チームの「雰囲気・ムード」は、どうやって良くなったり悪くなったりする?知っておきたい「シグナル」効果
[最終更新日]2023/11/03
「いまのチーム、どことなく雰囲気が重くて・・・」「どうもチーム全体のムードが暗いんだよなあ・・・」
いままで、こんなふうに感じたことはないでしょうか?
チームの雰囲気は、仕事の成果にも大きく影響を及ぼすことがあります。多くの人が、できれば良い雰囲気の中で働きたいと願っているからです。
では、いったん雰囲気が悪くなってしまったチームを良い状態へと変えていくには、どうしたらいいのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
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どんなときに、チームの雰囲気・ムードは悪くなる?
チームの雰囲気が悪くなってしまう原因はさまざまです。常に特定の原因だけを取り除けば問題が解消されるのであれば、リーダーの立場としてこれほど楽なことはありません。
ところが、チームのムードを暗いものにしていく原因は得てして気づきくいものです。ほんのわずかな不満やすれ違いが積み重なって、気がつくとチーム全体の空気がどんよりとしていた・・・、といったことは決してめずらしくありません。
では、チームの雰囲気・ムードが悪くなる代表的な原因には、どういったことが挙げられるのでしょうか。よくある7つの原因を紹介します。
- チーム内のメンバーで、お互いに業務の進め方やコミュニケーションの取り方に不満を感じているとき
- チームの成績が悪く、周囲からの評価・評判も低いとき
- チームとしての目標や仕事の目的が不明瞭で、やりがいを見出せていないとき
- チームに対して貢献しているにもかかわらず、正当に評価されていないと感じている人が多いとき
- チーム全体で連携を図ることができておらず、各々が個人プレーに走っているとき
- チーム内で情報共有ができておらず、そのことが原因でミスが多発しているとき
- チームのリーダーにあたる人が高圧的だったり、自分勝手な言動が目についたりするとき
いかがでしょうか?「いかにも雰囲気が悪くなりそう」と感じたのではないでしょうか。
コミュニケーション、ビジョンの共有、評価への信頼、協力・・・といった「働きやすいチームの条件」を考えていくと、むしろ働きやすい雰囲気のチームを作るのはとても難しいことのように思えてくるかもしれません。
では、反対にチームの雰囲気が悪くなりやすいときの根本的な原因はどこにあるのでしょうか。上に挙げた7つの要因の抽象度を高めていくと、次のように考えることができます。
そのチームにいるときに「不安」や「恐れ」があると、雰囲気・ムードは低下・悪化しがち
まさに今、あなた自身が雰囲気の最悪なチームで働いているところを想像してみてください。そのときのあなたの心境はどのような状態でしょうか。
- 「チームメンバーと気軽に話しづらい」
- 「周囲からどう思われているのか気がかりだ」
- 「自分が把握できていないことが多々あるのでは?」
こうした心境は、メンバー各々の中でいわば「不安」や「恐れ」が持続的に生じている状態です。当然、目の前の仕事に集中したくてもしにくく、同じチームに属しているにも関わらず同僚が何を考えているのかが分からないと感じていることでしょう。
このような状態では、お互いがますます疑心暗鬼になり、チームのムードがさらに悪化するといった悪循環に陥ってしまいます。
不安や恐れを感じている状態では、メンバー同士で協力し合い、チームに貢献したいという心境にもなりづらいはずです。必然的にチーム全体のパフォーマンスは伸び悩んでしまうでしょう。チームとしてのパフォーマンスを考える上でも、チームの雰囲気やムードは見過ごすことのできない重要な問題なのです。
メンバーの不安や恐れを軽減させる、チームの「心理的安全」について
雰囲気の悪いチームに属した経験のある人は、こんなふうに感じたことはないでしょうか。
- 「今この場で意見を言ったら、皆から変な目で見られるのでは?」
- 「誰かの機嫌を損ねないように、注意して発言しなくては」
こうした心境で仕事をしていると、知らず知らずのうちに自分の考えを表明しなくなっていき、お互いに差し障りのないことしか言わなくなっていきます。これでは良い仕事はできそうにありません。
では、チームに属するメンバーの不安や恐れはなぜ生じるのでしょうか。また、そういった負の心境はどうしたら払拭できるのでしょうか。ここで重要になるのが「心理的安全」というキーワードです。
心理的安全とは?
