「夢」と「現実」が交錯する映画おすすめ10選
[最終更新日]2023/03/11
こんな経験はないでしょうか?
知っている空間・知っている人と、いつものように会話していたかと思いきや、ぱっと目が覚め今見ていた光景が夢だと気づく。
はたまた、現実では起こりえない突拍子もない出来事なのに、夢の中ではそれを現実だと思い込んでいる。
人間は誰もが毎晩夢を見ているとされていますが、明確にその内容を覚えていることもあれば、ついさっきまで夢を見ていたのに目覚めた瞬間にきれいさっぱりと忘れてしまっていることもあります。
心理学者のフロイトは、「夢はその人の本能的な欲望の表れである」と言いました。
また、夢の内容を心理学的に結びつける「夢占い」も長く人々の興味を惹くトピックです。
今回は、そんな「夢」と「現実」の混沌を描いた映画を10本ご紹介します。
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Index
目次
- 1)『インセプション』(2010年/アメリカ/148分)
- 2)『パプリカ』(2006年/日本/90分)
- 3)『ザ・セル』(2000年/アメリカ/109分)
- 4)『エルム街の悪夢』(1984年/アメリカ/91分)
- 5)『ファイナル・デスティネーション』(2000年/アメリカ/98分)
- 6)『テイク・シェルター』(2011年/アメリカ/120分)
- 7)『ウェイキング・ライフ』(2002年/アメリカ/101分)
- 8)『トータル・リコール』(1990年/アメリカ/113分)
- 9)『恋愛睡眠のすすめ』(2005年/フランス/105分)
- 10)『未来世紀ブラジル』(1985年/イギリス/142分)
- 映画の視聴にはVODサービスがおすすめ
- まとめ)「夢」を描いた映画には、精神的アプローチからの名作多し
1)『インセプション』(2010年/アメリカ/148分)
【あらすじ】
人が眠っている間にその潜在意識に侵入し、他人のアイデアを盗みだすという犯罪分野のスペシャリストのコブは、その才能ゆえに最愛の者を失い、国際指名手配犯となってしまう。そんな彼に、人生を取り戻す唯一のチャンス「インセプション」という最高難度のミッションが与えられる。
たった一つのアイデアが、誰かの人生を変えることもある
最初にご紹介するのは、昨年『TENET テネット』のヒットも記憶に新しいクリストファー・ノーラン監督による2010年のSF超大作『インセプション』です。
タイトルにもなっている「インセプション」とは、他人の夢の中に入り込み、その人の意識へ外部から新たなアイデアを植えつける行為のことを指します。
レオナルド・ディカプリオ演じる主人公のコブは、「他人の夢に入り込み、アイデアを盗む」ことを生業としていましたが、大企業の社長サイトーからの依頼により、最も実行が困難とされる「インセプション」に仲間たちと挑みます。
「夢」と「現実」では、時間の流れも異なります。夢の中では数年のように感じられたとしても、目覚めるとほんの数分うたた寝をしていただけだったという経験を持つ方も多いのではないでしょうか。
本作でノーラン監督は、そうした時間間隔の差異を独自の映像手法と、夢の世界を「階層化」することにより可視化に成功しています。
夢の第一階層では橋の上から水面に着水するまでの数秒が、第二階層・第三階層では数十分、数時間と引き延ばされていく。
これは「映画鑑賞」にも同じことが言えます。たった2時間という時間の中で、ある人物の一生を描くことができ、かつ観客の意識へ新しい価値観を植えつけることもできる。
『インセプション』は、映画というフィクション(夢)が、鑑賞後のその人の人生(現実)に影響を与えることも可能であるという、ノーラン監督の願望の表れとも解釈が可能です。
インセプション
調査日:2020/07/07
○印は見放題配信。金額表示はレンタル料金です。動画の配信状況はマネージャーライフが調査した時点での情報です。詳細は各公式サイトでご確認頂けますようお願いします。
2)『パプリカ』(2006年/日本/90分)
