが、下記の特許庁HPに説明があるので、参照してください。
もう一方、特許庁に直接持って行くこともできます。もし特許庁が近くにあるという方は、最後に書類をチェックしてもらえるので、こちらの出し方をおすすめします。
商標登録を「代行」してもらう方法も
さて、ここまで商標登録の説明をしましたが、実際には「正しく申請できるか自信がない」「類似の商標があるかどうか微妙で判断できない」「自力で商標登録について調査したり、準備する時間がない」といった理由で自力での出願が難しいと思う方も多いかと思います。
実は、特許事務所という特許等各種出願等のサポートを行う事務所が、商標登録の出願サポートを行ってくれます。商標登録作業全てを代行してもらうこともできますし、類似商標有無や類似性の調査、出願する区分の判断や、通らなかった商標を通す為の意見書・補正書の提出サポートなど部分的なサポートを依頼することも可能です。
一定程度の費用がかかりますが、商標登録全てを代行してもらっても一区分あたり10万円以内で可能です。多くの場合区分数が増えると費用が高くなります。
商標登録をしっかりと行って自社の製品やサービスの権利を保護しよう
無数の製品やサービスが存在する現代社会において、自社の製品やサービスをブランド化し、自社だけが活用できるようにすることは、企業が主力商品・サービスを基に成長していく上で欠かせません。
要となる商品・サービスは速やかに商標登録し、自社の使用権利を保護するとともに、商標を「ブランド化」して宣伝やデジタルマーケティングに役立てていきましょう。
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