組織・チームでキャリアパスを作るにはどうすれば良い?自身と部下の、キャリアパスの作り方
[最終更新日]2022/12/15
仕事に対する意識や考え方は個人によって異なるため、組織としての結束を高めるには管理職やマネージャーが積極的に「キャリアパス」について考えていくことが必要となります。
特に個人のキャリアパスではなく、自分と部下を含めた「組織・チーム」に関するキャリアパスは、企業の地力をアップさせるきっかけになるでしょう。
こちらでは組織において役立つキャリアパスを作る方法と、継続のためのコツをご紹介します。
自分だけでなく、部下の未来を考える上でもキャリアパスは重要な参考資料になるので、この機会にその基本とメリットをチェックしておきましょう。
Index
目次
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キャリアパスとは?
キャリアパスとは「キャリア(職歴)」と「パス(道)」を表す言葉であり、職務においての立場やたどり着くまでのルートを意味します。
その企業特有の異動および昇進に関わるステップのことを指し、社員としての今後をイメージさせる道しるべとして機能するのが一般的です。
能力や実績を磨くことで得られる職場でのポジションをはっきりさせることができるので、部下のモチベーション向上や仕事に対する意識改革が行えます。
キャリアパスが仕事をする意義や理由を生み出すこともあるので、管理職やマネージャーにとっては職場への導入が優先されるでしょう。
キャリアパスは人生全体を対象とした「キャリアプラン」とは違い、「ひとつの企業におけるステップアップ」であることが重要です。
転職や起業が珍しくなくなった現代において、個人の仕事は自由化しています。
キャリアの可能性は多様化と共に複雑化しているので、企業側が社員にある程度の道筋を示すことには意味があるでしょう。
「昇給はめんどくさい」「平社員じゃなくなることにメリットを見出せない」
そんなイメージを持つ社員を減らすためにも、キャリアパスの設定は多くの会社におすすめできるのです。
キャリアパスには、大きく「階級」と「職能」の2軸がある
キャリアパスを実際に導入するのであれば、まず個人を評価して特別な役割や立場を与えることになります。
その際に軸となるのは「階級」と「職能」であり、この2つを参考にキャリアパスを設定するのが一般的です。
<階級>
階級はいわゆる人事における等級制度であり、社員全体で仕事の能力や役割を共有できるので、人事管理がしやすいというメリットがあります。
社員にとっても階級のおかげで将来設計やキャリアとしての今後を想像しやすくなるので、具体的に目指すべきビジョンをはっきりとできるでしょう。
<職能>
職能とは仕事を遂行するために個人が持つ職業上の能力を意味し、他の社員と比べて特別に優れている点がある場合に評価されるものです。
主に知識と技術(スキル)が評価対象となり、これまでの経験年数や専門資格の取得を基準に考えられます。
キャリアのために必要なスキルや経験を明示することができるので、積極的な能力開発を促せるでしょう。
──こういった階級と職能を軸にして、キャリアパスを考えるのが基本となります。
特に組織としてのキャリアパスを考える場合、部長や課長といったよく知られた階級だけでなく、その仕事ごとに必要な職能を合わせて突き詰めることが重要です。
まず、今の職場に「キャリアマップ」があるかを確認しよう
キャリアパスを職場に浸透させるには、まず「キャリアマップ」を見直す必要があります。
組織内にどのような役職があり、どんなルートでたどり着けるのかがはっきりしていなければ、部下はモチベーションを維持するのが困難となるでしょう。
職場によってはキャリアが変化するタイミングや理由が明確でなかったり、そのときによって変わったりするかもしれません。
しかしそういった曖昧な制度は、ときとして仕事の安定を欠くきっかけになります。
きちんとしたキャリアマップを会社内全体に向けてオープンにすることが、キャリアパスを実現する最初のポイントになるのです。
キャリアマップには主にその職場における役職、レベル、最終的なゴールなどを明示します。
ゴールとなる階級に至るまでの複数のルートを部下に伝え、それに合わせた活動を考えてもらうのが、キャリアマップの目的となるでしょう。
参考:キャリアマップのイメージ(ホテル業の場合)
引用元:厚生労働省「職業能力評価基準について> キャリアマップ、職業能力評価シートのダウンロード」
たとえばホテル業の場合、上記のような形でキャリアマップを作成することができます。
縦軸で役職の難易度や重要性を示し、横軸で職種ごとの階層を作り上げているのです。
このキャリアマップを見れば、ホテル業界のなかで自分が今どの位置にいて、次にどこに向かうことができるのかが簡単に把握できます。
