「もの忘れ」「うっかり」の多い人必見!どうして人は憶えたことや大事なことを忘れてしまうのか?

[最終更新日]2023/11/06

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ご自身が、もの忘れが多くうっかりミスをしてしまうことがしばしばあって悩んでいるという方、もしくは部下にそのような方がいて指導方法、対処方法に困っているという管理職・マネージャーの方は多くいるかと思います。

人はだれしも間違いを起こすもの」とはいえ、円滑なビジネスためにはもの忘れによるミスやトラブルは極力避けたいものです。

今回は、そんな「人のもの忘れ」について、そのメカニズムと対処法についてまとめました。ぜひご覧ください。

Index

目次

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なぜ人は、覚えたことを忘れるのか

もの忘れへの対処法に入る前に、まずは人が覚えていたはずのことを忘れてしまうメカニズムについて確認しましょう。

人はその性質として、「ものを忘れる」ことができる生き物です。
そして、その性質は人の防衛機能でもあるのです。前提として、本来人は「忘れることがあって当たり前」であることを認識しておくと良いでしょう。

以下に人の「もの忘れのメカニズム」について詳しく説明します。

「人は、『忘れたい』から忘れるのだ」 ──『防衛忘却』

人には不快であると思っている事柄を忘れようとする機能が備わっており、これはかつて心理学者の「フロイト」が「防衛忘却」とし定義した機能になります

参照元:Wikipedia

完全に記憶が抜け落ちたように記憶が消去されるのは、よほどの悲劇に見舞われない限り発生しない事柄ですが、些細なもの忘れの原因の一端も、この防衛忘却が作用していることが多いのです。

たとえば、訪問したくない個客へのアポイント時間、嫌な相手への電話連絡など、自分によって「避けたい」ことほど、人は忘れやすくなるのです。

もう少し考え方を拡張すると、忙しくて考えることが多い時は、その状況自体が「不快」ですので、そうした時ほど人はもの忘れが起きやすくなります。これもまた不快な状況を防ぐ人の防衛機能の一端です。

このように、人は嫌なこと、不快なことを中心に、また忙しかったり、心に余裕がない時ほど「防衛のために忘れようとする」こちがあるということを、まず理解しておく必要があります。

「忘れる」ことは、人(脳)の能力でもある

先に説明した通り、もの忘れは脳の不快な状況を緩和するための「防衛忘却」によって発生されやすくなります。
そして、「忘れる」ということはもう1つ、「新たなことを記憶する余地を作る」ための機能でもあるのです。

ひとりの人間が記憶できる量には限りがあります。従って、もし忘れずにすべてのことを記憶し続けていたら簡単に容量オーバーになってしまうことでしょう。
コンピュータならば動作不能を起こすところでしょうが、人の場合も同じような状態になりえる、ということですね。

しかし、実際にはそうしたことが起こらないのは、人は「どんどん忘れていくことができる」生き物だからです。必要のないもの、覚えておかない方がいいものを忘れることで新たな記憶ができるように常にしているのです。

とはいえ、実生活(特にビジネス上)での大切なものと、本能的に「大切だ」と認識され忘れずに覚えておくるものには、少なからずのズレがあるものです。
そして、そのズレが原因で、「もの忘れ」によるミスやトラブルも生じてしまうこともあるでしょう。

続いては、そのようなもの忘れによるミス・トラブルを防ぐにはどうしたらいいか、その対策を紹介します。

人の記憶は、「意味記憶」と「エピソード記憶」に分けられる

「もの忘れ」というテーマで語る際に、必ずと言ってよいほど出てくるキーワードに「エビングハウスの忘却曲線」があります。

人は、1週間後には覚えたことの80%を忘れてしまう?──エビングハウスの忘却曲線

エビングハウスの忘却曲線は、その名の通り、19世紀のドイツの心理学者エビングハウスが考え出した理論です。

彼は先に出ていた「記憶するために忘却するという人間の能力」について、その程度のスピードで忘れていくのかを実証実験しました。

被験者に無意味なアルファベットの羅列を覚えさせて、どの程度忘れていくかを実験したのです。
──すると20分後に42%、1時間後に56%、9時間後に64%、6日後に76%も忘れていくことが判明しました。
この忘れる比率を曲線に表現したのが冒頭紹介したエビングハウスの忘却曲線となります。

