私の管理職体験談:「あいつはダメだ」と言われ続けた部下を1年間指導して
[最終更新日]2022/12/15
「ちゃんと教えられたな」と思える部下を、増やしていくこと。
はじめまして。
人材派遣の営業を行っています。
新卒で今の会社に入って、もうかれこれ8年になります。去年、管理職に就きました。
これまでは、チームの売上目標に向けて活動していたのが、管理職になってからは、部下の育成や進捗確認、他部署との連携も行ったりと、やること・考えることは多くなりましたね。
よのすけさん(男性 28歳)
- 職業
- 人材派遣会社
- 職種
- 営業
- 年収
- 500万
- 従業員規模
- 300名
- 地域
- 和歌山県
Index
目次
管理職になってからの、私の働き方
私の部署はいわゆる営業部隊ですので、最も意識するのは「売り上げを創ること」です。
チーム単位での数値目標もしかり、メンバー単位での個人成績もしっかり見られますので、皆が売上数値を伸ばせるように指導・教育をします。
一方で、私自身もしっかり売り上げを出して、メンバーを牽引していけるよう努めています。
チームの主な業務は、法人企業の担当の方への提案営業です。
そして、提案対象はこれからその法人企業先で働いてくれる「人」、つまり求職者です。
求職者の方々を募集する部署はまた別ですが、どんな人材が求められるか、どんな準備が必要かについては私たちの現場が一番情報収集しやすい。その情報をもとに全体的な戦略を考えたり、そしてそれを社内に提案したり。
そのなかで私が一番意識していることは、「チーム力」です。
正直、この仕事は楽をしようと思えば、ソロプレイでも成り立つんです。
皆が自身の担当エリアを持っているので、「上の指示がないと動けない」ということはない。やることもやれることも明確にあります。私も部下の仕事の細かい箇所までは把握せず、ある程度彼らの裁量に委ねています。
ですが、それで全員が目標達成することがあるかというと、それはまずありません。
必ず、誰かしら何らかの理由でうまく結果に結びつかなかったり、パフォーマンスが低下していたり。だから、「チーム」としての働きかけが重要となってくる。
具体的には、メンバー全員がスキル・知識の基礎力を高められるように週に1回のペース勉強会を開いたり、進捗確認を取った際は必ずフィードバックするようにしています。
それから、月に1回は受注の件数や成約率を見ながら、チームでの振り返りを行います。改善点ばかりでなく、「もっと良い状態にしていこう」というモチベーションを高めてもらえるように、メンバーの良いところやチームで取り入れたい事例を吸い上げたり、今後の方針・対策を協議したり。
誰だってモチベーションが下がると、「ちょっと手を抜こうかな」と魔が差すこともあるでしょう。そして、私たちの仕事は、さぼろうと思えばさぼれてしまうから。
「個々でやるけど、チームなんだ」という意識を持ってもらうことが大切だと思っています。
あるとき、「できないやつ」のレッテルを張られた後輩がやってきて
ある社員(ここでは「A」とします)が、新入社員として入社して、私とは別の拠点に配属されました。ただ、それから4か月ほどで、私のいる拠点に異動となって。
他の新入社員と比べても、成果がほとんど出せなかったらしく、更には顧客からクレームを受けてしまった、虚偽の報告があった…等。
おそらく、悪いことが重なってうまく対応しようと思いつつ空回りしていたのでしょう。新入社員あるあるだとは思いますが、とにかく、評価が低かった。
Aがうちの拠点に来たときは、私はまだ管理職の立場ではなく、私の上司が育成担当についていました。
その後も彼は1年経ってもまったく芽が出ず、成果も乏しくて。
私の上司も、彼のことを「あいつはダメだ」とか、「全然仕事ができん」、「言ってもその通りにできないし、嘘までついてくる」と、散々な評価でした。
はた目から見ていて「ちょっと可哀そうだな」と思っていましたので、私はAに対してたまに飲みに誘ったり、話を聴いたりしてみました。
すると、どうもやる気自体はあるんですよね。それどころか、「早く結果を出して、キャリアアップしていきたい」という意思も結構強く持っていて。
──意外に思いましたね。今の若い子って、どちらかというと「仕事はしんどいから程々に」であったり、「リーダーや管理職にならずに、ずっと楽な立場で居たい」という風に考えている人が多くて。
それで、それなりの成績を出している人もいたりするんですが、Aは違いました。…というか、真逆のタイプだったのです。
熱意はあった。でも、結果が出なかった。
この会社でステップアップして行きたいと思っていた。でも、態度があまりよくなかった。
上司からも、同僚からも距離を置かれていて、自分からもあえて皆に交わろうとしない。
それが、Aでした。
Aへのマンツーマン指導を、毎日続けていって。
それから1年経ったころ私は管理職となり、Aとは上司・部下の関係になりました。
