本心では昇進したくない人が考えておきたいキャリアパスとは?
[最終更新日]2023/03/11
会社員として企業で働いていくことは「出世」や「昇進」と深く関わっています。
人事評価の仕組みや昇進の条件は属する組織によって異なりますが、マネージャーとして活躍している人の中にはキャリアプランに昇進という選択肢が含まれている人も多いのではないでしょうか。
しかし、本心では「これ以上昇進したくない」と感じている人も少なからずいるはずです。
より上の役職や肩書を目指す以外にも、キャリアを築いていく道はあるのではないか、と考えている人もいるかもしれません。
では、あえて昇進を目指すことなく働いていくにはどのようなキャリアプランがあり得るのでしょうか。
今回は、「本心では昇進したくない」と思っている人が今後考えておきたいキャリアについて考えてみましょう。
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Index
目次
本心では「昇進・出世したくない」と思っている人は意外と多い!?
昇進や出世はその人の能力や資質が認められた結果であり、一般的には喜ぶべきことと考えられている向きがあります。
昇進したくない、出世したくないなどと言うのは、まるで仕事に対する熱意に欠けるような印象を持たれるのではないか?と危惧している人もいることでしょう。
ところが、あまり表立って言えないまでも「実は昇進したくない」「今よりも上の役職に就くのは気が進まない」と感じている人は意外と多いのです。
働く人の約25%が出世に対して消極的
下のグラフは、25歳から34歳の働く人486名を対象に行われた調査結果を示しています。
昇進したいと思っているかどうか、といった出世意欲についてたずねたところ、「出世したい」「どちらかと言えば出世したい」「どちらとも言えない」「どちらかと言えば出世したくない」「出世したくない」と答えた人の割合は次のような結果になりました。
ここで注目すべきは、「どちらかと言えば出世したくない」と「出世したくない」と答えた人の合計が全体のおよそ4分の1近くなっている点です。
今まさに働いている人たちのうち4人に1人が、出世に対して実は消極的な考えを持っているのです。「出世したくない」「昇進したくない」といった考えは決して特殊なものではなく、働く人の多くが抱える悩みであることが分かります。
なぜ「昇進・出世したくない」と考える人が少なくないのか?
別の調査では、出世にはこだわらない・出世したくない人がなぜそう考えるのか、理由についてたずねています。その中で多かった回答としては次のようなものが挙げられます。
出世にはこだわらない・出世したくない主な理由
- 給与の見返りが小さい
- 現場で働き続けたい
- 仕事より暮らしを重視したい
- 能力の範囲内で仕事をしたい
- 出世争いが醜い
- 重い責任を負いたくない
「enミドルの転職」による調査結果より(2010年実施・有効回答数1081名)
回答の中で目立つのが、出世することによって責任が重くなり仕事が大変になる反面、給与が大幅に増えるといった見返りが小さいといった声です。
端的に言えば「メリットがあまりない割にデメリットが大きい」と考えている人が少なくないことが分かります。
昇進を目指さないキャリアのメリット・デメリット
現代は多様な生き方が受け入れられるようになりつつある時代です。
昔のように立身出世を目指すことばかりが熱意を持って働くこととは限りません。昇進を目指すのではなく、自分らしいキャリアを形成していくのも悪くありません。
ただし、昇進を目指さないキャリアで得られるのはメリットばかりではありません。
昇進を目指さないことで被るデメリットもあることをよく理解しておく必要があります。
次に挙げるのは、昇進を目指さないキャリアを選んだ場合に想定される主なメリット・デメリットです。
昇進を目指さないキャリアのメリットとは?