さて、これによるとすべての出来事において人は「1週間の内に80%忘れる」ということになります。

ですが、実際はそうではありませんよね。私たちは楽しかったことや嬉しかったこと、その他悲しかったことや辛かったことについて、たとえその出来事が数年前であったとしても、当時のシーンを再現するかのように思い出すこともできます。

つまり、必ずしも人は、エビングハウスの忘却曲線どおりにすべてを忘れてしまうということではないのです。

どういうことかというと、人間の記憶は「意味記憶」と「エピソード記憶」に分類され、エビングハウスの実験で取りあげた記憶は「意味記憶」の方になるのです。

また、片や「エピソード記憶」については、このような忘却曲線は描かれないということが確認されています。

「意味記憶」と「エピソード記憶」について

エビングハウスの忘却曲線に従って忘れるのは「意味記憶」であって「エピソード記憶ではない」と先に説明しましたが、この2つの記憶の性質の違いについて説明していきましょう。

まず「意味記憶」とは学習して覚える記憶ということになります。さきほどのアルファベットの実験についても、文字の羅列を覚えることから「意味記憶」に分類されます。

こちらの記憶は実体験が伴っていない分忘却しやすい記憶となっており、エビングハウスの忘却曲線が成り立ちます。勉強をする際、復習していかないとどんどん忘れるのも、勉強して得る記憶が基本的に意味記憶に分類されるからです。

一方で、実体験の中で得た記憶であったり、何かしらの感情や心境と共に植え付けられた記憶は「エピソード記憶」になります。

人間の脳は、基本的に意味記憶と比較してエピソード記憶の方が忘れづらいようにできています。

意味記憶とエピソード記憶の具体例

意味記憶とエピソード記憶の忘れやすさの違いについて、とある若手社員Aさんのビジネス体験の例をもって説明してみましょう。

Aさんは大学卒業後、大手金融機関に入社しました。
入社後、Aさんはまず金融の専門知識についての研修を、非常に長い期間受けることになりました。

ですが、Aさんはこれまで受けてきた研修内容を振り返ったとき、そのほとんどを忘れてしまっていることに気付き深刻に悩むようになります。

そうしたうちに、あれよあれよという間に研修期間を終え、営業職として配属されたAさんは先輩社員と共にお客さんの前に出るようになりました。

すると不思議なことに、これまでなかなか定着しなかった専門知識が、Aさんの記憶の中にどんどん定着していったのです。はじめのうちは先輩社員の影に隠れるように控えめにしていたAさんですが、そのうち度々発言や説明ができるようになり、2ヵ月経ってからは研修で学んだことだけでなく新たに得た知識も駆使して、堂々とお客さんに提案やプレゼンができるようになったのです。

つまり、Aさんは研修で得た情報を「意味記憶」の範疇で留めてしまっており、現場配属されてはじめてそれらが「エピソード記憶」として蓄積されるようになったということです。

もちろん、配属前研修が必ずしも「意味記憶」になるわけではありませんので、もしかしたらAさんの学ぶ姿勢自体がやや受け身だったのかもしれません。または、実務においてAさんは「経験しながら学ぶ」という、経験学習の意識をもって取り組んだため、より「エピソード記憶」が育まれやすかったのかもしれません。