Aの指導をするにあたって、「これまでと同じやり方ではAは変わらないだろう」と思いました。
それで、Aの活動進捗を聴きながら、気になった点をひとつひとつ、毎日彼と話しながらつぶしていく、ということをしました。幸い、Aは私の話はある程度聴いてくれたので。
A自身、業務でチャレンジしたいことは結構あるようなんですが、まだまだ課題が多くあって、そのチャレンジを試せる状態じゃなかったんですよね。
だから、
- 私
-
「つまり、こういうことをやりたいんでしょ?でもこの状態だと、うまくできないよね」
と、想いを形にしきれない原因や課題点を指摘して、その取り組みが少しでも形にしてあげられることを意識しました。
基本的に、毎日口頭で面談の機会を持ちました。
私の部署では、メンバーは社内チャットで業務進捗を報告します。私はAの報告を確認後チャットの返信を行い、かつ口頭で指導もするようにしました。
この業界に関わらず、「営業」というのは定められた型があるわけではなくて、皆それぞれスタイルがあります。個性の違いもあるので、ある人には向いている手法も別の人には全く向いていなかったり。
ですので、部下を指導する際は自分の成功例をトレースしてもらうのではなく、本人の良いところを引き出して、武器にしていけるように──、Aにもそう接していきました。
半年くらい続けて、ようやく芽が出始めました。
他のメンバーと比べようがないくらいAの個人売上が、だんだんと伸びていって。とうとう、チームの売上を牽引する主要メンバーにまでなったのです。
結果が出始めると、人間だれしも前向きになるものですよね。
それからは、良くなる一方でした。
私や他の上司とのコミュニケーションに対しても、今までより素直に聴くようになって、ちゃんと咀嚼しようとしてくれて、それでまた結果にも繋がって。
更に1年経って、Aは部署内の中核メンバーへと成長していました。
──あのAが、自身の活動だけでなく、新しく入った後輩への指導も行ったりと、チーム内のメンバーにもポジティブな影響を与えられる存在になったのです。
私はAとのやりとりで、何を学んだか。
私はAに特別なことをしてやったわけではありません。
ただ、指導者としてどう行動すると良いかについては、わかってきたこともいくつかあります。
たとえば、管理職として部下に結果を示して見せることも大事ですが、それよりも本人が「その仕事を楽しめているか」ということ。
大変なこともいっぱいあるし、責任もあるしで、楽しくないことの方が多いでしょう。でも、だからといってなんだかいつも辛そうにしていて、部下から「ああいう風にはなりたくないな」と思われてしまったら、その管理職のいる意味自体がマイナスになってしまうこともあるんじゃないか、って。
大切なのは、メンバーから「自分も、あんな風に働きたいな」「ああいう風になりたいな」と感じてもらえることだと思います。そうなれば、メンバーのモチベーションにも繋がります。
そして、管理職自身が「ちゃんと教えられたな」と思える部下を増やしていくこと。
そうすると、その部下もまた自分の部下に教えられるようになります。そして、自ずと強いチームに育っていく。
私はAと一緒に仕事をしていくなかで、その流れを創ることが出来ました。そして、それがいかに組織に良い影響を与えられるかを知ることが出来ました。
そういった働きかけ──いわば「組織内の循環」を、どれだけ力強くしていけるかは、管理職の働きかけにかかっているのではないでしょうか。
私が今後、目指していきたいこと、意識していきたいこと
私自身、会社に対して強いモチベーションを持っているかというと、…どうでしょうね笑。
今の会社にも欠点はありますし、全部が全部OKという訳じゃない。そもそも、終身雇用の時代ではないですからね。
現在はこの会社でステップアップしていきたいという想いが強いですが、この先、環境の変化等で違う組織、違う環境で働くことになることもあるかもしれません。
でも、どうせ働くなら、「頑張りながら日々を過ごしたい」という気持ちがあります。
それに、強いチームにしていって、会社を存続させていくというプロセスは、関わる人たちの「個々を強くする」ことにも繋がっていくはずです。
そして、皆がどこにいっても通用するスキルを身に付けられると良いんじゃないですかね。
私自身も、まだまだ自分のスキルを伸ばしていきたいと思っています。
その一環で、昨年キャリアコンサルタントの資格を取得しました。
今は営業の仕事がメインですが、キャリアコンサルタントの知識と、今までの営業の知識を生かして、もっと幅広い業務にチャレンジしていきたい。例えば、企業研修における研修講師やファシリテータであったり。
それらの業務は、今の仕事だけで知識・スキルを身に付けるのは難しいかもしれません。だから、どうすれば身に付くかを考えて、その為のチャレンジを積極的にしていきたいですね。
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