現場を離れることなく仕事を続けられる
よく言われていることとして、昇進して役職に就くと立場が上になればなるほどマネジメントが主要な仕事になっていきます。
必然的に現場の仕事は部下に任せることが増え、自分自身は現場から離れていくことになります。
部下や後輩を育成しチームを盛り上げていくことにやりがいを見出せる人は、自分自身が現場を離れたとしても仕事がつまらないとは感じないかもしれません。
しかし、自分が額に汗して仕事をやり遂げることに達成感を覚える人にとって、管理職として指揮監督が仕事の中心になることは「退屈」と感じてしまう可能性があります。
昇進を目指さないことによって、現場の最前線でずっと活躍し続けられることはメリットと言えるでしょう。
他人の評価に振り回されにくい
仮にあなた自身が昇進に対して強い思い入れがないとしても、周囲がそのような考えの人ばかりとは限りません。
あなたの昇進を嫉んだり、チャンスがあれば出し抜いてやろうと考える人が現れたりする可能性は十分にあります。結果的に、あなた自身も出世競争に巻き込まれることが絶対にないとは言い切れません。
役職や肩書を気にすることは、他人からの評価を気にすることに結びついています。
管理職にふさわしい振る舞いや考え方を身につける必要に迫られるうちに、いつの間にか自分自身を役職の型に当てはめようとしてしまっている人もいます。
昇進を目指さなければ、他人の評価に振り回されやすい環境を避けることができます。自分らしく働いていきたいと考える人の多くが必ずしも昇進を望まない理由の1つではないでしょうか。
ワークライフバランスを維持しやすい
昇進すれば仕事の責任が重くなり、自分だけでなく部下の仕事にも責任を負わなくてはならない場面が増えていきます。
やるべき仕事が多くなるため、管理職の労働時間は一般社員よりも長くなりがちです。結果的にプライベートの時間は少なくなり、仕事中心の暮らしになっていくことも考えられます。
ワークライフバランスを重視し、仕事だけでなく暮らし全般を充実させることを大切に考える人が増えています。
昇進することで仕事に費やす時間が増え、ワークライフバランスが崩れてしまうことを危惧する人は一定数いるはずです。
昇進しないキャリアを選択することで、ワークライフバランスを維持しやすい環境で働き続けられるのはメリットと考えていいでしょう。
昇進を目指さないキャリアのデメリットとは?
同年代や年下が上司になっていく
自分自身が昇進しないまま働き続けていくうちに、同年代の社員や年下の社員が昇進していき、いずれ上司になることは十分に考えられます。
最近では年下の上司・年上の部下はめずらしくなくなっていますが、「年下から指図されるのは気分がよくない」と感じるようなら、昇進を目指さないことによるデメリットになり得ます。
上司となる側の人にとっても、年上の部下に苦手意識を持つ人が一定数いることは知っておく必要があります。
自分自身は平気でも、上司となる相手には気を遣わせてしまっている可能性があるのです。
このように、昇進しないまま年齢や社歴を重ねていくことによって、組織内の年齢バランスに支障が出てくることは多かれ少なかれ想定できることです。
仕事の幅が広がらない可能性がある
部署異動や転勤がある職場の場合、昇進しなくてもさまざまな環境で経験を積むことは可能です。
しかし、小規模な会社や担当部署が固定されている職場では、昇進しない限り仕事の幅が広がらない可能性があります。
今は目の前の仕事が充実していると感じていたとしても、5年、10年と経つうちに仕事にすっかり慣れてしまい、毎日が同じことの繰り返しのように感じられることもあり得ます。
人は慣れきったことを惰性で続けるよりも、多少不慣れな環境下で頭をフル回転させて働いているときのほうが成長できるものです。
上司となることではじめは部下への接し方に悩むかもしれませんが、マネジメントという新たな仕事の側面が見えたことで、ものの見え方や仕事の捉え方が変化したと感じる人は少なくありません。
同じような内容・難易度の仕事を続けていても、仕事の幅が広がりにくいのはデメリットと言えるでしょう。
リストラの対象になる場合も
ここ数年で顕著になりつつある傾向として、業績が著しく悪化している企業でなくてもミドル層以上をリストラするケースが見られます。
経営が安定している大企業でも45歳以上を対象とした希望退職を募るなど、将来を見越した人材戦略を打ち立てる企業は今後も増えていくでしょう。
昇進して役職に就き、重要なポストで活躍している人材がリストラの対象になることはあまり考えられません。
一方、ある程度年齢を重ねた社員で若手でも代替可能な仕事をしていると見なされると、リストラの対象となる確率は跳ね上がります。
今後はAIやロボットが人間の仕事を代替していくとも言われていますので、今ある仕事が将来も残り続けるという保証はありません。