どちらにせよ、このように「記憶」をどのように覚えていくかによって、もの忘れのしやすさは大きく変わってくることはこの事例からも確認できたことでしょう。

大切なこと、大事なことを忘れないようにするための、効果的な3つの取り組み

さて、ここまでもの忘れのメカニズムについて説明しましたが、合わせてもの忘れを防ぐ対策についてもある程度見えてきているかと思います。

この章ではもの忘れを防ぐための取り組みについてポイントと、具体的な実践方法について紹介していきます。

大切なこと、大事なことは「意味記憶」から「エピソード記憶」に変換していく

ここまでのもの忘れのメカニズムから見えてきたのは、「意味記憶」から「エピソード記憶」に変換していく、もしくは初めから「エピソード記憶」として定着するように意識することが、もの忘れの予防に繋がるということになります。

その際に大事なことは、物事を単なる知識で終わらせてしまわずに、自身の感情や想いとともに記憶することです。

たとえば、前述のAさんの研修時期のような機会においては、(たとえその研修が講師の一方的な説明のみの座学形式のものであったとしても)「その学びは、将来の自身のビジネスシーンでどのように役立つだろう」と想像し、そのイメージと結びつけることによって「エピソード記憶」にしていくことは可能でしょう。

そして、一番の理想は、覚えたことを「体験を伴った記憶」にしていくことです。
学んだこと・知ったことを実際に活用してみることによって、それらの事柄は「経験」をともなった記憶になります。そして、その経験が有意義なものであるほど、記憶として忘れにくくなるのです。

「失敗」と「繰り返し」を大切にする

大切な内容の「もの忘れ」を防ぐ対策として、「エピソード記憶」にしていくこと、そして実際にそれら内容を活用して「経験」に変えていくことについて触れました。
その際に併せて意識したいのは、「失敗」と「繰り返し」を大切にすることです。

失敗から学べ」という言葉がありますが、これは失敗した者に対するフォローというわけではなく、人は失敗し、繰り返し挑戦することで記憶をより確実に定着させ、自身の成長に繋げやすくなることを示しています。

特に「失敗すること」は、強いエピソード記憶になりやすいものです。

この記憶定着には、そもそも本人がそれを失敗したと認識することが重要です。

失敗した際はまず失敗してしまった事実を受け入れるとともに、積極的に失敗の原因のリサーチや解決策などを考えるようにしましょう。

そうすることによって、失敗したことに加え、その失敗に対する解決策も定着します。これを以ってまた挑戦することで、次第に成功率は上がるでしょうし、どんどん物事に対する記憶がしっかりと定着していくようになります。

他者(仲間)と記憶を共有する

最後にエピソード記憶とするための実践的方策は、他者と記憶を共有することです。
たとえ自分一人で記憶(体験)した事柄であったとしても、私たちはそれらを人に話すことができます。

単純に忘れた時に相手に気づかせてもらうため、ということではなく、覚えておく上でも積極的に周囲に相談したり、話したりすることは効果的です。

つまり、記憶した内容を「他社に話した」という経験にしていくことによって、エピソード記憶にしていけるということですね。

ビジネス上で大切なこと、忘れたくないことが発生した場合、積極的に周囲に共有し、議論することにより、その事柄は「集団的エピソード記憶」(エピソード記憶を共有した状態)にもなりえます。
それはときに、その職場環境における慣習や風土・文化にも少なからずの影響を与えていくこともあるでしょう。

そもそもビジネスにおいて積極的な情報発信や情報共有は重要ですが、記憶の定着という観点からもは有益なのです。

「エピソード記憶」として定着させる工夫で、もの忘れを防ぐ

人は冒頭紹介した通り、本来は忘れていく生き物です。

それは止めることはできませんが、一方で、仕事をしていく上では忘れてはいけないことが多々発生するのも事実です。

大切な記憶を忘れないようにするためには、「意味記憶」から「エピソード記憶」として定着させるように工夫していくことです。そして、その行為がもの忘れのリスクを最小化することができます。

記憶をエピソード記憶にすることは機械的にできるというわけではありませんが、この記事で紹介したいくつかの方法を実践することで、よりエピソード記憶化を促進することができます。

現在もの忘れに悩むビジネスマンの皆さまは是非実践することをおすすめします。

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