【あらすじ】
表の顔は精神医療研究所に勤めるセラピー機器の研究者、裏の顔は“パプリカ”というコードネームを持つセラピスト千葉敦子は他人の夢をスキャンすることが出来るというセラピー機器“DCミニ”を使い、日々患者の迷える心をケアしていた。だがある日、その“DCミニ”が何者かによって盗まれてしまう……。
人々の「無意識の欲望」が現実へ侵食していき、混ざり合う
「他人の夢の中に入る」というコンセプトは、日本でも2006年の『パプリカ』で映像化されています。
本作は日本を代表するSF作家・筒井康隆の同名原作を、アニメーション作家の故・今敏が映画化。
「DC ミニ」という機器を使い他人の脳波をスキャンし夢への侵入を可能にし、患者の心に住まうトラウマの治癒に励むセラピストの千葉敦子を主人公に、盗まれたDC ミニの行方と、何者かの手により夢の中へ侵入され徐々に恐慌を来していく人々の内面に迫ります。
今敏は初監督作品の『PERFECT BLUE』やTVアニメ『妄想代理人』でも、人々の内面に潜むトラウマや悪意が現実へと侵食していく様を描いてきましたが、本作『パプリカ』は、そんな今敏氏の集大成とも呼べる作品です。
また、「映画」そのものが物語の重要なキーとなっているのも、前出した『インセプション』との共通点でもあります。
連続する事件を捜査する刑事・粉川は、かつて映画監督を志していたものの、親友との才能の差を痛感し、その夢を諦めた過去があり、以後映画とは距離を取る生活を送っていました。
しかし、粉川のトラウマとはまさに、「夢を諦めざるを得なかった自分自身」でした。
そんな彼が千葉敦子と共に事件を追ううちに、徐々に自身の内面と向き合いセルフセラピーを施していく様子が、本作の横軸となっています。
パプリカ
調査日:2021/03/18
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3)『ザ・セル』(2000年/アメリカ/109分)
【あらすじ】
心理学者キャサリンの研究所では、最先端技術により人の潜在意識に入り精神病を治療する実験を続けていた。一方、女性の異常連続殺人を捜査していたFBIは、犯人スターガーとあるビデオを発見する。ビデオには、被害者の女性がガラス張りの独房(セル)に閉じ込められ、セルを満たす水の中で溺れ死ぬ様が記録されていた。しかしセルの所在を知るただ一人、スターガーは分裂症発作で昏睡状態に陥っている。捜査陣は、スターガーの脳に入りセルの場所を捜して欲しいとキャサリンに依頼する。
殺人鬼の潜在意識に侵入し、被害者を救い出すことができるのか
『パプリカ』では、人々の夢に侵入しトラウマを治療するセラピストが主人公でしたが、2000年の映画『ザ・セル』では同様に女性心理学者の主人公が殺人鬼の潜在意識に侵入し、行方の分からない被害者女性の居場所を突き止めようと奔走します。
本作の白眉は「殺人鬼の脳内」の映像化にあり、常人とはかけ離れた異様な世界が広がっています。
殺人鬼・スターガーの脳内世界には、これまでの被害者たちが店外ディスプレイのように陳列されている。スターガーにとって、これまでの被害者たちは「作品」の一環に過ぎないのです。
一体、彼をそのようにした根源はどこにあるのか。主人公のキャサリンはさらに彼の潜在意識の奥深くへと潜り込み、幼少時代の彼と対峙します。
本作が監督デビューとなったターセム・シンは、その後も『落下の王国』『白雪姫と鏡の女王』など、現実とファンタジーをミックスした独特の作風に魅力があります。
登場人物の衣装にも気を配っており、『ザ・セル』でも異常な世界観ながら色彩の豊かなアーティスティックな映像が融合し、唯一無二の魅力を放っています。
ザ・セル
調査日:2021/03/18
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4)『エルム街の悪夢』(1984年/アメリカ/91分)
【あらすじ】
