管理職体験談:ホテル人事担当。上司から「この人たちを辞めさせてほしい」と言われて。

[最終更新日]2023/10/18

体験談
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管理職体験談:ホテル人事担当。上司から「この人たちを辞めさせてほしい」と言われて。

サービス業(ホテル)の管理職をしています。家族は4人で、主人と息子2人おります。

土日祝日も仕事の日になることが多く、昼間は仕事、夜は家事──という日々を過ごしています。
休みの日には子供達を連れて外へ体を動かしに行きたいというのが理想ですが、実際は溜まった家事をしたり寛いだり、買い出しに出掛けるなどであっという間に一日が過ぎ、なかなか思うようなアクティブな休日は過ごせていません。

3連休くらいあると家族で出かけることもできるので、週末休みの仕事だったらいいなと思うことがあります。ですが仕事自体は好きですし、お金も必要なので、今の環境でこの先も働き続けたいと思っています。

はなこさん(女性 42歳)
職業
ホテル業
職種
フロントスタッフ・管理職
年収
400万円
従業員規模
30名
地域
愛知県

Index

目次

これまで、常に接客・接遇について考えて働いてきた。

ホテル業務のイメージ

社会人になって随分経ちますが、これまで私はずっとサービス業でした。
常に「接客・接遇」「対人スキル」を考えて働いてきたように思います。

大学卒後はまず大手の旅行会社に勤務しました。窓口対応から始まり、最後は海外旅行の添乗員までこなしました。

お客様からの感想、クレームを直接聞くことが多く、嫌な思いをすることもありましたが「なるほど、こういう風に感じる人もいるのだな」であったり、「お客様からすると、私たち従業員はこういう風に見えるのだろう」であったりを知ることができ、良い経験になったと思います。
それと、精神的にも強くなれました。

結婚後はレストランでの接客を中心に、ホテルのフロント業務用など、一通りのホテル、レストラン業の仕事を経験しました。

ホテル業務は、まさに「接客の基本」が問われる職場でした。
常連から一見さんまで、それぞれ接客の仕方があります。ウエイトレスの仕事もただ物を運ぶだけでなく、そうしたお客様の様子や所作を見ながら行う必要があり、そこにはいくつもの、「経験しないと分からないコツ」がありました。

パートから社員、そして管理職へ。

上司のイメージ

現在のホテルの職場では、初めはパート社員として働いていました。

そこで3年ほど働いて、上司から

上司

「社員にならないか」

と声をかけて頂いて。

ちょうど子供達も小学校へ上がったので手もかからなくなり、時間的に余裕も出来ていたこともあって、お受けしました。

それからは事務仕事も手掛けるようになり、その業務がけっこう私の性にも合っていたようで、それからまた1年経過したときに管理職へのお誘いを頂きました。

「あのメンバーの人たちを辞めさせるように、動いてほしい」

面談のイメージ
上司

「人事を、やってみないか」

あるとき、上司からそう話を持ち掛けられて、(とうとう、その役回りがやってきてしまった…)と思いました。
ホテル業で一定の現場経験を積むと私のように管理業務に回ることが多いのですが、その中で人事の仕事は敬遠されがちでした。

なぜなら、ホテル接客業では非常に多様な職種の人たちが関わっており、人事はそれら職種への知識・理解も求められるため、更には離職率が(他の業種と比べて)やや高めでせっかく時間をかけて仕事を教えても辞めてしまう人も多いからです。

あとは、実際の職場自体にも問題がありました。一部のグループ内に、いじめや嫌がらせをして優秀な人でも「気に入らない」となると辞めるように仕向けるお局の人たちがいたのです。

折角いい人が入ってもその人が仕事を続けられるかどうかは、お局グループに気に入られるかどうかにかかっている──そんな状態でした。

上層部のひとたちもそのことには気づいていました。
そして、私が人事の仕事に就いて3ヶ月ほど経ったときに、

上司

「あのメンバーの人たち(お局グループ)を辞めさせるように、動いてほしい」

という指令を受けました。

婉曲的な表現ではなく、ダイレクトに「辞めさせてほしい」と言われたことにびっくりしましたし、それを私がやらなくてはいけないことに大変頭を痛めました。

実際、私も現場業務のときにそのお局グループから嫌がらせを受けたことは何度かありました。
その際は、うまく相手の機嫌を取りつつ、なるべく矛先がこちらに向かないようにコミュニケーションを取っていたのです。

(人事になって急に態度を変え、辞めてほしいというのはどうなんだろう…)そんなことを悶々と考えました。ですが、だからといって何か代替案があるかというとまったく思いつかず、このままずるずる上司の命令をスルーし続けることもできません。

私は仕方なく、お局グループの人たちそれぞれに個別面談を設け、以下のことを伝えました。

  • これまで、数人のスタッフがあなたたちとのコミュニケーションにストレスを感じ、退職していること
  • 会社にとって、優秀な人材が早期離職することは非常に大きな損失になること
  • この事態が今後も継続することは会社として必ず回避すべきで、その為にあなた達自身の業務姿勢について、早期の改善を求めていること

そして、2週間後にまた面談を設けることを伝え、その際にこの件についてどう感じたかと具体的にどのような改善を取ったか、そして今後どうしていくのが良いかを話してもらうように伝えました。

「辞めさせろ」といった上司からの指令の割に、かなり優しすぎる対応だったかもしれません。
ですが、その2週間後を待たずしてお局グループの主なメンバー数名が、辞表を提示してきました。

当時のことを振り返って、今思うことは。

明るい職場のイメージ

そのとき辞めたお局さん達には、とても恨まれたと思います。
ですが、それから数か月経って、職場の雰囲気は劇的に変わりました。

皆さん直接私に言ってくることはありませんでしたが、「辞めてくれてよかった」という声は良く耳にはいりました。一時期は人手不足で大変でしたが、今はそれも落ち着き、新しい方たちの定着率も良くなりました。

この一件で私は「職場の空気の大切さ」を痛感し、そしてよく言われる「人は城、人は石垣、人は堀」(たしか、武田信玄の言葉でしょうか)の真実味を知りました。

明らかに皆、活き活きと表情にも明るさと余裕がでてきています。
お局グループの退職に伴い私は一部の人から大分敬遠されるようになってしまいましたが、結果としてうまく人材整理が出来たことは本当に良かったと心から思っています。

管理職として上に立つとは、きっとこういうことなのだろう、と思います。ひとりひとりの個人の感情の総和が、職場全体の雰囲気になる──そのことを知れたのは、とても貴重な経験でした。

私が思う、管理職で働くうえでいちばん大切なこと。

管理職のイメージ

管理職として最も大切なこと。それは、「常に会社全体を見ていくこと」だと私は思います。

そうした俯瞰的な視点はまだまだ持てていませんが、いずれは現在の会社の利益だけでなく、将来の目指したい状態を見据えたうえで自分のすべきことを見出し、職場全体を管理していけるようにしたいです。

とはいえ、実際の業務はというと、日々色々な事件、トラブル、クレームに負われているのが現状で、将来のことを考える余裕はあまりありません。

まずは、目の前の出来事を今以上に適切かつ効率的に処理していく必要があるのだと思います。
そして、少しずつ働き方に余裕を見出していって、将来を見据えた仕事にシフトしていくというのが自分の理想です。

また、接客業の仕事はストレスを溜め込むことも少なくありません。従業員の人たちが適度にストレス発散していけるような、「気持ちよく働ける環境」を日々心がけていきたいです。