ひとつの道筋をたどっていくのではなく、企業内にある他の仕事への道を選択することもできるので、具体的なキャリアアップをイメージできるでしょう。
組織・チームのキャリアマップの作成方法
組織・チームに相応しいキャリアマップの作成には、いくつかのポイントが重要となります。
それぞれを正しく理解し、理想的なステップで形成していくことが、部下の未来を作り出すキャリアマップの完成を近づけるでしょう。
既に職場にキャリアマップがある企業も、まだ正式にオープンできる資料がない組織も、以下を参考にしてキャリアマップ作りに必要となる情報を確認することをおすすめします。
- Step1 階層を設ける
- Step2 階層ごとに名前を付け、定義づける
- Step3 業務内容を整理・設定する
- Step4 求められる職能(スキル・知識等)を紐づける
- Step5 作成したキャリアマップを、関係者と共有する
それぞれ、順を追って見ていきましょう。
Step1 階層を設ける
キャリアパスを実践できるように、まず最初に「階層の作成」が求められます。
階層とはつまり「主任」→「リーダー(複数人)」→「一般社員(多数)」のように、段階的な役職です。
上位の階層の方が人数が少なく、仕事の責任は重くなります。
一方で低い階層はその逆で、主に上の階層から指示を受けて働くのが一般的です。
階層の設定は現状の職場環境を参考にするよりも、ある程度理想的な内容を想定して作り上げるのがコツとなります。
「そんな役職を与えられる余裕がない」としても、必要であるのなら仮に設定し、職場にとって理想的な階層をマップ化するようにしましょう。
Step2 階層ごとに名前を付け、定義づける
設定した階層に名前を付け、それぞれに明確な定義を与えることで、組織のなかで機能する準備を進められます。
名前を付ける際には、ある程度その階層名から仕事の役割を連想できるように工夫するのがポイントです。
たとえば「課長」「部長」ではなく、「指導職」や「管理職」のように、何のために存在するのかがすぐわかる名前が理想となります。
必要であれば1級や2級のように数字で分類し、細分化するのもひとつのやり方です。
定義づけはできるだけ簡潔に、かつ他の階層との差別化を行う必要があります。
「課長の仕事」や「指導役」だけでなく、「現場全体の総責任者」や「階層の間を取り持つ役割」など、具体的な内容を作成しましょう。
Step3 業務内容を整理・設定する
続いて名前を付けた階層に業務内容を与え、整理していきます。
コツとしては業務内容を「組織全体に対する役割」と「特定の職種における業務での役割」に分類し、それぞれの中に必要な「仕事」を設定することです。
たとえば「組織全体に対する役割」には、新規事業の計画やリスクマネジメントが仕事に当てはまります。
一方で「特定の職種における業務での役割」には、対象となる顧客への対応などが仕事になるでしょう。
すべての階層が「組織への貢献」と「職種での貢献」を行えるように、業務内容ごとの具体的な仕事を与えることが、より理想的なキャリアマップの形成につながります。
Step4 求められる職能(スキル・知識等)を紐づける
業務内容が形になったなら、その遂行のために必要な職能を決定して紐づけます。
主に職能は知識と技術が重要視されるので、それぞれに必要な能力の設定が先決です。
たとえば先のホテル業でいえば、知識には運営の基本や、接客の基礎知識、食事への理解などが関係します。
技術面では仕事の時間配分、クレームへの対応スキル等が、求められる職能として考えられるでしょう。
それぞれの能力がどのレベルに達したかを基準にすれば、正しい人事によって仕事が円滑に進められます。
しかし職能の設定を誤ると、そのキャリアの存在意義が揺らぐ可能性すらあるので、丁寧に微調整を行なっていくことがおすすめです。
Step5 作成したキャリアマップを、関係者と共有する
キャリアマップがある程度形になったなら、関係者と共有することでその内容を浸透させましょう。
誰でも閲覧できるように提示して、意見や質問を受け付けるのもおすすめです。
これからキャリアアップを経験する人だからこそ思うことや、既に役職に就いて長い人だからこそ感じる問題が、公開することで初めてわかることもあります。
修正を繰り返してより良いキャリアマップを作るように努めることが、組織のキャリアパスを進めるポイントになるでしょう。
できたら3ヶ月に一度は、キャリアパスの振り返りと見直しを
組織としての成長を求めるのなら、3ヶ月に一度のペースでキャリアパスの振り返りと見直しを行いましょう。
実際にキャリアパスが機能しているのか、仕事においてのメリットを生み出せているのかを確認します。
必要であれば修正や改善を実施し、意味のある形に調整することで、よりキャリアパスの魅力を職場で活かすことが可能です。