エルム街に暮らすナンシーら高校生たちに異変が起こる。夢の中に鋭利な鉄の爪をつけた怪人が現れ、彼らを脅かすのだ。その後、友人のひとりティナが惨殺されるという事件が。一方、夢の恐怖は現実化し、ナンシーの体には傷まで残っていた。悪夢とともに殺人事件が続く中、ナンシーは怪人フレディにまつわる秘密を知り、彼と闘うことに……。
「寝たら殺される」ホラー映画の金字塔
『ザ・セル』は殺人鬼の潜在意識の中に入り込む物語でしたが、反対に「殺人鬼が夢の中に入り込んでくる」シチュエーションにより、以後ホラー映画のアイコン的キャラクターになったフレディ・クルーガーの恐怖を描いたのが、1984年の『エルム街の悪夢』です。
夢の中に現れる鉤爪の殺人鬼フレディ・クルーガーに殺されると、現実の自分自身も切り刻まれ命を奪われてしまう。彼に殺されないためには「眠らずにいる」ことしか方法はない――。
人間の三大欲求の一つである「睡眠」を封じられる不安と恐怖はごく身近な感覚として想像が可能なため、製作国のアメリカをはじめ、日本でもスマッシュヒットを記録しました。
夢の中で何者かに追われており、逃げたいのに思うように足が動かないという経験をしたことのある方も少なくないでしょう。
本作でのフレディも、まさにそうした感覚に陥った若者たちの姿を楽しむかのように、じわりじわりと近づいてきます。
「観たら寝るのが怖くなる」ホラー映画は、本作をおいて他に無いでしょう。
エルム街の悪夢
調査日:2021/03/18
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5)『ファイナル・デスティネーション』(2000年/アメリカ/98分)
【あらすじ】
高校生アレックスは修学旅行に旅立つ離陸前の飛行機の中で居眠りし、飛行機が離陸直後に大爆発するという悪夢を見る。飛び起きて「この飛行機は爆発する!」と叫ぶアレックスに周囲は騒然。この騒ぎに巻き込まれた数人の同級生と先生、アレックスの7人は飛行機から降りるが、彼の言葉通り飛行機は大爆発。それから数日後、生き残りの1人である親友トッドにまたも奇妙な予兆を感じたアレックスはトッドの家に急ぐが、彼はすでに帰らぬ人となっていた。
「死の運命」から逃れることはできるのか
「夢で見た出来事が、現実でも起こる=正夢」は誰もが一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
そんな「正夢」をテーマに製作されたホラー映画が『ファイナル・デスティネーション』です。
高校生のアレックスは修学旅行へと向かう飛行機の離陸前に、自身の乗る飛行機が墜落する夢を見ます。
やけに生々しい内容に恐れをなしたアレックスは、数人の友人・教師とともに飛行機を降ります。
直後、飛行機はアレックスの夢の通りに爆発し墜落。
危機一発で難を逃れたかに思えたアレックスたちですが、死の運命は執拗に彼らを追い続けます。
本作では物語冒頭においてパニック映画のクライマックスのような大惨事を、アレックスの見た夢として描きます。
しかし本作の見どころはむしろその先にあり、本来は飛行機事故で死ぬはずだった彼らが、一人また一人と不慮の事故により死にゆく恐怖にあります。
およそ自身が死ぬとは思えないシチュエーションが、転じて悲劇のトリガーとなっていく脚本は秀逸で、「人間はいつ何によって命を落とすか分からない」自明でありながら誰もが目を背けている事実を浮き彫りにします。
本作の斬新な物語設定は多くのファンを生み、これまでにシリーズ計5本が製作されています。
ファイナル・デスティネーション
調査日:2021/03/18
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6)『テイク・シェルター』(2011年/アメリカ/120分)
【あらすじ】
田舎町で妻と娘と幸せに暮らしていたカーティスは、異常気象に襲われる悪夢を見て以来、その恐怖にとりつかれてしまう。避難用のシェルター作りに没頭するカーティスに対し、家族や周囲の人々は次第に不信感を募らせていくが……。
そのイメージは夢か、それとも…
前出した『ファイナル・デスティネーション』は、「正夢」「予知夢」をテーマにしたホラー映画でしたが、同じく「予知夢」をテーマにした終末的なスリラー映画が本作『テイク・シェルター』です。