昇進しないまま現状維持を志向することによって、リストラの対象になるリスクが高まることは理解しておく必要があります。
本心では昇進したくないと思っている人の体験談
昇進したくないと感じる理由として、個人的なキャリア観以外にも職場での就労環境や企業文化が影響しているケースが考えられます。
これは会社ごとに事情が異なりますので、具体例を見ながら考えたほうがイメージしやすいでしょう。
次の体験談は、ある中小企業に勤めるYさん(41歳・仮名)の事例です。なぜ管理職に昇進したくないと感じているのか、Yさんが置かれている立場とご自身の状況を重ね合わせながら、昇進したくないと考えるようになる原因について考えてみてください。
管理職候補として中途採用で入社。ところが現実は・・・
今の職場には、30代の半ばに中途採用で入社しました。採用選考の時点で「管理職候補として入社してもらう」と言われていたので、入社してからは1日でも早く仕事を覚え、職場に馴染もうと意気込んでいました。
最初に違和感を覚えたのは、入社して数か月が過ぎた頃、はじめて参加した企画会議でのこと——。
新商品企画のため、アイデア出しをするという名目で招集された会議でしたが、若手・中堅の社員が真剣な顔つきで話し合っていたのは次のようなことでした。
「以前、企画書について『文字だけでなく図示されているほうが見やすくて好きだ』と常務がおっしゃっていた」
「あまり提案が早いと却下されやすいから、企画会議は少なくともあと2回は開催したほうがよさそうだ」
——会議に参加した社員は、軒並み「企画書をどう作るか」「どのタイミングで役員に提案するか」といった、いわゆる内部調整の話ばかりしていたのです。
結局、企画そのものは前例踏襲のありきたりな提案に留まり、それよりも「通りやすい企画書」を作ることに議論が集中していた印象でした。
徐々に見えてきた職場の実態はこうでした。
親会社から天下りしてきた役員が絶対的な権限を持っており、社員はことあるごとに「役員にとっての正解」を探す癖がついてしまっているようなのです。
また、生え抜きの管理職が強力な発言力を持ち、部下に気まぐれな指示を与えることも少なくないため、社員は常に振り回されては上司の顔色をうかがっているようでした。
顧客にどんな商品を届けたいか、市場にどんな価値観を問いたいか——。
そのような目的意識にはそれほど関心が払われず、社内の根回しと段取り、役員へのアプローチがものを言う職場らしいことが分かってきました。
昇進して中間管理職になった場合、想定される働き方
まもなく直属の上司が昇進したことによって、私の所属部署は課長のポストが空席となりました。
周囲から「Yさん、来期はいよいよ課長に昇進だね」と言われるようになり、昇進まで秒読みの段階に入ったようです。
しかし、今の状態で昇進したとして、私はどんな立場で仕事をすることになるでしょうか?生え抜きの上司と親会社から来た役員が決定権を握っている以上、彼らの恣意的な判断や意思決定をうまく取り繕って現場の社員に伝える役回りになることは目に見えています。
私と年齢が近く、すでに役職に就いている他部署の同僚に、あるとき悩みを打ち明けたことがありました。
「管理職になっても、ただのクッション役になってしまう気がする」と。
そのときの彼の返答が忘れられません。彼は平然とこう言いました。
「話が通りやすくなるように調整するのが管理職の仕事でしょう?仕方がないよ」
愕然としました。彼にとっては内部調整こそが「仕事」であり、誰に向けてどんな製品を作っているのかなど、もはや問題にすべきことですらないようです。また、彼はこうも言いました。
「うちはベンチャーじゃないんだし、役員対策のスキルを身につけないと」
彼は「スキル」という言葉を皮肉で使ったわけではなく、本心からそう信じているようなのです。
ああ、私とは全く仕事観がちがうな、と決定的に感じた瞬間でした。
ベンチャーではないと彼は言いましたが、社員数20名ほどの小さな会社です。
この規模の組織が内輪の理屈に凝り固まってしまうのを目の当たりにして、いずれ自分も「仕事とはこういうものだ」「仕方がない」と受け入れるようになるのか、と暗澹たる気持ちになったのを覚えています。
安定と引き換えに天井が見えているキャリアに安住するべきか、それとも・・・
仮に中間管理職になったとして、私とそう年齢の離れていない生え抜きの上司がいる限り、中途入社の私がそれ以上のポジションに就くことはないでしょう。
すでに私のキャリアは天井が見えてしまっており、残り何十年と続いていくキャリアをこの環境下で過ごしていかなくてはなりません。
ただ、収入面で言えば決して悪い条件ではなく、世間一般の捉え方で言えば今の立場を簡単に捨ててしまうべきではないのでしょう。
安定と引き換えに天井が見えてしまっているキャリアに安住すべきなのか、それとも転職や独立を視野に入れて動いていくべきなのか——。
空席になった管理職席を横目に、私は今日も自分の仕事を黙々とこなしています。