- 「このチームなら、気兼ねなく発言してよさそうだ」
- 「本音でものを言っても、きっとメンバーは理解してくれる」
こうした安心感があり、互いを信頼し合えている状態や場の雰囲気があれば、メンバーは自然体でいることができるはずです。自然体でいるためには「危険がない」ことが重要です。ここで言う危険とは、たとえば次のようなことを指しています。
- 無視されるかもしれない
- 否定されるかもしれない
- 嫌われるかもしれない
- 恨まれるかもしれない
- 攻撃されるかもしれない
これらの不安や恐れがなく、心から安心していられる状態のことを「心理的安全」と言います。
「心理的安全が不安を払拭するのではなくて、もともと良い雰囲気のチームだから心理的安全を保てるのでは?順序が逆ではないか?」と感じた人もいるでしょう。たしかにそのような側面もありますが、チーム内での心理的安全を育むための具体的な行動を心がけることで、心理的安全を保ちやすい環境を作ることも大切です。
チーム内での心理的安全を育みやすい行動例
- お互いの物理的な距離が近いこと
- アイコンタクトが多いこと
- 握手やグータッチ等の肉体的接触がある
- 活気ある短い言葉のやり取りが多いこと
- チームの中での小さい仲良しグループで固まらず、誰もがメンバー全員と会話や交流をしている
- 人の話をさえぎらず、熱心に聞いている
- 質問をたくさんしている
- ユーモアと笑いがある
- 「ありがとう」と、ちょっとした礼儀や親切さが常にある
「腐ったリンゴ」の実験
チームの雰囲気をあえて悪くする「腐ったリンゴ」という実験があります。
メンバーの1人が、わざとチームの雰囲気を暗く重いものにする行動をとり続けます。すると、案外簡単に周囲のメンバーもその1人に影響されてしまうのです。
ミーティングであえてずっと下を向いていると、周囲の人もどういうわけか視線を下げ始め、発言が減り、ミーティングは暗く澱んだ空気に支配されてしまいます。1人が怠け者を演じていると、他のメンバーもまた「こんな仕事、くだらない」「真面目にやっても無駄だ」と考え始め、みるみる手抜き仕事が増えていくのです。
ところが、どんなに雰囲気を悪くしようとしても効果がないチームが存在しました。そのチームは一見すると特別なことをしているわけではなく、強烈なリーダーがいたわけでもありません。ただ1つ、他のチームとのちょっとした違いがありました。「安心できる人」がいたことです。
雰囲気が悪くならなかったチームは、「腐ったリンゴ」役のメンバーがどんなにネガティブな態度を取ったとしても、それを否定せず受け入れようとする姿勢を見せ、緊張を解き、どことなく和やかな雰囲気にしていく人物がいました。
1つ1つはちょっとした相づち・笑顔、あるいはユーモアでしかないようでしたが、それによってメンバーがリラックスし、「ここは安全なチームだ」と感じることができていたのです。
※ 本節は、書籍「THE CULTURE CODE 最強チームを作る方法」(ダニエル・コイル著)の一章「腐ったリンゴの実験」を参照しつつ、執筆いたしました。
チームの心理的安全を高める働きかけをする人の影響は
「腐ったリンゴ」の実験で重要な点として、チームの心理的安全を高める働きかけは、必ずしも言葉だけではないことが挙げられます。言葉のトーンや口調、目線、表情、姿勢や体の向きといったことも、実は周囲の人にシグナルとなって届いています。
ちょっとしたことのようですが、「この人には敵意がない」「悪い人ではない」といったことを伝えるには十分な役割を果たす場合があるのです。
こういったシグナルは、悪い方向にも働く場合があります。緊張やストレス、嫌悪感といった情報は、言葉に出さなかったとしても、ほんのわずかな態度や表情、目線に表れており、周囲の人は敏感に感じ取っています。
こうした負の感情は伝播しやすく、チーム全体に広がってしまうことで「腐ったリンゴ」の実験が「成功」していたわけです。
ところが、緊張やストレスを和らげるシグナルを発信する人がメンバーにいることによって、「なんだかホッとした」「救われた感じがした」と思う人が出始め、その雰囲気が伝播していくことにより、「このチームは安心できる」という心理的安全が芽生えていくのです。
誰もが、自分のチームの雰囲気・ムードを良くしていくことはできる!3つのポイント
チームの雰囲気やムードを良くしていくためには、何か特別な能力やスキルが必要なわけではなさそうです。つまり、チームの雰囲気を良い方向へと導いていくことは、誰にでも可能なのです。