本作の主人公カーティスは、連日のように夢に見る「異常気象による世界の終わり」のイメージに取りつかれ、家族の反対を押し切りシェルター造りに没頭していきます。
しかし、家族の側から見てみれば、そんな彼の姿は常軌を逸してしまったようにしか映りません。
本作の監督ジェフ・ニコルズはデビュー作の『ミッドナイト・スペシャル』で、特殊能力を持って生まれた息子を守る父親の姿を描きましたが、『テイク・シェルター』では転じて「自分の見た夢が現実になる」という想念に囚われた父親の狂気を描いています。
「観客の想像力に委ねれば、可能性は無限に広がる」とは監督自身の言葉ですが、本作『テイク・シェルター』の結末はまさに、そんな監督の思想が前景化されたものだと言えるでしょう。
筋書きだけを見ればかの名作『シャイニング』を彷彿とさせるサイコホラーのような印象を受けますが、『ミッドナイト・スペシャル』と同様、本作もまた物語の重要な軸となっているのは「家族の絆」です。
テイク・シェルター
調査日:2021/03/18
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7)『ウェイキング・ライフ』(2002年/アメリカ/101分)
【あらすじ】
ひとりの少年が夢とも現実ともつかない時間の中で、さまざまな人物と出会い、夢について、人間について、会話を交わしていく。
「今が夢か現実か知りたければ、部屋の電気を消してみて。」
本作の監督は『ビフォア・サンライズ』『6才のボクが、大人になるまで。』などの人と人との何気ない会話や心の機微を描くことに定評のあるリチャード・リンクレイターです。
そんな彼のキャリア初期作にあたるのが本作『ウェイキング・ライフ』です。
本作は実写映像をデジタル・ペインティングによりアニメーション化するという特異な技法で撮影がされており、間違いなく生身の人間ではあるものの、描線は極めて作為的という、まさに「夢の中」を忠実に映像化しています。
この撮影技法は物語自体のテーマにも大きな貢献をしており、一人の少年が何度目覚めても夢から出られない状況に説得力を持たせています。
「今自分のいる場所が現実かどうか知りたいなら、部屋の電気を消してみて。電気が消えたらそこは現実」という登場人物のセリフがあり、これは前出した『インセプション』において夢か現実かを判断するためのアイテム「トーテム」を想起させます。
デジタル・アニメーションならではのポップで色彩に溢れた映像表現も楽しく、時間軸も出来事も曖昧な酩酊感のある物語に、観ている私たちもふいに「今この瞬間ははたして現実なのだろうか」と感じてしまう哲学的な示唆に富んだ作品です。
ウェイキング・ライフ
調査日:2021/03/18
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8)『トータル・リコール』(1990年/アメリカ/113分)
【あらすじ】
西暦2084年、地球の植民地となっていた火星では、エネルギー鉱山の採掘を仕切るコーヘイゲンとそれに対抗する反乱分子の小競り合いが続いていた。一方、地球に暮らす肉体労働者のダニエル・クエイドは、毎晩行ったこともない火星の夢を見てうなされていた。夢が気になるクエイドは「火星旅行の記憶を売る」というリコール社のサービスを受けることに。しかし、それをきっかけに今の自分の記憶が植えつけられた偽物であり、本当の自分はコーヘイゲンの片腕の諜報員ハウザーだったと知る。クエイドは真相を知るため火星に旅立つが、真実を隠匿するコーヘイゲンに命を狙われ……。
フィリップ・K・ディックの思弁的SF短篇がアクション映画として生まれ変わる
フィリップ・K・ディックの原作小説『追憶売ります』を、ポール・ヴァーホーヴェン監督、アーノルド・シュワルツェネッガー主演で映画化した作品が1990年の『トータル・リコール』です。
フィリップ・K・ディックは世界的に有名なSF作家で、自身の薬物依存や統合失調症を作品に織り込み、現実と虚構を行き交う無二の作風で知られており、死後も根強いファンにより支持されています。