もうお分かりの通り、本心ではこの職場で管理職になりたくありません。
昇進がほぼ確定している今の状況で「退職させていただきたい」と申し出るのは非常識だろうか?と考えるたびに、今後の身の振り方について思い悩んでしまうのです。
昇進を目指さない・目指したくない人のためのキャリアプラン
昇進を目指さないこともキャリア選択として1つの道です。
ただし、昇進を目指さないのであれば目指さない上でのキャリアプランを考えておく必要があります。
昇進しないことによって、近い将来リストラの対象になってしまったり、自分の中で働く意義や目的が見出せなくなってしまったりするのは避けなくてはなりません。
そこで、昇進を目指さない・目指したくない人が選び取るべきキャリアの方向性について、代表的なものを挙げてみます。ぜひ今後のキャリアの方向性を考える上でのヒントにしてください。
ポータブルスキルを身につけ、伸ばすことを意識する
昇進しないキャリアを選ぶのであれば、他社でも通用する知識・スキルを身につけておくことは非常に重要です。自分が注力している仕事は社外でも評価されるものかどうか、そのレベルに達しているかどうかを意識しながら仕事に取り組む習慣を身につけていきましょう。
持ち運びできる(=ポータブル)スキルと聞くと、いずれ転職することを前提に考えているような印象を受けるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
ポータブルスキルを意識していると、必然的に「社外」の情報を必要とするようになります。
異業種や他職種の話題にも関心を持つようになり、視野が広がっていくことによって、結果的に自分が取り組んでいる仕事を客観的に観察する視点を持ちやすくなるはずです。
いま取り組んでいる仕事の精度が高まると同時に、他社でも通用する自信が持てるようになり、キャリアの選択肢を広げていくことができるのです。
異なる分野の経験を掛け合わせてユニークな人材になる
元リクルートで民間出身の校長として知られる藤原和博さんは、「100人に1人の希少性を3つの分野で確保できれば、掛け合わせることで100万人に1人の人材になれる」と説いています。
特定の分野で100万人に1人の人材になるのはとてつもなく困難なことのように思えるかもしれませんが、100人に1人の人材であれば努力によって達成できないことはありません。こうした強みを複数の分野で持つことによって、容易に代替のきかないユニークな人材になることができるというのです。
社内でこれまでと毛色のちがった仕事に取り組むチャンスが巡ってきたら、異なる分野の経験を積むつもりで取り組んでみましょう。
あるいは、副業が可能な職場であれば、副業によってキャリアの幅を広げていくのも1つの考え方です。異なる分野の経験を掛け合わせることで、人材としての希少性を高めていくことは重要な視点と言えるでしょう。
協力型・伴走型のリーダーシップを身につける
最近ではリーダーシップの意味合いに変化が見られ、チーム全体で仕事の成果をあげられるよう協力していくタイプのリーダーが求められる傾向があります。
役職に就かなくても、チームを盛り上げポジティブな方向へと向かわせることには貢献できるはずです。
このようなパーソナリティに関わる能力は職場が変わっても通用する普遍的なものと見なされる傾向があるため、将来的に転職する際にもアピールポイントになる可能性が高いと言えます。
役職や肩書といった目に見える形で昇進しなくても、協力型・伴走型のリーダーとしてスキルアップしていくことは可能です。
「平社員だから」「昇進するつもりがないから」などと、リーダーシップなど自分とは無縁なものと決めつけてしまわず、むしろ役職に就いていないからこそフラットな立場を保ちやすく、協力型・伴走型のリーダーシップを身につけられることに目を向けてみてはいかがでしょうか。
まとめ)昇進したくない理由を深掘りしてキャリアプラン形成に役立てよう
昇進したくないという気持ちはネガティブなものと見なされやすいものです。
仕事に対して消極的なのでは?意欲が高くないのでは?といった目で見られる可能性もないとは言い切れません。
だからこそ「昇進したくない」という段階で思考を止めてしまわず、仕事観やキャリア観を見直すチャンスと捉えてほしいのです。
もし今、「昇進したくない」という気持ちになっているのであれば、昇進したくない理由を深掘りして自己分析してみましょう。
昇進したくない本当の理由が見えてくると、自分が仕事で大切にしたいと感じていることがより鮮明に見えるようになり、今後のキャリアプラン形成に役立つヒントが見つかるチャンスも広がります。
自分がなぜ昇進したくないのかを理解することで、「昇進するよりも〇〇を目指したい」といった自分なりのキャリアの展望が開けていくはずです。
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