同僚や部下と話し合い、それぞれの結果や実感を共有して、組織・チームのキャリアパスをより強固なものに変えてみましょう。
キャリアパスは定期的に確認しないと、つい疎かにしてしまいがちです。
日々の業務に集中するあまり、将来的なビジョンが曇ることのないように、最低でも3ヶ月を目処にチェックを重ねていきましょう。
振り返りと見直しが定着すれば、部下の多くがキャリアパスを意識して働けるようになります。
将来の成長を促すためにも、継続的な確認がおすすめです。
部下のキャリアパスの振り返りの際は、一方的なコミュニケーションにならないように注意
キャリアパスの振り返りは、その人自身の力で考えることが鉄則です。
企業としての理想や上司という立場からの思想を部下に押し付けることのないように、相手を尊重することを忘れないようにしましょう。
「〇〇するべきだ」「〇〇しなくてはならない」といった決めつけは、一方的なコミュニケーションを作り上げます。
それはキャリアパスを理由に部下のやる気を削ぐことにもなりかねないので、十分に注意して振り返りと見直しを実施しましょう。
キャリアは組織やチームにおいて重要なものであると同時に、その人個人が自由にできるものです。
企業の都合で不自由を強制するようなことになっては、本末転倒でしょう。
キャリアパスの成功はマネージャーや管理職の持つバランス感覚が左右することも多いので、事前に部下と話し合うときの距離感を考えておいてください。
階層におけるキャリアパスの「意義」について、語れるようにしておく
キャリアパスの持つ本来の魅力を伝えるためには、階層における「意義」を解説できるように備えておく必要があります。
なぜその階層が求められるのか、どうしてキャリアパスが仕事にとって重要視されるのか。
部下が疑問に感じやすい点をあらかじめ予測し、それに対する適切な回答を提示できれば、キャリアパスによる職場の改革が実現するでしょう。
マネージャーや管理職の役割には、キャリアパスを設定するだけでなく、その意義を理解させる部分も含まれています。
上手にキャリアパスの意義を説明し、部下の意識を引っ張り上げることも、仕事になるのだと認識しておきましょう。
昇格に対して意義を見いだせない・ネガティブ印象を持つ若手社員は少なくない
近年は昇格に意義を見出せず、仕事に対してネガティブな印象を持ち続けている若手社員は多いです。
「キャリアアップ=責任や負担の増加」と捉えてしまい、その先にある自分自身の成長まで想像できないパターンも増えています。
それは世代間のギャップにつながり、職場の連携を乱す原因にもなりかねません。
こういったマイナスな意識をゆっくり変えることにも、キャリアパスは役立ちます。
自分の立ち位置と、将来に考えられる可能性が可視化できるキャリアパスは、昇格やスキルアップに対する考え方を改めるきっかけになるでしょう。
その意識改革を促すのは、キャリアパスの意義を語れる立場にあるマネージャーや管理職です。
部下が昇格をネガティブに感じていることを憂いたり憤ったりするのではなく、「どうすれば理解してもらえるだろう」と考えて、互いの認識を近づけ合うことを目指しましょう。
階層におけるキャリアパスは、その組織の「ビジョン」にも通ずる
組織における階層が上がっていくほどに、その職場やチーム全体が持つ将来のビジョンは把握しやすくなります。
より主体的に取り組みやすい環境が出来上がるので、キャリアパスの存在が組織を深く知るきっかけにもなるでしょう。
組織についての理解が深まれば、部下もまた仕事のモチベーションが高まり、自分自身の未来についてもっと真剣に考える時間を持てます。
それは成長を促進させる要因になるため、マネージャーや管理職としては充実したキャリアパスの実装こそが目指すべき職場環境になるでしょう。
部下がキャリアパスを意識しやすくするためにも、組織のビジョンにおける方向性や課題を認識させることは重要です。
組織のビジョンを理解し、共感することができれば、キャリアパスの浸透は早まります。
機会を見つけて他の職種の情報を伝えたり、キャリアアップにつながる学習手段を提示したりして、サポートを行っていくことも考えてみましょう。
まとめ)キャリアパスの設定が組織のクオリティを高める!
組織・チームにとってのキャリアパスが明確化されることは、職場全体のクオリティを高め、仕事への意識を変えることにつながります。
今目の前にある仕事をやり遂げることはもちろん大切ですが、同時に自分や部下の将来に目を向けることも、重要な努力になるのです。
キャリアパスがいかに組織のあり方を変える可能性を秘めているのかを、この機会にしっかりと把握しておくことがおすすめされます。
そして自分と部下の未来をキャリアパスによって明るくするために、今できることを考えていきましょう。
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