本作は火星への移住が進む近未来が舞台です。アーノルド・シュワルツェネッガー演じるダニエル・クエイドは、毎晩のように夢の中に現れる火星の存在にうなされる日々を送っています。
そんなある日、地球に居ながらにして火星旅行体験ができるリコール社のサービスを受けたダニエルは、これまでの自身の人生・記憶がすべて偽物であったことに気づきます。
原作小説は文庫本にしてわずか40ページ足らずの短編で、主人公のクエイドが模造記憶の真実を知り、「私とは何か」という人間の根源的な問いに向き合うミニマムで内省的な物語となっています。
しかし映画版では『ロボコップ』などのアクション映画の監督で知られるポール・ヴァーホーヴェン監督の作風と、80~90年代を代表するアクションスター、アーノルド・シュワルツェネッガーのタッグにより、宇宙を股にかけた冒険色の強いSFアクションに仕上がっています。
まだCGも未発達であった90年製作の映画でありながら、特殊メイクを駆使した近未来的な世界観の構築により、30年以上が経った今でも十分に見劣りのしない作品です。
トータル・リコール
調査日:2020/07/07
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9)『恋愛睡眠のすすめ』(2005年/フランス/105分)
【あらすじ】
父親の死をきっかけにメキシコから母親のいるパリに引っ越してきたばかりのステファンは、隣人のステファニーに恋心を抱く。だがシャイな性格が災いして、理想の夢ばかり見るようになり、やがて現実と夢の区別がつかなくなっていく……。
恋に奥手な青年は、夢の中で空を飛ぶ
恋に奥手な青年ステファンは、隣人のステファニーに恋心を抱くものの、なかなか一歩が踏み出せない。
「もしもステファニーと結ばれたら」という理想の世界を思い描くうちに、次第にステファンは夢の世界へ閉じこもるようになっていきます。
そしてある日、夢の中だと思って書いたラブレターがステファニーのもとへ届いてしまい…。
本作は今回紹介する10本の作品の中では最も小さな世界の物語ではありますが、描かれているテーマは最も普遍的かつ明確です。
「誰かを好きになるということ」「好きな人に思いを伝えること」
誰もが多かれ少なかれ経験し、思い悩むであろう出来事を、「夢」を絡ませつつファンタジックに描いています。
本作の監督であるミシェル・ゴンドリーは元々はMVの作家としてキャリアをスタートさせたこともあり、キャッチーでポップな演出がある種童話的な雰囲気を醸し出す独自の作家性を持っています。
『恋愛睡眠のすすめ』でもその才能はいかんなく発揮されており、水道の蛇口をひねるとセロファンでできた水が流れ出し、フェルト地の馬のぬいぐるみに乗って主人公が空を飛ぶ。
夢と現実の両方でステファニーと接していくうち、ステファンは人間として成長し、目の前の相手を大切に思うようになっていく。
一風変わった恋愛映画を観たい方におすすめです。
恋愛睡眠のすすめ
調査日:2021/03/18
○印は見放題配信。金額表示はレンタル料金です。動画の配信状況はマネージャーライフが調査した時点での情報です。詳細は各公式サイトでご確認頂けますようお願いします。
10)『未来世紀ブラジル』(1985年/イギリス/142分)
【あらすじ】
20世紀のどこかの国。ダクトが張り巡らされた街では、爆弾テロが相次いでいた。そんな中、情報省のコンピューターがテロの容疑者「タトル」を「バトル」と打ち間違え、無実の男性バトルが強制連行されてしまう。その一部始終を目撃した上階の住人ジルは誤認逮捕だと訴えるが、取り合ってもらえない。情報省に務めるサムは、抗議にやって来たジルが近頃サムの夢の中に出てくる美女そっくりなことに気づく。ある日、自宅のダクトが故障し困り果てていたサムの前に、非合法の修理屋を名乗る男タトルが現れ……。
映画史に燦然と輝くディストピア映画の傑作
最後にご紹介するのは、SF映画の名作として挙げられることも多い鬼才テリー・ギリアム監督の1985年の作品『未来世紀ブラジル』です。
