私が考える「管理職業務で大切なこと」は、部下たちの「潤滑油的な存在」であり続けること。

[最終更新日]2019/10/15

体験談
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私が考える「管理職業務で大切なこと」は、部下たちの「潤滑油的な存在」であり続けること。

「部下たちの間に立って、緩衝材的な役割をする」

管理職に求められるスキル・スタンスはきっといろいろあるのでしょうけれど、私は特に上記のことを大切にしていくべきだと思っています。


* * *


私の職場はデザイン関係の仕事を扱っており、社内には専門性の高い職人気質のデザイナーの人達がたくさんいらっしゃいます。

そんなこともあってか、放っておくとデザイナー同士が衝突することも少なくありません。

もちろん、力を合わせてすばらしい作品が生まれることもありますが、ときに「え?そっち?」と思ってしまうような逆に変な方向に向けて一致団結して、とても市場(顧客)に受け入れられないような奇抜な企画を進めてしまうこともあったります。

お互いに意見をぶつけ合って創作意欲を刺激しあうのは良いことですし、今までに無いアイデアを世の中に発信することも大切なのですが、そこを行き過ぎないように調整するのが、我々管理職の仕事かなと思います。

また、そういった働きかけをしていくためには世情に合った考え方ができないといけませんので、「トレンドに常にアンテナを張り巡らせる」という姿勢も大切でしょうね。

管理職の方では、自分でアイデアを出すこと自体はあまりない(修正案などは出しますが)のですが、私はそれで良いと思っています。
若い人たちが思う存分自分のセンスを発揮できる環境を整えることもまた、管理職の役割でもあるでしょうから。



ヤンヤンさんさん(女性 42歳)
職業
オーダーメイドの着物・洋服の販売
職種
企画・管理
年収
500~550万円
従業員規模
26名
地域
島根県

Index

目次

私の紹介。──着物や洋服のデザインを行う会社を立ち上げて。

私の紹介。──着物や洋服のデザインを行う会社を立ち上げて

現在私は、もともと友人2人と私の3人で創業した、着物や洋服のデザインを行う会社に勤めています。

最初は趣味とか副業みたいな感じでスタートしたのですが、少しずつ注文が増えてきて私たち3人だけでは手が回らなくなり、少しずつ人員を増やし続けて現在の規模にまで大きくなりました。

当初、私の役割はデザインを行うことでした。ですが、デザイナーさんを3人ほど雇ったのをきっかけに、その人たちを管理する側にまわる事になりました。

今もオーダーメイドで作る着物などは直接私がデザインを請け負うこともありますが、市場で流通させる物は大体部下のデザイナーがデザインを行っています。

個人的には着物デザイナーの高橋理子さんを尊敬していて、デザインも高橋さんに影響されている部分が大きいんじゃないかと思います。

ただどんなデザインでも独創性のある物は何でも好きなので、若いデザイナーさんと一緒に仕事をしていると良い刺激になりますし、仕事だけどとても楽しいです。

元々趣味の延長みたいな仕事なのであまり部下を叱ったりせず、のびのびと自由な発想・働き方で仕事をさせてあげるのが自分のモットーになっています。



あるとき、起きた事件。

あるとき、起きた事件。

新しいデザイナーさんを雇ってすぐ、会社を興して5年目くらいの頃だったでしょうか。

その日、私は事務所でデザイナーさん2人と次にデザインする着物の方向性について話し合っていました。

議論はちょうど山場を迎えていました。
デザイナーさんの一人が発した意見がとても良くて、私は(この話し合いで、きっとまた良いデザインが産まれる!)といった満足感を得ながら、話し合いを進めていました。

すると、もう一人のデザイナーさんが突然席を立ち、部屋から出て行ってしまったのです。

(え?──なんで今出ていっちゃうの?)

残ったデザイナーさんを見ると、彼女の方もキツネにつままれたような、不思議そうな表情をしています。
──すぐに、追いかけないとと思い「ちょっとだけ待っててもらえる?」と言って、出ていったデザイナーさんを探しに向かいました。

そのデザイナーさんは事務所の入り口の階段のところに座っていました。

彼女は泣いてました。

私が声をかけると、彼女はひとこと、

彼女

「自信が無くなってしまった」

と答えました。

──正直、その時は意味が分かりませんでした。

何とか彼女をなだめて、話し合いを再開させたのですが、私は後日になって、彼女の泣いた理由を知ることができました。

その打ち合わせの際、彼女の方もひとつのデザイン──斬新な着物のデザインを提案していました。
そして、そのデザインは彼女にとって、「これまで自分が考案したもののなかで、一番優れていた」ものだったのです。
そして、そのデザインを形(商品)にしていけるように、打ち合わせ当日までの数日間、毎日寝る時間を削って入れ込んでいました。