では、どのようなことに気をつけたら、チームの雰囲気を良くしていくことができるのでしょうか。ここでは、とくに心がけておきたい3つのポイントに絞ってご紹介します。いずれもすぐに実践できることですので、今日からすぐにでも試してみましょう。
心理的安全を育む「シグナル」を意識すること
人に対して安心感を与えるシグナルと聞くと、真っ先に思い浮かぶのは「言葉」ではないでしょうか。たしかに、相手を思いやる言葉や優しさが感じられる声がけは、人に安心感を与える上で重要なこともあります。
しかし、実は話し手が聞き手に与える影響の大きさを言語・聴覚・視覚の3つの情報に分けたとき、最も大きな割合を占めているのは視覚情報であり、次いで聴覚情報なのです。下のグラフを見てください。言語情報を占めているのは、わずか7%に過ぎません。
つまり、心理的安全を感じられるチームにするには、表情や視線、姿勢といった視覚情報や、声のトーンや口調などの聴覚情報によるシグナルを意識的に発信することが大切です。
「チームの雰囲気を改善しなくては」と考えるとき、どうしても「話す内容」に意識が向かいがちですが、実際は話し方や態度のほうがずっと重要な位置を占めているのです。穏やかな話し方を心がけたり、笑顔で相手の目を見て話すことを意識したりするだけでも、チームのメンバーが受ける印象はかなり変わるでしょう。
まずは相手を「信じる」こと。チーム内での「犯人捜し」や「悪者分析」はしない
雰囲気の良いチームは、メンバーがお互いを信頼し合っています。「信頼」という言葉はやや抽象的ですが、要するに「仮に誰かがミスをしても犯人捜しに走らない」「悪者分析をしない」ことなのです。たとえば、あなたなら次のどちらのチームで働きたいと思うでしょうか?
- 良い成果が出ていないとき「誰が足を引っぱっているのか」を陰で言い合っている
- 良い成果が出ていないとき「誰の良いところを活かせそうか」が話題に挙がる
前者のチームが犯人捜しに走っているのに対して、後者のチームは「メンバーにはそれぞれ良い面がある」「良い面を活かせば成果につながるはずだ」という信頼感が根底にあります。後者のチームでは「私が足を引っぱっていると思われているのかもしれない」などと疑心暗鬼になる必要もありません。
だからこそ、自分の意見を堂々と表明し、オープンに議論し合い、チームの成果に対してフラットな視点から評価することができるのです。チームに属する各々が「チームのために尽力している」ことを信じることが、そのための第一歩となるはずです。
チームで成し遂げたい、「共通の目標・ビジョン」を掲げていくこと
良いチームの状態を「同じ方向を向いて頑張っている」と表現することがあります。言い換えれば「共通の目標・ビジョンを持っている」のです。
メンバー同士がお互いの粗探しをし合っているような険悪なムードのチームは、おそらく目の前の仕事に対して十分集中できていません。だからこそ他人の悪いところばかりが目についてしまい、仕事の本来の目的とは異なる無関係なことで神経をすり減らしてしまうのです。
メンバーそれぞれが「どうしたら良い成果に結びつくだろうか?」「より良くするにはどんな方法が考えられるだろう?」と常に一生懸命に考えているチームであれば、お互いの短所などといった副次的なことに目を向けている暇はないでしょう。
チームの雰囲気を良くしたいときは、そもそもチームの目標やビジョンを共有できているのかどうか、見直してみてもいいかもしれません。メンバーとの付き合いが長くなっているチームであっても遅くはありません。目標やビジョンを掲げ、共有することから変えていきましょう。
まとめ)小さな「安心」の積み重ねが雰囲気の良いチーム作りにつながる
チームは人の集合体です。さまざまな人が属していますので、チームの雰囲気はメンバー次第で決定されてしまうと思われがちです。しかし、チームの雰囲気はちょっとした安心感の積み重ねによって形成されていくものでもあるのです。
裏を返せば、日々の小さな「安心」を積み重ねていくことが、雰囲気が良く結束力の強いチームを築いていく上で重要な鍵を握っているとも言えます。まずは小さな「安心」のシグナルを発信することから、雰囲気の良いチームづくりに向けて一歩一歩前進してみてはいかがでしょうか。
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