テリー・ギリアム監督のキャリアはイギリスを代表するコメディ集団「モンティ・パイソン」のメンバーの一人としてスタートします。
その後映画監督として『バロン』『バンデットQ』などのファンタジー映画を経たのちに製作されたのが本作で、コメディ畑出身のそこはかとないユーモアと、近未来のディストピアを融合させた個性的な作品となっています。
情報省に勤める主人公のサムは、毎晩のように翼を生やした自身が自由に空を飛び回り、ある女性のもとへと向かう夢を見続けます。
ある日、無実の男性の投獄へ講義にやって来た女性ジルが、まさにサムが夢に見ていた女性そっくりであることに気づき…
「ディストピア」とは「ユートピア(理想郷)」の対義語で、巨大な権力(政府)の管理下に置かれた社会を描いた作品に用いられる用語です。有名なところではジョージ・オーウェルによる小説『1984年』などがあります。
本作『未来世紀ブラジル』も例にもれず、情報省のコンピュータの誤作動により、無実の男が投獄されてしまったことに端を発し、情報省に勤める主人公が体制への疑問と脱出を試みるSFサスペンスとなっています。
夢の中での自由な姿に反し、現実のサムは来る日も来る日も退屈なお役所仕事を続けており、彼が見る夢は、フロイトが言うところの「夢はその人の本能的な欲望の表れ」そのものであると言えます。
サムは夢の中の自分のように、この極度な体制下の社会から逃げ出すことはできるのか。
ラストの展開は強烈な余韻を残すこと間違いなしの傑作です。
未来世紀ブラジル
調査日:2021/03/18
○印は見放題配信。金額表示はレンタル料金です。動画の配信状況はマネージャーライフが調査した時点での情報です。詳細は各公式サイトでご確認頂けますようお願いします。
映画の視聴にはVODサービスがおすすめ
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ここでは国内の代表的な8サービスの月額料金、配信作品数を比較しています。
サービスごとに配信されている作品も違いますし、そのサービスでしか観られないオリジナル作品もあります。
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サービス名 | 作品数 | 無料お試し期間 | 料金(税抜き) |
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Hulu | 70,000作品以上 | 14日間 | 月額1,026円 |
Netflix(ネットフリックス) | 非公開 | なし | 月額800円〜1,800円 |
amazonプライムビデオ | 32,000作品以上 | 30日間 | 月額500円(プライム年会費4,900円) |
dtv | 120,000作品以上 | 31日間 | 月額550円 |
FOD | 50,000作品以上 | 14日間 | 月額976円(税込) |
TSUTAYA TV | 10,000作品以上 | 30日間 | 月額1,026円(税込) |
Paravi | 8,000作品以上 | 14日間 | 月額1,027円(税込) |
まとめ)「夢」を描いた映画には、精神的アプローチからの名作多し
今回は「夢」と「現実」の相関関係を描いた映画を10本ピックアップしてみましたが、こうして見ると、「夢」がテーマの作品はSF、ホラーなどのジャンルとの親和性が高いことが分かります。
考えてみれば、自分が見ている世界にも関わらず、自身のコントロールが効かない世界というのは、どことなく神秘的でありながら、同時に不気味なものですよね。
また、これらの作品はいずれも、監督や作り手による「この世界とは」「人間とは」という根源的な問いにアプローチしているものばかりです。
昨晩見たあの夢には一体どのような意味が隠されているのだろう?
そんな疑問へのヒントが、これらの作品の中にあるかもしれません。
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