ですが、打ち合わせのとき、私はもうひとりのデザイナーさんの作品の方に意識が向いていました。
彼女の表現を借りるとすれば、こうです。

──「自分のデザインには目もくれず、もう一人のデザイナーさんの意見ばかり聞いていました。

私はこの時、(ああ、自分は管理職失格だな)と思いました。

ファッションデザインの分野のデザイナーさんは「芸術家肌」の人が多く、また感情の起伏が激しい人も多いです(私もその傾向は過分にあります)。

彼女もまた、「今の気分がそのままデザインに表れる」タイプの人でした。
そして、本来の私の仕事は、彼女のやる気を引き出すように盛り立てながら企画を進めることでしたが、それをまったく失念していたのです。

もちろん、デザイナーの一意見を「迎合」的に聞き入れるべきではありません。

ですが、スタッフとして参画いただいているデザイナーさんには、これからも新しいデザインを創り続けてもらわなくてはいけません。
その際に、常に一定のものづくりへの情熱やコンディションを保ていけるよう配慮していくのも、管理職の大切な役割だと思うんですよね。

そして、私はその役割を、まったく担えていなかったのです。



当時の出来事を振り返って、今思うことは。

当時の出来事を振り返って、今思うことは。

そのできごと以来、私は話し合いやチームでの協働の際は、関わる人たちに対してまんべんなく意見を聴くように意識するようになりました。

私は今の会社で下積みをして出世をしてきたという訳ではなく、会社を立てたメンバーの一人として最初から今のポストにいました。
そのため「人を使う」という行為に慣れておらず、ついつい友達と付き合う感覚で仕事をしてしまっていたんだと思います。

これまで自分一人でデザインを務めていたときは、「社内の人間関係」なんて深く考えたこともありませんでした。

でも、人間関係やちょっとした感情の機微って、怖いくらいにその職場の活気や、仕事の流れに影響するんですよね。

この一件があったからこそ、きちんと管理職としての立場を弁えるようになり、以前より「部下の間に立って潤滑油的な役割をしよう」といった、俯瞰して物事を観ようという意識も高められたのではないかと思います。





管理職の仕事を続けていくことの、「難しさ」。

管理職の仕事を続けていくことの、「難しさ」。

部下全員から平等に意見を聞いたり、部下一人一人を丁寧にフォローするというのは、恐らく会社の規模が大きくなるほど難しくなっていくものなのではないかと思います。

しかし、個人ではなくチーム毎に管理する事はできますし、自分一人で全て見渡すことができないなら、そのチームのリーダーなどにその任を任せることもできるでしょう。

その場合、一番上で管理する者にはチームリーダーをしっかりと教育して信頼できる人材に育て上げる責任が生まれますが、それさえできれば後は楽なものかなと思います。

よく「管理職は社員一人一人に目を配らなくてはいけないから大変」と言われることもありますが、人数が多い場所では要所要所で社員をフォローできれば十分なのではないでしょうか。

あんまり自分一人で問題を抱え込んでしまうと、今度は社内を広く見渡す余裕が無くなってしまいますし、そんな上司の下では部下もやりにくいでしょう。

管理職は大変な仕事ですが、できないところは人に任せても良いので、社員の考え方や仕事の進捗など細かいところにも目を行き届かせられるよう、「気持ちの余裕」を持って職務に励むことも大事なのではないかと思います。



私が今、意識していること。これから目指していきたいこと。

私が今、意識していること。これから目指していきたいこと。

今は20人規模の会社に落ち着いていますが、将来的にはもっと規模を大きくしていきたい、というか経営パートナーの社長はすでに、そういう計画で頑張っています。

私はそういう事業戦略といった分野は社長に任せてるので、社員が増えても減っても今まで通り部下一人一人をしっかりできるような仕組みづくりを進めていきたいと思っています。

あと、個人的にはデザインの会社と営業・販売を行う会社で分けて、デザイナーだけで独立できたらなという希望もあります。

今のポストではあまり経営に口出しできないので、部下の給与なんかもなかなか上げてあげられませんし、受けられる仕事も限られてくるので、独立すればデザイナーさんの視野をもっと広げてあげられるんじゃないかと思うんですよね。

まあ独立は無理でも、これからも部署で一丸となって新しい企画の発信やデザインを行っていきたいというのはずっと変わらないと思います。

いつかは私も、この会社を引退しなければいけないでしょう。
でも、私が会社にいなくなった将来においても、新しく入社した人たちが「この会社に入って良かった」と思えるような環境づくりを、これからも頑張っていきたいです。